新学期も始まり一週間ほど経ったある日のことだった。いつものように俺は買い物を済ませ、コンビニから帰ってきた。 「ただいまー」 一人暮らしだというのに、ちゃんと入室挨拶をする自分は偉いと思う。だがもちろん返事はない。 「はぁ……カノジョ欲しい」 ポツリと切実なつぶやきを漏らす俺の名前は島崎ユウマ。このとおり、一人暮らしの学生だ。残念ながら人生のモテ期は未だやってこない。 俺は生まれてこの方、女性と付き合ったことが無い。それには事情があって、俺の手が少しでも女性の身体に触れると、なぜか相手は激しい拒絶反応を示す。 これには美人もブサイクも関係なく、ほとんどの女性が俺から逃げ出そうとする。俺の右手には悪魔が宿っているのだ……。 この理不尽な超能力については、親に相談したこともある。しかし父親から返ってきた言葉は「そういう運命なんだよ、お前は」と言った救いようのないものだった。 その後、絶望する俺に向って親父が小難しい話をし始めたのは覚えているが、内容は左の耳から右の耳へと綺麗に抜けて行った。 ピンポーン 「んっ……誰だっ!!」 部屋のドアが勢い良く開いた。しかも現れたのは残念ながら見慣れた男。 「おっすユウマー!オナニー中かー!!」 「いや、それはもう終わった……」 「そうかそうか、悲しいけど気持ちいいよな童貞君!」 なにが悲しいって、なぜ俺は朝からこいつとこんなイカ臭い会話をしなきゃいけないんだ。 こいつは山田カイト。親友をフルネームで呼ぶ必要もないので山田でいい。 俺と山田は高校時代からの付き合いになる。 少なくともこちらが抱えているような絶望的な悩みは無く、女性とも普通に話せて、勉強も出来るという羨ましいやつだ。 「お前さ……なんでいつも俺の部屋に来るわけ? しかも当たり前のようにドアをフルオープンしてくるわけ??」 「そりゃお前……愛だろ?」 「やめて」 「照れ屋だな、ユウマきゅん♪」 「お願いだからそういうのやめて」 こいつ、ノンケのくせに芝居が細かい……! 山田がここに来て何をしてるかといえば、テレビを勝手に見たり、パソコンを占領してエロ画像を探したり、そんなことばかりだ。 詳しくは聞いていないけど、家はそれなりに金持ちらしいから、なんで毎日こんな狭苦しい場所に入り浸っているのか、まったくもって動機が不明だ。 ただ、見た目どおり女性にはそこそこモテるはずなのに、自分からそういう話題には触れない。 きっと俺に気を使ってくれているのだろう。 総合的に見ると、なかなかいいやつなんだとは思う。 「なあ、どうせ暇だろ? ユウマ。街道沿いのエロ本屋に付き合え」 「どうせは余計だが、確かに暇だ。 今日は何か買いたいものあるのか?」 「しらん!ただ新作がいくつかあるはずだ」 山田はそれだけ言うと、さっさと立ち上がって部屋を出て行ってしまった。 しょうがない……俺も山田の後に続いた。 山田の車の助手席に乗って、向う先はレンタルじゃないセルDVD屋だ。 「お前さ、なんでレンタルにしないの?安いのに」 「バカだな、童貞君。レンタルだと返しに行かなきゃ ならないだろ? その手間を考えたら買っちゃったほうが安いんだよ」 「そういうもんですかねー…… それといちいち童貞言うな」 「ふんふんふ~ん♪おっぱい!」 (こいつ、俺の話を聞いてねえ……) 山田は嬉しそうに鼻歌を歌ってる。今日は新作が出るとかで、とにかくこいつは楽しそうだ……うらやましいやつ。 ――そしてビデオ屋から無事帰宅。 俺はいったん山田と別れて自分の部屋に戻ってきた。あいつが貸してくれたパッケージをみる。 DVDのタイトルは「押しかけ☆セクシーエンジェル」……もちろんまだ開封前だ。 (気前がいいやつだよな、山田って……) 購入代金も山田が支払ってくれたし、送り迎えもしてくれる。 やっぱりあいつ大金持ちの息子なんじゃないか? そんなことを考えつつ、ベッドに転がってパソコンを起動する。パッケージを開封してディスクを光学ドライブに放り込む。 ほどなくして自動的に動画が立ち上がった。パケ写よりもいいぞ、これは! (うむぅ、けしからん乳だ……なんて破廉恥な天使) まさにタイトルに偽りなしのセクシーエンジェルだった。ストーリー部分は早送りしてる。 おそらく独身男性の元に、突然素敵な女性が転がり込んできたとかそんなお話だろう。 毎回思うんだが、絡み以外はどうでもいい。 ただ、この女優……抜群に可愛い。俺にもこんな彼女が居たらいいのになとおもう。 「ふぅ……」 しばらく画面を見てから、パッケージを机の上に置いた。 仮にこの話のように女の子がここに来たとしても、俺の忌まわしい「超能力」のせいで100%逃げ出してしまうだろう。 「くそぅ……」 そんなことを考えたら急に切なくなったので、ベッドに転がってみた。 山田は俺と違って普通に女性と接することが出来る。それがすごくうらやましい。いや、山田だけじゃなく……俺以外の全ての男性がねたましい。 「うう~、ぬあああぁぁぁ!」 こんなことで思い切り壁をドンドン叩くこともできないので、静かに呻いてみる。 全然気晴らしにもならない。くそっ、惨めだ!こんな超能力なんかいらねえええ!! (ねえ、さっきからなにを悩んでいるの?) 俺の頭の中にいきなり甘い声が鳴り響いた。聴いた事のない声なのに、なぜか心に染みてくる。 いちいち声の主を探すような真似はしない。きっとこれは脳内妄想だ。この部屋には俺しかいないんだからな。 「なにって…… この『押しかけ☆セクシーエンジェル』をだな……」 (それは嘘でしょ。でも、こういう子がいいの?) 妄想のくせに俺の言葉を否定してきやがった。別にかまわないけど。 「……ああ、こんな子がいたら最高だな!」 「ふ~ん……」 突然、カタッという音がしてDVDのパッケージが宙に浮かんだ。 「えっ!?」 驚いた俺が身体を起こすと、見慣れない女の子の姿が目に入った。 (まさかのリアル押しかけセクシーエンジェルだとぉ!?) 「チャオ♪」 「うわあああああああ!しゃべった!」 「あれれれ?そんなに驚かなくてもいいじゃない。 自分だって望んでいたくせに」 「おおおっ、押しかけセクシーエンジェルをか!?」 「……なにそれ?」 俺の目の前に現れた女の子は、不思議そうな目で俺を見つめている。とんでもない美人だが、何かがおかしい。 露出度の高い衣装、真っ白な肌と赤みを帯びた瞳、そしてサラサラの長い髪、可愛らしい羽と立派な角……ツノ? 「う、牛?」 「ちがうっ!それ全然違うから!!」 「色々突っ込みどころ満載なんだけど、 とりあえず……お前は誰だ!」 「私?ごく普通の美少女なんですけど。 指をささないでくれるかな?」 こやつ、自分で美少女と言い切ったよ。たしかに可愛いけど自信過剰だろ。 だが怯んでる場合じゃない。 「ぜんぜん普通じゃねえし!なんだよその格好は!!」 「へぇ……!?」 自称・ごく普通の美少女は、目を丸くして俺の言葉に驚いているようだ。しかし、こちらだって数百倍驚かされているからお互い様だ。 「特にその羽というか翼というか尻尾というか……」 「やっぱりキミ、すごいんだね。 私のこと、見えてるんだ?」 「な……」 意味深な美少女のセリフに対して頭が付いていかない。見た感じは悪魔……そう、悪魔だ! でもあんまり悪そうな雰囲気でもないし、一体どうなっているんだ? 俺が絶句してから数秒後、部屋のドアが開いた。 がちゃっ 「ユウマ、さっきのビデ……おおおおおぉぉぉぉい! なんだその娘!?」 「ちょうどいいところにきてくれた。 俺の部屋から、この翼の生えた押しかけコスプレエンジェルを 追い出してくれ」 「はぁ?翼?コスプレ?何言ってんだ」 山田が怪訝な顔で俺を見つめる。 「すごいきれいなお嬢さんじゃないか! こんな清楚なカッコして……まさか密かに隠し続けてた お前の彼女か?そうでないなら俺に紹介してくれ」 (俺にしか見えないのか……?この娘の異形が) どう見ても清楚とはいえない露出度なのに、山田は平然としている。 こちらの方がおかしいのだろうかと勘違いしそうになる。 「彼もなかなか美味しそうな匂いがしてるけど…… 今は出て行ってもらおうかな?」 動揺している俺をわき目に、美少女が山田に近づいた。 彼女が山田に向ってそっと手をかざすと、ピンク色の光が手のひらを包み込んだ。さらにその光が輝きを増して、山田の頭に吸い込まれていく。 「お、おいっ!やまだあああああ!」 光線を浴びた山田の頭がスイカみたいに爆発するのか? 後始末大変だな……と咄嗟に考えた俺の期待を裏切り、何事も起こらず山田が口を開いた。 「あ、そうだ。買い物に行く途中だった」 「ビーム直撃してたけど平気なのか?お前……」 「ユウマ、おれ帰るわ。また明日な!」 「は?おいこら、ちょっと待てえええええぇぇ!!」 山田のやつ、質問はシカトしたまま行っちまいやがった……。 こんな怪しげな娘と俺をこの場に残したままで! 「だいたい判ってもらえたと思うんだけど、 私はサキュバスだよ」 「ぜんっぜんわからんわ!サキュバスってなんだよ?」 「淫魔とか夢魔とか他にも色々呼び方はあるけど…… 私の名前はミウ・シャルロット。 ミウって呼んでくれていいよ!」 「マイペースすぎるぞ、あんた……」 ミウと名乗る美少女が俺に向って笑いかけている。登場の仕方はともかく……くそ、かわいいな。 いんまっていうのは悪魔の類だろうか?とにかく眼の前にいる娘が普通じゃないことだけは、ひしひしと伝わってくる。 「一応聞くけど、山田に何をした?」 「何って……魅了の魔法をかけただけだよ?」 「そうか。じゃあ安心だ…………って、魔法って何だよ!」 「もうっ!さっきから質問ばかり!! そんなことよりさ……ねえ、エッチしない?」 ミウが身体をすり寄せてきた。しかも右手をそっと俺の手に重ねてきた。 すげー……しっとりとしていて、それでいてスベスベでひんやりしてる真っ白な肌。 女の子に触れられていることに軽く感動する。でもこの娘、俺に触れてもなんともないのか? 「だ、だいたい俺といきなりエッチする理由が……」 「私はキミの願いどおり、ここに現れただけだよ?」 「俺の願い?」 「さっきまでエッチなこと、 いっぱい考えてたじゃない?クスッ」 ミウは自分の人差し指の先を口元へと運び、舌先でぺろりと舐めて見せた。舐められた指先が軽く濡れて光っている。 その色っぽい仕草に思わず見惚れてしまった。 「はっ!だからってこんなに都合よく……ん?」 「隙あり……ちょんっ♪」 質問攻めの俺の唇に、そっと彼女の指先が当てられた。 しっとりと濡れているだけではなく、ほんのり指先がピンク色に光っている。まるでさっきの山田の時のように。 「さっきは彼の記憶を操りたかったからおでこを触ったんだけど」 ミウの口調が心なしか変わった。俺の身体に寄りかかり、甘えるような身振りをする。ほんのりいい香りが髪から漂ってくる……。 (さっきの彼……山田のことか……) 押し付けられた身体の柔らかさを感じながら、ぼんやりとそんなことを考える。 「キミの場合はエッチな気分を高めてあげたかったから、 直接唇に触れちゃった♪」 ミウはいたずらっ子のように片目を瞑って見せると、再び指先をぺろりと舐めて見せた。真っ赤な舌先が細い指を這う様子がものすごくエロい……。 「しかも私の唾液にはたっぷりと魔力が含まれてるんだよ」 「なんだよそれ、よくわかんない……」 「じゃあもう少しヒントをあげるよ。えいっ!」 ミウがおもむろに人差し指を俺の口の中へ突っ込んできた。 細い指が俺の口の中をかき混ぜる。 (あまい……) はじめに感じたのがそれだった。上質な蜂蜜をさらに精製したような、何度も舐めたくなるような甘い味がする。 「これが私の味だよ。たっぷり召し上がれ♪」 「う、うん……」 夢中で口の中に突っ込まれた彼女の指先をしゃぶる。 まるで砂糖菓子を与えられた子供のように、一心不乱にその行為を繰り返すうちに、身体が脱力して、頭がボーっとしてきた。 「ふふっ、美味しいでしょ。 『ずっとこのまま舐め続けたい』って、 キミのお顔に書いてあるよ?」 「……」 ミウの問いかけは聴こえているのに、返事ができない。 身体を包む桃色の霞がすこし濃くなったように思える。 「もうすぐ堕ちちゃうかなー?」 いつしか俺はチュパチュパと音を立てながら指を舐めることしかできなくなっていた。 (甘くて美味しくて、それに気持ちいい…… でも何かがおかしい!) 身体の芯が燃えるように熱い。だがその不自然さを、俺の精神が拒絶した。 思い切り首を数回横に振って、この妖しい気持ちを振り払おうとした。 「あっ、あれ?無効化された……?」 目の前で俺が指しゃぶりを止めたのを見て、ミウが驚きの声をあげた。 しかし相変わらず俺の意識はピンク色の霞に包まれたままだ。気を張っていないと、またすぐに彼女の指先を求めてしまいそうだった。 「普通なら私に直接触れられただけで 射精しちゃってもおかしくないのに」 不思議そうに俺を見つめながら、ミウはさらに呟く。 「もしかして、これが女王様の恐れてる 『勇者の血』の力なのかな……」 (勇者の血……?) そこかで聞いた事のある単語だった。ゲームや小説の世界ではなく、遠い昔に聞いた事のある響き。それなのにはっきりと思い出すことが出来ない。 「だとしたら厄介ね。少し本気を出させてもらうわね」 俺の疑問を遮るように、ミウが顔を寄せてきた。整った顔立ちと、甘い髪の香りに胸が一杯になる。 (こんな近距離で女の子を感じたことなんてない……!) しかも相手は、じっと見つめられているだけで胸が苦しくなるほどの美形。 すでにこちらの恥ずかしさは限界に達しているというのに、彼女の次の言葉は俺の理解を軽く飛び越えたものだった。 「ねえ、今からキミにキス……するね?」 「な、なにいぃ!?」 ミウが俺を見つめながら、顔を寄せてきた。 「ふうぅぅ~~~♪」 そして静かに目を閉じて、俺に吐息を吹き付けてきた。甘い桃のような香りにふんわりと包まれる。 「あぁぁ……」 呼吸をした瞬間、ミウが身体の中に入り込んできたように感じた。 さっきよりも指先に力が入らない。心臓が激しく動いて呼吸が苦しい。それなのに、さっきよりもずっと彼女が欲しい。 「ミウが……欲しい……!」 「いいよ、私をあげる……チュッ♪」 思わず俺が口に出した言葉を吸い取るように、彼女の唇が俺の口を塞いだ。 チュルッ……ピチュ、チュプッ…… ミウの小さな舌先が差し込まれると、さっきよりも濃密で甘い味が口の中に広がった。 しかも彼女は何度もその動作を繰り返し、チュルチュルと俺の口の中を吸い始める。 (意識が溶けていく……なんだ、このキス……) 頭の中がゆっくりとミウだけで満たされてゆく。初めてのキスがこんなにも濃密で、気持ちよくて、ドキドキするものだなんて……。 柔らかな唇の感触と、淫らな舌先の愛撫から逃げることも出来ず、俺は彼女に抱きしめられながら甘い誘惑に身を任せた……。 ちゅぽん、という音を立てて、ミウはようやく俺を解放してくれた。 「さっきの質問、キミを抱きながらゆっくり答えてあげる」 ミウは俺の目の奥を覗き込みながら微笑んでいる。丁寧なキスのおかげで力が入らない。ただうっとりと彼女の口元を見つめていた。 「キミは私たちにとって天敵とも言える存在なの」 「数百年前、私たちの世界である『淫界』は、 勇者を名乗る男の子に滅ぼされそうになったらしいわ」 フワフワした気持ちのまま、俺は彼女の話を聞いていた。ミウの話の中で、聞き覚えのある単語がいくつかあった。 (淫……界、勇者、サキュバス……) しかし甘い誘惑に溺れ、技巧を尽くしたキスの味に酔わされた今の俺では、その言葉をつなぐことが出来ない。 「だから今度は逆に私たちがキミの世界を滅ぼしてあげる」 「快楽だけでニンゲン全てを支配するなんて素敵だと思わない?」 ミウの手が俺の顎をクイッと持ち上げる。自然に彼女と目が逢う。 「その手始めに、『勇者の血』をもつキミの心と身体を 堕落させることが決まったの」 ミウの顔が近づいてくる。そして再びあの唇が――! 「んっ……♪」 「ピ……チャ……レロ……レロレロ……」 奪うようなキスではなく、じっくりと味わうようなキスだった。柔らかく舌を使って、彼女は俺の口の中を丁寧に愛撫している。 (力が……抜けてく……吸い取られて……) たっぷり時間をかけて舐めまわされ、俺はますます骨抜きにされてしまった。 「今のキスで判ったけど、 まだ『覚醒』してないみたいだね?」 ミウは唾液まみれになった口元を指先で拭うと、俺の着ている服を脱がせ始めた。 「なにを……やめろ……!」 「だからこのまま封印してあげる。もっといっぱいキスしよう?」 「チュウッ♪」 「あっ……ふぁ……んんっ、んううぅぅ~~~!!」 わずかに心の中に起きた抵抗する気持ちも、再びあの口付けによって奪われてしまう。 「たっぷり時間をかけて、 私がキミをとろけさせてあげるから……ね……?」 ミウのキスで陶酔感に包まれ、意識は朦朧としたままだ。その間にあっさりとベルトを外され、俺は彼女の前に裸体を晒してしまった。 ミウの甘いキスに酔わされ、身体を押し付けられた俺はそのままベッドへ倒れこんだ。 「クスッ♪これでもう逃げられないね?」 「ぐっ……! こんな格好させやがって……」 ミウは剥き出しになった俺の下半身を、しっかりと抱え込む。そして、両足の間に入り込み、膝で俺の腰を持ち上げた。 たったこれだけのことだが恥ずかしすぎる!顔から火が出そうな気分だ……。 「本格的に犯してあげる前に確認だけど、 キミの名前ってユウマでいいんだよね?」 「あ、ああ……」 「ふふふっ、じゃあ今からユウマって呼んであげる。 そのほうが雰囲気出るでしょう?」 「!!」 「そのかわり、私のことはミウって呼び捨てにして良いよ…… 特別に許してあげる」 「最初で最後の、キミの恋人になってあげる♪」 「恋人……」 その言葉に不覚にも心が揺れ動いてしまう。サキュバスとは言え、こんなに美しい女性が俺の恋人になってくれるなんて……。 彼女の眼を見つめていると、心の奥でジワリと何かがとろけはじめた。この不自然な気持ちの高まりはさっきのキスによく似ている。 (魅了の魔法なんかに負けるものか……!) 「あらら、やっぱり魔法は効きにくいみたいね。 でも女の子の身体は初めてだよね?」 「……」 「ユウマの場合、心より先に身体のほうを 参ったさせたほうがいいみたい。 たっぷりと私の身体を味わってもらおうかな」 軽く彼女が身体を揺らすと、柔らかい素肌が俺の身体に吸い付くようにまとわりついてきて、すごく気持ちいい……! 「女の子の柔らかい体で骨抜きにされていくのって、 すごく気持ちいいらしいよ?」 「あ、ああぁ……動くなぁ……!」 「ユウマは今から私にバラバラにほぐされちゃうの。 そして大事な男の子の初めて…… 筆おろしをサキュバスの身体に捧げちゃうんだよぉ……?」 「ふ、筆おろし……!」 「うふふふ♪その心と身体をキレイに〈剥〉《む》かれちゃうの」 「サキュバスのツルツルのお肌で擦られて、 何度も何度も射精しちゃって、 感じやすい男の子に改造されちゃうんだよ?」 「言うなあああぁぁ!」 「へぇ、恥ずかしがり屋さんなんだ?ユウマって可愛いね♪」 ミウの声を振り払うように俺は激しく首を振った。それでも甘いささやき声がそっと忍び込んでくる。 嫌でも耳から入り込む淫語のせいで、ペニスが徐々に硬さを増してゆく。 ミウの言葉を聞くたびに、直接股間を撫で回されているような妖しげな気持ちになってしまう……。 本気になったら声だけでも相手をイかせることができるんじゃないのか?これもサキュバスの力なのだろうか……。 「……すぐに虜にしてあげる。 まずは男の子が大好きなここを使っちゃおうかな」 そう宣言すると、ミウは静かに豊かな胸元に両手を添えた。 「今から私に何をされちゃうのか、わかるよね?」 「そんなの……」 「私の口から聞きたい?じゃあ教えてあげる。 ユウマも大好きなおっぱいで、おちんちんを搾り取ってあげるの」 何故俺がおっぱい派だということに気付いたんだ……。それにこんな見事なおっぱいを俺は今まで見たことがない。 「ほら、見てぇ……もうこんなに…… あんっ、乳首も立ってるよぉ♪全部ユウマのせいだよぉ……」 ふるんッ♪ 「う……」 自然に視線が釘付けになってしまう。透き通るような白さと、絹のような滑らかさを併せ持つサキュバスの肌に身を委ねてみたい。 あの胸に擦り付けたらどれだけ気持ちいいのか想像がつかない。 「ふっふ~んっ♪じっと見すぎだよ、ユウマ。 そんなに熱心に見つめられたら、おっぱいだって 恥ずかしくなっちゃうでしょ」 ミウはバストの下で腕をぎゅっと組む。ピンク色の乳首がクルンと上を向いた。 「女の子に恥ずかしい思いをさせちゃうなんて、 いけないおちんちんでしゅね~?」 「違う!俺は……俺はああああああああぁぁあぁぁっ!」 俺の口を閉ざすように、片方のバストがペニスをそっと撫で上げた。 「クスッ、なぁに? お姉さんに何か言いたいことでもあるのかなぁ?」 ほんの少し掠めただけでこの快感……こんなのに挟まれたら一体俺はどうなってしまうのだろう。 「さあ、覚悟はいい?ゆっくりサンドイッチにして、 美味しく食べてあげる」 「フワフワのマシュマロみたいなサキュバスの胸で、 ガチガチになったユウマを包み込んだらどうなっちゃうかなぁ?」 「や、やめ……」 言葉では拒んでみたものの、あのおっぱいに挟まれてみたい。 男として抗えぬ欲望がジワジワと俺を蝕む。そしてあの胸に犯されることを心のどこかで期待している。 「童貞君だもんね?このままだときっとすぐにイっちゃうから、 我慢できるようにおまじないしてあげる」 ミウは少しだけ身を乗り出すと、亀頭に顔を近づけてきた。 (まさかこのままフェ、フェラ……?) あと2センチぐらいで亀頭に唇が触れる位置で、彼女がこちらを見てニヤリと微笑んだ。そして艶やかな唇が開くと、透明な粘液が滴り落ちてきた。 「く……はっ」 それはミウの唾液に違いなかったが、まるでローションのようにあっという間にペニス全体を包み込んだ。 「ほらぁ……サキュバスのトロトロジュースで、 ユウマのおちんちんはもうクチュクチュだよぉ……♪」 「いったいなにを……!」 「私の魔力がこもった唾液で、先っぽをコーティングしてあげたの。こうしとけば射精しそうになっても、 簡単には出せないからね。じゃあ行くよ……♪」 グチュッ、クチュ、ジュプジュプ……! フニュッ、クチュ、ヌリュッ、クプッ、クプッ、クプゥッ!! 「はうああああぁ!」 ネトネトにされたペニスがミウのバストに挟まれ、卑猥な音を立てて飲み込まれていく。 ヌルついた肌が粘膜を擦る度に俺を蝕んでいく。その様子を、俺は黙って見つめるしかなかった。 「ほらほらほら、もっともっと感じちゃえ! 身体も心もドロドロにしてあげるからね♪」 グチュッ、グチュッ、グッチュウウウウ!! 「うああっ!こんなああああぁぁ!!」 「きゃははっ、すごい声だね。 私のおっぱい、柔らかすぎておかしくなっちゃう?」 クニュウウウウ! 「あああぁっ、手を動かすな! そんなに激しく揉まれたらおかしくなるうううう!!」 バストに挟まれるだけでなく、たっぷりとペニスを柔肌に擦り付けられる。 しかも潤滑剤として流されたミウの唾液ローションのせいで、いつもよりも感じやすくされてしまったようだ。 (でもなんでイかないんだ!? いつもの俺ならもう射精していてもおかしくないのに……) 「不思議だよね?イきたいのにイけないなんて」 「これもお前の力なのか……」 その質問には答えず、ミウは魅力的な目で笑うだけだった。 「……いいんだよ、このままおかしくなっちゃっても。 壊れたら私が直してあげる。それからまた壊してあげる♪」 「何度も何度もユウマは私に壊されちゃうの。 それで私のことしか考えられない男の子にされちゃうの。 おっぱいで恥ずかしく感じちゃうところ、もっと見せて……」 「こんなことをされたって……!」 強がりを言う俺を見て、ミウは嬉しそうに笑う。 「あら?少しは慣れてきた?」 「でもね、私の胸って柔らかいだけじゃないんだよ。 こうやって複雑におちんちんをこね回してあげれば……」 ニュクッ、グニッ、モニュ……♪ 「おっ、うおおおおぉっ!!」 「どうかなぁ?おちんちんが徐々に潰されて、 大事なおつゆが搾り取られていくのがわかるでしょ」 (くっ、なんて気持ち良さだ……) 「ユウマの美味しい精液を作っているところを、 もっと念入りに刺激してあげるね」 ミウのバストが俺を包み込むたびに快感の波が押し寄せてくる。しかしその波は絶頂に届かぬよう、無理やりせき止められているのだ。 そのおかげで俺は、ミウが奏でる快感から気持ちを逸らせないでいた……。 「今からユウマのことをこれで責めちゃうね」 「まさか……尻尾も自由に動かせるのか」 「正解♪私の尻尾、かわいいでしょ。 サキュバスはね、みんな尻尾が自慢なのよ」 「うくっ……」 「ユウマのおちんちんの根本にあるタマタマは、 右と左のどちらが感じちゃうのかなぁ……?」 尻尾の先端が俺の睾丸を優しくツンツンと刺激してきた。 「はああぁぁ……」 「あはっ、こっちだ♪ユウマの弱いところ、見つけちゃった」 迂闊にも玉袋を尻尾に弄ばれただけで思わず溜息を漏らしてしまった。 これから一体何が起きるのか予測できない……。 プシュッ! チクリとした軽い痛みが股間に走る。 「んあぁっ!何をっ!?」 「あら、全然痛くないでしょ?サキュバスの エッチなジュースを、かわいいタマタマに注射してあげたんだよ」 「なっ、なにいいいぃぃぃ!?」 「ああ、なんだこれ……は……!」 「もう効いてきた?すごいでしょ…… ユウマの身体の中をもっと元気にしてあげようと思ったの」 サキュバスの尻尾が、睾丸を優しく転がしてくる……。 「ほら、気持ちいい? おちんちんビクビクしちゃってるけど、出せないよねぇ?」 「あっ、ああぁ~~~!」 ミウの指先がペニスの付けから睾丸までをシュルシュルと撫で回す。 心臓が激しく脈を打つように、ペニスも射精に備えてビクビク震えだす。 (でも出せない!こんなに気持ちよくなってるのにいいい!!) 悶え続ける俺の唇を、ミウの細い指がそっと撫でた。 「……もっともっと気持ちよくなろうね、ユウマ」 妖しげな液体を睾丸に注入していたミウの尻尾がゆらりと持ち上がる。 「男の子を狂わせるのはもちろん、女の子だって尻尾でジュポジュポしてあげれば虜にできちゃうんだよ。 今からこの先っぽで、ユウマを包みこんであげる……」 「ぐあああぁぁっ!」 「クスクスッ♪大げさだなぁ~…… それにちゃんと『気持ちいい』っていって欲しいな?」 「だっ、誰がそんなこと……!」 ミウは鈴のように微笑んでいるけど、この尻尾の感触は彼女の指先よりも……心地良かった。 とてもつもなく肌触りの良いジェルが表面に浮かんでいるようで、しかも淫らにクネクネとうごめいている。 「クスクスッ♪もちろん気持ちいいと思うよ。だってもうユウマの感じる姿を見て、私も濡れちゃってるんだもん。 この尻尾の先がニュルニュルしながらユウマを求めてるの」 「この平らな部分で亀頭を優しく撫で回されたらどうなっちゃう? またさっきみたいに気持ちいい想像しちゃう?」 「そんなことは……」 容赦ない言葉責めに、俺は顔を背けた。 「本当にエッチだね、ユウマは…… お望みどおりたっぷり感じさせてあげる。 想像よりも気持ちよくしてあげる」 「離せ、このおおぉ!」 「逃げようとしても無駄だよ? 私の尻尾で、ユウマの心をジワジワと追い詰めてあげるんだから」 「くうっ……!」 「ユウマはヌルヌルの尻尾に犯されちゃうただの男の子だよ。 しかもサキュバスに気持よくされちゃう恥ずかしい童貞君だよ……?」 ミウの尻尾が揺らめくたびに、腰から下が溶け出していくように感じる。 亀頭をヌルヌルと刺激され続け、射精のことしか頭に浮かんでこなくなってきた……。 「あはっ、もしかしてイっちゃいそう……? もっと耐えて見せてよ。そしたら、いい子こいい子してあげる」 「ふ、あああぁ……!」 「クスッ、身体がピーンと張ってきたね? そろそろイっちゃうんだ……」 「おっぱいと尻尾に熱くって白い濃厚ミルクをかけてくれるんだ?」 「だ……れが……ぁぁ!」 「う~ん? ほら、シコシコシコシコ……まだまだ硬くなりそうだよ?」 「あっ、ああああぁぁ!イくっ!!」 たまらなくなった俺が首を跳ね上げた途端、尻尾の動きがピタリと止まる。 「はい、スト~~ップ!もっと我慢しなきゃダメ」 「あ……ぐ……!」 「どう?堪えようとしてもじわじわと身体に染みていくでしょ」 行き場を失った快感が身体中を駆け巡り、身を焼かれるような感覚に包まれる。 「我慢させられて苦しい?……それがユウマの忍耐力だよ。 時間をかけてその力を、弱~くしてあげる」 「くそっ……あ、あああぁぁ!」 「もっと優しくいじめてあげる……♪」 「あはっ、さっきよりもいい感じでお顔がとろけてきたんじゃない?」 「はぁ、はぁ……く……そ……! 「んん~、かわいい♪じゃあそろそろ〈挿乳〉《そうにゅう》しちゃおうか?さっきと同じように優しく包んで、その後で一気に……うふふふふふ♪」 ミウは両手でバストを寄せると、その谷間にペニスを一息に差し込んだ。 「あっ、ああ~~~~!!」 あっという間にペニスがミウの身体にとろけていく。下半身が全部液体になったような感覚が俺を包み込む。 「こんなに敏感なおちんちんは、いっぱい鍛えてあげないといけないよね。今度はどうしよっか?さっきタマタマに注射したお薬、今度は別のところから入れてあげようかな……」 「やめ……ろ……!」 注射という言葉に思わず反応してしまった。 「その表情、すごくいいよぉ……私も興奮してきちゃう! でもね、ユウマは逃げられないの。 だってもう身体が動かないでしょ?」 確かめるようにミウが軽く乳を揺らす。 「くはああぁぁ!」 だが俺は身体をひねるどころか、本当に小さく震えることしか出来なくなっていた。 「なんで……!?」 「たっぷり時間をかけて、おちんちんの中まで染みこませてあげたからね。 サキュバスの体液はニンゲンにとっては猛毒なのよ」 「身体中が敏感になって、身動きが取れなくなって、最後は狂っちゃうの。 だからユウマは私が優しく狂わせてあげる♪」 ミウは両手でバストに圧力をかけ、ペニスをギュムギュムと圧迫してきた。すると深い胸の谷間から亀頭だけが綺麗に露出してきた。 「うああぁぁっ、また……」 「綺麗なピンク色。このまま果物みたいにむいてあげる」 「ほらぁ、私の尻尾がユウマのエッチな童貞チンポを包んじゃったよ。 このまま撫で回しながら食べてあげる」 「んああっ、あああぁぁあ!」 「ニュルニュルしてて気持ちいいよね。柔らかい女の子の手でくすぐられてるみたいでしょう。 これをやると男の子はみんなすぐに堕ちちゃうのよ……」 必死で歯を食いしばっても、押し寄せる優しい快感に脱力させられてしまう。 (このまま続けられたら俺は……!) 下半身が熱くなって、頭の中が真っ白になりかけるとミウは責め手を止める。 「うぐっ……」 そして再び俺をネットリと責め始める。数回その繰り返しをされると、もはや歯を食いしばることさえ出来なくなってきた。 「イく直前まで高めたら、こうやってイジワルしちゃうの…… 泣きそうになっても続けてあげる。 ユウマが素直な男の子になるまで、何度でも寸止めしてあげる」 「ふああぁぁっ、また!イ、イク……!!」 「うふふふ、また身体が硬くなってきたね。 じゃあさっきと同じように……」 俺が射精する手前で、愛撫が急に緩やかになる。 「あああぁぁっ、もう……!」 「うん?イかせてほしいんだ。 そうだよね、イきたくてしょうがないんだもんね?」 懇願する俺の眼を見つめながら、ミウは優しく微笑む。 (ああ、とうとうイかせてもらえるんだ……) ミウの微笑みを見てそう感じた俺は、身体を硬くしたまま次の刺激を待つ。 (なんで……このまま……?) 「ふふふっ♪」 彼女優しく微笑んだまま、責めの手を休めている。 「あはははっ、サキュバスの言葉なんて信じちゃダメだよ? ユウマ♪」 「えっ……?」 「だって、まだまだ元気いっぱいじゃん。もっと弱らせて、 何も考えられなくなってからじゃないとイかせてあげないよ」 「それに……私の胸でイっちゃったら、 男の子としては不満でしょう?」 「えっ!?」 「せっかくなら挿入したいでしょ……下のお・く・ち♪」 ミウは絶望する俺に向って、さらに誘惑を重ねてきた。下のお口って……もしかしてオマンコのこと? 「私だって早くユウマの童貞を奪ってあげたいんだよ? こんなに硬くて、可愛く震えてるおちんちんを見て興奮しない女の子なんていないよ?」 「このまま俺を犯すつもり……?」 気力を振り絞って尋ねると、ミウは首を横に振った。 「ユウマと結ばれるためには、 きちんと『契約』しないといけないの」 「契約……!?」 「サキュバスは誰でもかまわず犯してるわけじゃないんだよ。 ずっとずっと、ただ一人の男性を探し求めているの」 「……」 少しだけ寂しげなミウの表情を見て、不覚にも可愛いと思ってしまった。 「長い時間をかけて愛し続けられるような、素敵な人に出会いたいの。そう、ユウマみたいな可愛い男の子にね…………ふふふふ♪」 「だからね、私と甘い契約……してみない? ユウマのことを永遠に気持よくしてあげられるとおもうけど?」 サキュバスとはいえ、こんな美しい女性に求愛されたら断ることなどできない……。 俺はミウが口にした「ただ一人の男性」になりたいと願った。頭の片隅でそう考えた途端、身体中から彼女を拒む気持ちが薄れてゆく――。 「本当に契約してくれるのね?」 「ああ……」 彼女の問いかけに、熱に浮かされたように答える。甘えるような声で囁くミウの誘惑に、無意識に首を縦に振ってしまった。 「クスッ、もう堕ちちゃった……他愛ないものね。 いくら『勇者の血』が流れていても覚醒していなければ ただの男の子ってことなのかな」 「……」 「ふふっ、じゃあ確かめてあげる。キミの言葉が本当かどうか。 あ……むっ♪」 「はああぁぁぁっ!」 ミウは俺に見せつけるようにゆっくりと口を開け、快感に震えるペニスを軽く口に含んだ。 「ジュルッ、チュピッ、クチュウウ……チュッ♪」 「くあああぁ!ううっ、ひぅぅ!」 口の中に包み込まれた瞬間、圧倒的な快感が背筋を駆け抜けた。 絶妙な舌使いで亀頭だけを溶かすようなミウのフェラチオに、射精感が込み上げてくる。 さっきまでと違って俺の心が彼女を受け入れてしまったせいで、ものすごく感じやすくなっているようだ。 「はむっ……チュプ……キミって心が弱いんだね。 こんなに簡単にサキュバスの誘惑に負けちゃうなんて 想像してなかったわ」 「でも、念の為にしっかり心を折って…… ううん、粉々に砕いておかないとね」 「あとで反撃されたら面倒だし、 まずはこのまま一度搾っちゃおうか?」 ちゅぽんという音を立て、ペニスが再びミウの口元から開放された。 「はぁ、はぁ……気持ちいい……なんだこれは……」 「うふふ、もう限界だよね? ここ……さっきよりもパンパンに膨らんでるもん」 ツンツン♪ ミウの細い指が亀頭を軽く弾いた。 「んうっ!」 「クスクスッ、これぐらいの刺激も我慢出来ないなんて、 本当にユウマは困った男の子だね」 「くそっ、子供扱いしやがっ……あああぁぁ!」 今度は二本の指がカリ首を軽く締めあげた。情けないことにたったそれだけで俺は言葉を封じられてしまう。 「お姉さんが今からこのおちんちんをダメにしてあげる。 中にたっぷり詰まっている悪いおしっこを、 ぜ~んぶ抜き取ってあげるからね?」 ミウは妖しく微笑んでから、二本の指でペニスを捕獲したまま、ゆっくりと上下にこすり始めた。 「ああああああっ!」 彼女の二本指コキだけで、亀頭から新たな我慢汁がドロリと漏れだす。その粘液がミウの指に絡みつき、さらなる快感を引き出すことになる。 「私のおっぱいに挟まれながら、 ユウマはゆっくりと白いおしっこを搾られていくのよ?」 「うあぁ……」 単純な技のはずなのに気持よすぎて声が出せない。弱々しく首を横に振る俺を見ながら、彼女が諭すように言う。 「怖い?うふふ……大丈夫だよ。何もわからないうちに気持ちよくなって、おちんちんから力が抜けていっちゃうだけだから。お姉さんに任せなさい?」 ゆるゆると指先で俺を愛撫しながら、ミウが微笑む。完全に見下されているというのに、心のどこかで彼女にすべて委ねてしまいたいという気持ちが膨らんでくる。 「ほらいくよ……ギュウウウゥッ♪」 「ふあああああぁ!」 「んふふ……気持ちいいよねぇ? じゃあ今度はもう少し強く……ぎゅうううううぅぅっ♪」 「んああぁっ、で、出るううう!!」 「あらあら、もう我慢できないの? 困ったオチンチンでしゅね~~~」 「じゃあいっぱい出させてあげる。お姉さんが3つ数えたら、 ユウマは体中の力を抜いてドピュウってしちゃおうね?」 優しげな口調ではあるが有無を言わさぬミウの態度に俺の心が反発する。 「そんな……い、いやだ……ああぁぁ!」 これでイかされてしまったら俺は、きっと彼女でしかイけない身体にされてしまう。そんな恐怖心にも似た思いが俺を不安にさせる。 「本当はもうイきたくてイきたくてしょうがないくせに…… ふふっ、そのプライドも私にボロボロにされたいのかな?」 「だ、だれが……!」 「私に逆らえると思ってるの? もうユウマの心はイかされちゃってるのよ?」 「イく……もん……かあああぁぁ」 必死で首を振って抗うものの、気を抜いたら本当にその言葉通りになってしまいそうだった。 しかもこうしている間にもペニスの根本から熱いものが……ああぁぁ! 「じゃあトドメさしてあげるよ、ほらぁ♪」 「ああぁ……!」 「いくよ?……3……2……1……0…… 遠慮せずにサキュバスの誘惑に負けちゃいなさい」 クチュ……♪ ほんの少しだけミウの尻尾が裏筋部分を撫で上げた。いや、撫でると言うよりは舌先でペロリと…… 「ふふっ、想像しちゃったね? 淫らで、情けなくて、気持ちよくされちゃう自分の姿を……」 「あっあああぁぁ!出るうううぅうぅぅぅぅぅ~~!!!」 ドピュドピュドピュウウウウウウウウウ~~~!! 「あははははは、弱い弱い!ずいぶんいっぱい出しちゃったね、ユウマくん♪ 童貞おちんちんのくせに、こんなにいっぱい溜めてたんだ?」 「ううぅぅ……」 ミウの容赦無い言葉が俺の心を抉る。 「あ~あ、これじゃ誘惑に勝てるわけないよね? こんなおちんちんじゃあ、すぐにピュッピュしたくなっちゃうのが当たり前だもん」 「でもね、まだまだいっぱい出せるでしょ? だからお姉さんが応援してあげる。 もっともっと射精できるように、身体を開発してあげるからね」 そしてまた彼女の尻尾が俺の目の前で揺らめいた。 「ひっ……」 「んふふ♪ これからユウマくんはお姉さんに何をされちゃうんでしょう?」 本能的に危険を感じた俺が首を横に振ると、ミウはサディスティックな表情を浮かべた。 「今からね、おちんちんに注射しちゃうの。 ちょっと刺激的だけど、ちゃんと我慢するんだよ~?」 「い、いやだああああ!!」 「あぁん、そんなに怖がっちゃダ~メ! この尻尾を見て?素敵な形をしているでしょう?」 目の前で尻尾を振られても、俺の不安は消えない。その先端はまるで注射針のように細く変形していた。そして針の先からトロリとした雫が肌に落ちてきた。 「ここから甘いお薬が出るの。それをユウマくんのおちんちんに塗り塗りしてあげるだけだからね? すぐに気持ちよくなって、ピクピクしちゃうんだよ~?」 「やめて……ああぁぁ!」 だが俺の言葉に構わず、ミウの尻尾が亀頭に近づいてきた。ペニスの先端、鈴口に触れる数センチ前で尻尾の動きが止まった。 「お姉さんに任せて?」 「い、いやだ!」 尻尾がゆっくりと迫ってくる。しかし俺は逃げられない。 「ほらぁ、おちんちんのお口に、キスしちゃうよ……しちゃうよ~……うふふふ、はい……チュッ♪」 ビクッ! 「ふあああぁっ!」 ほんの少しだけ、おそらく1ミリ程度のはずだが確実にミウの尻尾が鈴口に突き刺さった。痛みはない……だが、確実に何かが俺の身体に入り込んできた。 「クスクスッ、今の声すごく可愛かったよ……ユウマくん♪ じゃあもう一度しようね……」 「ひっ、だめえええ!」 「今度は少し長いよ~?ほら、チュウウウウウ♪」 「ああぁぁ…………」 今度はさっきよりも深く尻尾が突き刺さる。そして妖しげな液体が俺の身体に注入されていく……。 (なん……だ、これ……あ……) 身体がすぐに火照り始める。心臓の鼓動が激しくなって、呼吸も荒くなってきた。 さらに頭もぼんやりとして、思考能力が鈍ってきた。 「あははっ、お薬がどんどん染みこんでいくでしょう? これでユウマくんのおちんちんは、さっきよりも敏感になっちゃいましたー」 完全に子供扱いされた恥ずかしさで頭が真っ白になる。それなのに身体は感じ続けたままだ。 「じゃあこういうのはどうかな?ふうううう~~~」 ミウがガッチリと下半身を抱え込み、亀頭めがけて息を吹きつけてきた。 「ほら、もっと……ふううううう~~」 「あはああぁぁ!」 「もう一度、ふううううう~~……どう?気持ちいいでしょう」 そよ風が当たった程度だというのに、身体中がくすぐられたみたいに感じる。 「そろそろお薬の効果が現れてくるはずよ……ぼうや♪」 「ふあ……」 さっきよりも頭がぼんやりして、目の前のお姉さんに逆らえない気持ちになってきた……。 僕のおちんちんが大きくなって、お姉さんに……! 「直接触られてないのに恥ずかしいね? おちんちんどんどん大きくなって、恥ずかしくなって、 ユウマくんはお姉さんに食べられちゃうんだよ~」 「ああぁ!食べられちゃう……」 お姉さんに……おかしくされちゃう……! それに頭の中がフワフワして、なんだか恥ずかしい。 「うふふふ、お姉さんのおっぱいでモグモグされたり…… あとは女の子の一番大事なところでチューチューされちゃうんだよ」 「やめて……!」 「ユウマくんは気持ちよくなりすぎちゃって、 何も考えられ無くなっちゃうの。そう、こんな感じかしら……?」 お姉さんの手がおちんちんをふんわりと握った。 「うっ、わああぁぁ!」 「どう?お姉さんの手は気持ちいい?」 「う、うん!すごくきもちいいぃぃ……」 「良かったね、ユウマくん」 すごく気持ちよくって、思わず大きな声が出ちゃう……。それでもお姉さんはおちんちんを離さずに笑ってる! 「あ……あ……ぁぁ!」 「おちんちんを柔らかく握られて、 クニュクニュされながら大事に大事に撫で撫でされちゃうの……」 「うっ、うっ、うあぁ……!!」 「ふふふふふ、気持よすぎて死んじゃう?死んじゃいそう?」 「もうやめて! おかしくなっちゃう……ああぁ、やめてええ!」 「じゃあ、もっとおかしくなっちゃお? お姉さんの尻尾で気持ちよくなろうね…………えいっ!」 「あぁっ、今度は……なんかお尻に入ってきた~~~!」 「んふっ、痛かった? ごめんね。でもね、おしりの穴がだいぶ柔らかくなってたから、 思わずお姉さん入れちゃったの」 「ユウマくんの処女、もーらいっ♪ふふっ、うふふふふふ」 「う、うぐっ……!」 痛みよりも、なにか大事なものを奪われたっていう気持ちがいっぱいで涙が溢れてくる。それでもお姉さんはおちんちんを離してくれない……。 「あとでちゃんと童貞も奪ってあげるから、安心して? その前に、おしりの中も気持ちよくしちゃおうね。 いくよ……んっ、んん~~~!!」 「あああっ、熱い~~、お尻の中が!中があああぁ!?」 「くすっ、すごい声ね。 体中ピーンとしちゃうほど気持ちよくなってくれたんだぁ~♪」 「あ~~~っ!!」 恥ずかしくて、それと同じくらい気持ちよくて……お姉さんの顔が見れない。 お尻の中で何かが動いて、お腹の中をヌルヌル動いてる。それがすごく熱くって、トントントンってされてる……! 「お腹の中が焼けちゃうみたい? うふふ、そうね……焼けちゃうかも」 「気持よすぎて体中が熱くなって、ユウマくんの気持ちがドロドロに溶かされちゃってるんだから……」 「そんなのいやあああぁぁぁ!」 「嫌がってもダメ。身体の中から溶かしてあげる………… もう一度行くよ?」 「あ、ああっ」 お姉さんの尻尾が身体の中で暴れてる。いろんなところを突っつかれて、熱いお汁が注がれてる……! 「ほら、ちゅううう~~~~♪」 「――っ!!」 またお尻の奥が熱くなって、目の前が真っ白になって―― 「んあああぁ、やめろおおお!!」 まるで夢から醒めたように、俺は絶叫した。しかしあれは夢じゃない。 ほんの1分足らずだと思うが、確実にミウに犯されていた。 「あら、今ので正気に戻っちゃった?でも手遅れだよ…… ユウマの身体、全部私のいいなりにしてあげる」 ぼんやりととろけた思考は元に戻せたが、身体の興奮までは鎮まらない。 そしてミウを見つめていると心が熱くなる。逆に魅力的な瞳に見つめられると動けなくなる。 いまさらだが俺は恐怖を感じ始めていた。ミウが本気になったら、俺の身体も心も真っ白にされてしまうような気がして――。 「このままの状態でおっぱいを動かしたらどうなると思う?」 「えっ……待て!」 「やめろと言われてやめるわけないじゃない。きゃははっ♪ まずはユウマのお尻の中、舐め回してあげる……」 ミウの言葉通り、俺の身体に差し込まれた尻尾が蠢き始めた。 「ううううぅ、ああぁっ!」 「ははぁん、ここなんだ? このあたりをペロペロされると弱くなっちゃうんだ?」 体の中の一部分をツンツンされただけで、頭の先まで慣れない痺れに襲われる。 普段は指を入れることすらない部分を、サキュバスの尾が容赦なく蹂躙する。 快感と苦悶の入り混じった表情を浮かべる俺を見て、ミウがニヤニヤと微笑む。 「ちょっと可哀想になっちゃったからやめてあげる。 その代わり、おっぱいで責めるね?」 「ああぁっ、今度はこっち……いいいいっ!」 フニュッ……クニュ……チュクッ♪ 柔らかなバストがペニスを締め付ける。さっきまでは耐えることができた刺激なのに、今はもう我慢できない。 このまま全てを吐き出してしまいたい……! 「なかなか頑張るね…… じゃあやっぱりお尻ペロペロしないとだめかなぁ」 「だ、だめっ!それはやめてくれ!!」 「うん?なぁに?ちゃんと言ってくれないとわかんないよ」 ミウはわざとらしく手を耳に当ててみせた。 「もっとして欲しいの?違う……?ああ、そうか! わかったよ、ユウマ…………こうして欲しかったんでしょう?」 「あ……あ……!」 ミウは俺の目の前でコロンと横になると、誘うように自らの秘所を指先で広げた。さらに空いている手の平で俺の股間を撫で回してきた。 「あ……ううぅ……くそ……!」 「クスクスッ、と~~っても気持ちいいんでしょ? こんなに大きくしちゃって……もう必死だもんね」 ジーンと痺れるような快感が俺の下半身全体を包み込む。ただ適当に手のひらでいじられているだけだというのに……耐え切れない! 「ああぁ、ミウ……ミウ……ゥゥ!うああぁ!」 「あぁんっ、おねだりしている男の子って可愛くって、 私もどんどん濡れてきちゃう。そんなに抱きしめて欲しいの?」 「!!」 ミウが俺を抱きしめる……その言葉だけで、ペニスが更に硬く張り詰めてしまう。 彼女の優しい微笑みを見ているだけでも今の俺にとってはかなり厳しい。気を抜いたらこのまま全てを委ねてしまいそうになるほど……。 「うふふ……ユウマの震えてる下半身を、 私の翼で抱きしめながら犯してあげようか?」 「やめろ……頼む、何も言うな」 「動けない状態でキュウキュウに搾られながら、 何度も何度も抱かれちゃうんだよ……」 「やめろおおおおおおおおおおおおおおお!!」 だが耳をふさいでみても無駄だった。 (ユウマ、もう私からは逃げられないのよ? そういうふうに刷り込んであげたんだから) 「俺の心に直接……声が!?」 (そんなことより、かわいい童貞君のおちんちんだから、 ゆっくり入れてあげるね。途中で出しちゃだめだよ?) ミウがこちらを見つめながら人差し指をクイクイと折り曲げると、俺の両腕が脱力した。 「あああぁぁ!身体が勝手に」 そして自ら腰を前に突き出し、ミウの膣口に亀頭をあてがう。 (バカな!操られている……) 「敏感な先っぽを、ネットリとキスしてから導いてあげる。 ほら……見ててね……ズブズブ埋まっていくでしょ……気持ちいい?」 「はあぁぁっ!勝手に入っていく! うあ、ああぁ!止まらない!?」 「当然でしょ?ふふふ…… ちゃんとミウのことだけ考えられるようにしてあげる………… んん~~♪」 ミウはそっと手を差し出して、俺の頬を撫でながら引き寄せると、そのまま唇を重ねてきた。 (気が……遠くなって……気持ちいい……) 柔らかな唇がゆるゆると蠢き、舌先が口内に侵入してくる。あっという間にミウの舌先が俺の意識を奪っていく……。 「んふふふ……♪ユウマの童貞、も~らい♪ キスされながらサキュバスに犯されちゃうなんて……幸せものだね。もう一度キスしちゃうよぉ……」 「んんんんんんー!!」 「ふふっ、ついに全部入っちゃったね…… ユウマの童貞おちんちん、硬くて甘くて美味しいよ~。 うふふふふふ♪」 「うっ、ウニュウニュ動いて…… あぁぁ、すごい、これすごいいぃぃぃ!!」 「私の中でピクンピクンしながら『僕をもっといじめて~』 って嬉し泣きしてる。そのリクエストには答えてあげるよ…… もっといっぱい泣いていいからね?」 ミウの言葉を聴きながら、俺はあまりの気持ちよさに下半身が麻痺してしまいそうだった。 膣内に閉じ込められたペニスが俺に訴えかける。このとろけるような気持ち良さの中で果てたい。何度も精を吐き出して、彼女を満足させたい、と。 (体の隅々までミウに犯されて……動けない!) 「もうすっかりガチガチに硬くなってるけど、 このまま私に溶けていくみたいでしょう?」 「実際にユウマのおちんちんも心も、 私の〈膣内〉《なか》でどんどん溶け始めてるよ」 「そんな……!」 「キミの身体が液体になって、 全部私に吸い取られちゃうイメージ……してごらんなさい。 すごく気持ち良さそうでしょう?」 「ミウに……溶ける……」 「そう……トロトロに溶けて、 気持ちよくなってから、ユウマは私のものになるのよ……」 「ミウのものになる……」 「うん、そうよ。サキュバスの〈膣内〉《なか》は天国でしょう? もっと抱きしめてあげる……」 うわ言のように自分の言葉をリピートする俺の身体を、ミウが力強く抱きしめた。 「ほら、もう逃げられない……私の身体からも、 私の心からも……ユウマはもう逃げられ無くなっちゃった」 「ああぁ……動けないよぉ……!」 「どんどん手足が重くなるね? このままだともう逃げられないね?」 「逃げられない……無理……」 「クスッ……そろそろひとつになろう?ユウマ」 ミウの長い脚がそっと広がって、俺の脚に絡みつく。それと同時に彼女の翼が俺を包み込む。 (逃げられない……このまま搾られちゃう……!) 女郎蜘蛛に捕まった獲物のように、この状態から俺が逃れるすべは無さそうだ。そしてゆっくりとミウが腰を揺らし始めた。 「はぁぁぁんっ、すごい……ユウマの身体、すごくいいよぉぉ!!」 「あ……ああぁぁ……!」 ゆるやかな動きはすぐに激しく変化した。 腰から下だけをクネクネと動かしながら、ミウは俺の表情を見つめたまま膣内をヤワヤワと締め付けはじめた。 (こ、これすごい……!?腰がもう……ああ……ああぁぁ!) 下半身を軸に身体が溶けていく……ほぐされてバラバラにされていく! サキュバスに抱かれ、その魔性の膣内で弄ばれるということがこんなにも甘美な苦痛を伴なうとは思っていなかった。 「はぁ、はぁ……じゃあそろそろ……契約しようね? 私とユウマだけの甘い契約……うっ、ああぁぁん!」 「ああぁ……ミウ!ミウうぅぅ!!」 「クスッ、もうすっかり虜になってる………… ユウマ、私の後に続けて言って?」 彼女の微笑みがこの上なくセクシーで、可愛く見える。俺はもう何も考えられなくなって、ミウに向かって頷いた。 そして…… 「僕は……」 「あ、ああぁ……ぼく……は……」 「ミウの心に……」 「み、ミウのここ……ろに……ぃ……いいっ!」 「自分の魂を重ね……」 「はぁ、はぁああ……自分……のたましい……を……かさねえええ!」 「永遠に委ねます……」 「永遠に……ゆ、ゆだねますううううううう!!」 誓いの言葉が途切れた瞬間、視界が一面ピンク色に染まった! 「うん、よくできました。これでもうキミは、 永遠に私のものよ……うふふふふふふ♪」 「じゃあ思いっきりイかせてあげる。 これがサキュバスの本気だよ」 ミウの言葉につられて膣内がクチュッ……という音を立てた。 「ああぁぁ、すごい……吸い付いてるううう!」 まるで俺のペニスに合わせて、膣内の形が変化したように急激に快感が跳ね上がっていく。 軽く腰を振られる度にカリ首がめくられ、裏筋をなでられ、亀頭全体にウェーブがかかる! 「そうよ。本気で吸い尽くしてあげる。 サキュバスの膣内で、永遠にユウマのおちんちんを 可愛がってあげる」 「ああぁぁぁ、も、もう出るっ!イくっ、イ……!!」 「いいよぉ……ほら、思い切りイッちゃいなさい!!」 ドッピュウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!! 俺は言葉に出せないほどの快感に包まれながら盛大に射精した。ガクガク震える俺の体をミウがしっかりと抱きかかえる。 そして脈打ちが終わり、棹の中に残った精液を全て吸い出された俺は、彼女の身体の上で糸が切れた人形のように脱力してしまった。 「気持ちいい……これ、すご……いいよぉ……ミウ……」 「クスッ、熱いのい~っぱいだしたね!じゃあお返し♪ サキュバスの愛情ジュースを、ユウマの身体に注いであげるね?」 「えっ?」 ミウの意図がわからず、思わず問い返した俺だったが……すぐにその言葉の意味を理解することになる。 ドプッ、ドプ……! 「な、あああぁ!身体が……なん……で……」 体の中心が熱い。胃の中に熱湯を注がれたみたいに異常な熱が広がっていく! 「ミウ、これは……」 「ユウマの大好きなお尻愛撫、尻尾の先からサキュバスのエキスを出してるのよ。気持ちいいでしょ?ふふふふふ……」 ペニスに直接注入されたのと同じ、媚薬に似た効果を持つ妖しげな液体が俺の身体に注がれていく……。 「や、やめ……んぐうううっ!?」 甘い唇に言葉を遮られ、身体中から力が抜け落ちていく。 「いちいち騒いじゃダメ。 そのお口、塞いであげる……んっ、ちゅっ♪……ピチュッ♪」 「んん……」 「ねえ、ユウマ?ちゃんと私の言うことを聞かなきゃだめだよ。 その身体も心も、全部私のものなんだから」 「たとえお尻の中にあつ~いジュースを注がれても、 我慢しなきゃダメ。こんな風に……」 ドプドプドプッ!! 「う…………ぁ…………!!!」 「んふふふふ、よく我慢できたじゃない! それとも病みつきになっちゃったのかな?」 違うっ!あまりにも強烈な刺激に、言葉も出なくなっただけで……!! それに意識がまた……ぼんやりしてきて、ミウのことだけしか思い浮かばなくなってきた……。 そうだ、僕はこのお姉ちゃんに……いっぱい愛されて、優しくされたいんだ。 恥ずかしいけどおちんちんを撫で撫でされて気持ちよくなりたい……。 「お姉ちゃん……あぁっ……」 「あはっ、だいぶ壊れてきたね。 またかわいいユウマくんに逆戻りしちゃった!」」 「もっとおちんちん優しくしてぇぇ……!」 「ほら、硬くなったオチンチンからミルクを搾っちゃいましゅよ~?お姉さんの柔らかオマンコで気持よくなろうね……?」 「う、うん……」 クチュッ、クチュッ、クチュッ、クチュッ!! 「うふふふ、もっともっと硬くなるかな? 優しくクチュクチュにされると、 どんどん身体があったかくなってきちゃうよね?」 「はあぁぁ……なんか出てきちゃうよぉ……」 「うんうん、ちゃんと出そうね? ほら、キュウウウウウウウウウウ♪」 お姉ちゃんのアソコが、少しだけおちんちんを強く締め付けた時、身体中がカーって熱くなって、僕は頭の中が真っ白になっちゃって――。 「はい、いい子♪ドクドク出てきたね…… うふふふふ。もっと美味しいのを出してくれるかな? このままもう一回出せるよね?」 「ああ、お姉ちゃん!すごくくすぐったい……」 「そう?じゃあ先っぽだけクニュクニュしようね。 ほら、こうやって……んふふふ、おいしくて甘~いユウマくんの ミルクが漏れてきちゃうよ…………?」 「ああぁぁ……恥ずかしいよぉ……!」 お姉ちゃんの中におちんちんを入れたまま、何度も何度も優しくドピュッてさせられたら、だんだん眠くなってきちゃって…………。 すっかり従順になったユウマの背中を、ミウが優しく撫で上げる。 彼は十数回の射精を経て、ミウの身体の上で気を失ってしまった。 「あ~ぁ、壊れちゃった。でもすぐに直してあげるからね」 「ふ……ああぁぁ!」 アナルに突き刺したままの尾の先から、精力剤にもなる淫毒を注ぎ込むと、ユウマの身体がビクンと跳ね上がった。 「ほら、これで元通り。いっぱい射精できるよ♪ ゆっくり時間をかけて、また壊してあげる。 壊れたらすぐに直してあげる」 「キミの身体にサキュバスのエキスがしっかり染みこむまで、 ずっとずっと繰り返しだよ……」 「あの忌々しい『勇者の血』もこれでおしまい。 全部私が貰ってあげるから、永遠に愛しあいましょうね? ユウマ……」 ――それから数日間、ミウの甘い調教は続いた。 ユウマはミウの虜となり、永遠に彼女に忠誠を誓うインキュバスに成り下がったのだった。 (これは本気なのか……?) 俺の目に前にいるサキュバスは、真剣な眼差しでこちらを見つめている。物憂げな真っ赤な瞳が、静かな湖の水面のように揺れる。 「私、本気よ?キミが欲しいの………… だからユウマ、私に身を任せて?」 ミウが軽く髪をかきあげると、甘い香りが漂ってきた。視界を包むピンク色が更に強くなる。 「私と契約して、私のものになってくれれば…… 毎日この身体を好きにしていいのよ?」 こちらを見つめたまま、ミウが軽く胸を揺らしてみせた。フワフワのバストが容赦なくペニスにまとわりついてくる。 じれったい快感で下半身がとろけてしまいそうな俺に向かって、ミウはさらに言葉を続ける。 「ううん、違う。私が奉仕してあげる。 ユウマが満足するまで毎日丁寧に搾り取ってあげる……」 「毎日…………!」 こんな甘い責めを毎日施されたら、きっと俺は彼女の虜になってしまう。 膣内に挿入するまでもなく、すでに射精してしまいそうなペニスを見ていればわかる。 (この状態、ミウに溺れちゃダメだ……!) 俺は甘美な誘惑を全力で振り切ろうとした。 「くっ……誰がそんな誘いに乗るものか!」 歯を食いしばってミウを睨みつけた途端、目の前を覆っていたピンク色の靄が消えてゆく……。 「うふっ、すごいね……まだ魅了の魔法に抗えるなんて」 「今のはかなり本気だったのに、ちょっとショックだなぁ」 (やはり今のは魔法だったのか……!?) 金縛りが解けていくように、頭の中もクリアになってゆく。しかしまだ身体は動かせない。ペニスもミウの胸に捕まったままだ。 「離せ…………!」 「ダメよ。ここからは、心と身体の両方を同時に責めてあげる」 ミウが指をぱちんと鳴らすと、再び周囲にピンク色の靄がかかってしまった。 しかもさっきよりも強力な力で抑えこまれているのを感じる。 「ふふふふ……どうかな?かなり動きづらいよね?」 「ぐううぅ……!」 「このままキミをいじめてあげる。 童貞君には絶対我慢出来ない気持ち良さを たっぷり身体に刻んであげるの」 「でもその前に下準備をしなくちゃね……うふふふふ♪」 シュルル……………… 「んうあっ!」 急にペニスに何かが巻き付いた。 視線を落とすと、ハートの形をしたミウの尾が亀頭を包み込んでいた。 「はい、私の可愛いしっぽ♪ ユウマはまたこの子に気持よくされちゃうんだよ~?」 「なにを……!」 「おっぱいやオマンコでいっぱいチュッチュされる前に、 少し我慢強くしてあげるわ」 目の前ではミウの尾がゆらゆらと揺れている。そして尾の先端から透明なしずくがポタポタと垂れ始めた。 さらに先端が細くなり、どんどん鋭くなっていく。 「まさか――!」 「そう、正解。おちんちんにサキュバスの毒を優しく注射してあげる。さっきと同じで痛みはないから安心して?」 「やめっ、やめろおおおおおお!」 「はい、いきましゅよ~。ちゅううううう♪」 首を振って拒絶する俺を無視して、ミウの尾の先端が鈴口に近づいてきた。 そして何度かツンツンと俺を突いてから妖しげな液体を注入してきた。 「あああぁぁっ、うわああああああああ!!」 痛みはない。だが亀頭全体に広がる急激な熱が俺を悶えさせる。 「きゃははっ、すごい声だね! 聴いてるだけでゾクゾクしてきちゃう!!」 「溶けるッ!もうやめろおおおおおおぉぉ!!」 「ねえ見て……ユウマのおちんちん、 ピンク色になってヒクヒクしてる。 これからどんどん身体が熱くなってくるよ……?」 「大事な精液が出てくる亀さんを、 もっともっとパンパンにしちゃうからね……?」 すでにもう熱い!体中で一番感じやすい部分にサキュバスの毒が塗りつけられたのだ。 普段は排出するだけの穴に、とろみがついた淫らな毒液が注入されていく。 体の芯が溶かされていくような感覚に、俺は必死で耐え忍ぶ。 「もう効いてきたかな?ふふふふふふふ……」 「うがあっ、ああぁ……腰があああぁぁ!」 「そんなウットリした目で見つめられると恥ずかしいよ。 さっきよりも私が欲しくなってきたんじゃない?」 「誰がお前なんかに……くそっ、うああぁ……ああっ!」 ペチュッ♪ 亀頭に触れていたミウの尾が、ネットリと円を描いた。それは反抗する俺の言葉を遮るための愛撫だった。 「私の唇やおっぱい、それに尻尾の感触、たまらないでしょ…… でもね、ユウマはもっと気持ちよくされちゃうんだよ? このあと、私のあそこでモグモグされちゃうの」 「はじめてのセックスがサキュバスとのエッチなんて、 普通の人間なら廃人確定だけど、勇者の末裔であるキミなら大丈夫だよね?」 「あがああぁっ、あああぁぁ!」 尻尾をくねらせながら、ミウは俺の心と身体の両方を愛撫してくる。 「私の身体に狂っちゃっていいんだよ。 身体も心も全部染めてあげる。 サキュバスのピンク色の世界に、ユウマを招待してあげる」 「いやだあああああぁぁぁぁ!」 「嫌がってるふりしてもダメ。ユウマの身体はもうすぐ私のもの。 真っ白な美味しいミルクをいっぱい搾り取って、 全部私が飲んであげるんだから」 「くそっ、ああぁぁ……っ!!」 「こんなに大きくしちゃって………… そろそろ頂いてもいいみたいね。 女の子の大事なところ、ユウマだけに見せてあげる♪」 ミウは俺の前に仰向けになり、恥ずかしそうに足を開いてみせた。 「やだ……エッチ!そんなに見つめないで……」 「……!」 「クスクスッ♪早くこの中に入れてみたいよね……?」 優しげなミウの言葉に、無意識で俺はうなづいてしまった。眼の前に広がるサーモンピンクの秘肉はそれほどまでに魅力的だった。 あの柔らかそうな膣口に、すっかり硬くなった俺のものを突き刺してみたい。早く……一刻も早く……! 「いいこと教えてあげようか?私ね、ニンゲンの男の子をここに入れるのは初めてなんだよ?いつも手やお口や尻尾で全部搾り取っちゃうから、使う必要がないの」 「だからユウマはサキュバスの処女オマンコをあじわっちゃうの。とろとろになった私のあそこを、独り占めにできるんだよ……どう?興奮してきたでしょ」 俺がミウの初めて……? 「ああ、でもね……初めてだからと言って、ニンゲンの処女みたいに血が出たりはしないから。逆に、入れた瞬間ユウマのことをチューチュー吸いつくしちゃうかもしれないね」 「吸い尽く……!」 「ふふっ、本当だよ?だって制御できないもん。 こんなに大きくて太いのが入ってきたら、 私のオマンコだって夢中になっちゃうかも」 ミウがそっと指さした場所に目をやる。それは膣内の入り口……すでに充分潤っていて、物欲しげにヒクヒクとわなないていた。 「ねえユウマ、期待していいよ。私、こんなにドキドキしてるんだもん。だからね……そろそろ二人で気持よくなっちゃお?」 「うっ!」 ミウの瞳がキラリと光った瞬間、俺の身体が勝手に動き出す。左手でペニスを握り、ミウの入り口に固定した。 ピチャッ……! 「うあっ!」 「ひゃっ、ん、んふっ……おちんちん、すごく熱い……ね……?」 自分から触れたとはいえ、ミウの膣口の感触は心地よすぎた。まさに秘密の花園というにふさわしい甘い調べ……。 「私の入り口も喜んじゃってる……こんなにカチカチで、 震えてるユウマを味わえるなんて……」 ミウは小刻みに腰を何度は前後に揺さぶった。 「はぁぁん!おちんちんが、私にキスして…… ふふ♪本格的にジュプジュプしてあげるまえに、 たっぷり濡らしてあげる」 クリュッ、クリュッ、ピチャッ、ジュル…… チュプチュチュプチュプ…… 花びらのように美しいミウの秘肉がペニスの先端を優しく弄ぶ様子は、俺が今まで見てきたどんなエロシーンよりも卑猥だった。 優しく揺れるサキュバスのオマンコに、俺自身を思う存分に突き刺したい衝動は一秒ごとに膨らみ続ける。 そして俺にはその魅力に対抗出来るだけの経験もテクニックもない……。 「私のあそこから出るよだれで、ユウマの先っぽをコーティングしちゃう……はぅっ、ああぁぁん!」 彼女の細い指がクリトリスをいじると、ドロリとした粘液が秘所から吹き出した。 (ああぁぁ、俺のあそこに絡み付いてくる……!) 「あっ、あん……聴こえる?クチュクチュクチュ……って、おちんちんが泣いてるよ? 嬉しそうに涙を流してトロトロになってるぅ……!」 「や、やめろっ!もうやめてくれええええ!」 「ううん、やめないよ。このままスリスリしながら、一度〈射精〉《だ》しちゃう? 私の下のお口で恥ずかしいお漏らししてみる?」 「私はそれでもいいんだよ?ユウマの美味しい精液がピュルピュル出てきたら、全部オマンコで舐めとってあげる。感じやすい敏感オチンポに何度も優しくキスしてあげるよ」 ミウの顔を見ると、すっかり興奮しきっていた。その表情がとても可愛くて、しかもそんな魅力的な女の子と身体が触れ合っていると思うと……。 「あああぁぁ、鎮まれ!このっ……」 「ふふふっ、今の言葉に反応しちゃった? ユウマの身体、すごくわかりやすいね。可愛くって最高だよ」 「だからもっと感じやすくしてあげる。私でしか感じられない素敵な男の子にしてあげる。私専用のおちんちん、育ててあげたいな……」 「うあああぁぁ……」 駄目だ!もう俺はミウのことしか考えられない。こんなに優しくて甘くて、可愛らしい……これがサキュバスの本気!? 「ほら、おいで……ユウマ。私の身体に溺れなさい」 「なっ……!?」 「あれ~?身体が勝手に動いちゃうねぇ?不思議でしょ……?」 俺の意志に関係なく、体が前のめりになった。 (こんなバカなことって……まさか……!) 「ふふっ、正解♪でもね、私が操っているというのもあるけど半分はユウマの意思だよ。おちんちんを私に擦りつけて、どんどん気持ちよくなりたいっていう男の子の欲望……」 (違う!断じて違うッ!!) しかし俺の身体は止まらない。快楽の呪縛から抜け出せなず、目の前の極上のサキュバスに、自ら精を捧げようとしている……! 「人間の本能、男としては当たり前すぎる衝動を、やりたいざかりのキミが抑えられるわけないじゃない。 だからどんどん身体に快感が染み付いていくの」 「……ユウマの身体、もうすぐ私の言いなりよ? そのうち私が何も言わなくても、 ユウマは自分から私を求めるようになっちゃうのよ……?」 悔しいが、ミウの言葉は今の俺の状況を性格に見抜いていた。全く抵抗する気が起きない……このままミウにすべてを委ねたい。 底知れぬ不安と、ミウへの服従に揺れ動く俺に対してとどめを刺すように、ミウは優しく告げる……。 「ねえユウマ……キスしよう?お願い……」 「……」 俺の目に映るのはミウの唇。桃色の天国へ誘う柔らかくて、抗えぬ魔性の罠……。 「いいよね?私、キミが欲しいの……」 小さく笑みを浮かべたミウの唇が俺にそっとかぶさ……った……。 「んちゅっ♪……おいしい……さっきよりもキスが上手になってるし、私のことを思ってくれてるみたい…… はむっ、ジュプッ……私も、夢中になっちゃう……」 「そ、それって……本気なのか」 「こういう時は本気だよ。 私だって男の子に抱かれて気持ちよくなってるんだもん」 「だからいっぱいお返ししてあげたいの。ユウマの心まで、私の気持ちを忍び込ませて気持よくしてあげる……」 そしてもう一度唇が重なった瞬間、俺の中で何かが弾けた。 「ほら、さっきよりも心が〈剥〉《む》けてきた…… 今度は身体を剥いてあげる」 「っ!!」 ミウが俺の中に入ってくる。俺の心を優しく撫で回してくる。 ジワジワと彼女に支配されていくのを肌で感じる……。だかそれは決して不愉快なものではなく、むしろ―― 「気持ちいいよね?オマンコの中でおちんちんを可愛がりながら、甘い言葉をかけ続けてあげれば、どんな男の子でもこのとおり……」 「ん……あぁ……」 「素直にされた心は、快感を受け入れるしかないんだよ? 最後にむき出しになったユウマの心を私が全部もらってあげる …………って、もう聴こえてないかな?」 恍惚とした気分で、俺は彼女の声を聞かされていた。気持ちがすっかりほぐされ、すべてをミウに任せる気持ちにさせられてしまった。 「くあ……あああぁぁ……」 無意識に身体がブルッと震え出す。早くイかせてほしい。身体より先に心がイかされてしまったようだ。 「震えが大きくなってきたね、ユウマ。 一度の射精でいっぱい気持ちよくなれるように、 もう少しじらしてあげる」 ミウの尻尾がゆっくりと蠢いて、俺の根本に巻き付こうとしていた。 「ちょっとだけ痛いよ?ほら、きゅうううう~~~♪」 「うくっ……」 軽い痛みが走ったような気がしたが、それほど気にならない。 「ごめんね、ユウマ。でもこれで遠慮無く……」 ミウは俺に下敷きになりながらも、軽く腰を突き上げた。 「あっ……ああああぁぁぁ~~~~~!!」 この時ばかりは俺も声を上げた。体中の細胞が歓喜に打ち震えた。ヌルリとしたものにペニスが包み込まれた。 「うふっ♪ユウマの童貞、もーらいっ。 はじめてをサキュバスに奪われた感想はいかが?」 「あ……あ……!」 それは言葉にすることができない心地よさだった。俺は彼女に覆いかぶさりながら、体中のすべてがミウに支配された感覚に陥っていた。 呼吸も、鼓動も、ペニスの律動も……すべてが彼女に繋がっている。 ミウの膣内に導かれた俺自身は、優しく包まれたまま歓迎の愛撫を受け続けていた。 「根本を締め付けてなかったら、このままイっちゃってたよね……」 ペニスをキュウキュウと締め付けながら、ミウは楽しそうに笑っている。 「ミウ、お前……さっき初めてだって言ってたのに……!」 「私も処女喪失って言うことにはなるけど、 全然平気だよ。 入れる前にユウマのことを徹底的に濡らしておいたからね」 俺の下で余裕たっぷりに微笑む様子は、まさにサキュバスそのものだった。 童貞を喪失した俺と同じく、ミウだって処女を喪失したはずなのに……この違いはなんだろうか。 「このまま動いてあげる……んっ、んっ、あんっ♪ 気持ち……いいよ……!」 「ユウマのコリコリが、〈膣内〉《なか》で引っかかっていい感じ…… おちんちんもすっごく喜んでくれてるみたい……うふふふ」 「くそ……俺だって……あああああああああぁぁっ!」 腰をひこうとした瞬間、ペニスが膣の中で甘く締め付けられた。 「いっぱい喜ばせてあげる。 私の中で、ユウマの硬いところを甘噛みしてあげるよ」 クニュッ、クニュッ、チュクッ、クチュルッ♪ 「ああぁ、ひっ、やめ……ああぁぁ~~~!!」 「ほらぁ、モグモグされてるでしょ? サキュバスは生まれつき膣内を自由に動かせるんだよ」 「ユウマ、想像して? キミの童貞オチンチンがサキュバスのオマンコに キスされてる様子を……」 そっと顔を寄せてくるミウの言葉を聴きながら、俺はペニスが彼女の中で蹂躙されていることを実感した。 気持よすぎて声も出せないまま、どんどん彼女に包み込まれていく……。 「パンパンにされたカリの先っぽを、 子宮のお口でチュルチュルされてるのを感じるでしょう?」 「ああぁ、吸われてる……うああぁ……!」 「ユウマの大事な赤ちゃんの元を、 このまま私に吸い取られてみたくない?」 「い、いやだ……そんなのだめだよ……!」 男として、女に一方的に搾られる訳にはいかない。少しでもミウを感じさせないと、この俺の尊厳が……! 「そんなに首を振ってもダメ。 おちんちんさっきよりも硬いよ?それに、 いっぱい射精してくれたら、私だって感じちゃうかも……」 「えっ……」 「真っ白で熱いミルクが、私の中で弾けて、 中でドピュッてされたら、きっと我慢出来ないよ……! だからいっぱい出して、ユウマ!全部私が吸い取ってあげる」 「しかし……!」 ためらう俺を畳み掛けるように、ミウは熱い視線で俺を見つめてきた。 「ユウマのこと、本気で愛してあげる! だから私と契約して、私のものになって?」 彼女の勢いに押されるように、俺は静かに頷いた。それに体の奥に火がついたみたいに熱い……。 「俺はどうすれば……」 「簡単よ。 『僕は今からミウのものになります』って宣言してから、 口づけしてくれればいいの」 「くちづけ……?」 「そうだよ。ほら……ユウマの大好きな唇はここよ…………」 そんな簡単なことで今よりも気持ちよくなれるなら――。 俺がミウに顔を寄せると、彼女は静かな笑みを浮かべた。 「やっぱりニンゲンって弱すぎる……」 「!?」 ミウが表情を変えずに口にした言葉が、俺の頭の中にこだまする。そして快感に火照った俺の身体が急に落ち着いていくのを感じた。 「身体だって脆いし、心だって快感を与えれば すぐに屈してしまう。簡単なミッションだったわ……」 さっきよりもはっきりとミウの本心が聴こえた……いや、直接俺の心に伝わってきた! そうだ、こいつは突然ここにやってきて、過去の恨みから人間を滅ぼそうとするサキュバスなんだ。 こんな奴らの言いなりになるなんて耐えられない。そう強く思った瞬間、さっきまで見えない鎖に縛られていた心が自由になり身体も、指先も自由に動くようになっていた。 「……それがお前の本音か!」 「えっ!うそでしょう!?呪縛が勝手に解けるなんて……」 この時になって、やっとミウも俺が平常心を取り戻したことに気づいた。 「ミウ、お前たちは間違ってる……!」 そして俺はペニスを引き抜いて、深呼吸を一つしてからもう一度ミウの秘所へと突き刺した。 ズプウウウウウゥゥゥゥッ!! 「きゃああぁぁっ! どこにそんな力を隠していたっていうの……? 徹底的に骨抜きにしたはずなのに何故……」 「くっ……もっと深く突き刺してやる」 まるでドラキュラを倒すために杭を突き立てるかのように、俺はミウに向かってペニスを何度も突き刺した。 性欲の権化である彼女たちに有効な攻撃はこれしかない。理屈ではなく、身体がそう言っている。 「やだ……やめて! なんだか私の身体がどんどん動かなくなって!!」 「もう一度行くぞ!」 ズプッ、ジュブッ、ジュプウウ!! 「はあああぁぁぁぁんっ! ……まさか『覚醒』してしまったというの……?」 俺自身にもわからないが、ミウの口にした言葉が今の状況に一番しっくり来る。 さっきまでのモヤモヤした気持ちは薄れ、目の前にいるサキュバスを倒そうという荒々しい意思が俺の中に宿っているのは確かだ。 「早くイけ!」 俺は正常位の体勢のまま何度も腰を前後に振る。その回数が増える度、ミウの動きが弱々しくなっていく。 「いやあああぁぁ、さっきと全然……ちがう! 私が一方的に感じさせられちゃうよぉぉぉ…… いやああぁぁぁ……!!」 「気持ちいい……すごく身体が……しびれて…… ああぁぁぁん!もっといっぱい犯して~~~!」 「ああ、いいのぉ……すごくいいの! でも消されちゃう、私……ユウマにイかされたら…… はあぁぁぁんっ!」 ミウは歓喜の声を上げながらも、気になる台詞を口にした。 (消える?ミウが……??) 彼女の言葉の意味がわからない。消える?何故―― 『サキュバスとは性的なエネルギーを放出すると、 現世に留まれなくなる魔物である』 その疑問に、俺の身体に流れる「勇者の血」が答えた。 同時にこのままセックスを続ければ、俺がサキュバスを倒せることも理解した。 「……」 しばらく考えた後、俺はミウに対する腰振りを緩めた。 「あんっ、あんっ!あっ…………えっ?なぜ……」 呼吸を弾ませながら、ミウが俺を見つめている。俺もその赤い瞳を見つめ返す。 俺に魅了の魔法をかけながら、性的快感を与え、さらに契約で縛ろうとしたサキュバスのミウだが……このまま消し去ってやりたいほどの憎しみは感じていない。 「くそっ……」 「ちょっとユウマ……?」 「ミウ!お前は俺の『最初で最後の恋人』になってくれるんだろ?」 「あ、あれはユウマを堕落させるための嘘よ!」 「……じゃあ今からは嘘じゃなくなる」 彼女の言葉が終わる前に、俺はゆっくりと腰を揺らし始めた。 「えっ?それ、どういう……って、あっ! あああぁぁぁ!また……!!」 さっきまでの刺々しい気持ちも治まり、素直に心地よさを感じる。 「くぅ……ミウがイく瞬間に合わせて、俺も射精する。 そうすればミウは俺をイかせたことになるだろう?」 「あっ、ああぁぁ!……いったい、何を考えてるの、ユウマ……」 「俺がこのまま射精すれば、 ミウは任務失敗したことにならないだろ?」 「ええぇっ!?それは……そうだけど……」 「たとえ嘘だとしても、 俺の恋人になってくれるなんて口にした女の子を 粗末にできないよ」 「ユ、ユウマ……!」 「だからほら、一緒に…………!!」 「や、やだ……なんでこんなに優しく……あ、ああぁぁん!」 ミウは心なしか顔を赤くして、俺から視線を逸らした。そして数秒後、さっきよりも呼吸を荒くして俺にしがみついてきた。 「あんなこと、言われたら……本気で感じちゃうよ! ニンゲンなんかに、サキュバスの私が…… あっ、ああああぁぁぁぁ~~~~!」 「お、俺も……限界だ!」 「私の身体でイって、イって!イってええ!! あああああぁぁぁ~~~!」 さんざん溜め込んだ精液を、俺は彼女の中に全て注ぎ込んでしまった。 その勢いを受けたミウの身体がガクガクと跳ね上がるのを、俺は全力で受け止めた。 心と身体が溶け合ったまま、俺達はしばらく抱きしめあっていた。 「イく瞬間に抱きしめてくるなんて最高よ、ユウマ…………」 「こんなにされたら私、本気になっちゃうよぉ…………」 「……というわけで、私はユウマのものになりました」 「はい?」 「契約の儀式の最中で、私がイかされちゃったんだから当然でしょう?」 「当然なのか……?」 「うん。だから責任とってね?」 眼の前にいるサキュバスは、この上なくニコニコした表情で俺を見つめている。 責任っていうのはもしかして結婚……なのか?いや、それはさすがに考え過ぎだろうな。 「しかしそういわれてもなぁ……」 「しばらく一緒に住まわせてくれればいいよ! 私もどっちみちこのままじゃ淫界に帰れないから」 「うーむ……」 「ユウマがサキュバスにとって危険人物かどうか、 監視するって名目でこっちに残ることにする!」 「おい勝手に決めるな! それに食費とか近所の目とか色々……!」 「そんなの気にしないよ、私。 それよりも……さっきのエッチ、もう一回しよう?」 「気にしないって、お前……ちょ、まっ!!」 どうやら素直に引き下がる気はないらしい。ミウは色っぽい視線で、再び俺に擦り寄ってきた。 「ま、まてミウ!こ、こらあああぁぁ」 「いいから、いいから♪」 聞くところによると、サキュバスの食事はセックスでも代用できるらしい。 (それならまあ……いいか) ミウに唇を奪われながら、俺は少しだけ観念した。 こうしてこの狭い部屋にとびきり可愛らしい居候が一人増えたのだった。 ――そして次の日。 窓から差し込む日差しで俺は目覚めた。昨日起きた出来事が今でも信じられない。 (勇者の血、か……) 子供の頃、親から聞かされていたおとぎ話が、現実にこの身に降り掛かってくるなんて。 第一、こんな平和な時代に勇者とか魔物とかありえない。そんなのはゲームの中だけの話だ。 しかし目の前にサキュバスが現れて、俺を誘惑してきたのは事実。 そして俺の童貞を彼女に捧げてしまったわけだが……悔いはない。 (初めての女の子の身体、気持ちよかったなぁ。あのおっぱいの感触なんてまるで夢みたいな柔らかさだったし) そう言えば彼女も初めてだと言っていたな。処女と童貞って組み合わせも、なかなか悪くないじゃないか。 昨日のことを思い出しながら、無意識に指をワキワキと動かしてしまう。 「ミウ……」 「呼んだ?」 「うわああああぁぁぁ!」 ポツリと呟いた言葉に反応した彼女が顔を覗きこんできた。 「ん?どうしたのかな?」 「やっぱり夢じゃなかったのかよ……」 「クスッ、それを言うなら『夢じゃなくてよかった』でしょ? ユウマは可愛い顔するんだね」 そして俺の頬をそっと撫でてくる真っ白な指先。ひんやりとした細い指が俺のあごを優しくくすぐってきた。やっぱり本物だ。サキュバスは存在する! 「変なこと聞くけど、サキュバスって昼間でも問題なく動けるのか?」 「あのね……ヴァンパイヤじゃないのよ、私。 余計なところで気遣い無用だよ」 呆れたような顔でミウが言い返してきた。ごもっともです。 ところでなんとなく部屋中にいい匂いがしているんですけど。 「ユウマ!朝ごはん、出来てるよ」 普段は雑然としたテーブルが綺麗に片付けられ、山盛りのサンドイッチとコーヒーカップが2つ並べられていた。だいたいこの食器、どこから持ってきたんだ? 「えっ……これ全部、ミウが作ったのか?なんでまた……」 「なんでって……こういうのが好きなんでしょう? ユウマが寝ている間に頭の中を調べてみたら、 こういうイメージが出てきたから……」 「記憶操作まで出来るのか!? すごいよ、ミウ!魔物というより魔法使いみたいだ」 「操作はできないよ……覗くだけ。でも驚いてくれた? エッチするだけのサキュバスじゃないんだよ、私」 「ああ、本当にすごいよ。俺は今ものすごく感動してる」 「なんで本気で泣いてるの……はい、ハンカチ」 「さんきゅ……」 ツノや翼や尻尾はともかく、こんな可愛い女の子とこの部屋で一緒に食事をすることなんて夢にも思わなかった。 (親父、おふくろ、やっと俺にも幸せが舞い込んできたよ!) 本気で両親に報告したい気持ちでいっぱいなのだが、そうするとサキュバスを倒せとか言い出しかねないからな……うちの親父は。 うん、とりあえず黙っておこう。 「喜んでくれたみたいで嬉しいよ♪ 私ね、ユウマにはちゃんと尽くしてあげる。 だって私にとっては初めてのニンゲンだもん」 サンドイッチを食べながら感心する。サキュバスって、思ったより貞操観念が発達しているようだ。 「でもその代わり、私にも美味しい食事をさせてね?」 「食事?これいっしょに食べるのか?」 「ちがうよー!私がニンゲンの食事しても無駄だもん。 それにユウマは、もっといいものを持っているでしょう?」 「なに???」 「私の栄養補給は簡単だよ。こうするのっ♪」 「!?」 突然、しなやかな両腕がゆっくりと俺の首に絡みついてきた。 「優しくしてあげるから、じっとしててネ……♪」 「まっ!ま……」 さらに彼女の顔が近づいてきて――! 「んふ……チュウウウウウ~~~♪」 (いきなり……幸せ過ぎる……!) 体中の力が抜けて、代わりにミウの口から熱い吐息が吹き込まれる。 目の前が淡いピンク色に染まって、ミウのことしか考えられなくなっていく……。 「唇からだって精を吸い取ることは出来るんだよ?便利でしょ」 「うああぁ、あぁ……」 「あ、あれれ……なんだかつらそうだね。 そんなに嫌だった?私のキス」 「ちが……」 「じゃあもう一回しようよ?大丈夫、ちゃんと手加減するから」 違う!気持ち良すぎて意識がぼんやりして……!! 「はい、ちゅうううっ♪」 「!!」 唇から吸われる!力が吸いとられてるッ!! 今度はわかるぞ……唇から俺の体力がミウに乗り移っていく。それがたまらなく心地よい。 そして俺は甘い唾液をコクコクと飲まされ、幸せいっぱいな気持ちでミウの唇を求めてしまう。 ――数十秒間、俺はミウのなすがままにされてしまった。 「ごちそうさま、ユウマ♪かなり満足したよ」 「もっと……もっとおおお……」 「ダ~メ!これ以上やったら動けなくなっちゃうでしょ。 そういうのはイヤなの!!」 ミウがパチンと指を鳴らすと、俺の意識を包んでいたピンク色の靄が消えた。しかし身体は疲労感でぐったりしている。 「くそっ、学園に行かなきゃならないのに」 「学園ってなぁに?楽しそうな場所なら私も行ってみたい!」 こいつ……一緒に来る気まんまんだな。ニコニコしながらこちらを見つめてる。 それにダメだといっても付いてくるに決まってるし、この部屋に一人で残しておくのも心配だ。 「ツノとか尻尾とか見えないようにしろよ。 あとはやたらと誘惑しないこと!」 「そんなことしないよぉ…… 見た目については魔法で誤魔化すから大丈夫だと思うよ?」 そう言えば、昨日の山田も気づかなかったな。このサキュバスの姿というのは、選ばれた人間にしか見えないのかもしれない。 「ひとつ聞きたかったんだけど……ユウマって彼女、いるの?」 「いいいいっ!?」 「あはは、いるよね。当然だよね……」 ミウが急に淋しげな表情を見せてから黙り込んだ。なんだ、この反応は……どう答えていいのかわからない。 「もしもいないって言ったらどうするんだ?」 「私が彼女さんになってあげてもいいよ!」 うわぁ、ストレートすぎる……反則だ。こいつの笑顔、まっすぐ見つめてられないほど可愛い。 もっとクールなお姉さんキャラじゃなかったっけ?こんな表情で誘惑されたら、ちょっと困る。跳ね返す自信が全くない。 「ねえねえ、どっちなの? 彼女さん持ちなのかフリーなのか教えてよ!」 「学園に行けば判るよ」 サキュバスに見せつけてやる。俺の人気の無さをな……。 「どゆ意味?」 「……」 「もうー、ユウマのケチィ! あんまり意地悪だとおちんちん踏みつぶしちゃうからね!」 踏みつ……去勢されるのはちょっと勘弁して欲しいな。そんな会話をしつつ、俺はミウを連れて学園へと向かった。 ――そして無事に学園に到着。 男子A『おい、誰だあの子!すげー可愛いんだけど!! となりの男、邪魔だよ、どけ』 女子B『髪とかすごく綺麗……でもなんで隣が島崎くんなの? 平気なのかしら、あの子』 女子C『ただ近くに歩いているだけじゃない? 島崎くんって男の娘が好きなんでしょ』 くそっ、ひどい言われようだ。ミウには賞賛と感嘆の声が上がり、俺には容赦無い罵声が浴びせられる。 「ねぇ、なんだか男の子が私のこと見てくれてるよ! ユウマ、ちょっとジェラシー?」 「ねーよ!」 「フフッ、じゃあ手を振り返してみようかな~?」 ミウが微笑みながら手を振ると、視線があった男子学生たちがざわめく。 『うおおおおおおおおおっ!』 『すっげー可愛い!写真部早く来い!!』 『……今夜のオカズげっと』 ミウのやつ、無意識に誘惑してやがる!それにしてもなんだろう、このモヤモヤした気持ちは。 「ユウマ、もしかして嫉妬してるんじゃない?」 「バカな……なんで俺が!」 「ユウマが私と手をつないでくれるなら、 他の男の子に手を振るの止めてあげるけど~?」 「くっ……」 こいつはやっぱり淫魔だ!男を手玉に取って喜ぶ性質を生まれながらにして持っていやがる。 俺の『勇者の血』の力で一度滅ぼしておいたほうがいいかもしれな…… 「どうする?私と手をつないでくれると嬉しいんだけどな~」 意地悪な小悪魔……じゃなかった、サキュバスが耳元でそっと囁いた。 (俺が手を繋げば誘惑をやめるんだよな? 人類の平和のためになるんだよな?) そう思えば、手を繋ぐことなんてためらってる場合じゃない。平和裏に事を解決するのが勇者の役目だ。 「ほ、ほらっ!」 「ふふっ、今回は私の勝ちだね」 俺が無造作に差し出した左手にミウがしっかりと指を絡ませてきた。 さらに彼女は俺に寄り添うように腕まで絡ませてきた。 (髪の香りが……) フニフニのおっぱいが俺の腕で潰れてる。柔らかさで左腕全体が麻痺してしまいそうだ。 「ねえ、ユウマ?周りからジロジロ見られてるよ~~」 見られているだけでなく、ヒソヒソ話まではっきりと聞こえてる。 それでもミウの言葉も気にならないほどの心地よさが、俺の左半身を包み込んでいく。 (抱きしめたい……思い切りミウを抱きしめたい!) 今のミウからはサキュバスとしての魔性ではなく、純粋な愛情しか感じない。 初めて会った時のように、あからさまな魔力であれば 「勇者の血」で断ち切れるんだけど……。 「はは……ジロジロ見られるのは……困るな……」」 「私は気にならないよ。だって、本気でユウマのことがす……」 俺の背後で何かが砕け散る音がした。 「うわっ!!」 慌てて振り返ると、見覚えのある女子が俺を睨みつけていた。 「ちょっと……その子、誰よ……!」 「あー……やっぱりそうなるよな」 彼女の手は、おそらく水を入れ替えた花瓶を抱えていたのだろうが、ガラスの花瓶は粉々になって床に散らばっている。右手には花だけが残されていた。 こいつは俺の幼なじみ、藤村カオリ。中学の頃からの付き合いになる。 人類で唯一、俺に触れられても拒絶反応を起こさないという特異体質を持つ女性だ。 「ユウマ!なんであんたの隣に女の子がいるのよ!」 「うはっ、ヤキモチktkr」 「ふざけないで!ちゃんと説明しなさい!!」 「はいっ、すんませんっ!」 このシチュ、なかなか萌えるな。幼馴染が新顔のヒロインに敵意を燃やすという、エロゲーにありがちな恋人同士の完成された会話のようだ。 「あのな……話すと長くなるんだけど」 「遠慮無く話しなさいよ。 1時間までなら全部聞いてあげる。 ボイスレコーダーに録ってあとで聞きなおしてあげるッ!」 「……なあ、お前やっぱりヤキモチ焼いてるんじゃ」 「うううぅぅっ!このぉ……死んじゃええええええええ!」 藤村の左拳が握られ、弓矢を引き絞るような動作に移る。ここまでの所要時間はだいたい0,2秒ぐらい。 (あー、殴られたな俺……) 瞬時に痛みを覚悟する俺。 そしてこのあと右の頬に激痛が走って、そのまま気絶するんだろうな。 藤村のパンチって、身体に似合わずとても重いし、特に俺には全く手加減なしなんだ。 しかも今日は後ろにミウがいるから、カッコ悪い所を見られちまうな……。 だが彼女の拳が俺に届くことはなかった。 「いけないなぁ、藤村さん。女性は常にエレガントであれ」 「ううぅ……離して! ユウマはね、一度ぶっ飛ばされないとわからない子なのよ!!」 藤村が俺に必殺パンチを放つ寸前に、山田が後ろから彼女の手首を掴んでくれた。 後光が射してるぜ、山田……! 「ミウさんのことは、俺から説明してやろう、レディー藤村」 「なに、その子……ミウっていう名前なの? とにかく離しなさい、山田くん!」 「山田ありがとう……今日は特にお前が神に見える!」 「男に感謝されてもそれほど嬉しくないな。 いや、まったくありがたくない!」 「もうっ、おとなしくするから離してよ~!」 ジタバタもがく藤村の言葉に従って、山田が手を離した。 「……それでどういうことなの?説明してよ」 「ミウさんはこのとおり、藤村さんよりカワイイ。 つまり、ユウマがその魅力に落ちただけだ」 その一言で藤村の表情が険しくなる。 「聞いた、ユウマ?山田君にほめられちゃった♪」 問題のサキュバスは、隣で無邪気に喜んでる。こいつの性格って、少し羨ましい。 「山田君なんて他人行儀な呼び方はやめましょうよ、ミウさん」 「おいコラ、山田! ……お前、なんで俺を混乱の泥沼にハメるようなことを!」 「やっぱり……そうだったのね。ユウマ! アンタ絶対だまされてるわよ!」 「おまえもすんなり納得するなよ、藤村!」 必死で藤村の誤解を取り除こうとする俺を脇に、ミウが割り込んできた。 「フジムラさんがユウマの恋人なの?」 こ、こいつ!キョトンとした顔でとんでもないことを呟きやがった! 「なっ、なんでそうなるんだよ!」 「ちっ、ちがうわよ!誰がこんなヤツ!!」 「ふ~ん、違うんだ?今の会話も呼吸もぴったりなのにね」 「変な気を回さないで!ユウマと私は……」 藤村が口ごもったところで、ミウが俺の首に腕を回してきた。 「じゃあこうしようよ、ユウマ……んちゅ……♪ ふふっ、美味しい……」 ミウにキスされながら俺は見てしまった。 藤村の右手にあった花束が、激しい力によって握りつぶされ、茎からもげて床へ落ちたところを。 「ふぅ……これは決定だな」 「そうね。決まりだわ」 山田と藤村がウンウンと相槌を打っている。 「えっと、なにが……です……?」 「わかんないの?」 底知れない不安に駆られた俺が藤村に尋ねると、彼女は静かに問い返してきた。 「あんたが私にタコ殴りにされるのが確定したのよッ!!」 「ひげぶうううううあああ」 「きゃああぁぁっ!」 ミウの驚きの声より早く、俺の身体が後方に吹っ飛んだ。俺の横顔を射抜き、ミウとのキスを遮断する藤村の右ストレートが側頭部に炸裂した。 「おきろゴルアアアアアアァァァァ」 藤村が大きな声で何か言っているけど、耳鳴りがして聞き取れない。 頭がグワングワンと大きく揺れている。 綺麗にテンプルを捉えた彼女のパンチが俺の脳を激しく揺らしている。 (相変わらず……いいパンチだぜ、藤村……!) 俺がボクシング部の部員なら、間違い無く勧誘しているだろう。次世代の女性アスリートとして! ヨロヨロと立ち上がると、俺と藤村の間にミウが入り込んできた。 「ひどいじゃない! いきなり殴るなんて、あなた本当に女の子なの?」 藤村に対してミウが怒った口調で訴えてる。ああ、本当に俺に対して優しいんだな……ミウ。 「ユウマ、その子絶対普通じゃないわよ! 見た目は綺麗だけど天使じゃないわ、悪魔よ、悪魔!」 「あのね、私は悪魔じゃなくてサキュ……むぎゅう~」 正体をカミングアウトしようとするミウの口を慌てて塞ぐ。その様子が藤村にはイチャついているように見えたのか、ますます顔つきが険しくなる。 「アンタなんか、かわいい顔して近づいてきた女の子に、 全~~部吸い取られちゃえ!」 そんな捨てゼリフを残して、藤村はその場を立ち去っていった。 「ねえ、ユウマ……なかなかいい勘してるね、カノジョ」 「ああ、俺なんかよりよっぽど藤村のほうが 『勇者の血』ってかんじだよな」 頬に残る鈍い痛みに耐えながら、俺達は教室へと向かった。 そして終業のチャイムが鳴った。今日はこれでおしまいだ。あれから講義が終わるまで、ミウはおとなしく俺と一緒に授業を聞いていた。 「んで、これからどうするんだミウ?」 「私はもうしばらく学園の中を歩いてみたいな」 「では姫様、案内はこの私が案内しましょう」 「うわっ、どこに隠れてたんだ!山田」 「案内してくれるの?悪いわね、山田君」 「またそんな他人行儀な……これからはカイトとお呼びください」 うやうやしく頭を下げて、ミウをエスコートする山田。その後ろ姿を見て、さっきの事を思い出す。 (ミウが他の男と一緒にいると、 なぜ心が穏やかじゃなくなるのだろうか) 素直に自分が嫉妬していると認めたくない。突然押しかけてきたサキュバスに愛情を感じているなんておかしい。 (他の男と仲良くなったりしたら……いやだな) ただ、相手が山田ならそんな心配は不要だろう。ああ見えて俺の親友だし、女性関係は誠実だという噂だからな。 「のんびり帰ろう」 そんなことを考えながら、俺は一人アパートへと戻ることにした。 部屋についた俺は、カバンを置いてすぐにベッドに転がった。 「あれ……なんか、すごく眠いな……」 玄関に足を踏み入れた途端に、急に疲れが増したように思える。 たしかに今日は朝から慌ただしかった。ミウを伴っての通学に気疲れしたのかもしれない。 「……」 それにしても眠い。気を抜いたら自然にまぶたが落ちてくるようだ。 「仕方ない。少しだけ寝よう。 そのうち帰……ってくる……だろう……ミウ……」 自らの欲求に逆らわずに目を閉じると、俺の身体はあっという間に力が抜け落ちていった。 「……コイツ今、お姉ちゃんの名前を口にしなかった?」 「ま、いっか。さっさと搾り殺しちゃおうっと♪」 「ん……なんだここは……?」 眠りについた時と同じように、俺はあっという間に目が覚めた。 それはなぜか不思議な気分だった。 身体の感覚はハッキリと覚醒しているのに、視界はまだ夢の中みたいで……。 しかもなんとも言えず不安を煽るような……まるで土砂降りになる直前の空模様みたいな景色が目の前に広がっている。 「妙だな……すごく静かだ」 やはりここは現実の空間ではない。俺はまだ夢の中なのだろうか。 「やっとお目覚め?ニンゲン」 「んっ、誰だ」 「ふんっ、気安く話しかけないでよ」 背中にぶつけられた声に驚いて振り返ると、2メートルぐらい離れたところに見たことのない少女が立っていた。 その姿は、ミウと同じく異形……ツノ、羽根、尻尾の3点セットと、黒を主体とした露出度の高い衣装。 「サキュバス……なのか……?」 「その質問には答えてあげる。正解よ。さすがは『勇者の血』の一族だね」 見たところ、身体のラインも細いし、髪型も子供っぽい。 翼や尻尾もひと回り小さく、バストもそれほど成熟していない。 顔立ちはどことなくあどけないのだが、ミウと違って俺に対する敵意がむき出しだ。 「お前は誰だ?ここはどこだ?」 「クスッ、質問ばかり。そんなに不安なの?アンタ」 「あたしの名前? それから……ここはどこ?ふん……誰が教えてやるもんですか」 「くそっ……!俺をどうするつもりだ!!」 「このお部屋はあたしの世界なの。わかる? つまり、アンタを好きなようにいじめる事ができちゃうわけ」 「見た目によらず可愛くないことを言うんだな」 「へぇ……アンタ、あたしを見て可愛いと思ってくれるんだ?」 俺の言葉に反応した少女が、ゆっくりとこちらに近づいてくる。 「ふふふ……♪嬉しいこと言ってくれるんだ?」 少女の目が怪しく光った瞬間、俺の身体にチクリと電流のようなものが流れた。 (なっ!身体がうごかせないっ!?) 反射的に身を引こうとしたが、足も手も動かせなかった。 いや、動かすことはできるのだが……通常の10倍くらい時間がかかる! 鈍く持ち上がろうとする俺の腕をすり抜け、少女の腕がフワリと広がり、俺を抱きしめた。 「あっ……」 あっさりと間合いに入り込まれ、少女と目が合った。真っ赤な瞳が俺を見上げている。 (こいつ、かわいい顔してる……近くで見るとすごく……!) 少し離れていたときは意識しなかったが、少女はやはり美しかった。 顔のつくりはミウよりも小さい。髪はサラサラで少し飛び出した耳が凄くキュートだ。 目は大きく、鼻や口は小さい。真っ白な肌が少し紅潮している。その薄い口元がニマッと開く。 「こうやって見つめられたり、抱きつかれたり、 キスされたり……あたしといろいろしたいんだ?」 「だれが……!」 「そういうの、ニンゲンの間ではロリコンとかヘンタイっていうんでしょう?」 「ちがっ、ロリコンじゃねえ!……おれはただ……」 「黙りなさいよヘンタイ。 このあたしに欲情したんでしょう? いいじゃない、別に。ヘンタイのまま調教してあげるから」 「なんだとっ?」 「ふん……だいたい、アンタみたいな下等なニンゲンに、このあたしが負けるわけ無いんだけど……念には念を入れてたっぷり傷めつけて(いためつけて)あげる」 少女は抱きしめた俺の身体をギリギリと締めあげた。 「ぐああああぁぁぁっ!」 なんて力だ……つぶされ…… 「この空間は外部とは遮断されてるから、アンタが目覚めない限りここからは出られないよ。 でも、もう二度と起きられなくなっちゃうかもね?」 「がはあぁっ!」 少女の細い腕がさらに食い込む。肺を圧迫され、呼吸が苦しくなったところでさらに力が加わって、俺は悶絶した。 「はな……せええええ!」 必死に声を絞り出すと、少女はあっさりと腕の力を緩めた。 「はい、少し休ませてあげる。どう? すごい力でしょ。見た目で判断すると痛い目にあうわよ」 「はぁ……はぁ……!」 「思い出してみて? アンタが帰ってきてすぐに、急に眠くなっちゃったでしょう。 あれはあたしが作った魔法陣の効果なのよ」 「!?」 「そしてアンタにかけたのは催眠誘発の魔法。 普通のニンゲンなら三日間は目覚めない魔法ね」 「なんてことを……! じゃあ俺は三日間もここに閉じ込められるってことか!!」 「くすくすっ、どうだろうねぇ? それにまだまだアンタには苦しんで欲しいの。 そのためにもっとすごい魔法をかけてあげる」 少女の目がキラリと光った。無邪気な表情なのに、目付きだけは残酷な光を放っている。 こういう奴が一番危ない……なんのためらいもなくとんでもないことを仕掛けてくる予感がする。 「じゃあいくよ。今からあたしにどんな魔法を掛けられちゃうんだろうね?勇者様」 「やめろ……!」 「少し黙ってなさいよ」 「っ!!」 彼女の人差し指が俺の唇に触れる。すると急に喉が詰まって、一切の声が出せなくなってしまった。少し背伸びをした少女が俺の耳元に口を寄せる。 (喉が……声を潰された……何をはじめる気だ……!) 「……えよ……かう…………」 俺を軽く抱きしめたまま瞳を閉じた少女は、聞き取れない言葉で呪文のようなものを唱え始める。 「……!」 囁かれた言葉は理解できない。きっと魔族の言葉なのだろう。しかし少女の声は途切れることなく俺の頭の中をグルグルと回り始める。 「はい、これでおしまい。声も出せるようにしてあげる」 少女が指を鳴らすと、喉元を抑えられていたような圧迫感が消えた。 「ぐっ!はぁ……はぁ、なに……を…………?」 「ふふっ、慌てなくてもすぐに効果が出てくるわよ 自分じゃなかなか判らないと思うけどね?フフッ、フフフフ♪」 声を出せるようにはなったものの、相変わらず身体の自由はない。 ここは少女が支配する世界。どうすればここから抜け出せるかを考えてはみるが、妙案は浮かんでこない。 しかも妖しげな魔法をかけられてしまったようだが、これから自分の身に何が起きるのか見当がつかない……。 「あたしの目にはもう見えてきたけど、まだわからないでしょ。 じゃあヒントをあげる」 「……!?」 少女がさっきと同じように耳元に顔を寄せる。 また何か魔法を唱えるのかと思ったがそうではなかった。 「うっ……」 俺が感じたのは恐怖心ではなく興奮だった。ほんのりとあたたかい肌に触れ、美少女に抱きつかれていることをさっきよりもリアルに感じてしまう。 それと柑橘系みたいな甘酸っぱい髪の香りと、微妙に膨らんだバスト、しっとりと首筋に絡みついた腕の感触など、頭の先が徐々に少女のことで埋め尽くされてゆく。 「ねえ……さっきよりもあたしのこと、色っぽく感じてない? それにアンタの服……すこし緩く感じるんじゃないかな?」 「服……う……ああぁっ、なんだこれは!?」 俺は七分袖のシャツを着ていた。しかし今はどうだ。袖が肘に覆いかぶさっている。 「あはははっ、やっと気づいた? 自分の体がどんどん若返っていることに」 勝ち誇ったように笑う少女の眼がまた光った。 「アンタのこと、もっと弱々しくしてあげる。 それから美味しく食べてあげるから」 「やめ……!ぐっ、身体が……」 目の前の少女に掴みかかろうとしたが、さっきよりもさらに腕の動きが鈍くなった。 「あたしの魔力は変わってないけど、アンタが弱くなった分だけキツく感じるでしょ。ほら、もうあたしより背が低くなっちゃってる。かわいくなっちゃって……」 トンッ 少女の右手がすっと上がり、左肩をゆっくりと押してきた。 「ぐっ……くそっ……!」 彼女の右手には大して力が込められていなかったが、俺の身体のバランスを崩すには十分な力だった。 「はい、あたしの勝ち。どう? 単純な力比べでも、今のアンタはあたしより弱いの」 「でも、そんなことよりも重要なのは……女の子の身体に対して、 免疫がなくなっちゃった事なんだよ!」 「そんなはずが……」 「じゃあ試してあげようか。サキュバスの手のひらに身体中をスリスリされる快感を教えてあげる」 少女が両手を俺に見せつける。小さな手のひら……のはずだが、身体を小さくされた俺にとっては自分の手と同じくらいの大きさに感じる。 しかし肌がつやつやしていて、爪の先が少し尖っている。細い指先が焦らすように俺の服を脱がせはじめた。 「可愛い乳首さんだね……コリコリしちゃおうね?」 静かに伸びてきた指先が、俺の乳首を優しく転がした。 「あ、ああぁっ!」 「きゃはっ、いじめられて気持ちいい? 今度はゆっくり撫で回してあげる」 「ひっ、うあ、ああぁ…………」 身をよじっても無駄だった。身体を逃がそうとする先に手のひらが追いかけてくる。 端正な顔立ちの彼女に見つめられながらの愛撫は、思わずため息が漏れてしまうほどの気持ち良さだった。 「あたしの手、すべすべで柔らかくて気持ちいいでしょう?このまま手のひらだけでイく直前まで弄んであげる」 「いかに『勇者の血』が流れていたとしても、 弱体化させちゃえば関係ないもんね。 それに今のアンタの方が、あたし好みだし…………♪」 「あああああぁぁぁっ、そこおおおっ!」 しつこく何度も乳首を弄ぶ少女のテクニックに、俺は思わず声を上げてしまった。 「クスッ、ここが気持ちいいんだ……ほら、お口を開けてごらん?はじめてのキス、してあげるよ」 (キス……!) 少女が口にした言葉に、自然と身体が反応してしまう。 決して初めてじゃない……キスぐらいしたことあるし、もっと凄いことだってミウとしてきたのに、身体の芯が熱くなっている。 (まさか――!) 俺の記憶はそのままだけど、身体の記憶はリセットされているのだろうか。つまり俺の身体は、オナニーを覚えたての中学生みたいな…… ツツツー…… 「ふあああっ!!」 少女の指が胸元に爪を立てながら、ゆっくりと左の乳首をひっかいてきた。痺れるような快感が俺の思考を中断させた。 「こんな敏感な身体にされちゃったら、 サキュバスのキスに耐えられるわけないよねぇ?」 「はぁ、はぁ……!」 少女はいたずらっ子のように微笑みながら、右手の人差指で自分の唇を軽く撫でた。 「さっきからこの唇ばかり見てたよね…… あたしにいっぱいキスされたかったんじゃなぁい?」 「そ、それは……」 ツヤツヤで小さな貝殻みたいに可愛らしい唇。あそこに自分の唇を重ねたら、一体どんな気持ちになるのだろう。 とびきり可愛い少女が目の前にいて、俺のことを見つめている。キスしたい……いや、してほしい!その気持を察したのか、彼女がそっと手を伸ばしてきた。 ゆっくりと両腕が俺の顔を抱きしめる。目線の高さはほとんど一緒で、少しだけ彼女のほうが大人に感じる。 さっきまでの年齢的な優越感は、完全に消え失せていた。 「くすっ……だから、いっぱいキスしてあげる……♪ んちゅ……クチュッ、んふふ……」 「っ!!」 急に少女の顔が近づいてきて、力強く抱きしめられた。 少し強引に重ねられた唇から、彼女の熱い舌先が差し込まれた瞬間……俺は脱力した。 ピチャピチャという淫らな音が頭の中に響きわたり、俺を混乱させる。弛緩した俺の身体を感じたのか、少女が静かに顔を上げた。 「クスッ、こんなキスはまだ序の口だよ? もっと美味しく味わって……はむっ、ピチュ……」 (甘い……甘くて、すごくフワフワして……気持ちいい……) 二度目のキスはさらに凶悪だった。さっきよりも深く、貪るような少女にキスに、俺の呼吸がどんどん乱れてゆく。 「可愛い顔……もっとたっぷりキスをして、 頭の中を空っぽにしてあげる。 このまま戻れなくなっちゃうくらいにネ……」 「ほら、舌を差し出して?もっと思い切り……伸ばして? ……フフッ、そう、上手……んっ、ジュル、レロッ……プチュウウゥゥ……」 (舌がこんなに……絡み付いてる…… エッチな気持ちにされて、どんどんおかしくなっちゃうよ……) 少女の執拗なキス責めに、頭の中がぼやけてきた。無意識に彼女の唇を求めると、そっとかわされてしまった。こちらから求めると焦らされ、息をついたところを責められる。 ジワジワと少女に心が犯されていくのを感じる……。 「もっと、もっとぉ……!」 思わずおねだりした俺を見て、少女が小さく笑う。 「すっかりとろけちゃったでしょ。 でもね、まだまだ本気じゃないよ? その魂、もっともっと傷だらけにしてあげる」 「んはあっ、ああぁっ!?」 彼女の手が突然ペニスを包み込んだ。 「すごい声だしちゃうんだね。 もっと感じちゃえ!んふっ……んふ……んうぅぅ~~♪」 少女はペニスを握ったまま、再び俺の唇を奪う。だがさっきまでと違って舌先の出し入れも緩やかで、唇を柔らかく揉みほぐしてくる。 まるで手の動きと連動させるかのように、断続的にチュクチュクと唾液を流しこんでくる。 (このキス……すごくいい……とけちゃうよぉ……) 優しく包み込むような責めを受け、頭がボーっとしてくる。唇とペニスの同時攻撃に逆らえない。彼女のテクニックに身体中が緩んでいく……。 「こんなに大きくしちゃって恥ずかしいね? さっきはあんなに抵抗してたのに、 もう身体が骨抜きになりかけてるじゃない」 「だ、だって……あんなの……」 「あたしに堕ちちゃった?童貞クン?」 完全に勝ち誇った表情で、少女が俺の目を見つめてくる。 「魔法で身体を小さくされて、 感じやすいままあたしにシコられちゃって、 おちんちん、すごいことになってるよぉ……クスクスッ♪」 「この童貞オチンポ……もっと硬く大きくしてくれたら、 あたしの中でジュワ~って溶かしてあげるんだけどなぁ?」 「する……します……だから、ああぁぁ!」 俺の声を聴きながら、少女の指先がくるくると亀頭をくすぐり始めた。 人差し指と中指がカリ首を挟み、親指が裏筋をクリクリと刺激してくる。 しかも竿の部分はそのまましごかれないので、意地悪な亀頭責めによって性感だけがどんどん高められていく。 「指先で焦らされるのが好きみたいだね……エッチな子♪」 「先っぽが壊れちゃうほど優しくナデナデしてあげるから、 もっと張り詰めちゃいなさい」 喚き散らす俺を押さえ込みながら、少女の残酷な指責めは続く。指先が這い回ったあとには快感の楔が打ち込まれ、さらに俺を狂わせる。 「あああぁぁっ、もっと……おあああぁっ!」 それから永遠とも思える時間……おそらく数分間程度だろうが、俺を弄んだ後に彼女が身体を起こした。 「そろそろいいかなぁ……じゃあ約束どおり第二段階に進むね」 たっぷり焦らされ、意識をドロドロに溶かされた俺の目の前に何かが揺らめいた。 「じゃ~ん!これなんだ?」 「それ……あああぁぁ!」 「サキュバスはね、みんな尻尾を持ってるんだよ。 これでもうわかっちゃったかな?」 視線を落とした先で、目に飛び込んできたものには見覚えがあった。ミウにもついていたサキュバスの尻尾。 あの感触は身体に刷り込まれている。 「今から自分が何をされちゃうのか、予想できた?」 俺が静かに首を横に振ると、少女はニッコリと笑って尻尾を左右に振ってみせた。 「ふふっ、じゃあヒントね。 この尻尾は、こんな風に自由に動きまーす」 「形を変えたり、柔らかさを変えたり出来ちゃうの。 そして今から目の前にあるモノを、優しく抱きしめちゃいまーす」 柔らかそうな尻尾が、ペニスに触れた瞬間腰がビクンと震えた。 「うああぁっ!?」 クニュッ、チュク、ピチャッ…… 表面から淫らな粘液をにじませ、尻尾がペニスを弄ぶ。 「ほらぁ、クチュ♪ ……ふふふ、手のひらみたいに器用に動くでしょ。 このままおちんちんの根元をきつ~く締めてあげるね」 尻尾の先端ではなく、ひも状になっている部分が棹に絡み付いてくる。そして―― キュウウウッ♪ 「ああああぁぁぁっ、やめて……それ、やめてええええ!!」 「痛い?苦しい?でもこうすれば簡単には出せないよぉ?」 精液をせき止められ、ペニス同様にビクビクと震える俺の身体を、少女の手が揉みほぐしていく。 「苦しそうだね、フフッ……あははははは! アンタには気持ちいいのと苦しいのを交互に与えてあげる」 悶える俺の顔に、彼女の唇が近づいてきた。 「あっ……」 「んっ……チュッ♪ほら、見てごらん? 尻尾にゆっくりしごかれてる…… ドクドクしてて気持ち良さそうだよ?ふふふふ」 花のように微笑む少女を見ながら、俺の身体は確実に射精へと導かれていく。 視界と唇を奪われ、耳から注ぎ込まれる言葉に興奮させられ、身体中を愛撫されることで心まで奪われる。 (くそっ……あとすこし……なのに……!) なかなか絶頂できない俺は、思わず自分から腰をよじらせてしまう。 「そこまでしちゃうんだ?かわいい~♪残念だね? 悔しいよね?射精したいのに……させてもらえないなんて」 「キスされながら尻尾でいじめられて、しかもこうやって…… んふふ……♪指先で〈弄〉《もてあそ》ばれて苦しいよね? ふふっ、うふふふふ」 「んぶっ、むううううう~~~!!」 動けない俺に対して、今度はペニスの集中責め……しかも尻尾だけではなく指先まで! 「あたしの手、気持ちいいでしょ? じれったくてもずっとこのまま続けてあげる。尻尾で締めてるから射精はできないけど、その分ジワジワきちゃうでしょ?」 指先と尻尾の同時攻撃は強烈だった。亀頭の広がっている部分を指先でくすぐりながら、裏筋から根本にかけてを尻尾の先が往復している。 (壊される……壊されちゃうよおおおおぉぉぉぉ!) 自分より年下のはずの少女に弄ばれ、射精も許されずに俺は悶えることしかできない。 キツ過ぎる快感に身を焦がしつつ、終わりを求めることしかできない。 「……これがサキュバスとのセックスだよ。 オマンコに入れなくても男の子はみんな気が狂っちゃうの」 魅力的な微笑みを浮かべながら、少女は執拗に亀頭責めを繰り返す。 このままじゃ本当に狂ってしまう――。 つんつん♪ 「ああああぁぁぁっ、出るうううぅぅぅ!!」 少女の尻尾の先が軽く睾丸を突き刺してきた時、身体中が快感によって津波のように押しつぶされた。 「ふふふ……おちんちんも頭の中も、 すっかりぶっ飛んじゃって骨抜きだね?」 「アンタの大事な精を、そろそろいただく事にするわ」 「あ……あ……うぁ」 「ふふっ、こんなに張り詰めちゃって、 ビキビキになってるおちんちんを…… サキュバスがフェラしたらどうなると思う?」 少女は俺を見つめながら、口元を大きく開けてみせた。そこにはたっぷりの唾液と、真っ赤になった舌先がチロチロとうごめいていた。 「あたしね、お口にはとっても自信があるんだ♪ どんなニンゲンでも必ずイかせちゃうんだけど…… このおちんちんはどれくらい我慢できるかな?」 「うううぅ……!」 今すぐしゃぶってほしい、と言い出しそうになるのを必死でこらえる。 心まで完全に折られてなるものか……それでも俺の身体はすでに快感を待ちわびて、絶えず我慢汁を吹き出しながら震え続けている。 早く楽になりたい、という気持ちがないといえば嘘になる。 「もう無理だよね?時間をかけて魅了してあげたから、 自分からイきたくなっちゃってるもんねぇ……」 「あたしの小さなお口の中に、 真っ白で甘~いミルクを出してくれるんでしょ?」 「ねえ、どんな風にトドメをさされたいの? 優しくペロペロされて、ゆっくりお漏らししたいのかな」 「なっ……そんなことッ!」 「それとも激しくジュルジュルにピストンされて、 何が何だかわからないうちに何度も吸い取られたい?」 「!!」 「きゃはっ、想像しちゃった?エッチ……!」 「あたしからのおすすめは、優しくペロペロのあとで、 残った精液をチュルチュル吸い出しちゃう責めかなぁ」 見ているだけで魅了されてしまうような美少女の口から、次々と溢れてくる淫語責めを聞かされているだけで、ペニスがビクビクと脈を打つ。 (優しくペロペロもされたい……でも、でもっ!) 「やられたニンゲンは皆幸せそうな顔をしちゃうの…… アンタにもシテあげるよ♪」 俺が葛藤を繰り広げている隙に、少女はゆらりと沈み込んだ。そして唇をひと舐めしてから、花の蜜を啜るように亀頭を口に含んだ。 「はむっ……んふふ♪こうやって……チュプ、ピチュ……優しく優しく」 「我慢なんて無駄なくらい優しく絡めとってあげるぅ…… ピチャッ……クチュ……口の中で……ンッ…… 亀頭を溶かしちゃうの……ジュル……クプッ」 「あっ、ああぁっ!すご……」 先ほど受けた尻尾の感触も、指先の感触も気持ちよかった。だが彼女の口の中は別格だった。 「んっ……んふふふふ、んっ♪」 「すごいっ、これ……こんなにいぃぃぃ!!」 まるで極上のオマンコに閉じ込められたように、ペニスの感覚がなくなった。しかも内部には自在にうごめく舌が触手の様に絡み付いてくる。 「んんぅ~~~~~♪」 「こんなの無理ッ、無理、ムリいいいぃぃ!!」 恥ずかしげもなく俺は喚き散らした。一秒ごとに腰から下が溶かされていくような恐怖と快感を味わいながら、少女の体にすがりつく。 「ほぉら、溶けてきたよ……甘いのが少しずつ滲んできたもん……レロ……チュ♪ これ、あともう少しでミルクが出ちゃうよ?」 「やめてっ、もう出る……こんなの我慢出来な……」 「じゃあ数えてあげようか……3……」 「2……ほら、もうピクピクだよぉ」 「1……んふっ♪」 カリッ♪ 少女の口が急激にすぼまって、裏筋の部分がキュウキュウに締め付けられる。 しかも今まで根本を締め付けていた尻尾は緩み、玉袋から精液が急激に吸い上げられていく。 「ああああぁぁぁっ、出るうううううううううううう!!!」 「ゼ・ロ♪」 ドピュウ…………ウッ! 「んああああぁっ、な、なんでっ!?」 射精が始まった途端、ペニスの根本に鋭い痛みが走った。 恐る恐る目をやると、緩んでいた尻尾の戒めが再び……! 「そんなああぁぁぁっ!」 「くすっ、わざとここでストップ♪ 残ったお汁は、ピストンフェラで搾り出してあげる……んっ♪」 彼女の顔が小刻みに動き出す。 「じゅぽッ、じゅる……んふふ、じゅぽじゅぽっ……んっんっんっ♪」 「クスッ……ほらほらほらぁ!しっかり我慢しないと、 おちんちんの芯まで全部吸いだしちゃうよ~?」 「あああぁぁ、吸い取られちゃう……どんどん……んああぁっ!」 「きゃはっ、また登ってきた……あたしに吸われたくてしょうがない、甘~いミルクが根本から先っぽに登ってきたよ?」 「絶対逃さないから……ふふ、さっきみたく気持ちよくなりたい? ……でもダ~メ!またここでストップ♪」 「あああああぁぁぁっ、イかせてよおおおおお!!」 「ふふっ、苦しいよね?あたしも吸いたいけど、 甘いミルクを根元まで押し戻してあげる」 根本を締め付けていた尻尾がウネウネと蠢きながら、射精するために駆け上がってきた精液をじわじわと玉袋へと押し戻す。 行き場を失った精液が棹の中で暴れだし、俺は苦悶の表情を浮かべた。 「ぎっ、い……いいぃぃ!」 「あはぁ……いい顔してるぅ!その表情すごくいいよ…… ゾクゾクしちゃう」 「アンタがおねだりしてる表情ってすごく可愛くて切なくて、 もっといじめてあげたくなっちゃう!」 「やめてっ、も、もう……うああぁぁぁ!!」 少女は満足気にこちらの表情を伺いながら目を潤ませている。 「そんなに気持ちよくして欲しいんだ? じゃあ、あたしのお願いを聞いてくれたら…… 考えてあげてもいいよ」 「お願い!?」 「今日からあたしのものになって」 「きちんと契約すれば、毎晩吸いとってあげる。 ニンゲンとしての尊厳なんて無視して、 快楽しか考えられない虫けらみたいにしてあげる」 (毎晩……こんなに気持ちよくされちゃう……) 「勇者の血を奪われて、惨めな気持ちのまま、 アンタはあたしのものになっちゃうの……いいざまね!」 「その代わり毎日唇がふやけるまでキスをして、 おちんちんが気持よすぎてパクパクするまで愛撫してあげる…… どう?あたしのモノになっちゃう?」 「あたしのモノになっちゃいなよ?ずっとこの世界に閉じ込めたままイキっぱなしにしてあげるからさぁ」 「……」 早く射精したい……早く楽になりたいという気持ちが俺を焦らせる。 眼の前にいるのは絶世の美少女サキュバス。 ミウとは違って胸は大きくないが、その弱点を補って余りあるほどのキュートなルックスと、スレンダーな身体を持っている。 「くそっ……」 「う~ん?どうしたのかなぁ? もう我慢できなくなっちゃった?クスッ」 「あっ……いや!俺は……」 「これからどうして欲しいのか、ちゃんと口に出して『お姉ちゃん』にお願いしてごらん?ボ・ク♪」 急に首を傾げ、こちらの顔を覗きこまれ、優しい口調で問いかけられた。ただそれだけなのに心臓がドキドキしてくる。 やっぱり可愛い!このまま少女に身を委ねたい気持ちが膨らんでくる。 この閉ざされた妖しげな空間で俺は…… 「俺、は……!」 「あたしのものになって、 ず~~っとエッチなことし続けたいんだ? 可愛いおちんちんの先からミルク出しちゃうんだ?」 畳み掛けるように少女は、俺の心を言葉で絡めとろうとしてくる。 「言うな……言わないで……」 「恥ずかしい?んふふ……そうだね、 アンタは今からとっても恥ずかしい男の子になっちゃうんだよ」 「サキュバスに抑えこまれて、甘い誘惑にも負けちゃって、 ニンゲンとしての尊厳なんか無視されて、 快楽だけしか考えられない生き物になっちゃうの」 クチュッ、クチュ、クチュウッ! 「んあああああああぁぁっ!」 話しかけられている間、ずっと少女はペニスをいじりまわしていた。 「身体はこんなに素直になってるのに、 口先だけで抵抗しても無駄だと思わない? 早く心も素直になって溺れちゃいなよ?」 触れるか触れないかのタッチで亀頭を撫で続けてられ、俺はとうとう首を縦に振ってしまった。 耳から入ってくる少女の声と、肉体への甘すぎる誘惑に心がポッキリと折れてしまった――。 「あ~ぁ、本当にアンタたち、一度滅んだ方がいいよ。 こんなに心がもろくて、誘惑にも弱いなんて、 この世に存在している価値ないし」 「くっ……んああぁ!」 「こんなことを言われてるのに逆らえないんだ? いいよ……あたしが全部奪ってあげる。 勇者の血も、ニンゲンの未来も全部ね!」 「人間の未来……?」 「快楽漬けにされちゃうアンタには関係ない話よ。 そんなことより、いいこと教えてあげようか?」 「……!?」 「このおちんちんがあたしの魅力に屈してドッピュンしちゃう度 に、アンタの力があたしのモノになるんだよ」 「射精した直後の心の隙間に、サキュバスの甘~いエキスを注入していくの。それを繰り返すとね、 アンタは身も心もあたしの虜になっちゃうんだ~」 「そんなことが……ううぅ……できるわけ」 「それができちゃうんだよー♪ どうやって注入するか知りたい?……こうするのよっ!!」 グリュウウウウウッ!! 「ぐあああああああああぁぁぁっ!」 一瞬、何が起きたのかわからないほどの激痛が背筋を駆け上がってきた。 しかしその直後、身体の真ん中になにか得体のしれないものが根を張ったような感覚が……! 「あはははっ、処女喪失おめでとー! 不意打ちだったから力が入らなかったでしょ~」 「な、なにをしたっ!」 「う~ん?さっきまでおちんちんをいい子いい子してた あたしのかわいい尻尾が、アンタの後ろの穴から入り込んでいるんだよ」 少女が自らの尻尾を手に持ってしならせると、その振動がすぐに体の中まで伝わってきた。 「んぐ……ああぁぁ!!」 「ウニュウニュしながらゆ~っくり感じるところを探してあげる。 あたしの手にかかれば男の子の弱点なんて簡単に見つかっちゃうんだから♪」 ズル……ズズズズ……! 「あ、ああぁ……動くな……動かすなあああぁ!」 「苦しいでしょ?普段は吐き出すだけのところに何かをつめ込まれてるんだからねぇ……ふふふふふ、楽しいなぁ……♪」 お尻の穴と言うよりは、胃の中がかき混ぜられてるようで……言葉がうまく絞り出せない。 単純な痛みなら叫べばいい。快感なら喘げばいい。だが今の俺が味わっているのはそのどちらでもなかった。 「いいかげんにし…………ひいぁっ!?」 「ん~?どうしたのかなぁ??」 「あっ、はっ、ああぁ!」 「ここをクリクリしたら、お顔が真っ赤になっちゃったね~?ふふふふふ……」 「動かああぁっ、なあ!ああぁぁぁぁ~~~~!!」 言葉がうまく紡げない……身体の中でうごめく尻尾が、何かを探り当てたのをきっかけにペニスがしびれだした。 透明な粘液がにじみ、快感が加速していく。何をされているのかわからないが、身体がどんどん熱くなっていく! 「あらあら、もっとうまく隠さなきゃダメじゃない。 そんないい表情されたら、あたし……全力でイジメたくなっちゃう!!」 ずにゅううっ!ズリュリュッ!! 「ひぐっ、あああぁぁっ、ああ、やめっ!」」 「きゃはは~♪ほぉら、ぐりぐりぐり……ここが前立腺。 男の子の最大の弱点だよぉ?」 前立腺……聞いたことのある言葉。まるで身体中の感覚が全部抑えられ、快感にすり替えられていく! 頭の先から足の指までジンジンと感じて、悶えることもできない。 「軽く撫でるだけで男の子はウットリしてきちゃうし、 ツンツンされたらもう大変だよぉ?」 ツンツンツン♪ 「いっ、ひいっ!?ああぁ~~!!」 「あたしの尻尾で、しつこくイジメちゃお。 アンタが悶絶してガクガクし始めるまで、 ゆっくりネットリコチョコチョしてあげるね」 「やめ、て……おかしくなる……!」 「クスッ、おかしくなればいいじゃない。 ううん、もうとっくに壊れてるわよ、アンタ」 ドクッ 「んぎいいっ!!」 身体の中に直接お湯を注がれたような感覚が、突然俺を襲った。その直後、体の芯が更に熱くなり、全身が熱に犯された。 「どう?身体中を敏感にされちゃった気分は」 「熱い……なに、これええぇぇ……」 「お尻の中に、あたし特製のお薬を入れてあげたの。 簡単に言うと媚薬?すぐに溶けこむから効き目はそんなに長くないよ。だいたい十時間くらいかな?」 「じゅ……!」 十時間も!?身体中がしびれて動けず、快感だけしか感じない状態のままだなんてひどすぎる。 ドクッ、ドクンッ! 「んはあぁ!」 さらに少女は容赦なく二度目の注入を開始した。薬はさっきよりも早く効き始める……。 「お腹の中が暖かいでしょ? ふふふ……アンタはね、もうすぐこのまま射精しちゃうわ」 「アンタのお尻があたしの尻尾をキュンキュン締め付けてるもん。 時間の問題ね」 「ああ、はあぁ……」 「ふっふ~ん?どうしたの、そんなに切ないお顔しちゃって……」 勝ち誇ったような顔で俺を眺めている少女。俺が見つめているのはその顔にある一点だった。 それはあの―― 「当ててあげる。 『イくときはお口の中に出したい』って思ってるんでしょ。 このヘンタイ」 「!!」 「可愛いあたしの口の中を、アンタのミルクでいっぱいにしたいんでしょ?それからチュパチュパされて吸い尽くされたいんだよね」 少女の声に導かれるように、俺は黙って頷いた。 「……して……」 「全然きこえな~い! こういうのはちゃんとお願いしないとだめだよッ」 「ぐっ!…………して……ください!お口で、イかせて……!」 「クスッ、いいよ……特別にその夢、叶えてあげる。 咥えられた瞬間にイっちゃいなさい?」 恥ずかしさで気が狂いそうだった。自分の口からあんな言葉を言わされてしまうなんて……。 落ち込む俺を見つめながら、少女がゆっくりと股間に顔を沈めてきた。 「童貞おちんちん、いただきま~す♪ ……あ~んっ、ジュルッ、プチュ……♪」 「んううぅ!」 つややかな唇が亀頭をついばむようにしながらニュルリと亀頭を咥え込む。 口の中では小さな舌がカリにまとわりついて、チロチロと感じやすい部分をくすぐってくる。 「イ……くぅ……!ああっ!!」 「ズチュッ、おひりの……ピチュ、なははら……おひはしへあへふ(おしりの中から押し出してあげる)」 今まで鳴りを潜めていた少女の尻尾が、前立腺に三度目の毒液を浴びせかけてきた。 「っ!!」 無防備で感じやすい部分を薬漬けにされ、ペニスが極限まで張り詰める。 「もうビキビキじゃん…… んっ……ぷはっ、ほら……もうイけ~~~~!」 「あああぁぁっ、出るッ!イっくううううう!!」 ドピュウウウウウウウウウウウウウ!!! 弱点を媚薬漬けにされ、たっぷり焦らされたペニスから敗北の証が搾り取られていく。 「きゃはっ、やっぱここ責めると驚くほどいっぱい出るんだねぇ!」 「はぁっ、はぁっ、は……んあああぁっ!いじらないで!!」 「やだよ。いじるに決まってるじゃん。 おしりの中も、おちんちんもビクビクでしょ? あははははははは♪」 「ああぁぁ…………!」 完全に犯されてる。心も身体も、全部目の前の少女に握られている。 そんな絶望感でいっぱいの俺に向かって彼女は続ける。 「今は天国でしょう? うふふ……そのまま気持ちよくなってなさい。 あたしが快楽地獄に連れて行ってあげる」 「ああぁっ、何を……!?」 「まだ残ってるミルクを吸い出して、 カラカラにしちゃうからね……はむっ♪」 「あああぁ、も、もう無理っ!無理いいいいぃぃぃ!!」 ジュルジュルジュルッ、グチュ、レロッ……ズリュウウウ~~~~ 「ふああぁぁ!!」 頭を振って悶えても、少女の責めは止まらない。 それどころか弱くなった部分をさらにえぐるように俺を責めなぶってくる。 「んっ、んん……ジュルッ、ジュプププ~……んふっ、 おいひい……アンタのミルクすごく美味しいよ! いろんなモノが溶け出して最高……」 「とろとろで甘くて、ねちっこくてぇ……こんなにすごいエナジーはじめてだよぉ!さすが『勇者の血』の持ち主ね。 もっともっと吸いたくなっちゃうよぉ……」 「やめてえええええ~~~!!」 俺は恥も外聞もなく叫んだ。もちろんそれで何かが変わることなどないというのに。 「んっ、ずちゅ…… そろそろ一休みさせてあげないと死んじゃうかな? じゃあ栄養ドリンクあげるね」 「え……ぁ……」 「んふふ……いくよぉ♪」 ドクンッ! 「んうあああぁっ!」 少女に押さえつけられたまま、俺はもがこうとした。しかし激しく暴れるほどの体力もなく、かろうじて首から上が少し跳ねる程度の抵抗しかできない。 「あはははっ、暴れてる~!でも絶対逃さないから。 あたしに押さえつけられたまま、どんどん栄養ドリンクを吸収してもらうよ?」 「あああぁ……何かが入ってくるううぅぅ!!」 「おいしいでしょう?アンタのお尻の中に打ち込んだ尻尾から、 あたし特製ジュース・パート2を飲ませてあげてるの」 「うっ……」 「さっきのと違ってこれは栄養剤。 お腹の中から身体中に力が染み渡ってくるでしょう?」 確かに身体が焼けるような感覚はない。しかし身体の興奮が収まる様子はなく、むしろ……! 「こ、これ……まさか!」 「きゃはっ、気づいた?おちんちんが元気になる薬と、 あたしを好きになっちゃう薬も混じってるの。 そろそろまた射精したくなってきたんじゃない?」 「い、いやだ……そんなのって……!!」 「ほら、シコってあげるから感じちゃいなさい。 おちんちんだって『そうして欲しい』って言ってるじゃん」 「これは違っ……」 「言い訳無用。シコシコ開始~♪ アンタの言葉はもう一回ミルクを吐き出させてから聞いたげる」 目の前でピクピク震えるペニスを、少女はゆっくりと上下に愛撫し続けた。 永遠とも思える時間、俺は少女の愛撫に踊らされた……。 ――それから数時間後。 徹底的に犯された俺は、薄れかけた意識の中で彼女の微笑みだけを追いかけていた。 「もう喋れなくなっちゃった? でも心はだいぶ素直になってきたねぇ……よしよし」 「あうあ……ぁぁ……」 「うんうん、いっぱい出したもんね? おかげでアンタの身体の中にある大事な物、 ほとんどあたしのものになったよ」 「あたしは極上のミルクと『勇者の血』を手に入れて、 アンタはひたすら気持ちよくなって……お互いに満足だよね?」 「も、もっと……して……もっとぉ」 無邪気に笑う少女に向かって、俺はさらなる責めをリクエストしていた。 「クスッ、まだ満足できないの?じゃあとことん付き合ってあげる。徹底的に犯し尽くして、あたし専用のインキュバスにしてあげるよ」 「そうすればずっと一緒だよ? その身体だけじゃなくて、魂まであたしに縛り付けてあげる……」 その言葉に対して、俺の身体は素直に喜びの感情を示した。 嬉しそうに震えるペニスを掴みながら、少女は密やかに微笑んだ。 「それと、あたしとの赤ちゃんつくってみる?」 少女の指先が、ほっそりとした太股の付け根を指さした。そして、それが何を意味するのかを俺は瞬時に理解した。 「っ!!…………う、うん!」 「ふふふ、良い反応。そのおちんちんミルクを、 女の子の大事なお部屋に注いでくれればそれでいいんだよ?」 「そうすれば『勇者の血』を引いたサキュバスが生まれちゃうか ら、もう最高……女王様にも褒められちゃうよね」 少女はゆっくりと俺の身体に指を這わせてきた。妖しい刺激に背筋がゾクゾクする。 「はぅ……」 「じゃあ始めようか……心配しないでいいよ? あたしがリードしてあげる」 天使のような笑みを浮かべながら、少女が俺を抱きしめる。 「光栄に思ってよね。 あたしは気に入ったオチンチンしかここに入れないんだから」 「……!」 少女の手がそっとペニスを握り、入り口に押し当てる。 「うああぁぁっ!すご……いぅぅっ!」 「ふふっ、吸い付いてあげる。 サキュバスの柔らかオマンコ……たっぷり味わいなさい」 小さくすぼまったビンク色の膣口は、クチュクチュという音を立てながらペニスを捕食していく。 ゆっくり時間をかけて吸い付きながらペニスを引きずり込まれた時、すでに俺は射精寸前まで高められていた。 「何回も連続射精させて、 気絶したところで全部奪ってあげる……ほら、イっちゃえ!」 「あああぁぁぁぁっ、すごいっ! これすごいよおおおおお!!」 「んふっ、もうイったの? じゃあこのままもう一度搾るよ……えいっ♪」 「ああああぁっ、これいい……いいよおぉぉ、 もっと搾ってええええ!!」 「ふふっ、これで二回目。まだ出るよね。 もっとあたしに溺れてみて?もっとあたしにその身を捧げて?」 「ひぁぁぁぁっ、またイクッ!!」 「アンタの意識がぶっ飛んで、気絶したあともネチネチ責めなぶってあげるからさ。あははっ、きゃははははははっ♪」 尻尾よりもフェラよりも、男を感じさせるサキュバスの膣内の感触に、俺はとうとう心の底から屈してしまった。 もう快楽のことしか考えられない。このままどこまでも堕ちていくだけ……。 何度もペニスから精を奪い吸収していく少女の虜となった俺は、その後もずっとずっとこの閉ざされた楽園で狂い続けるしかなかった。 このままこいつの手に落ちたら、きっと後悔する。そんな思いが俺の意識を覚醒させる。 「なんでもお前の思うとおりになると思ったら大間違いだぜ」 ぼんやりしていた頭の中がクリアになる。少しだけなら手足も動かせそうだ。 これが自分の中に眠っている「勇者の血」の力かどうかは判らない。だが萎えかけていた気力が復活した。 「へぇ、すごいねぇ……まだあたしに逆らえるんだ? でもね、そういうのすごくムカツクんだよっ!」 「うっ、うわあああああぁぁ!?」 「意識は目覚めたみたいだけど、 身体はまだロクに動かせないんでしょ?見てればわかるよ……」 「だから思い出させてあげる。 あたしがその身体に刻みつけた快感をね!」 少女の指先が容赦なくペニスをいたぶる。快感にしびれた部分をさらに擦り上げられると、身体中からドッと汗が吹き出してきた。 「や、やめっ……あああぁぁぁ!」 「きゃはっ、相変わらず敏感だもんね?アンタはね、 あたしのテクニックに手も足も出ずに翻弄されていたのよ」 「こうやって指先でカリ首をペロペロめくられただけで、 子犬みたいに泣きじゃくっていたの」 「ほぉら……聴いててあげるからいい声で鳴きなさいよ」 クチュッ、クニュクニュクニュッ! 「ああぁっ、ぐ、う、ああぁぁっ!?」 叫んでも無慈悲な責めが止まることはない。むしろピンポイントで感じやすい部分をえぐってくる。 「おちんちんこんなにおっきさせて、情けないね…… ほらほら、さっきまでの強がりははどうしたの?」 「やめっ、やめてええええ!!」 「う~ん?気持よすぎて破裂しちゃいそうなの? 大変だね。そんなの見たくないから、解放してあげる」 やっと解放される……その言葉に体が緩んだ。しかし少女の指先はさっきよりも激しく亀頭をこね回してくる。 「があぁっ、な、なんで……!?」 「あはっ、もしかして許してもらえると思っちゃった? バッカじゃないの。手を離すわけ無いでしょう」 「このまま濃厚ミルクをお漏らしさせてあげる。地獄の始まりよ。 思う存分白いのビュービュー出しちゃいなさい!」 「ぐうううっ!」 少女の口調から、更に激しくペニスをしごかれ、焼け付くような痺れが来ることを覚悟して歯を食いしばる。 しかし…… シュルッ、サワサワサワ……♪ 「えっ!?」 「ふふふ……最後は優しくイかせてあげる」 「なっ、なんだこれ……身体がムズムズするッ!?」 「こういう責めはこらえきれなくてモジモジしてきちゃうでしょう。 いいんだよ?このまま出しちゃっても」 「アンタの甘~いミルク、あたしの尻尾で全部飲んであげる。 お漏らしした白いやつを、全部優しく舐めとってあげる」 「うっ、ううぅ!!」 見事にフェイントを掛けられてしまった……。 激しい刺激を予想していただけに、この柔らかい責めには身体が対応できない。 「ああぁっ、腰があああぁ!!」 「ほらね、腰が跳ね上がってきちゃうでしょ? 大丈夫、このまま搾ってあげる。 優しく何度も何度もなでなでして、アンタを吸い取ってあげる」 少女の言葉が耳を通じて、俺の心を甘く誘惑する。 このまま出したい、射精した後も優しく吸い取られたい……その思いが膨らみはじめた時、ついに限界が訪れた。 「ああああぁぁあぁっ、イっくうううぅぅ!!!」 たっぷり焦らされた分だけ、大量な精液が吹き出してしまった。 少女の手が棹をしごき、尻尾が亀頭に吸い付いてくる度に体中の力が吸い取られていく……。 「きゃはっ、ドクドク震えちゃってかわいい~~♪ 溜まってるんでしょ?もっといっぱい出しなさいよ」 射精したての敏感なペニスを少女の細い指が蹂躙する。 「があぁっ!!」 「優しくシコシコしてあげる。ほらぁ……我慢出来ないでしょ。 あたしの手のひらを妊娠させるくらい出しちゃえ!」 チュクチュクチュクチュクッ……♪ 「あああぁ、止まらないッ!?やめてええええ!手を止めて!!」 「止まらない?おもらし止められないよね? ふふっ、そうなるように呪縛をかけてるんだから当たり前でしょ」 「アンタって本当に馬鹿だよね。さっき素直にお願いしてれば、このあたしのお口の中で、キャンディみたいに甘く溶かしてあげたのに」 ビクビクと震える俺を見つめながら、少女はじわじわと俺の身体から精液を搾り取っていく。 「も、もう……」 「なぁにその目。もしかして許して欲しいの? ダメだよ、絶対許さない。 このまま手のひらで搾り尽くすんだから」 「手のひらだけじゃなくて尻尾も使うけど、 とりあえずアンタが壊れるまではこのままイかせ続けるの」 「そんなっ!」 「幸せでしょ?こんな可愛いサキュバスに壊されて。 最後の最後までネットリ責めなぶられちゃうんだよ…… ふふっ、あははははははは!」 勝ち誇ったような表情で少女が俺の顔を覗いている。この慈悲のない責め、やはりこいつは悪魔……いや、サキュバスなんだと実感させられる。 (俺はこのままこいつに吸い尽くされてしまうのか……) 「ねえねえ、壊される前に何か言っておきたいことなんてある? 聞いてあげないこともないけど」 無邪気な顔で残酷なことを俺に尋ねてくるサキュバスに向かって、俺はポツリと呟いた。 「ミ……ゥ……!」 喉が渇きすぎてうまく声が出せない。 しかし今の俺の心のなかで気になっているのは彼女のことだった。 昨日出会ったばかりなのに、彼女は俺に尽くしてくれると言っていた。あんな言葉をかけられたのは生まれて初めてだった。 (本当に最期ならミウに……会いたい……いや、会いたかったな) 「ちょっ……なんでアンタがお姉ちゃんの名前を呼ぶわけ? ふざけるのもいい加減に……」 窓ガラスが割れるような音と共に、何もない空間にひびが入った。 「えっ……うそッ……!?」 うろたえる少女の目の前でこの部屋を包んでいた「結界」が崩れ始めた。 「何なのよ、この音! まさか結界に亀裂が入るなんて…………ありえないよ!!」 ずっと俺を悩ませていた妖しげな感覚が急激に薄れてゆく。 「すごい結界作ったね~!…………なかなか固かったわよ」 「あ、あああぁぁ!ミウお姉ちゃん!!」 「久しぶりね、メイ。 こんな手の込んだ事をして、一体どういうつもりなのかな?」 「……?」 どうやらこの少女はメイという名前らしい。 「だ、だってお姉ちゃんの反応が消えたから…… あたし心配になってこっちに来ちゃったんだよ! コイツにやられたと思って」 「それでユウマをこんな風にしちゃったんだ……」 ミウは俺の姿をちらりと一瞥してから、再び少女の方へと向き直った。 「ふぇ!?お姉ちゃん、もしかして怒ってる…… でもなんであたしが怒られちゃうの?」 「ふふっ、怒ってなんかないわよ~♪ ただね、私の大好きなユウマが、 メイと仲良くしてたんだなーって思うと……ちょっとね?」 「お姉ちゃん笑ってない!目が笑ってないよぉ……!!」 「あら?そんなにガクガク震えなくてもいいじゃない。 お姉ちゃん悲しいなぁ」 「いやだ!いやだいやだ嫌だあああああ~~! 前にもその笑顔のまま、あたしお姉ちゃんにメチャメチャにされたことあるもん!!」 「ふふっ、よく覚えてたね。さすがはメイちゃん♪」 「やっぱり怒ってるううううううう!?」 あれほど生意気だった少女がミウの目の前で怯えて許しを求めている。 「やだなぁ、私はなにもしないよ。 でもユウマはあなたに言いたいことがあるみたいよ?」 ミウが軽く指を鳴らすと、俺の身体を縛っていた結界の効果が完全に消えた! やっぱり彼女、すごい実力を持ったサキュバスなんじゃないのか……? 「えっ……あ、あれ?なんで結界が消えてるの? それにニンゲンも元に戻ってるみたい……お、お姉ちゃんッ」 「メイもサキュバスなんだから、エッチするときは小道具に頼っちゃダメじゃない。お姉ちゃんそれも悲しかったわ」 「だからってなんでお姉ちゃんがこいつの肩を持つのよ!」 「……だって、私はもうユウマのものだから」 「へっ!?なにソレ…… 顔を真赤にしちゃってるけど、どゆこと!?」 「契約の儀式の最中でしくじっちゃったのよ。 逆に私が彼と契約しちゃったってことね」 「うそだあああ~~~!あのお姉ちゃんが、オトコなんてゴミみたいに見下してたお姉ちゃんがニンゲンなんかにッ…… 「へぶぅっ!!」 「ユウマの前で言葉が過ぎるわよ、メイ」 少女が苦しげに呻く声を上げてから、乾いた炸裂音が響いた。 ミウのパンチは音速を超えているのか……。 「いたひ……お姉ちゃん、本気なんだぁ……!」 半べそ状態のメイが、恨めしそうにミウを見つめている。 「さて、ユウマ。そろそろ動けるんじゃない?」 「あ、ああ……そうだな」 ミウの言う通り身体に自由が戻っていた。 「勇者の血」が流れているくせに、恥ずかしながらサキュバスに助けられた形だ。 「身体も自由になったところで、この子をお仕置きしていいわよ。私の妹でメイっていうの。色々ごめんなさいね」 「メイ……っていうのか」 「ななな名前呼ぶな~~!ニンゲンッ!!」 「!?」 何気なく名前を口にした瞬間、少女……いや、メイが身体をブルッと震わせた。 「あややややややや……やめてよぉ! ダメなんだよ、あたしの名前を呼んじゃダメなんだよぉ!!」 「どういうことだ、ミウ?」 「この子ね、男の人に名前を呼ばれると興奮しすぎてますます可愛くなっちゃう体質なのよ。だからユウマも、もっと呼んであげて?」 「うわああぁぁん!お姉ちゃんズルい! ひゃううぅ!こ、このォ……」 メイは悔しそうな表情で俺に向かって拳をブンブン振り回している。これはこれで可愛らしいとは思う。 「やめろ、メイ」 「ふひゃあぁぁぁ……名前呼んじゃダメェ……」 「ユウマに名前を覚えてもらって嬉しそうね、メイ♪」 「おねーちゃーん!やっぱりこんなの無しだよぉ!! ぜんぜん力が入らなくなっちゃうもん」 「あら、そんなことないと思うな?メイだって立派なサキュバスなんだから、並の人間が太刀打ちできるわけないんだし」 「でもでもでも!そいつは『勇者の血』を持ってる特別なニンゲンだよ!」 「それはそうだけど、ちょうどいいハンディキャップじゃない? メイも本気で戦ったほうがいいと思うよ」 「ふ、ふんっ!たかがニンゲンごときに……あたしが本気になるわけないよ、お姉ちゃん!!」 「それはどうかなぁ。とにかくユウマ、後は任せたわ。私は周りの人に気付かれないように結界を張り直してくるからね~」 そう言い残すと、ミウはそそくさと部屋の外へと出ていってしまった。 「……」 「い、行っちゃった…………って、コラアアアァァァ!?」 一瞬の隙を突いて、俺はメイの背後をとった。そして可愛いお尻をむき出しにして、ペニスの先端を控えめな膣口に突き立てる。 「後ろをとったからっていい気になるんじゃないわよ、ニンゲン!その気になればアンタなんかに負ける要素はひとつもないんだから!!」 「覚悟しなよ、メイ……たっぷりお返しさせてもらうぞ」 「なっ、名前を呼ばれたって……我慢すれば……くぅぅん! やだ、気持ちいいよぉぉ……」 俺は焦らすように硬くなったペニスをオマンコの入り口に擦りつけた。 「いつもだったら反撃できるのに、なんでこんなに……はぁぁん! すごい……硬くて、熱くて……溶かされちゃう……あたしサキュバスなのに!」 「こうすると感じてくれるのか?メイ」 「ううう、うっさい!いちいち名前……ううぅ、気持よくなんか……ぜん……ぜんっ、ないいい、ああぁぁぁ!!」 「ごめん、痛かったか?」 興奮しすぎて強く押し付けすぎたかもしれないと反省していたら、メイが身体を捻って不安そうに俺を見つめてきた。 「えっ、やだ……なんで優しくするの……!?」 「何故と聞かれてもなぁ……」 「ひぅっ!だ、だってあたし、アンタのことをメチャメチャにしようとしてるんだよ?それなのに……!」 「メイはミウの妹なんだろう?そしてミウを助けるためにここへきた」 「そ、そうよ!あたしはアンタの手からお姉ちゃんを助けるために……」 「だったら全部許すよ。そのお姉ちゃんを思う気持ちに免じて」 「ああああぁぁぁぁ~、おちんちん入ったあああああぁぁぁ~~! 全然許してないじゃんっ!」 奥深くまで一気に串刺しにすると、メイは身体を震わせて反応を返してきた。 (すごい……!これがメイの膣内……ッ!!) 会話をしながらゆっくりとピストン運動をする。さすがにサキュバスだけあって、身体の作りそのものが人間とは違う。 「お姉ちゃんの妹だからって……そんなのずるいよぉ! こんな気持ちいいお仕置きされたら、身体も心も溶けちゃうよぉぉ!!」 「だったら溶ければいいじゃないか……うくっ!」 ペニスを出し入れする度に、柔らかな少女の秘肉がしっとりと絡み付いてくる。押さえつけている尻肉の弾力も、可愛らしい表情も最高だ。 全てが男を狂わせるようにできているみたいだ……メイの膣内は狭くて、気を抜いたら俺が先にとろけてしまいそうだった。 「で、でもっ!あたしを殺す気なんでしょ!? その『勇者の血』の力で、あたしやお姉ちゃんを支配していたぶるつもりなんでしょう!?」 「そんなことはしない! だから約束しろ……人間には危害を加えないって」 「ふぇっ!?どういう……こと……あ、ああぁん!」 だいたいサキュバスの殺し方なんて、俺にはわからないんだ。 「勇者の血」のことすらよくわかっていない。 ただひとつだけ言えるのは、サキュバスがこの俺の血が持つ力を恐れていることだけなんだ。 「ミウはもちろん、メイのことを殺す気もない。だから約束しろ!!」 「ほ、本当に……じゃ、じゃあ……する……するよぉぉぉ!!」 メイの膣内がキュウキュウと俺を締め付ける。その心地よさにとうとう俺の身体は限界を迎えようとしていた。 「だからちょうだい!おちんちん、もっといっぱい頂戴よおぉぉ~~!!」 「ぐっ、くそ……も、もう!!」 「あっ、ああぁぁっ、ふああああぁぁぁ!! やだ、あたしが先にイっちゃう、イっちゃうのおおぉぉぉぉ!!」 絶頂するメイの甲高い声を聴きながら、俺も激しく腰を打ち付ける。 彼女の身体がクタクタになって、引き締まった小ぶりな尻が左右に揺れるのを見ながら、俺もついに絶頂してしまった。 どっぴゅううううううううううぅぅぅぅぅ~~~!!! 「あっ、あぁんっ、あああぁぁ~~~!えへへっ、いっぱい流れこんでくるぅ……」 「メ、メイッ!やばい……まだ……出るううぅぅぅ!!」 膣内に流れ込んだ精液を吸い付くそうと、メイの内部が激しく蠕動する。 その動きに導かれ、俺は痛いほどに背中を反らせ、精を注ぎ込んだ。 「ひゃあぁっ!?お腹の中、暖かいのがいっぱい入ってきて……ま、またイっちゃうううう! イかされちゃううううぅぅ!!んふあああぁぁっ!!」 絶頂後の敏感な膣奥にさらなる刺激を受け、メイは幸せそうな表情でその場に崩れ落ちたのだった。 ――数分後。 目の前で不満そうに、半泣き状態でこちらを睨むサキュバスがいる。 「ううぅっ、ニンゲンなんかにイかされちゃうなんてありえない」 「……」 肩を小さく震わせながら、こちらを睨むメイの頭を軽く撫でてやる。柔らかい髪の感触が伝わってくる。 「ひゃううぅっ、あたしに気安くさわんないでよ!」 「うっ、ごめん」 「べ、別にいいわよ!あたしにセックスで勝ったんだから、いちいち謝んないで!!」 「……そうですか」 一体俺はどうすればいいのだろう。ふてくされた顔のメイを見ていたら、今度は向こうから口を開いてきた。 「い、一応信じてあげる……アンタのこと、悔しいけど認めてあげるんだから」 「そ、そっか……よかった」 その言葉を聞いて、俺もやっと気持ちが軽くなった。同時に、部屋のドアノブが回るのが見えた。 「ユウマからのお仕置きは終わったみたいね。どうだった、メイ?」 「ぶー、おねえちゃんの意地悪…………キモチヨカッタ……」 「……」 再び俺はメイの頭を撫でてやる。今度は先ほどのように嫌がらなかったが、メイはジト目でこちらを見上げてきた。 「な、なによニンゲンのくせに! こんなに優しくされたらあたしが虜にされちゃうよ……」 (か、かわいい……!) これが本来の彼女の性格なのかもしれない。 ちょっと素直ではないけど、ミウとは違う魅力を持ったメイの可愛らしさに、思わず心が揺れてしまう。 「……ユウマって、絶対にロリコンの素質あるよね?」 「何をば、ばかなことを……!」 ミウの言葉を慌てて打ち消す。そんな風に思われたくないし、俺はロリコンじゃない。 その様子を見ていたメイが口を挟んできた。 「ねえねえ!おねえちゃん、ユーマのこと好きなのッ?」 「えっ?わ、私は別にきっ、嫌いじゃないけど……その……なんてゆーか……」 メイに質問されて、ミウがモジモジし出した。 「じゃあそんなに好きでもないんだよね?あたしがもらってもいいよね?」 「は?」 「えっ!ちょ、何を言ってるのメイ!!」 「あたしユウマのこと、本気で欲しくなっちゃった。だからいいでしょ?」 ミウと俺の顔を見比べながら、メイが軽くウインクしてきた。 (こんなカワイイ子にそこまでいわれると悪い気はしないな……) 不用意にそんなことを考えた瞬間―― 「こここらあああぁ!ユウマもな~に鼻の下をのばしてるのよ!ダメダメダメ!だめよそんなの!!」 「お、俺はまだ何も…………」 「えー、なにそれケチー!お姉ちゃんのケチ!!」 「あー、聞こえない聞こえない!とにかくダメ!!なんとでも言いなさいッ」 メイの言葉を聞きながら、ミウが自分の耳をふさいでいる。 「なあ、ミウ……もしかしてそれ、ヤキモチか?」 俺がニヤニヤしながら問いかけると、ミウは恥ずかしそうに拳を振り上げた。 「ユウマなんか死んじゃえー!」 「ごふぅっ!!」 ミウの音速パンチが乾いた音を立てて俺の頬に炸裂した。 やばい……目の前が…………。 「きゃあああぁ、ユウマ?なんでかわさないのよっ、起きて!ほら起きて~~~!!」 遠くでミウの声を聴きながら、俺は静かに気を失った。 場所が変わって、こちらはサキュバスの世界。この世界を統治する女王の居城・クリスタルパレスの「謁見の間」。 「遅い……」 普段は温厚なサキュバスの女王ではあるが、今日は苛立ちを隠せない。 「女王様、失礼いたします」 「おおっ!やっと来たか、エマ・フロマージュ。待ちわびたぞ」 「遅くなりまして申し訳ありませんでした。何かお困りごとが?」 「うむ。実はあの『勇者の血』を封じるために人間界に向かったミウ・シャルロットとメイ・リッシュが戻ってこないのだ」 賢明なるプレイヤー諸君には 「たった一日や二日しか経っていないのに、なんと気の短い女王であるか」と思われてしまうだろう。 だがそれには理由がある。 このサキュバスの世界において、時の流れは人間界のそれと比べて極めて緩い。 人間界での24時間が、この世界での一ヶ月に相当する。 つまり女王は2ヶ月もの間、愛する部下からの吉報を待ちわびているのである。 「ほう、さすがは『勇者の血』の系譜……やはり中級〈淫魔〉《いんま》であるミウとメイには荷が重すぎる相手だったようですね」 「うむ……だが、完全に討ち取られたわけではないらしい。二人はまだ生きている」 「なんと!それはいったい……?」 「経緯はわからぬが、ミウたちは『勇者の血』を持つ者と共に過ごしているようだ。監禁や拷問をされている様子もない。」 「人間に情けをかけられたのでしょうか……しかしそれは女王様に対する重大な裏切り行為では?」 「ふむ、私はそう思いたくないのだ。そこでエマよ、上級淫魔であるそなたにあの二人を連れ戻しに行って欲しい。そして忌々しい『勇者の血』も封じて欲しいのだ」 「わかりました。女王様の仰せのままに……しかしあの二人がそれらを拒むようなことがあれば、始末しても構いませんか?」 「……全てそなたに任よう」 エマは女王に向かって〈恭〉《うやうや》しく頭を下げると、謁見の間をあとにした。 ――そして翌日。 夢のなかでメイに襲われることもなく、俺は穏やかな朝を…… 「おねーちゃん、いただきまーす♪」 …………迎えるはずだった。 「あ~、こらっ!だめじゃない、メイ。それはユウマのために作ったんだからね」 「じゃあいいじゃん。ユーマのものはあたしのもの。そしてあたしはユーマのものだよ!」 「だから食べちゃダメ~~~!ユウマに美味しく朝ごはんを食べてもらうことが私達にとって……」 「……」 この部屋はこんなに賑やかになることを想定していない。 一人なら充分な広さを持つ空間も、3人になると途端に狭く感じる。 「おはよう……ふたりとも」 「おはようユウマ。うるさくしちゃってごめんね……でも朝ごはん出来てるよー。ちょっとだけメイがつまんじゃったけど……」 「モグモグモグ……あたしの食べかけ、食べるか?ユーマ」 「いらねーよ!そのまま食え!!……って、あれ?サキュバスは人間の食べ物を食べないとか言ってなかったか?」 「ああ、んっとねー……あたしはちょっと特別なのよー。んふふ、すごいっしょ。一緒に食事できてうれしい?」 「いや、別に……」 「ふんっ!なにさ、クールな振りしちゃって!おねーちゃん、こいつやっぱりムカツクんですけど!」 「別にメイがユーマのこと嫌いになるのは一向にかまわないよ?そのほうが私も楽だから」 「ちょ、ちょっと!今のは冗談だよぉ……でもねユーマ、あたしはちょっと変わったサキュバスなんだぁ」 「どんなふうに?」 「んっとね、んっと……なにから話そうかなぁ……」 「わかりやすく言えば、メイは人間とサキュバスのハーフなのよ。メイのお父さんは人間の黒魔術師」 「えっ!?ミウの妹じゃないのか?」 「ううん、妹だよ。サキュバスの場合、血縁じゃなくて年齢だけが姉と妹を決定づけるの」 なるほど、ずいぶんシンプルなルールだな。サキュバスみな兄弟……いや、姉妹って言うことか。 「でも、人間とのハーフとか……そんなことがあり得るのか!?」 「うん、強い魔力を持った人間は、サキュバスとの間に子供を作ることができるの。サキュバスの意思にかかわらず、サキュバスを妊娠させることができちゃうの」 「そうそう、フツーはあたしたちの都合である程度ニンシンをコントロールできるんだよね~!」 「へぇ……じゃあもしかして、俺も『勇者の血』のおかげで、メイの父親みたいな存在だっていうこと?」 軽く切り出した話題に対して、ミウとメイが急にガックリと肩を落とした。 (なんか猛烈に嫌な予感がするぞ……!) 「そうなのよね……これはいい出しにくかったんだけど……」 「お、おいっ!まさか……」 「あたしとお姉ちゃん両方とも、お腹の中にユーマの赤ちゃんがいるんだよ!」 「嘘だろ……そんなの嘘だ……!」 「あたしのお腹にいる赤ちゃんの名前、何にする?パパ♪」 なんてことだ……俺は二人に対して取り返しのつかないことを!! 「うん?どうしたのユウマ。急に正座しちゃって」 「俺も男だ。責任は取る!でも二人同時になんて、どうしたら良いのかわからないんだ……」 「なあ、教えて欲しい。俺はどうすればいい?ミウ……メイ……」 異種族間とはいえ、けじめはきっちり付けねばなるまい。この若さで俺ってやつは……しかも重婚だ。犯罪者の仲間入りだぞ!! 「プッ!きゃはははははは~~~!!おっかしい~~~、おねえちゃん、ユーマって本当に面白いねぇ!!」 「だ、だめじゃない……メイ!ここからが本当に面白くなるところだったのに……ぷぷぷぷ♪」 急にメイとミウが顔を見合わせて笑い始めた。俺は人生お先真っ暗な気分だというのに、なんでこいつら笑ってられるんだ!? 「……おい、どういうことだ?笑ってないで説明しろ!」 「クスッ、うふふふ……赤ちゃんの話、あれは半分嘘だよ。私達のお腹にはまだ宿ってないもん」 「なんだってええええ!?」 「きゃははっ、まだお腹痛いよぉ!さっきの真面目な顔、サイコー♪ユーマはまだ完全に『覚醒』してないから、そんな心配しなくたっていいのにネ~!!」 こ、こいつら……俺の純真を弄びやがって!湧き上がる怒りをどこにぶつけたらいいのか見当がつかない。 「おっ、おまえらああああぁぁぁぁ!」 「怒らないでユウマ……んちゅっ♪」 俺が振り上げた手を掻い潜るように、ミウがいきなりキスをしてきた。 (くそっ……力が吸われて……) 「いやいやっ……こんな色仕掛けで、ごまかされないぞ!」 「じゃあ、あたしからも色仕掛けすればいいよね?チュッ♪」 そして今度はいつの間にか俺の懐に入り込んでいたメイが、そっと唇を重ねてきた。 口の中に差し込まれた舌先が、俺の中でクニュクニュとうごめく。 「くあ……ぁ……ずるい……メイ!」 二人のキスに抵抗力をあっさりと奪われてしまった。 「えへへ、お姉ちゃんとあたしのキス……どっちが良かった?」 「そんなの知るか!この……うわあぁぁぁ!!」 俺の言葉を遮るように、ミウがギュッと抱きついてきた。 「ユウマ~?そういうところはちゃんと答えてもらわないと……ねぇ?メイ」 「そうだよ。この後のあたしたちの食事の順番にも大いに関わってくるからねッ!」 「食事ってなんだよ!……俺の都合は無視かよ!?」 「そーだよ?ユーマのことなんてあたしが考えるわけ無いじゃん」 「どっちも選べないというのなら、両方同時って言うことになるわね。覚悟してね?ユウマ♪」 ジワジワと二人の圧力が強まってくる。やばい……吸われる!吸い尽くされる!? 「ま、まてー!話しあおう、メイ?ミウ?」 「「そんな暇はないの!」」 二人に同時に抑えこまれた俺は、何の抵抗もできないまま彼女たちの「食事」を提供するしかなかった。 「なんで増えてるのよ……!」 「あー……やっぱりお前もそう思うよな?」 ある程度覚悟はしていたが、今日もミウがそばにいる。そしてミウのそばにはメイがいるわけで……。 「ユウマ!ちょっと来なさい!!」 「な、なんだよ……」 「ねえ、やっていいことと悪いことがあるのわからないの?……よりによって今度はロリコン?犯罪だよ、あれは」 「おねーちゃーん、ここは何?牧場?いっぱいニンゲンがいるねぇ……」 なんだか物騒なこと言ってやがるな、あいつ……。 「いやいやいや!そんなことないっ!断じてロリコンなんてことはないぞー?」 「……じゃあ、あの子いくつよ?」 「19歳ぐらいじゃないかな……」 「うそつくなあああああああ!!」 そういえばメイの年齢なんて聞いてなかったけど、いったい何歳だろう? パッと見だと藤村の言うとおり、かなり犯罪チックな雰囲気だけど……。 「いや、とにかく!あの子はミウの妹だ。ただそれだけ!!」 「それだけって……はぁ、ユウマって昔からお人好し過ぎて心配だわ。やっぱり私がついていないと」 「はい、今朝は幼馴染っぽいセリフ頂きましたー!」 「はぐらかさないで!まさかとは思うけど、あの二人を部屋に住まわせたりしてるんじゃないでしょうね?」 ギクッ!! 「図星か、このスーパーロリコン男!美少女二人も囲い込んでいい気になってるんじゃないわよ!」 ヤバイ、藤村が拳を握りしめた。藤村の闘気がみる間に膨れ上がっていく。 「こりゃヤバイ!逃げろー!!」 「あっ、待ちなさーい!!」 ドンッ 「うぐっ!」 藤村の間合いから逃げようと走りだした瞬間、運悪く誰かにぶつかってしまった。 「いてて……どうしたんだ、ユウマ?」 「山田くん!そいつを取り押さえてちょーだい!!」 「藤村さん、今日も絶好調だね~!」 「山田ああぁぁ!見逃してくれエエエェ!!」 「僕はいつでも女性の味方だよ、ユウマ。ところであのキュートなルックスの美少女オブ美少女は誰だい?」 こいつの目には美少女しか写ってないようだな……。 「ああ、あれはミウの妹でメイっていうんだ」 「こここらああああ、ユーマ!名前簡単に教えちゃダメエエエエェェ!!」 「メイ!メイちゃんっていうんだ!ミウ様の妹のメイちゃん、はじめまして」 「な、なんなのよコイツ!近寄んないで!ひゃっ、肩に、てて手を置かないでッ……ホントに殺すわよ!!」 「キミにだったら殺されてもいいよ!いや、もう殺されちゃってるねぇ……僕のハートの中心部分が」 「おおおおねえちゃーん!コイツへんだよ!ユーマよりもヘンだよおおおぉぉ!?」 山田の積極的なトークに、さすがのメイもたじたじになってる。でもおかしいな?昨日俺が名前を呼んだ時ほどの効果はないみたいだ。 (メイには名前を呼ばれても平気なように、催眠をかけておいたの♪) 俺の表情から考えを察したのか、ミウが耳打ちしてきた。なるほど、それなら納得だ。 「おねえちゃーん!助けてよおおおぉぉ!!」 「メイちゃん、マイシスター!僕のことはカイトって呼んでね?」 「なんでそんなに馴れ馴れしいの!?怖くないのあたしが?」 「ああ、怖いさ……キミを見ているだけで全てを投げ出してしまいそうな自分がいることに気づいてしまったからね!」 「ひいいいっ、ダメダメダメ!やっぱりダメ!あたしこういう奴苦手ッ!!」 「ふふっ、メイ?山田くんはいい人だよ。そのまま校内を案内してもらうといいわ」 「お安いご用ですよ、ミウ様……いや、お姉さま!今日からお姉さまと呼ばせて頂きますね」 「うんうん、いいよー。メイのことよろしく頼むわね、山田くん」 「御意!」 「いやああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!おねえちゃあああぁぁぁん!!」 山田のやつ、大したもんだな……あいつの女好きは種族を問わないらしい。 「……で、ミウさんは一緒に行かなくていいの?校内見学」 「ええ、私はもう昨日済ませたから。今日は終日ユウマのそばにいるつもりよ」 「なんでサラッと恥ずかしいこと言えるのよ、この女……」 そしてこちらでは新たな女同士のバトルが始まろうとしていた。出来れば穏便に済ませて欲しいのだが、二人の空気は全くそんな気配を見せない。 もしかして、俺にもモテ期が来たのかと一瞬勘違いしそうになったが、この雰囲気がモテ期特有のものだというのなら、俺は別にモテなくてもいい……。 「もちろんカノジョも一緒にいてくれていいよ~?」 「カノジョってまさか、私のこと?だとしたらそれ、絶対違うから!」 「私はユウマの幼馴染だけど、決してカノジョって言う訳じゃ……あ、あれ……昨日もこのセリフ言ったような気がする……」 「ふふっ、聞いちゃった♪じゃあ私がユウマのカノジョになっても、別に良いって言うことだよね?」 「ぐぬぬ……!なんなのよアンタ……ユウマをたぶらかすだけじゃなく、私をイラつかせるようなことを……って、ちょっとぉ!こっち向きなさいよッ!!」 今にも襲いかかってきそうな藤村を放置して、ミウが俺の方へと向き直った。 「ねえ、ユウマ?山田くんが昨日『フジムラはツンデレだ』って言ってたけど、あれってどういう意味?」 「へぇ、山田がそんなことをねぇ……ほっほぅ~」 「なっ!」 「でも俺は藤村がデレるところなんて見たことないんだけどな」 「デレるってなぁに?」 「ちょっと!勝手にツンデレ扱いしないでよ!私はぜんぜんユウマのことなんて」 藤村がプイッと横を向いた隙を見計らって、ミウが俺の顎に手をかけた。 「あっ、チャンス到来……ちゅっ♪」 そして当たり前のように奪われる俺の唇。 (ば、馬鹿!ミウッ、周りにいっぱい人がいる!!) 周囲の視線が俺たちに突き刺さるが、それ以上に目の前にいる藤村の視線があああああぁぁぁ!! 「ユウマ……!」 「はっ!マズい!!」 昨日と同じく殴られる!藤村の鉄拳制裁が1秒以内にやってくる!! 「…………っ!」 しかし何も起きなかった。いや、鉄拳制裁よりも大変なことが目の前で起ころうとしていた。 「えっ……」 「ユウうっ、ううぅ……なんでいつも私を困らせることばかり……するのよぉ……うぐっ、ううぅぅ……」 「ふじ……むら……?」 「うわあああぁぁぁぁぁんっ!ああぁぁん、うああぁぁ~~!!」 「泣くなよ!お、おいっ!?」 「ぐすっ、グスン……うっさい、こっち見るな!泣いてない!!」 (どっからどう見ても泣いてるし、この状況だと全部俺が悪いことに――!!) いや、誰が悪いかなんてどうでもいい。俺の目の前で藤村が泣いた。それが全てだ。 「好きに……すればいいじゃない……私のいうことなんて、どうせ聞いてくれないんでしょう?……ううぅぅ……」 泣き顔を必死で隠そうとする彼女に、俺は黙ってハンドタオルを差し出した。藤村も黙ってそれを受け取る。 「藤村……その悪かったよ。お前の話、ちゃんと聞くからさ……ごめんな」 「こういう時だけ優しくしないでよぉ!ユウマはいつもそう……ズルいんだよ……バカ……」 藤村は右目だけで俺を見つめてから、顔を伏せたまま背中を向けた。 「私、用事があるから……」 「ああぁ……」 あの藤村がしょんぼりしながら去っていった。小さくなる後ろ姿がちょっと切なくて、俺の心がズキンと傷む。 あいつの泣き顔なんて、中学の時以来だ。すごく久しぶりに見た。でも、どんな時でも女の子を泣かせちゃいけないよな……。 「はぁ……」 「ほわわわわ~~」 「ん?どうした、ミウ。そんなに顔を赤くして……」 「やだ……何なの、今の青春ドラマ!私こういうの大好きだなー」 「はい!?」 「ねえねえ、このあと二人はどうなっちゃうの?う~ん♪先の展開を考えると、私すごくキュンキュンしてちゃうなー♪」 「てめ……一人で勝手にキュンキュンしてるんじゃねえええええええ!!」 なんだかドッと疲れた。あほらしい……考えるのはやめよう。藤村には、今度会った時に軽く謝るだけにする。 「あら、思ったより大丈夫そうね?ユウマ」 「全然大丈夫じゃねえよ!どーすんだよ、藤村!!それにミウ、お前とっさに俺の唇を……むぐうぅぅ!」 急に視界が!? 「ほら、いい子いい子♪心の痛みがなくなるまで、私がそばに居てあげるからそれで許してね」 (お、おっぱいで前が……見えない……!それに息が……) 「あ、あれ……?なんだか急におとなしくなっちゃったね」 「…………いい匂い……だ……な」 「きゃああぁ、ユウマ!?もうっ、どうしたのよ~~!?」 遠くでなにか聞こえるけど、手足に力が入らない。ミルクのような甘い香りで頭がぼんやりしてきた。 学園の中で、ミウの胸に顔を埋めたまま俺は静かに気を失ってしまった。 ミウのフロントスリーパーホールドで失神させられた俺が目覚めたのは学園の保健室だった。 あのおっぱいの威力はハンパないな……マジでお花畑に連れて行かれそうになった。今後は気をつけよう。 「山田からメールが入ってるみたいだ。なになに『うおおおおおお!両手に花っキタコレ!!』だと?マジか」 ケータイで山田に連絡してみると、すでにミウとメイは俺の部屋へ送り届けたと言われた。 非常に手間のかかる部分を山田が引き受けてくれたことに感謝しつつ、俺も自分の部屋へと向かうことにした。 「ただい……うっ……なんだ……?」 部屋についた瞬間、得体の知れない違和感に包まれた。 (昨日とは違うけど、妙な気分だ。空気自体が……重い……?) 部屋の中で何かが動いたり、無くなっている様子はない。それでもガスが充満しているような奇妙な息苦しさを感じる。 「うっ!?」 急に背後でドアが閉まる。反射的に俺は敵を警戒して身構えた。 「さすがは『勇者の血」を持つ人間。環境の変化を感じ取る能力は、なかなか優秀ですわ……」 声がする方向に目をやるが、何も見えない。だけど確実に何者かがこの部屋に潜んでいる。 (勇者の血とか言い出す辺り、ミウ達の仲間だろうか……) 「どうやら私の姿を捉えることはできない様子。姿を隠しているのですから当然とはいえ……フフフ」 「まだ『覚醒』しきっていない勇者にいたずらしたくなるのも、サキュバスの〈性〉《さが》……クスッ♪ほぉら、ふうううぅ~~」 左の耳の穴に、突然生温かい空気が吹きつけられた。 「うわあああぁぁっ!くそっ、どこだ……!」 背筋がゾクゾクする感覚をこらえつつ、振り回した腕が空を切る。 「卑怯だぞ!」 「卑怯?たしかにそうですわね。クスクスッ……」 「このままあなたを抱きしめて、意識が飛ぶまで犯し尽くすことも可能ですが、誇り高きサキュバスにはあるまじき振る舞いには違いありません……」 「それに女王様の配下であるミウとメイをたぶらかした重罪人には、相応の償いをしていただかねばなりません」 「一体何を……」 「私の前に膝を屈して、快楽に悶えながら自らの罪に身を焦がす結末をあなたにプレゼントいたしますわ……」 不意に目の前の空気が歪み、その中から一人の女性が現れた。 「なっ……!」 俺の目の前に現れた女性は、おそらくサキュバスだろうが……ミウやメイにはない輝きを放っていた。その美しさのせいで視線が全く逸らせない。 腰まで伸びた金色の艶やかな髪も、エメラルドグリーンの瞳も、極上のミルクみたいな純白の肌も、全てが男を魅了するために作られているように見えた。 「はじめまして、人間。私は女王様の側近、エマ・フロマージュ」 「あなたの目から見ればミウやメイと同じサキュバスということになりますわね」 「やはりサキュバスか!」 しかし全然同じじゃない!このエマと名乗るサキュバスのほうが、ミウやメイより格上だということを肌で感じる。 扇情的な衣装に隠された豊かなバストは、見ているだけでイかされそうな気持ちになるし、視線を落とせば適度に引き締まった腹筋や柔らかそうな太ももが誘惑してくる。 (目のやり場に困る!これは見ているだけでヤバイぞ……) 身体中のどこを見つめても、妖しげな気持ちにさせられてしまう。 ゆったりと羽ばたいている翼に抱きしめられたくなる衝動や、背中で揺らめいている尻尾に弄ばれたい気持ちを抑えるのに精一杯にならざるをえない。 「先程から何をそんなに熱心に見つめているのかしら?フフフフフ」 「……!」 「私の顔?それとも胸?それとも……ここですか?素直に教えて欲しいですわ」 どこか憂いを秘めた表情で、エマはゆっくりと自分の体を指さした。 唇、胸元、そして股間、太もも……細い指先が示す場所に視線が誘導される。 「くそっ、こんな邪悪な魔法!強く念じれば打ち消せるはず……」 ミウやメイと交わった時も、興奮が頂点に達する前に気持ちが急に落ち着く瞬間が訪れた。 (鎮まれ……昨日までみたいに冷静になるんだ!) 強く念じることで訪れる平常心。それこそが「勇者の血」の効果だと思っているのだが、胸の中を覆い尽くす淫らな気持ちが消える様子はない。 (なぜだ!?落ち着くどころかさっきより酷くなってる……) 「いかがですか?私への感情は落ち着きましたか?」 彼女は余裕たっぷりの表情で俺を見下している。 「……くっ!こんなはずは……」 「一応申し上げておきますが、私は別に何の魔法も使っていませんし、誘惑もしておりません。勝手にあなたが見とれているだけですわ」 エマは一歩近づくと、左手を伸ばして俺の顎の先を持ち上げた。 「うあっ……!」 視線がぶつかると、激しい脱力感に襲われた。 透き通るような色をした瞳に吸い寄せられる。一瞬で心の奥を強く抱きしめられたみたいに息が苦しくなった。 「うはああぁぁ……」 「私を初めて見た男性は皆、今のあなたと同じ目付きをしますわ。中には自ら犯されることを望み、降伏してしまう方だって……」 立ち振舞いはさっきと変わってはいないはずなのに、彼女の声が耳の奥に甘く響き渡る。 耳から伝わった言葉が脳内を甘く揺さぶってくる。それがこの上なく心地よい。 「ふふっ、あなたはどうかしら?もしも私の魅力にひれ伏してくださるのなら、その見返りに極上の快楽を差し上げますわ」 「私と二人だけの世界へ行きませんか?甘く淫らな、本能だけが支配する世界へ……さあ……」 今まで見た中で最高に美しい女性からの誘惑に、心が折れるどころか溶けそうになる。 このままエマといられたらどんなに幸せだろう…… 彼女に抱かれたらどんなに気持ちいいのだろう…… このまま…… 薄まっていく意識の中で、なぜか急にミウの顔が頭に浮かんだ。 (う、いかん……!) 「くっ!こんな色仕掛けに騙されるかあああぁぁぁ!!」 頭の中をエマに支配されそうになったが、なんとか抜け出すことができた。 その様子を見て彼女は楽しそうに笑いだす。 「クスッ、残念。今のは確かに魅了の魔法でした。さすがにこの程度の術、あなたには効かないようですわね」 「では、少しだけ本気を出すとしましょう。その前に……」 エマは余裕の表情を崩さず指を軽く鳴らした。すると彼女の背後にぼんやりと二つの影が浮かび上がった。 「ミ、ミウ!それにメイ!!」 「ユ、ユウマぁぁ……もっと、もっとちょうだい……」 「ユーマ、あたしといっぱい繋がろう……好き……好きぃ……」 うわ言のように俺の名前をつぶやくミウとメイの姿が徐々に鮮明になる。 しかし彼女たちの視線は俺の姿を捉えていない。 「あなたがせっかく調教した二人も、私の手にかかればこの通り。サキュバス同士とはいえ、私の術の前では淫らな本性を晒すしか無いのです」 「俺は調教などしていない!自分の仲間を傷つけて何が楽しいんだ。ミウ達に何をしている!?」 「これは人間ごときに心を惑わされた不届き者に罰を与えているところですわ。覚めない夢の中で、何度も何度も犯される快楽地獄……」 俺を見つめたまま、エマはゆっくりと指先を伸ばしてメイの秘所を軽くなぶってみせた。 「きゃうううぅぅぅ!ユーマ……ぁぁ……」 快感に身をくねらせながら、メイが切ない声を出した。その様子が可愛らしくて、不覚にも見入ってしまった。 「ずいぶん上手にメイをしつけたみたいですわね。夢の中であなたになぶられてすごく気持ち良さそう……」 「やめろ……!」 「メイの心配より、ご自分の身を心配されたほうが宜しいのではなくて?」 急に空気の密度が増したというか……さっき感じた違和感が強まった。 「な、に……」 「この狭い空間で、私の身体から溢れる魅惑の粒子からあなたは逃れることができるでしょうか?」 エマの身体を見ると、うっすらとピンク色の靄がかかって見えた。 まるでサキュバスのオーラとでも言わんばかりに空気を漂い、俺の手足に絡み付いてくる。 「なんだこれ……身体が勝手に……!」 しかも今度は俺の意思にかかわらず、膝が崩れ落ちそうになった。 「ほらほら、しっかり気を張ってないと私の思うままに操られてしまいますわ?……それとも、もっと操られたい?」 力が抜け落ちた手足にエマの妖しいオーラが絡みつき、俺を支配しようとしてくる。 「誰が……あああぁぁっ、なんで……!?」 「はっ!いつの間に……」 「もっと素直にしてあげますわ。この私の口づけで……ンチュッ♪」 俺のあごをクイッと持ち上げてから、何のためらいもなくエマは唇を重ねてきた。 「んうううぅぅぅ~~~!!!」 ひんやりとした舌先が即座に滑りこんできた。 そして当たり前のように俺の口内を荒らし回り、舌を絡めとりながら唾液を流し込む。 (なんだ……これ……甘くて……!) あまりにも急激に広がる快感に本能が警鐘を鳴らす。ただのキスだけでここまで意識を支配されてしまうなんてありえない。 「もがいても無駄ですわ。私の虜にしてあげる……唇だけじゃなくて、身体中をキスされるビジョンを頭の中に送り込んであげますわ」 エマの瞳が静かに閉じた。そして両手で俺の顔を抱きしめるようにしながら更に深いキスを交わす。 「んっ…………う、うぅっ!?んうっ、うううう~~~!?」 鼓動が激しくなる。触れ合っているのは唇だけだというのに、どういうわけだか身体中が愛撫されているように感じる。手足の自由を奪われ、エマのことしか考えられなくなってゆく。 「な……にぃ…………!?」 気がつくと俺はエマの下に転がされていた。彼女はにこやかな表情で俺をじっと見つめている。 「何が起こったのかわからない……といった表情ですね?ふふふ♪」 「あなたは自分から横になったのですよ。そして私にその身を捧げようとしている」 「そんなはずはないっ!」 「私は事実を述べたまでですわ。そして、今からあなたは私の中で悶え狂うのです。永遠を感じるほど長く、その意識が完全にとろけてなくなってしまうまで……」 クチュッという音がして、股間が押しつぶされた。 すでに俺は服を脱がされており、すっかりいきり立ったペニスにエマが秘所を擦りつけてきたのだ。 「うぁ……」 吸い付くようなエマの具合に、思わずため息が漏れてしまった。 すでに膣口は適度な湿りを帯びていて、擦られるだけでもかなり気持ちよくされてしまう状態になっていた。 「心地よさに言葉も出ませんか?いいのですよ……それが健全な男の子の反応ですわ」 「こんなことがあぁっ、んうううぅぅ!」 まだ挿入していないのにこの快感……密着した膣口が棹をペロペロといたぶり、自動的に吸着してくる。 「そうだ、いいことを教えてあげましょう。サキュバスとの……いいえ、上級淫魔との交わりは三度楽しめます」 「……!?」 「男性は、まず一度目で身体中の力を吸い取られ、二度目で心を隅々まで犯される」 「三度目は柔らかくなった魂ごと、全部骨抜きにされて快楽から抜け出せなくなる……今のあなたにとって素敵な結末だと思いませんか?」 「そんな結末は必要ない!」 「そうですか……では、その言葉がいつまで続くのか試して見ることにしましょう」 俺の回答を聞いてから、エマがゆらりと腰を上げた。 だが膣口がペニスに吸い付いたまま離れない! (なんだこれ……吸い付きがああぁぁぁ!?) まるで意思を持っているかのように、エマの膣口が吸い付いてはなれない。 「どうしました?まだ挿入前ですよ。私の入り口にたっぷり舐められて、これから飲み込まれてしまうことには変わりないのですけど」 さらに彼女は腰をクネクネと回し始めた。横方向の動きだけでなく、時折縦のピストンも絡ませてくる。 (だめだっ、こんなの気持よすぎておかしくなるううう!!) 考えたくもないが、このままだと射精してしまう。ただ腰を動かして、挿入すらしていないというのに……! 「フフフ、失礼。少し刺激が強すぎましたか?これでも最大限に手加減しているのですが……」 「ふざけるのも大概にしろ……おおおっ!?んあっ、んぐ……あ……ぁぁ……!」 クネクネとした左右の動きが、前後のグラインドに切り替わる。規則正しい律動に、射精欲求が込み上げてくる。 (これはたまらない……いいぃぃ!) 「おそらくこのまま挿入したら、暴発してしまいますね。そうならぬよう、もう少しオマンコの唇で鍛えてあげましょうか……」 「!!」 「顔色が変わりましたね。クスッ…………隠す必要などありませんわ。これから恥ずかしいくらいあなたは喘いでしまうのですから」 エマは股間に指を滑らせて、ペニスをしっかりと掴んだ。そして膣口に軽く亀頭を押し当てた。 「んあぁっ、ひいいっ!?」 「下のくちびるの感触はいかが?上のお口よりも気持ちよく吸い付いてくるでしょう?」 その言葉通りまるで別の生き物のように、亀頭めがけて膣口がキスをしてきた。 トロリとした粘液を出し、ペニスをいたわるようにクチュクチュと先端を舐めてくる。 「あ……ぁぁぁ……くぅっ!」 「ほら、こうしている間にもペニスを膣内に引きこもうと、懸命に求めてる……」 「私の意思にかかわらず、入り口がチュルチュルと吸い付いてくるでしょう?このままあなたはイかされてしまいますわ。ほらぁっ」 「そんな……ああぁっ!くそっ!!」 常に気を張っていないと、本当に彼女の言うとおりになってしまいそうだった。 頼りなくゆらゆらとした腰使いなのに、今までの数倍の快感が送り込まれてくる。 「クスッ♪今度はカリがめくられてしまいましたね。そしてむき出しになった部分を優しく舐められて……」 「あなたの弱いところはここかしら……」 ピチュッ……! 膣口が亀頭に吸い付きながら、快感を生み出す集合体である裏筋を執拗に舐め回した。 「あああぁっ、はあああぁぁ~~~!」 気持よすぎる……敏感になった部分をこの上なく優しく舐めまわす膣口の感触に、俺は身悶えした。 さすがにこの甘い刺激には耐え切れず、思わず歓喜の声を上げてしまった。 「フフフ、オマンコに弱点を見つけられちゃいましたね。自分でも気づいていない性感帯を開発して差し上げますわ」 (まずい、このまま責め続けられたら……) もしかしたら俺はこの誘惑に勝てないかもしれない。そんな気持ちで胸がいっぱいになってくる。すでに思考が鈍くなり、身体が快感漬けにされているのが判る。 ミウやメイの時とは話が違う。このエマというサキュバスは自らは快楽に溺れることはなさそうだ。 さらに一方的に俺を快楽で縛ろうとしてくる……俺の不安な気持ちを見透かし、あざ笑うかのようにエマが問いかけてきた。 「もうあなたに勝ち目はありませんわ」 「なに……!」 「ミウもメイも〈淫夢〉《いんむ》に溺れ、助けに入ることはできない。あなたは心も身体も骨抜きにされ、『勇者の血』が発動することもない」 「……」 「そんな八方塞がりのあなたに私から提案ですが……どうです?私のしもべになってもらえませんか」 「俺がエマの……?」 「あなたに流れる『勇者の血』は、私達にとってはこの上なく極上の味わいなのです。あの二人も虜になっていたでしょう?」 「……」 俺の身体に流れる血はサキュバスにとって最大の敵ではあるが、精は別物らしい。それはミウ達の反応を見ていれば判る。 「しかし……」 戸惑う俺に対して、畳み掛けるようにエマが微笑みかけてきた。 「もちろん私にとっても同じ事。契約してもらえれば、最大限の幸福を約束しますわ。『勇者の血』で、この私を魅了してみたいと思いませんか?」 (このサキュバスを魅了できる?) 最上級のサキュバスであるエマを逆に自分の虜にする。もしもそんなことが可能なら、男としてこの上ない幸せかもしれない。 「契約してくれたら、あなたの逞しいペニスを……私の膣内にお招きしてあげてもいいですわ?」 そう言いつつ、エマは恥ずかしそうに二本の指で膣口を大きく開いてみせた。 (すごくキレイだ……) 細い指先が開いた先には、桃色の肉襞がペニスを誘うようにヒクヒクと蠢いていた――。 エマの指先から目が離せない。何かに取り憑かれたようにその緩慢な自慰行為に意識が集中させられている。 それにさっきから彼女の声がずっと頭の中で回り続けている。 「……どうです?私のしもべになってもらえませんか」 「……」 俺は彼女の秘所に向かって、そっと指先を伸ばしてしまった。桃色に蕩けた柔肉に触れたい。感触を確かめてから指を埋めてみたい。さらには――。 頭の中で淫らな妄想が無限に広がってゆく。危険だとわかっていても止まらない。 普段の俺ならこんな見え見えの誘惑に乗ることなんて考えられないのに、眼の前にいるサキュバス・エマが俺の心から警戒心を見事に除去してしまったのだ。 「はああぁっ!」 俺の指が彼女に触れるより早く、下半身に甘い痺れが広がった。ほんの少しだけ強く、ペニスがエマの秘肉に押しつぶされている。 たったそれだけで俺はビクビクと身体中を震わせ、喘ぎ声を漏らしてしまった。 「こんなに硬くしてしまって……サキュバスの前でペニスを硬くするという意味をその身体に刻みつけてあげますわ」 軽く身体を浮かせると、エマは優しく擦るような腰使いを始めた。見せつけるような魅惑のダンスで俺を確実に感じさせていく。 「腰が震えてますわ。ヌルヌルになった棹が、私のアソコにサンドイッチされている様子をしっかり目に焼き付けなさい」 (いい……これ、すごくいいよぉぉ!!) 歯を食いしばって、体の表面から染みこんでくる誘惑から逃れようとするが、うまくいかない。 絶妙な腰使いと、いやらしく絡み付いてくるサキュバスの膣肉のせいで意識を集中させることができない。 「あら、抵抗なさるおつもり?」 眼の前に張り出したバストに向かって手を伸ばしてみたものの、簡単に振り払われてしまった。情けないほど指先に力が入らない……。 「ふ……あ……くっ、くそ……!」 「このまま〈膣内〉《なか》に入れたら、さぞかしいい声で鳴いてくれるのでしょうね。そろそろゆっくりと先っぽだけお招きしてあげますわ」 グチュッ、ズリュッ、ジュプウウッ!! 「んはあぁぁ!!」 すっかり粘液まみれになった股間同士が擦れあい、一方的に俺だけが感じさせられてしまう理不尽な展開。 動かしていた腰をゆるやかにストップさせると、エマは品定めをするようにペニスをじっと見つめた。 「これだけ濡らしておければ大丈夫……あなたのペニスをしゃぶり尽くして、小さなお口を開きっぱなしにしてあげますわ」 ゆらりと腰を上げ、エマが不敵に微笑んだ。膣口とペニスの間にネットリとした糸が垂れ下がる。 そして何も言わずに亀頭に狙いを定めると、軽く腰を前につきだした。 クプウウウゥゥッ! 「あああぁぁ~~~!!」 亀頭が滑るように膣内に吸い込まれる。その瞬間、俺の身体からすべての力が抜け落ちた。 「い、イくうぅぅ……もうイきた……いいいぃぃ!!」 「イキたい?ちょっと可哀想ですけど……たっぷり焦らしてあげますわ」 頭で考えるより先に彼女に懇願していた。しかしその願いもあっさりと却下されてしまった。 クプクプと小さな泡が弾けるような音を立てながら、亀頭が優しく揉みほぐされていく。 まだペニスの先端しか挿入されていないというのに、俺の体全体がエマに包まれているように感じる。 「ほらぁ……すぐに私のジュースで亀頭が包まれてしまいましたね……」 「う、うごかないでえええぇぇ!!」 実際には彼女は動いていない。だが膣内がジュルジュルと蠢きながら、ペニスにまんべんなく愛液を塗りつけていく。 その度に淫らな欲望が俺の心を少しずつ溶かしていく。 「温かくてヌルヌルの粘液が、あなたのペニスを更に弱くしてしまいますわ」 「あ……ぎ……ぃぃ……!」 「サキュバスの体液はそれ自体が極上の媚薬。男性が肌に触れた箇所は敏感になり、口に含めば意識を飛ばしてしまうことだってありますわ」 「しかしあなたは勇者の末裔。私の膣内に収める前に、抵抗力を根こそぎ奪っておかないといけませんわ」 エマはサディスティックな笑みを浮かべながら俺の身体を指先でなぞった。 「うああぁっ!」 細い指先がクリクリと乳首を弄んでいる。エマに流し込まれた刺激にペニスが敏感に反応を示す。 「男性をなぶるときは、激しく動くよりも緩やかに快楽漬けにしていくのが定石。ゆえにこのまま続けますわ」 彼女は腰の動きをピタリと止めたまま、膣内の動きだけで俺を狂わせようとしている。 ペニスはようやく半分ほどエマの中に埋まったところだ。彼女に組み敷かれたまま、ゆっくりゆっくりと快感の薄皮を剥かれ、さらに敏感にさせられていく……。 「は、はやく……ぅ、ぁ!」 「まだまだですわ。あなたが誘惑に屈して、腰を振り始めるまでもう少し楽しませてもらいますわ♪」 エマの腰が小刻みに俺を焦らすように揺れ始めた。微妙な振動がジワジワと広がり、俺の心を蝕んでゆく。 「く……はぁ……ああぁぁっ!」 さすがにたまらなくなった俺は、無意識に彼女にしがみついて腰を突き上げてしまう。 「あら?可愛いおねだりですね。クスッ♪」 「これ……は……ちがっ!違う……!」 「いいえ。あなたはもう我慢できませんわ。身体の奥から沸き起こる衝動に屈して、その身を無様に〈波打〉《なみだ》たせるのです」 エマは俺の手を払いのけると、少しだけ前後左右に腰を振った。先ほどとおなじ微妙な振動が俺を狂わせてゆく。 「ああ……あ……これ……これえええ!」 待ち望んでいた甘い刺激に、思わず体を反らせてしまう。彼女の言う通り、もう快感に逆らう気力が尽きかけている。 「快楽に身体が屈しても、頭の中まで浸透するには少しだけ時間がかかります。それまでの間、ゆっくりと狂っていくあなたの顔を楽しませてもらいますわ」 「うううぅ……見るなああぁぁ!」 「そうですわ!精を吐き出したあとでも、すぐにペニスが回復するようにしてあげます」 「身体の中に私の一部を埋め込んで、あなたを完全にノックダウンしてあげますわ。フフフフフフ♪」 「な、なにをするつもりだ……」 エマが一瞬だけ見せた微笑みと意味深な言葉に底知れぬ恐怖を感じる。 「調教ですわ。このように……ね!」 ズプウウウウゥゥ…… 「ぐああっ、あっ、ああぁぁっ!?」 「うふっ、ふふふふふふ!不意うちに嘆き、未知なる苦痛に歪むその表情、たまらないですわ!!」 突然、腰骨を砕かれたような痛みがやってきた。反射的にビクンと背筋がのけぞる。 しかし次の瞬間、痛みは治まった。それでも何か違和感を覚える。 「な、なにこれぇ…………!?」 「私の尻尾を変形させて、あなたのお尻の穴を頂きましたわ。このままヘビのように身体の中心へと向かわせます ズルッ……ヌリュ……」 「やっ!あがあぁぁっ!?」 治まっていた痛みが復活して、今度は息苦しさに変わる。 「やめ……んううぅぅ!」 もがいてみてもどうにもならない。確実にエマの尻尾が俺の体の深いところへと向かってゆく。 尻から侵入したエマの尻尾のせいで背中に流れる汗が止まらない。しかも情けないことにペニスは先程よりも張り詰めてしまっている。 「そろそろいいみたい……ここに熱いジュースを注いであげますわ……んっ、ううぅぅ……んふっ!」 ドプドプドプッ! 「うああっ、熱いいいぃぃっ!?」 しっかり埋め込まれた尻尾の先から、俺の体内に何かが注入された。その拍子に膣内に収まっているペニスもビクビクと震え出す。 「これは即効性の淫毒ですから、すぐに効きますわ。体の芯がとろけて、我慢が利かなくなるクスリです」 「か……はぁ……!」 その言葉も終わらぬうちに、俺は自分の身体がどんどん敏感になっていくのを感じていた。 「どんな気分かしら?きっと身体中が敏感になって、空気の流れだけでも心地よいのではなくって?」 「が……あう……ぁぁ……!」 身体と意識が切り離されたようで、思うようにしゃべることもできない。 エマは俺を膝立ちにさせると、背後からしっかりと抱きしめてきた。 「でもここからが本気責めのはじまり。まずはその唇を……チュウッ♪」 「んふっ、ふふふ……ジュルッ、ペチュ……ふふふふ♪」 「んううっ、ぐ……ふぐううぅ!?」 「背中を抱かれているから倒れることも出来ませんわね?このまま私のなすがままに快楽の渦に飲み込まれてゆくのみ」 エマの言うとおり、俺は何もできずに彼女に責めに対してなすがままにされるしかなかった。 しかも唇を奪われると、この上なく幸せな気持ちになってしまう。やばいと判っていても、彼女の甘い唇を求めてしまう。 クチュ……クチュ……♪ 「ふっ……うぅ……あふ……」 サキュバスの長い舌先がネットリと口内を荒らしまわる。さらに吸引を繰り返され、唾液の甘さに翻弄されているうちに、指先がカリ首に絡みついてきた。 「んっ、うう!ふあうぅぅっ!」 無防備になった亀頭を撫で回され、情けないほど喘ぎ声を漏らしてしまう。 「力が抜けきった状態でペニスを優しくされると、もう天国ですわね?もっとも、私が〈誘〉《いざな》う先は天国ではありませんけど」 エマの愛撫の手が止まった瞬間、少しだけ意識が戻った。 「ハァ、は、ぐうっ!ま……けない…………!」 「まだ反撃の意思は衰えていないようですわね。では、根こそぎ奪ってあげるとしましょうか」 エマの手がそっとペニスから離れた途端、再び俺の身体が熱を帯び始める。 ドピュッドピュッ! 「ぐはあああぁぁっ、ま、またああぁぁ!?」 「素直に堕ちてくださらないと身体の中にある私の尻尾が、なにか悪さをしてしまうかもしれませんね」 「例えばこんなふうに……」 ドピュッドピュッ! 体の芯が焼け付くように熱い。腰から背中にかけて感じる熱に浮かされるように俺は悶続ける。 その間もエマは微笑みながら俺の身体を撫で回す。ジワリジワリと下半身の痺れは確実に酷くなってゆく。 「ほ~ら、またお腹の中が温かくなってきた……膝もガクガクし始めて、下半身が今にも崩れてしまいそうですわね?」 「い、いやだ……もう……こんな……ああぁぁ!」 「ふふっ、刺激的でしょう?無防備な場所を責められての悶絶……でも私が支えてあげます。倒れることすら許しませんわ」 その言葉通り、俺はしっかりと彼女に捕獲されていた。知らぬ間に自分の意志で膝を崩すことすら許されない状況に追い込まれている。 「背中を抱かれ、唇を塞がれ、乳首を指先で弄ばれたまま、あなたは堕ちるのです。快楽の闇に身を溶かしながら、永遠の時を私とともに……」 「そ、そんな……うあああぁぁ!!」 「まだまだ平気ですよね?さあ、強がりをおっしゃってくださいな。男性が抗う姿は、私にとっては蜜の味なのですから」 にっこりと上品に微笑みながら、エマは俺の身体を責め続ける。 そして俺の背後で音もなくゆっくりと彼女の翼が開いていく。 「今度はこの翼でいじめてあげますわ……フフッ、手のひらと同じくらい器用に動かせるのですよ?」 「あああぁぁ……なに……これぇぇ……」 想像以上に大きく開いた翼が、ふわりと俺の下半身を包み込んだ。そして予期していなかった妖しげな感触に溜息がこぼれる。 「内側がヌメヌメしてて心地良いでしょう……柔らかいお肉でペニスをいたぶられたら、何かを思い出しませんか?」 「だ、だめ……これは絶対ヤバイから……あああぁぁっ!?」 それは本能が知らせる危険信号だった。サキュバスの翼に包まれ、身体を密着してしまっては勝ち目がなくなるというのは当然のことだ。 だが今の俺にはその判断に体がついて行かなかった。 クキュウウウゥゥゥ! 「ほらぁ……包まれちゃった♪まるでオマンコの中に閉じ込められたのと同じ感触でしょう」 逃げる間もなく、俺の下半身は完全にロックされてしまった。さっきよりもはっきりと背中に柔らかなバストを感じる。 「翼を使って亀頭だけをむき出しにしてあげますわ。可愛らしいピンク色をした、男の子の弱点をね……?」 サキュバスの翼が小刻みに揺れると、その内部の柔らかな襞がうねり、棹や玉袋全体をやさしく愛撫してきた。 激しい刺激には耐えやすいが、こういった優しい刺激を重ねられると我慢しづらくなってくる。 その結果ペニスはますます元気になり、彼女に包まれたまま射精寸前まで膨れ上がってしまった。 「あああぁぁ、恥ずかしいよぉ…………」 「私の指先の動きで、さらに魅了してあげますわ」 「え?ゆ……び……?…………はっ!」 「ほら、もうすぐ触れてしまいますよ……サキュバスの翼に包まれ、むき出しにされてしまったあなたの敏感オチンポに……」 「ダ、ダメ!今触られたら絶対おかしくなるッ」 「あなたのピンク色の亀頭に指の先がゆっくりと絡み付いて、くすぐるようにこね回されてしまうのですわ」 「じれったくて狂いたくなるほどゆっくりと緩慢に……うふふふふ♪」 「やめ、やめてええええぇぇぇ!」 クチュッ♪ 「残念ですわ。はい、捕まえた……もちろん簡単にはイかせてあげませんわ……」 エマは指と指の間に亀頭を挟んだまま、ゆっくりと円を描く。 「ああぁ…………」 「私の指と翼で刺激されて、先っぽはもうドロドロ。こんなにお漏らししてしまうなんて、はしたないですわね」 続いて五本の指先で亀頭をつまんでから、何度も左右にひねりこまれる。敏感な部分をくるくると刺激され、俺はジタバタと悶え苦しんだ。 「ああぁっ、いや……だ……感じすぎておかしくなるううぅ!!」 「しかも自分でイくこともできず、女に背中を押さえつけられて小さく震えるしかできないなんて惨めすぎますわ……クスクスッ」 身体中を支配され、特に腰から下には力が入らない。その上でこんな辱めを受け、男のプライドも踏みにじられた。 俺の顔に絶望の色が浮かんだのを見て、エマがぽつりと呟く。 「そろそろ頃合いですわね。契約をはじめましょう。私とあなたの魂を重ねる儀式を……」 見つめ合った瞬間、エマの目が妖しく輝いた。それが魔法だということは今までの経験でわかっているのだが、避ける事ができない。 「ああぁ……エマ!エマああぁぁ!!」 頭がボーっとし始める。俺は目の前のサキュバスのことしか考えられなくなってしまった。 「もうすっかり虜ですわね……さあ、私の後に続けなさい」 彼女の微笑みがこの上なくセクシーで、可愛く見える。俺はもう彼女の事しか考えられなくなって、エマに向かって頷いた。 満足そうな表情で、彼女が俺に微笑み返した。そして――。 「わたしは……」 「あ、ああぁ……わたし……は……」 「サキュバスであるエマの心に……」 「サキュバスであるエマのここ……ろに……ぃ……いいっ!」 「自らの魂を重ね……」 「はぁ、はぁああ……自ら……のたましい……を……かさねえええ!」 「永遠に委ねます……」 「永遠に……ゆ、ゆだねますううううううう!!」 誓いの言葉が途切れた瞬間、エマの顔が近づいてきた。 「では、誓いのキスを…………チュッ♪」 そして俺の視界が一面ピンク色に染まった! 「上出来ですわ。これで魂が私につながれました。未来永劫、あなたに自由は訪れませんわ」 エマの言葉につられて膣内がクチュッ……という音を立てた。 「ああぁぁ、すごい……吸い付いてるううう!」 「ここから先、あなたは快楽のみに支配される存在ですわ」 まるで俺のペニスに合わせて、膣内の形が変化したように急激に快感が跳ね上がっていく。さっきまでと快感が桁外れだ。 軽く腰を振られる度にカリ首がめくられ、裏筋をなでられ、亀頭全体にウェーブがかかる! 「あああぁ、すごい!すごい吸い付いてるッ!?」 「良い反応ですわ。極上の快感と引き換えにすべてを失った感想はいかが?」 「もっとして!もっと動いてえええぇぇ~~!!」 「ふふっ、もう思考が停止してしまいましたか。無理もありませんわ。私と肌を合わせた時からあなたの運命は決まっていたのですから」 エマは満足そうに頷くと、俺を包み込むように抱きしめた。長い手足がしっかりと俺に絡み付いて、身体中で彼女を感じる……。 「サキュバスに抱かれ、人としては味わえない快楽の世界に足を踏み入れた結末をゆっくり噛み締めなさい」 「ああぁ……イくぅぅぅ!」 「いいですわ。存分に吐き出しなさい。あなたの力をすべて私のものにしてあげますわ」 ペニスに絡みついた膣がくすぐるように蠕動すると、たちまち俺は精を遡らせてしまう。 だがすぐに尻から挿入されたエマの尻尾が射精に必要な養分を補充してくれる。 そしてペニスが硬くなるのを察知すると、再び膣内が妖しく蠢き射精を促してくる。 「踊りなさい、私の腕の中で。あなたはこれから先、永遠に私の操り人形になるのですわ……」 ゆっくりとした腰の動きで俺から精を搾り取る姿はまるで女郎蜘蛛のようだった。 永遠に続く快楽のサイクルの中で、俺は目の前のサキュバスにすべてを捧げる決意をしたのだった――。 俺の目の前で彼女の細い指が小刻みに蠢いている。 「もうこんなに……くふっ、あなたを……あ、あぁん!……求めているのですよ?んっ、ふぅん……」 息を弾ませながら俺を求める甘い声に心を奪われそうになる。あの蕩け切った膣内に挿入したら――おそらく極上の快楽に包まれたまま何度も射精できる気がした。 (入れたい……あそこに入れたい……でも、絶対やばい気がする!甘い言葉に乗せられてたまるかッ) 俺の心の中で、彼女に堕ちていきたい気持ちを必死で食い止めようとする何かが働いている。それがもしかしたら「勇者の血」の作用なのかもしれない。 「はああああぁぁぁぁっ!!」 とにかく自分の予感を信じる。そして全身の気力をかき集めて、エマに対する淫らな思いを打ち消そうとした。 「さすがは『勇者の血』を持つ人間……その胆力は賞賛に値しますわ」 頭の中で妖しく渦巻いていた欲望が薄まっていくのを感じる。精神を集中することで、なんとか彼女の支配から抜け出すことができたみたいだ。 しかしエマは目の前で余裕の表情を崩さずに、相変わらず俺を見下している。 「……ずいぶん余裕だな。お前の魔法は破られたというのに」 「あら、何か勘違いされているようですね。今のは私から術を解いたのですよ?」 「なんだとっ!?」 「だって……少しは抵抗して頂かないと、私もわざわざこちらへ来た甲斐がありませんもの」 「快感に抗う獲物をジワリジワリと追い詰めていくのは悦楽の極み。それにお忘れではなくって?あなたはもう、私に囚われているのですよ」 「どういう意味だっ……!」 「クスッ、こうして少し腰を揺らすだけで、あっという間に天国の入り口ですわ……」 ピチュ、プリュンッ……! 「うあっ、ああぁっ、あああぁぁ~~~!!」 エマは軽く腰を浮かせると、前後左右に腰を柔らかく揺らし始めた。 サキュバスの膣内に囚われたペニスが、強制的に膣内でねっとりと舐め回される。 「ほら、ご覧なさい。ペニスのお口が開いてきましたわ……オマンコの中でキスされてイっちゃいそう」 彼女の言う通り、一瞬でイキかけた。内部の襞がとても細やかに動いて俺を喜ばせる。 亀頭の表面を優しく撫でながら、時折カリ首がキュウキュウと締め付けられている。 「入り口で亀頭をしゃぶられていると、まるで私にフェラされているような錯覚に陥っていませんか?」 「ああぁぁっ、言うなあああぁぁ!」 「先端をたっぷり濡らされて、サキュバスの粘液で弄ばれるという点ではフェラと同じですが……騎乗位のほうがなぜか相手を辱めている気持ちになりますね」 一方的に膣内でペニスを愛撫され、俺は呼吸を激しく乱しているというのに……エマは涼し気な表情で俺をのぞき込んでいる。 美しく整った表情に見つめられているだけで我慢する気持ちが徐々に溶かされていくように感じる。 (あっ、ふあぁ、なんて気持ちいいんだ……) 「ふふっ♪強情な勇者殿は、私がじっくり時間をかけて堕として差し上げますわ」 必死で歯を食いしばる俺を見て、エマは嬉しそうに笑う。そして俺の顔の前で右手の人差指をスッと突き立ててみせた。 「なにを……?」 「こういう趣向はいかがかしら?この指先を見てもらえますかぁ~?」 彼女の指が少しだけ寄せられると、俺も釣られてその指先を見つめた。 ズプウウッ! 「んぐあっ、ああぁぁ~~~~~ッ!!」 指先に意識を集中していた矢先、突然下半身に激痛が走った。 「素直すぎるのも問題ですわね。サキュバスの言葉をそのまま受け入れてしまうなんて。フフッ、フフフフ♪」 幸いなことにその痛みはすぐに引いたが、腰に力が入らない。 「くううぅ、俺に何をした!」 俺が質問すると、エマはニヤリと淫らな微笑みを返してきた。 「おしりの穴……頂きましたわ。気が抜けていたとはいえ、ずいぶん抵抗なく入りましたけど、ミウにたっぷり開発されたのかしら?」 「なっ!!」 「図星?それともメイに調教されたのですか?そういえば少しロリコンっぽい顔つきですわね」 まんまと嵌められた。俺を油断させて無防備な部分をエマに晒してしまったのだ。 「ふざけるな!誰が……ああっ、はぐああぁぁっ!?」 「……私に向かってそんな生意気な顔つきをするのは許しませんわ。罰を与えます。しばらく悶えなさい」 グリュッ!ズニュッ、ビチュッ!! 「んああああぁっ、ああぁ、やめっ……あああぁぁっ!!」 慣れない刺激に俺は悶え苦しんだ。腹の中をかき回され、ペニスがビクビクと震えるのだが膣内に捕獲されているので、逆にエマの膣が締め付けてくる。 ペニスが溶かされるような甘い刺激と、身体を内部から切り裂かれるような痛みを同時に与えられ、意識が混濁してくる。 「後ろの穴を貫かれ、甘く悶える男性の姿は良いものですね。もう少し感じやすくしてあげますわ」 彼女はニヤリと微笑みながら、身体を倒して俺を押さえつけた。そして次の瞬間、何かがドクドクと流し込まれてきた。 「ああぁっ、熱いいいいぃぃっ!!」 「ふふ、喜んでいただけて光栄ですわ。サキュバスのローション、たっぷり召し上がれ」 エマの言葉が頭の中でぐるぐる回りだす。そして背中が、ペニスの付け根のあたりが急激にしびれ始めた。 尻穴を貫かれている痛みは一切感じなくなり、代わりに身体中を舌先で舐められているような感覚に包まれる。 「あっ……ああぁっ……動けない……!」 気持よすぎて身体が動かせない!指を動かすだけでも甘い痺れが股間に伝わってくる。 それなのにエマは膣内を優しく動かして、ペニスをクチュクチュと弄んでくる。 エマは余裕の表情で俺を見下しながら、膣と指先、さらには尻尾で俺を快楽漬けにしようとしている。 「身体の中からあなたをしゃぶり尽くしてあげる」 「あ……」 彼女の目が一瞬だけ輝きを増した。そして静かな命令口調に導かれるように、俺の身体から抵抗する気力が抜け落ちてしまう。 さらにエマが俺の身体をしっかりと抑えこむように抱きしめてきた。 「これでトドメですわ。私の中で思いきりイきなさい」 「ああぁぁっ、出ちゃう!あ、あああぁ~~~~!!」 どっぴゅうううううううぅぅぅぅぅ~~~!!! 無意識にガクガクと腰を跳ね上げながら、俺はとうとうエマの責めに屈してしまった。 しかも彼女に抱きしめられ、サキュバスの香気をたっぷり吸い込みながらの射精はおよそ一分近く続いた……。 「本当に一瞬でイかされてしまいましたね?かわいい早漏クン……♪」 「……っ!」 「でも恥じることはありませんわ。感じやすい亀頭をサキュバスに包まれたまま、男の子の弱点を内部から責められたら、誰だってこんなものですわ」 「たとえそれが強情な勇者様だとしても……ね?クスッ、あははははは!」 目の前で楽しげに笑うエマに向かって、俺は何も言い返せなかった。圧倒的な快楽に包まれ、自分がコントロールできなかった。 「くそ……」 「何を落ち込んでいるのです?お楽しみはこれからですわ」 「!?」 言葉を失う俺を見つめながら、エマは俺の身体を抱き起こした。 そして彼女は自分から俺の下に寝転がった。これは正常位……!? 「さて……念入りに呪縛をかけてあげますわ。今度はゆっくりと心を崩してあげる」 「どういうつもりだ!」 「快感で身体を縛り、屈辱で心を砕いてから吸い取ってあげる。あなたの全てを奪いとってあげますわ」 エマはそう言い放つと、手のひらで俺を手招きした。 「なっ……身体が……」 すると俺の意思に関係なく、身体が動いた。そして彼女に覆いかぶさるような体勢になる。 「バカな……こんなことが!?」 「サキュバスにイカされたあなたの身体は、もう私の思うがままですわ。さあ、おいでなさい?」 信じられないことに、エマの言う通り俺の身体は彼女に操られていた。 そしてペニスの位置を整えると、一気に彼女の膣内に挿入してしまった。 「うああああああっ!?」 「ほらほらっ、幸せでしょう?自分からサキュバスを犯せるなんて!」 自分で身体を動かしている実感はまるでないのに、快感だけが容赦なく神経を犯してくる。 そしてこの刺激は、全然耐えることができそうになかった。あっという間に下半身が甘く痺れだす。 「出る……また出るううぅぅっ!」 「じゃあもっと出しやすくしてあげる♪」 クニュッ、クニッ、チュク…… 「うああああああぁぁぁぁっ!」 膣内がクニュクニュと蠢き、ペニスを感じさせる動きを繰り返す。先端から根本までを何度も快感のウェーブがざわめいた。 「柔らかく揉まれると我慢できませんよね?イっちゃう?イっちゃうの?フフッ、フフフフフ♪」 エマを組み敷いたまま、俺は絶頂を迎えようとしていた。本来なら俺が有利な態勢だというのに、為す術もなくこのままイカされてしまいそうだった。 「ああぁぁ……溶けて……く……!」 「もっともっと私に溺れていいですわ。『勇者の血』を快感で溶かして、美味しく頂いてあげますから」 あまりの快感に溜め息を吐く俺の顔を、エマが優しく抱きしめる。 サキュバスの香気がいっそう強くなり、下半身と同じく頭の中も痺れてくる。 (お、俺の「勇者の血」……!) エマの口にした言葉のせいなのか、俺の意識が少しだけ快感を遠ざけた。 勇者の血……この平和な時代に無用な代物だ。そんなものに未練はないが、このまま何もできずに彼女に負けるのは悔しい。 だが今の俺ではおそらく勝ち目がない。一体どうすれば……視線をエマから逸らした先に、ミウとメイの姿が目に入った。 「ぐ……ううぅ、ミウ!目を覚ませええええ!!」 「……あんっ!はぁん……いいよ、ユウマ……もっと来てェ♪」 俺一人の力ではエマを感じさせることはできない。それならば助けを呼ぼうと思ったのだが……甘かった。 ミウはエマが創りだした世界から抜け出せず、甘く悶え続けている。 「この期に及んで無駄なことを……往生際が悪いですわ?」 クチュウウウウウウウ!! 俺の下でエマが軽く腰を捻った。ほんの少しの時間差で膣内が俺を戒めるようにきつく締め付けてきた。 「んはああぁぁっ、メイイイィィィ!お前たちは俺と契約したのだろう?少しは俺を助けてみろ!!」 わらにもすがるような思いでメイの名を呼ぶ。もはや恥も外聞もなかった。 このまま快楽漬けにされるなんて男のプライドが許さない。 とにかく俺はこいつに、エマに一矢報いてやらないと気が済まな―― 「何よぉ、ユーマ。うるさいなぁ……なに偉そうに絶叫してるのよッ!」 「メイッ!?」 「メイ!気がついたのか!?」 顔を真赤にして俯いていた美少女がこちらを向いた。しかもあの不機嫌そうな表情は……。 「きき気安く呼ばないでよ!でも……あたしを呼んでくれたんだから、少しだけ力を分けてあげるッ」 あの不機嫌そうな表情は、やっぱりいつものメイだった。エマの呪縛がすっかり解けている様子だ。 メイは軽く目を瞑ると、右手を振り上げながら何か呪文を唱え始めた。 メイを中心に白い光が放たれる。 「なっ!?……メイごときの力で私の術を破ることなどできるはずが!」 「がはっ!!」 そして俺の身体を縛っていたエマの魔法効果も薄れる。淫らな気持ちが消えて、代わりに極上の疲労感が戻ってきた。 「どお、ユウマ?……それに……おねえちゃんも起きなよ!」 メイが手をかざすと、興奮で乱れまくっていたミウの顔色も穏やかに変化した。 「うふん……メイに先を越されちゃったか。残念!」 「ミウ!」 「ごめんね、ユウマ。助けてあげたかったんだけど、エマがね……」 そしてミウはちらりと俺の下にいるエマを睨みつけた。 「あ……ああぁぁ……!なぜ!?下級淫魔のあなた達が私の支配から抜け出せるわけが……」 「エマ、さっきのはちょっとひどいんじゃない?私達って仲魔でしょう?不意打ちはどうかと思うんだけどなぁ」 「まさかあの忌まわしい『勇者の血』がミウやメイを認めたとでも言うのですか!?」 「エマさん、あたしにも本気で呪縛かけよーとしたよね?なんかすっごく恥ずかしい夢、見せられた気がするんだけどぉ……」 「……そういえば、ミウもメイも俺の名前を呼んでたな」 「嘘でしょっ!?あたしがなんでアンタの名前を呼ばなきゃいけないのよ!!」 俺の言葉にメイは顔を真赤にして反論してきた。 「ふふふ♪な~んだ、バレてたんだ。エマのおかげで、たっぷりユウマに犯されてたんだよ……だからぁ、あとでお返しするね?」 俺を見つめるミウの目が一瞬だけ光った。 「俺は悪くねえっ!?何故そうなる!?」 エマの魔法の中で俺は一体彼女にどんな酷いことをしていたのだろうか。考えると怖いから何も聞かずにいよう。 「アンタは黙ってあたしとお姉ちゃんに犯されてればいいのよ。あとで一緒に遊んであげる」 「でもその前に、エマを感じさせてあげないとね」 「うん……こっ、今回だけはちょっとアンタに味方してあげる」 ミウとメイ、それに俺の視線が一気にエマに集中する。 「や、やめなさい!ミウ、メイ、この私に逆らって勝てるとでも思っているのですか」 エマの眼が光る。おそらく何かしらの魔法を俺たちにかけようとしたみたいだが――。 「まさか効かないのですか……!?」 「ふっふ~ん、なんだか全然平気なんだよね」 「あっ、ホントだ……なんで?ミウお姉ちゃん」 「たぶんユウマのおかげだよ?私達の身体の中に彼の精が染みこんでて、それがエマの淫気を遮断してるんだと思う」 「あたしがレベルアップしたからじゃないんだ……な~んか急にありがたみが無くなっちゃったなぁ」 エマの魔力を遮ったことに驚きつつも、少しつまらなそうにメイがつぶやいた。 俺が持つ力の一部がミウとメイの中に宿っているということらしい。 「こんな……ミウ、なぜ人間の味方をするのですか!」 「うるさいなぁ……問答無用!いくわよ?」 「あはあぁぁんっ!きゅ、急に胸を……ううぅ、本気で私に逆らうつもりなのですか」 「そうよ。だってエマには悪いけど、私はもうユウマのものだから」 ミウの手が優しくバストを揉みしだくと、エマの口から甘い声が漏れだした。 「まさか彼と契約を……!あなたは女王様に反逆するつもりですか!?」 「ん~、女王様は女王様で大事だけど、今は彼も大事なの!きっとメイも同じ気持ちよ?」 (メイが俺のことを?) ミウの言葉通りだと、ちょっと嬉しい。生意気だけど可愛らしいメイが俺のことを……チラッ? 「はぅ……ジロジロ見てんじゃないわよ、アンタ!」 「ご、ごめんなさぃ」 やっぱり違うのか……残念だ。でも、あんなに顔を真赤にして怒らなくてもいいのに。軽く落ち込む俺の下で、エマが二人に向かって口を開く。 「そんなことを私が認めるとでも思っているのですか。二人共、早く正気に戻りなさい!」 その声を聴いたメイは、申し訳なさそうに頭をポリポリとかいてみせた。 「んと……一応あたしも正気なんだよね、エマさん。おねえちゃんが言うとおり、悔しいけどユーマに味方したい気分なんだぁ」 「ううっ、ありがとう!メイ……」 「だーかーらっ!気安く名前呼ばないでよッ!アンタに名前呼ばれると……なんか……すごく身体が熱くなっちゃうんだから……」 「うっ、ごめん……」 さっきからメイに怒られっぱなしだ……本当はものすごく嫌われてるんじゃないか?俺。 「メイも本気なのですか?何故?……あなた達姉妹が本気になれば、人間の男などあっさり骨抜きにできるというのに!」 「それがねぇ……できなかったのよねぇ……」 「うん、なんだかコイツってピンチになると強くなるし、それに居心地がいいんだよね?……ニンゲンのくせに」 メイはチラリとこちらを向いてみせた。 (ん?もしかして今、ほめられたのか?) しかしすぐに視線を戻すと、その小さな手でエマのバストを弄び始めた。 「エマさんの胸って、大きくて真っ白でキレイだよね……」 「ひぅっ!やっ、おやめなさい!メイ!!」 「あたしもいつかこんなふうになれるのかなぁ……チュッ♪」 メイの唇がエマの乳首に軽く吸い付いた。その途端にエマの表情は崩れ、しなやかな肢体がビクッと俺の下で震えた。 「ふあああぁぁっ!やめ……サキュバス同士の愛撫は!!」 「ふふふ、同族だと抑えが効かなくなっちゃうんだよね?ほら、いい子いい子♪」 「はぁんっ、ああ、あっ!ミウ、おやめ……なさい……メイも!あふぅっ」 俺との交わりでは眉ひとつ動かさずに一方的に責める側だったエマが感じまくっている。 「乳首だって果物みたいに甘くて、すごく綺麗だし……羨ましくてずっとしゃぶっていたくなっちゃうんだもん」 「メイ、上手ね。でもね……エマは軽く噛んであげると喜ぶのよ?」 「へぇ、そうなんだ~……かぷっ♪」 メイが乳首に歯を立てると、再びエマの身体が跳ね上がる。ほっそりとした指先が快感に踊らされて空を掴む。俺では手も足も出なかった相手だけに、ちょっと複雑な心境だ。 「きゃふうううっ!」 「ホントだ……しかもすごいエッチ!」 「あ、あなた達は自分から人間の使い魔に成り下がったとでも言うのですか!」 「バカね、エマ。人間の使い魔じゃないよ。ユウマのものになっただけ!ご主人様に尽くすのは当然じゃない」 今度はミウがゆっくりとエマのバストをこね始めた。 「くふぅ……そ、その手つきは……ああぁぁ♪」 「私のユウマを堕とそうとしたエマには、い~~っぱい感じてもらわないといけないよね?」 「おねえちゃんずるいよ、ユーマはあたしのものだよ!」 「はふぅ、ふ……メイまで……そんなことを!」 苦痛とも快感とも受け取れる表情で、エマは悶え続けている。 「ほらほら、ユウマもボーっとしてないで!エマのことを気持よくしてあげて?」 「えっ、俺が……!?」 「そーだよ!アンタの脱童貞チンポでエマさんをヒーヒー言わせてみなさいよ!」 急にミウとメイに見つめられ、俺は焦った。でもどうすれば……。 戸惑う俺を見て、メイが小さく舌打ちをした。 「あたし達の前でアンアン喘いだら、逆にアンタのおしりに尻尾を挿してあげるワ」 「ひいいいいいいいっ!」 ズンッ 慌てた俺は思わず腰を前に突き出した。 「あああぁぁぁ~~~!イイですわッ!!」 (え?効いてる!?……さっきは全然だったのに) ひときわ高い声を上げるエマを見つめると視線がぶつかった。真っ白な肌をほのかに色づかせ、俺が腰を動かすのを待ちわびているように見える。 「もう一度……して欲しいのか?」 おそるおそる俺が尋ねると、以外なことにエマは素直に頷いた。 かわいい……まるでメイの可愛さと、ミウの美しさの両方を兼ね備えた美女が俺に向かって恥ずかしそうにおねだりしているのだ。 このリクエストに応えない訳にはいかない! 「うおおおおおっ!!」 下半身に気合を入れると、俺は全力でエマを責め始めた。その腰の動きに合わせて、ミウもメイも彼女のバストや唇を責めた。 「イ、イヤ……こんなの認めないですわ!ミウとメイと、それに人間ごときに……」 「この私が……先に達することなど、あっていいはずが……!」 上級サキュバスとしてのプライドが、快楽に堕ちそうなエマを必死で支えているようだ。 「もう、うるさいなぁ……素直に感じてなさい?はむっ♪」 「あああぁっ、乳首噛んじゃダメエエエエエエエエエエエエエエエ!!」 これまでにないほど背筋を反らせ、エマは快感を拒もうとした。しかしもはや欲望に押しつぶされた身体にはその誘惑に耐え切る力は残されていなかった。 「エマさん、乳首クリクリしてあげるぅ~♪」 「やめ……ああ、イくっ!こんなこと……が……ああぁぁ~~~~!」 結果的に、ミウの愛撫がトドメとなった。さらにそこへメイが追い打ちをかけた形で、エマがとうとう絶頂した。 キュウウウゥゥゥゥゥ! 「あああぁぁっ、締まる!すごい、これぇぇぇ!?俺も……もうッ!!」 絶頂するサキュバスの膣が俺を道連れにしようとしている。埋没したペニス全体を甘く噛み砕き、白い降参の証を搾り出そうとしているのだ。 「いっぱい注いであげて?ユウマ♪」 「しかし……」 「もう我慢しなくていいんだよ、イっちゃいな!」 ずぷううぅぅっ 「うああああああああああああぁぁぁ!」 「えへへっ、ユーマのお尻もーらいっ♪」 メイが楽しそうに笑った瞬間、忘れていたあの感覚が……! ぐりぐりぐり♪ 「メ、メイッ!動かしちゃダメだああああ~~~」 しかも俺の中で媚薬をまき散らしながら、メイは尻尾をジュポジュポと出し入れし始めた。さすがにもうこれには――! 「ああああぁぁ、イクッ!!」 どぴゅううううううう~~~~ 魂までごっそりと持っていかれそうなほど、俺はエマの中で射精してしまった。いや、メイに無理やり射精させられた。 「ああぁっ!ひっ、い、イヤアアアアアアアアア!!」 絶頂させられたあとで敏感になっている膣内に大量に精液を受けたエマは、そのまま何度か痙攣した後、目を閉じて脱力してしまった。 ……… …… … しばらくして目を覚ましたエマは、不機嫌そうに俺達の前に座り込んだ。 確かに彼女も俺の命を狙っていたわけだが、その点が他の二人と変わらないわけで、あんまり気にしていない。 「あー、えっと……エマ?」 俺が声をかけると、エマはプイッと横を向いた。 「まさかこの私が人間ごときに……くっ!」 「可愛かったわよ、エマ」 「うんうん、あたしもエマさんが気持ち良さそうにクタッてなるところ初めて見たよ!」 居心地が悪そうにしているエマに向かって、ミウとメイはニヤニヤしながら次の言葉を待っている。 「ふたりともお黙りなさい!」 エマは鋭い目で二人を一喝すると、まっすぐに俺を見つめてきた。 「なに……かな?」 「ユウマ様、私をイカせたその健闘を称えますわ」 (……ゆうま様?いきなり敬称!?) 「3人がかりだったとはいえ、私が先にイカされてしまったのは事実。これでは女王様に合わせる顔がありません」 エマは困ったような表情を浮かべている。 「いいじゃん別に。エマさんもここにいればいいじゃない」 「なにいいぃぃぃ!?こら、メイ!勝手に人の家に居候を増やそうとするんじゃない!」 「アンタは黙ってなさいよ!ふんっ!!」 なんで俺がキレられるんだ……。でもメイに怒鳴られるとなんだか逆らえないな。俺ってMの素質あるのかも。 「ですがここにサキュバスが3人もいるというのはちょっと気が引けますわ」 おお、俺を気遣うとは……エマってもしかして性格はいい子なんじゃないのか。少なくとも他の二人よりは上品で育ちが良さそうに見える。 「そんなの大丈夫だよ、久しぶりにのんびりしようよ!エマもあっちでは忙しかったんでしょ?」 「まあ、それは……そうなのですが……ではユウマ様、あなたが淫界に害をなす者なのかどうか、少し様子見させて頂きますわ」 「お、おいっ……!」 「じゃあ決まりだね!きゃはははははは!!」 「だからお前ら、勝手に決めるなあああああぁぁぁぁぁ!!」 叫ぶ俺を無視して、3人のサキュバスは手を取り合って微笑んでいる。 俺の身体に受け継がれてる「勇者の血」って、そのまま女難の相のことじゃないかと勘ぐりたくなる。 ――こうして、また一人この部屋に済むサキュバスが増えたのであった。 「んっ……朝だな」 いつものように窓の外の明るさで目が覚める。今日も天気はいいみたいだ。 この部屋はサキュバスだらけだというのに、淫夢に悩まされることもなく朝を迎えることができたのは素晴らしい。 「さて、始めようか」 この間はミウが朝ごはんの準備をしてくれたから、今日は俺が朝飯を作ることにした。 ……といっても、基本的にパン屋で買ってきたものを出すだけなんだが。 「おはよーユーマァ……」 コーヒーメーカーにスイッチを入れたところで、メイがむくりと起き上がった。寝起きの表情には全く色気がない。 「ああ、おはよう。早起きだな」 「ふみゅ……ユーマのこと、夢のなかで犯し忘れちゃったよぉ」 メイは物騒なことを口走りながら、目をゴシゴシ擦ってる。ぼんやりとした表情でフラフラしつつ、まだ寝ぼけているようだ。 「あふ……朝一のキス、いっただっきま~す♪必殺!サキュバステンプテーション!!」 「おわああぁぁ!?」 「ぷぎゃあああぁぁっ!」 妙な呪文を唱えながらメイが突進してきたので、メイを反射的に投げ飛ばしてしまった。我ながら容赦無い技のキレだ。 「いったぁーい!ユーマのバカァ!!」 「あっ……すまん、つい……」 「アンタはもっとレディーの扱い方を学んだほうがいいと思うよ!?」 「すまん、ロリの扱いには慣れてなくてな……」 「ムキイイィィィ~、あたしはロリじゃなーい!やっぱりアンタは吸い尽くすことに決定!!」 「バイオレンスな朝ね。おはよう、ユウマ」 寝起きでも隙を見せないというか、ミウっていつでもクールだな。 スイッチ入れたらすぐに起ち上がるSSD搭載パソコンみたいだ。それに彼女はいつも素晴らしい笑顔を見せてくれる。 「人間界の朝というのは、このように騒がしいものなのですか」 一方、逆にエマは不機嫌そのものといった様相だ。 「二人ともおはよう」 甲高い声でプンスカ怒り出したメイのお陰で、他の二人も目を覚ましてしまった。いつもよりちょっと早いけど起きるには良い時間だ。 「おねえちゃん達、オハヨー!」 ……この部屋が騒がしいのは全部こいつのせいです。申し訳ない。でも一昨日と比べてメイが俺に懐いてくれてるように感じる。 「エマもミウも、まだ寝てていいんだぞ?」 「はふ……こんな環境では無理ですわ」 「あたしのせい?」 憮然とした表情でエマは窓の外を眺めている。あくびする動作ひとつとっても、他の二人と比べてどことなく上品に見える。 寝起きのせいなのか、3人とも大人しくしているので俺は手際よく朝食の準備を整えた。 結局パンとコーヒー以外にも冷蔵庫に入っていたものを色々並べてみた。残り物処分に見えなくもないけど、この際なんでもいいだろう。 「うわぁ……あたし、これいただき!」 テーブルの上に並べたパンを見て、メイが真っ先に手を伸ばした。黒糖アンパンを手に取るとは、なかなかのセンスだ。 「あ、これ美味しそうね!ユウマ、一緒に食べよう?」 「あ、うん。いただこうかな」 ミウはクロワッサンを手に取った。それをちぎって俺に分けてくれようとしている。 「むぅー……」 そしてエマはその様子をじっと見つめていた。 「あの……エマ?」 「なんですの。ユウマ様」 「う……呼び方はユウマでいいから!!それより一緒にご飯食べない?」 「むぅー……」 「いやならいいんだけど――」 「エマさん、いっしょにたべよ?」 俺の言葉を遮るように背中からメイが声をかけてきた。 「しかしサキュバスの私達がニンゲンの食事など」 「それがねー、なかなか美味しいのよ」 ミウの言葉を聞いて、エマは食卓に目を向けた。 「ふっ……じゃあ少しだけ頂こうかしら」 「はい、これ!どうぞ~♪」 メイが自分の前にあった皿をエマに差し出す。黙って受け取ったエマは、じっとその皿に乗っている赤い物体を見つめている。 「お、おいっ!それは……」 制止するまもなく、エマはその食べ物を口の中に運んだ。 「もぐもぐ……はうぅぅぅぅっ!!」 器用に箸を使いこなし、食事を口に運んだエマだったけど慌てて口元を抑えている。 彼女が選んだのは辛子明太子だった。なんでそれを最初に取るかな……やはり刺激的すぎて、高貴なお口には合わなかったみたいだ。 「んん~~~っ!!」 「いいよ、エマ。俺が食べるからそのまま残しなよ」 「いいえ、いただきますわ」 「大丈夫なのかよ!無理しなくてもい……」 「この酸味が……あとを引きますわね」 (酸味?賞味期限はまだ大丈夫なはずだけど) 俺の不安をよそに彼女は一生懸命辛子明太子を細かく刻んで口に運んでいる。サキュバスだから胃袋は丈夫だと信じたい。 「思ったより気に入ったみたい……ね……」 (ミウのやつ、辛いものは苦手みたいだな) 「今更欲しがってもあげませんわ」 「あたしもたべたーい……」 こうして賑やかなまま朝食タイムが進んでいった。 ――そして30分後。 「ところでみんな、ひとつ相談なんだけど」 「うん?どうしたの、ユウマ。あらたまって」 「もったいつけずに早く言いなさいよー」 「ふむ……」 ミウだけでなく、他の二人もこちらをじっと見ている。軽く咳払いをしてから俺は続けた。 「俺と一緒に学園に行くのはやめて欲しいんだ。今日は3人で仲良くどこか遊びにいってきなさい」 腰に手を当てて少し命令口調で3人の顔を見つめる。ここ暫くの間、まともな学生生活を送れていない気がする。 藤村には色々と説明不足で喧嘩したままだし、山田は逆になんだか幸せそうでむかつく。そんなわけで今日は単独行動に戻りたい。 「えー、この私を置いてきぼりにするつもりなの?ユウマ」 「い、いや……決してそういうつもりではない!」 「けちー!ケチケチどケチー!!ユーマのロリコンオタク野郎ー!!」 「メイ、こっちに来なさい……もう一度投げ飛ばしてやる」 「そのような言葉を私たちが従うとでも?それとも街中を快楽と混乱の渦に巻き込んで……」 「こらあああああああああああああ!!」 エマにいたっては猛烈に物騒な言葉を吐きまくっている。しかもこいつなら本当にやりかねない。 (やっぱりだめか……) がっくり肩を落としながら、もう一度チラリと三人の顔を見る。 よくよく考えてみれば俺の都合なんて理解する相手ではなかった。 自由奔放なサキュバスにとっては人間の生活リズムなどどうでもいいことだ。 「はぁ……」 「ですが、ユウマ様を困らせてばかりではいけませんわね」 「えっ!」 「ここはあなた様の顔を立てましょう」 「あなた様って……だから呼び方はユウマでいいってば!様はいらねえ!!」 「え~~、でもエマはそれでいいの?なんか寂しくない?」 「ミウ、一人の時間が欲しくなるのは、男も女も一緒ではなくって?」 「そういうものかしら?まあ、私は別にいいけど」 (だったら初めから絡んでくるんじゃねえ!!) 「むー、おねえちゃん達がそう言うのなら仕方ないやー」 おおっ、エマのおかげで他の二人があっさり引き下がったぞ。やっぱりサキュバスにも力関係というのがあるのだろうか。とにかく彼女に感謝しつつ、俺は学園へ行く準備を整えた。 久しぶりに一人でのんびりと学園へ向かう。ミウが隣にいないのは少し寂しいけど、それを差し引いても自由は最高だ。 足取りが軽かったせいか、いつもより早い時間に校門にたどり着いてしまった。 そして廊下を歩いていたら、見慣れた後ろ姿を見つけた。 「おーい!藤村~~!!」 「ユウマ!」 「おはよう、藤村」 「……なによ」 なんでこいつ、機嫌悪いんだろう?やっぱり昨日までのことが尾を引いてるのかな……。 ここはひとつ、心の中でジャンピング土下座するしかないようだ。 「こないだはごめんな。謝ろうと思って」 「謝るって……なにを?」 「む……なかなか意地が悪いな。全部言わないとダメか?」 「うぅん…………別に言わなくてもいいよ」 藤村はそう言ったきり目を伏せてしまった。急にミウやメイが現れて不愉快な思いをさせてしまったのかもしれない。 そうだとするとやっぱりまだ怒ってるよな……。 「そうだ!今日の昼飯、ごちそうするよ」 「どうしたの、急に」 「ぶっちゃけ謝罪の一環です」 「もしかして食べ物で私の機嫌を直そうとしてる?」 「だめですか?」 「……」 「一緒にメシも食いたくないほど怒ってる?」 俺が尋ねると、藤村は少し笑いながら首を横に振った。 「ううん……それ自体は嬉しいんだけど、後ろの三人はなんなのよ!」 「なっ!?」 呆れたような藤村の視線の先を追うと、そこには――。 「ユーマ~~」 「結局すぐに来ちゃったー、てへ」 「ここが学園ですか……監獄みたいな場所ですね」 振り返ると目の前にサキュバス3人組が、ひと目を集めながら微笑んでいた。 「おい、あれ見ろよ!スタイル抜群のお姉さまが……」 「左の子は島崎くんのカノジョでしょ?他の二人はなんなの?」 「すげー、あの胸……」 どうやら今日の話題の中心はエマらしい。いや、そんなことは問題じゃない。 「な……何でお前らがここに!?今日は来ないって言ってたじゃないか!」 「ええ、ですからお望み通り一人きりでここまで来ることができたでしょう?」 「あたしだって約束守ったよー?もっと褒めてくれてもいいと思うぞ、ユーマ」 「お前ら…………!」 つまりこういうことか……俺が「一人で学園に行く」という部分については、きちんと約束を守ったと言いたいわけだ。 そして今、学園についたから朝の約束自体が廃棄処分…… 「~~~!!」 「なんだかユウマ、プルプルしてる……大丈夫?」 ミウが不安そうに俺の顔を覗き込んでいる。こいつは特に天然ボケ入ってるから、本気で心配しているようだ。 その横で藤村が冷たい表情で俺を睨みつけている。 「ユウマが私に対して何を謝りたいのか説明してもらおうかしら……」 「まずはそうね……本日初登場のとびきり美人のお姉さんは誰?」 まずい……なんか適当に取り繕わないと! 「あああ、あれはミウのお姉さんで」 「お姉さん?エマが??あははははー!ご冗談を」 「私、そんなに年老いて見えるのでしょうか……」 「キミたち、少し黙ってなさい!」 「結局どゆこと?」 「あ、いや……友達のエマさんだ」 「あっそ……なんだか神社に吊るされていそうなお名前ね~」 そうそう、500円ぐらいで売ってる願い事を書いて吊るすアレみたいな……って!! 「ば、ばか藤村」 「言葉の意味は不明なれど、底知れぬ悪意を感じましたわ。ユウマ様、なんですの?この小娘は」 「ゆっ、ゆうまさま!?なんでそんなにへりくだってるのよ!」 「エマも静かにキレるなよ!あとユウマ様はやめてくれ」 だんだん話がこじれてきた。本格的にまずい。さて、なにから話そうかな……。 俺が頭を悩ませはじめた直後、遠くから花束を抱えた男がやってきた。 「は~~~い、メイちゃん!ミウさま!!それにふじむ……うわあああおおおおい!!」 「ああ、いっそのこと花屋さんだったら良かったのに」 「やあ、ユウマ!今日も素敵なレディを侍らせて何事だい?」 こんなときに一番めんどくさいのがきた……。でも一応紹介しておくか。 「あー、山田。こいつはエマといってだな」 「エマ様とおっしゃいますか、そうですか!これはすごいぞ、ユウマ ミウさんもメイちゃんもすごいけどエクセレントだ!!」 「話聞けよ、コラ」 もちろん俺のことなど無視して、山田は手に持っていた花束のうち一つをエマに差し出した。 「まあ、美しい花ですわね……これを私に?」 「ええ、貴女の美しさの数分の一でも表せたらと思いまして!」 よくもまあ瞬間的に……俺もこいつみたいにうまく立ちまわりたい。 「山田君って浮気モノなのね」 「やまだー、あたしは悲しいぞー」 山田の露骨なえこ贔屓に対して、他の二人からは非難轟々である。 昨日まではチヤホヤされてたわけだから、ある意味当然の反応だといえる。 「いえいえ、ちがいますよ。お嬢様がた。この山田カイト、お二人に対して放つ言葉に嘘偽りはございません」 (こいつ、この状態で切り返そうとしてる!) 山田はコホンと咳払いをしてから、ミウとメイをまっすぐ見据えた。 「例えるなら今、この山田カイトの目の前には3種類の異なる美術品が並んでいるのです」 「一級品の絵画、国宝級の彫刻、精微を極めた陶磁器……全てが最高で、比べることもできないほど美しい」 「エマ様も、メイちゃんもミウ様も、僕の目にはすべてが光り輝いて見えるのです……」 山田の無駄に熱い語り口調に圧倒され、3人のサキュバスは口を開けたまま呆然と彼を眺めていた。 「すっ、すごいね!やまだー!!」 「女の子に対するこの姿勢はユウマも見習った方がいいよ」 「たしかに……心地よい馴れ馴れしさですわ」 (山田のやつスゲー……一瞬でこいつらを黙らせた!) 「あのさ、ユウマ……私もう消えてもいいよね」 「ん……?いやいやまてまて!!」 しばらく放置されていた藤村がつまらなそうに呟いた。 「あら藤村さん、まだいたのー?」 「ユウマのみぼーじんだ」 「おまえらは少しだまってろおおおお!」 駄目だ、こいつらがいると全然話が前に進まない……。 「ユウマ、もういいよ」 「藤村……」 藤村はどこか諦めたような、それでいて寂しそうな表情をしている。 いつも元気なこいつにこんな顔をさせてしまうなんて、俺ってやつは…………彼女に対して本当に申し訳なく思う。 (ユウマがすごく寂しそうな顔してる。えへへ、作戦通りだ♪) (だいたい鈍感すぎるんだよ、ユウマ!) (早く私の気持ちに気づいてくれればいいのに……浮気なんかしてる暇ないんだよ?) (いっぱいデートして二人の時間を重ねたいのに、他の女と遊んでるなんて許せないよぉ……) (でも、さっきみたいに私を気遣ってくれるのは嬉しいな。大切な人が誰なんだか、やっと気づいてくれた?フフッ、ウフフフ♪) (ま、とにかく!突然現れたあんな三人組なんかより、私の方がずっとずっとずっとユウマに近いんだから!) 「別に私、彼女たちに嫉妬してるとかそういう気持ちはないから!」 俺を見つめながら藤村がそう言い放った。いつになく彼女がクールに見えるぞ。 それにしても、この美貌のサキュバス3人を目の前にして、どこからそんな自信が湧いてくるのだろう。 「……おまえ、自分の顔にそんなに自信持ってたのか?」 「な、なんなのよそれ!」 しまった!言葉の選択を誤った!!本当は「その余裕はどこから来るんだ」と尋ねようとしただけなのに……。 「今のは最悪だよ、ユウマ」 「ホントにサイテー」 「女の敵ですわね」 「ユウマ、僕は悲しいよ。君の女性に対するヘタレ具合が」 背中からも容赦なく罵声が浴びせられる。まさに四面楚歌ってやつだ……。 「とっ、とにかくあの娘たちに負ける気なんて全然ないから!!」 うなだれる俺に向かって藤村は決め台詞のように一言だけ残して、背中を向けて立ち去った。 「わかりやすい小娘ですね。でもあの気合は本物……敵ながらアッパレですわ」 「藤村さんって絶対ユウマのこと好きだよね。ユウマも罪な男よのぉ~、このこの!」 「俺と藤村はそんな関係じゃねーよ!」 「あたしお腹すいたー」 「…………」 お前らのおかげで俺は今とっても胃が痛い。藤村と戦争状態になると色々困るんだ。 あいつ頭いいからテスト勉強とかうまく教えてくれるし、そして今はテスト期間中だし! 「山田、申し訳ないんだが……」 「よし、ユウマ!ここはおれにまかせろ!!」 「メイちゃんとミウ様、季節のデザート食べ放題に行きませんか?」 山田の誘惑に真っ先に反応したのは――。 「行くー!いくイク~~~~!」 「それなら着いてってあげてもいいよ?」 山田の奴、完全にこの二人を餌付けする方法を心得てるな。 「くっ、この私を除け者にするとは……!」 「何を言ってるんですか!エマ様は僕の隣、助手席確定ですよ!!」 悔し気な表情をするエマに向かって、すかさず山田がフォローを入れる。 「フフッ、そうだろうと思ってましたわ!」 初対面のエマの心までガッチリ掴むとは、こいつはホスト……いや、生まれながらのインキュバス体質なのかもしれない。 ともかく山田がいてくれると本当に助かる。 「やーまーだー!あたしへの愛は偽りだったのかー!!」 「うまいなぁ、山田くん……」 (本当に口がうまいわ、山田) 女心を利用して彼女たちを手玉に取る山田の手腕には感動すら覚える。 しかし今は、キレ気味で立ち去った藤村を追いかけて誤解を解かねばならない。 山田に軽く目配せをしてから、俺はその場をあとにした。 「ひどい目にあった……藤村のやつ、人のおごりだと思って遠慮なく頼みやがって」 あのサキュバス三人を山田に押し付けた後、俺は度重なる誤解を解くために藤村とファミレスへ食事を誘った。 まるで俺に対する不信感を食欲に変換したかのように、藤村は次から次へと注文を繰り返し、おかげで俺の財布はほとんど空になってしまった。 「……」 それから先のことはあんまり思い出したくない。 「とにかく機嫌は直ったみたいだから、それでよしとしよう……うん、これでいいんだ……」 あいつに機嫌を直してもらわないと、俺の学園生活に支障が出る。 藤村はなにげに頭いいから、俺はテスト勉強を教わっている側なのだ。 俺は自分に言い聞かせるようにしながら部屋のドアノブに鍵を差し込んだ。 「あれ、鍵が開いてる」 ミウたちはもう帰っているということか。山田のやつ、吸い尽くされたのかな? 「ただいまー……」 「あっ、おかえりなさい!ユウマ」 俺が部屋に入ると、サキュバス三人組が出迎えてくれた。しかしこうして並ぶと、なかなか壮観だ。それぞれが個性的で、そして可愛い。 こいつらがサキュバスでなければ、本当に幸せな気持ちになれるんだけどな……。 「むー……」 「ん?どうした、メイ」 「みんな……なんか神妙な雰囲気だな……何があったんだ?」 俺は三人の顔を見比べながら話しかけた。ミウとエマは表情こそ大きく変えないものの、俺に向かって何か言いたそうな雰囲気を醸し出している。 「ユーマ、あのねっ!んーっとねー、んっと……」 「メイ、あまり難しく言おうとしてはダメです。確かに容易ならざる事態ではありますが」 (いったい何が……!?) エマの言葉尻が引っかかる。こいつらは一体何をしたんだろうか。 「うー!もうこうなったら、ミウお姉ちゃんからユウマに説明してよッ」 「えっ、私が……?」 (メイのやつ、一人でパニクってる……) 急にメイから話を振られたミウは、少し困ったような表情で口を開いた。 「あのね、ユウマ……ちょっと困ったことになったの」 「お前らサキュバスのおかげで、俺は最近困りっぱなしですけど……これ以上まだ何かあるのか?」 軽い冗談のつもりで切り返したのだが、ミウの表情に変化はない。 「私達がここに来てから結構時間が経つじゃない?」 「そ、そういうことになるのか?」 結構と言われても、まだ数日間だよな。俺が怪訝な表情をすると、ミウは思い出した様に自分の手を軽くポンと叩いた。 「あっ、そうか……ユウマは知らないよね。人間界で過ごす一時間って、だいたい淫界の二十四時間に相当するのよ」 「そうなのか!?」 「そういうことですわ」 「……じゃあいったいミウ達は何歳ってことになるんだ?」 「えっ、年齢?さ、さぁ……何歳かしらね?」 ミウがちょっと困った様子を見せると、すかさずメイが俺を指さした。 「やっぱりアンタって、れでぃーの敵だよ!ユーマ」 「ぐっ……!ミウ、続けてくれ……」 学園だけならず家に帰ってまでこんな事を言われるとは、なんという屈辱。俺はしばらく黙って話を聞くことにしよう。 「うん、続けるね。それで私達三人はユウマに捕まって、拷問されてるんじゃないかっていう噂が淫界中に流れてるみたいなの」 「は?」 「それだけじゃないよ!ユーマがなんとウォンバット!!」 「メイ、違います……ウォンテッドですよ」 「うん、そうね。淫界ではユウマが指名手配になったみたい」 「なにいいいいいいい!?」 納得いかない。状況から言えば、俺がこの三人に振り回されてるだけじゃないのか。それなのになぜ……? 「おれが?なんでそうなるんだ!?」 「いえ~す!でっど・おあ・あらいぶ!」 「意味もわからず物騒なこと言うんじゃねえ!!」 「えー、カッコイイのにー!」 メイは得意げな顔で親指を立ててみせたけど、ぜんぜん嬉しくない。 「実際には殺害されることはないとは思われますが……あなたの精は極上ですから、生け捕りにして美味しい食料として飼い殺しというのが普通の流れですわね」 エマはいつの間にか自分で入れたお茶をすすりながら平然と恐ろしいことを言ってのけた。 しかしこれが普通のサキュバスの感覚なのかもしれない。 俺をじっと見つめながら、エマの話は続く。 「淫界ではユウマ様はサキュバス3人を捕獲して拷問している鬼畜勇者として恐れられておりますわ」 「きち……なんだかとんでもなくイメージ悪いんだな……」 「ですからこのままですと、淫界精鋭部隊が近いうちに襲い掛かってくることになるでしょう」 「っ!!その精鋭って言うとエマみたいな感じか?」 俺が問いかけると、エマは軽く首を横に振った。 「私ほどの力はないと思われますけど、彼女たちは常に精に飢えてますから、ところかまわずユウマ様を求めてきます」 「そしてあなただけでなく、目についた全ての人間の精を吸い尽くしていくでしょう」 (手当たり次第かよ……!?) ある意味この三人よりも質が悪い。 そんな奴らが人間界に来たら大惨事になってしまう。 別にヒーローを気取るわけじゃないが、何とか阻止しないと……まずい気がする。 「でもね、ユウマ。今はエマが女王様に口添えしてくれてるからその心配はないの」 「エマが……?」 「ええ、感謝していただきたいところですわ」 聞くところによると、エマは自分がこの部屋にいることで勇者の力を封じているという報告を淫界にしているらしい。 「なんだ。そうなのか……じゃあ問題ないじゃないか」 「うんうん、だいじょーぶだよ!あと2時間ぐらいはね!!」 「たったそれだけかよ!」 「正確には1時間54分20秒程度ですけど」 「正確すぎると絶望感倍増だな……その間に俺は逃げればいいのか?」 「ダメダメ!そんなことをしたら逆効果だよ、ユウマ」 「じゃあどうすればいいんだ!?」 俺が問いかけると、ミウが見つめ返してきた。 「私達とセックスバトルするしかないわね」 ミウの瞳がキラリと輝いた。そして彼女の体を包む雰囲気が、淫らに変化していく……。 どうやら本気らしい。 「ユウマが助かる道は2つしか無いよ!あたしの魅力に負けるか、あたしたち全員に負けるかのどちらかを選んでね」 「勝手に決めるなよ、そんな道!」 しかも両方共負けじゃないか。そしてメイの纏う空気も、ミウと同じ変化を見せる。 (だいたいこいつら一人ずつでも手に負えなかったのに、なんで3人まとめて……!) 気持ちで負けてはいけないと思いつつ、自信はない。今までは一対一で何とか辛勝してきたけれど……どうなるのだろうか。 「ミウの補足になりますが、セックスバトルをすることで力の差を見せつけるのです」 「我ら三人を退けたとなれば、いかに精鋭部隊と言えども迂闊には人間界に足を踏み入れることはないでしょう」 「なるほど!お前ら……わざと負けてくれるわけか」 「何言ってるの、ユウマ。こういうのは全力でやらなきゃ面白くないじゃない」 甘い希望を抱いた俺に対して、ミウはそっけなく呟いた。 「おもしろ……」 「言っとくけど、あたしは元からアンタに手加減する気なんて無いよ~~~だッ!」 「てめぇ……」 「メイの言い方はともかく……まあ、そうですね。演技するより真剣勝負のほうが良いでしょう」 「なぜそうなるんですかエマさん」 思わず壮絶な棒読みになってしまった。 「なぜって、そのほうがきっと気持ちよくなれるからですわ」 そうか……相手がサキュバスだってことを、俺はすっかり忘れていたようだ。この三人はとにかく性的に気持ちいいことと、 自分が楽しければいいということだけを重視している。 なんにせよ、戦いは避けられそうにない事だけは判った。 「……それで俺が負けたらどうなるんですかね?」 さっきも言ったように、正直なところ全然勝てる気がしない。 「その時は、晴れて私達の奴隷ということになっちゃうね!てへッ♪」 「可愛くウインクすんな。それにさらっと『奴隷』って言いやがったな。じゃあやっぱり俺が勝つしか無いんだな」 「無理無理、絶対ムリ~!ユーマなんて、あたしがヒイヒイ言わせてあげるよ!!」 (お前にだけは負けたくない!) 「ええ、勝てば私達と一緒の日々がこれからも続きますわ」 「どっちにしろサキュバスと離れられないのか、俺……。わかったよ」 仕方なく俺が腹をくくった瞬間、ミウが静かに目を閉じた。 「じゃあ早速だけど結界張っちゃうね」 「な、なにっ!?もう始めるのかよ!!」 俺の不満を無視して、ミウは手際よく魔法陣を敷いて呪文を詠唱した。 「これでもう外に声が漏れたり、外から人が入ってくることはないよ」 「ちょ、ちょっとは待てよ!こらああああ!!」 じりじりと三人が俺との距離を詰めてくる。 「ユウマごめんね?このまま快楽に……ううん、私達に堕ちちゃって?」 「そゆこと~♪」 「ユウマ様、お覚悟を……」 「くそっ!どうしてもやらなきゃならないのか……!」 そしてついにミウの手が、俺の身体にそっと触れた。 「ぐっ!?」 ミウの手が俺の身体をベッドに押し倒した。軽く押されただけなのに、全然踏ん張りがきかない。 「さっき結界を張るついでに、ユウマの身体を魔法で脱力させちゃった♪」 「ず、ずるいぞ!ミウ!!」 「もう戦いは始まってるのよ。それに……好きだよ、ユウマ。だからずっと一緒にいよう?」 ミウの唇が薄く開いて、生暖かい吐息が俺の顔に吹きかけられた。 「あっ……」 すでに力が入らなくなりかけていた俺の身体が、完全に脱力した。 それにミウの甘い吐息を吸い込んだせいで、胸がドキドキして――。 「私のこと嫌い?そんなことないよね……ユウマ……」 唇の距離が近い。このままキスして欲しい……! 「みっ、ミウ……!」 「好きでも嫌いでも、虜にしてあげる……唇、がら空きだよ?」 小さな彼女の顔が、ゆっくり近づいてくる。 「んふ……好きよ、ユウマ……んっ……♪チュ……プ……フフフ……♪」 唇がふれあい、舌がもつれる淫らな音。癖になりそうな甘い雰囲気とともに、ミウの身体からゆっくりと俺にキスの毒が流し込まれる。 「……ミ……ゥ……!」 「私の得意技・メルティメロウキス、これ初めてだよね?」 舌先が痺れて言葉がうまく出せない。キスの味が甘すぎて、身体中がハチミツ漬けにされたように、俺は虚ろな目で彼女を見つめていた。 「身体より先に、心を溶かしてあげる。もう一度……しよ……う……んッ♪」 そして再び甘い口づけが俺を包み込む。ただキスされているだけなのに……ミウのやつ、こんな力を今まで隠していたのか。 「ううぅ……!」 「キスするたびにユウマの魂が柔らかくなって、私の色に染まっていくんだよ……」 なんとか反撃しないと、このままキスだけで負けてしまう。気力を振り絞ってミウを睨みつけると、やんわりと視線を絡めながら彼女はこういった。 「フフッ、もう抵抗しても無駄♪ユウマの心に私の愛情が染みこんじゃってるもん」 「それにまだ先があるんだよ……ほら、こっちにおいで。メイ♪」 「っ!!」 そうだ、敵は一人だけじゃなかった。 しかも今度はメイが悠々と俺の脚を割って、その間にちょこんと座り込んだ。 「えへへ、おにいちゃん♪」 「な……」 上目遣いで恥ずかしそうに俺を見つめるメイの視線は、簡単に俺の心に突き刺さった。それだけじゃない……無防備な心に「何か」を植え付けられてしまった。 (メイみたいに可愛い妹がいたら俺は……) 「あっ、反応した!おにいちゃん、やっぱりロリコンなんだぁ~」 「ちっ、違う!俺はロリコンじゃないっ!!」 自分で口にしても虚しくなる言い訳だった。 メイの小さな手にやんわりと握られたペニスが「おにいちゃん」に反応してしまったのだ。 「今日は妹天国に連れてってアゲル」 「く……お前が俺を連れてくのは快楽地獄だろうが!」 「おにいちゃん……チュッ♪」 「んはあああああああぁぁぁ!」 さらに小さな唇が、敏感な部分を容赦なく舐め回してきた。 「んっ、んっ、ん~~♪チュピッ、んふふ、もう敏感だねおにいちゃん」 急所狙いのそのフェラは……今の俺に対しては反則だ。 妹と化したメイの、アイスを舐めるような舌先の動きがエロすぎて目が離せない。 「わかった?可愛い妹に意地悪なこと言っちゃダメなんだからね!」 そして目があった瞬間、メイの瞳が妖しく光った。魅了の魔法だとわかっているのに、何故か跳ね返せない。 (か、かわいい……) 「ちゃんとかかったね?じゃあロリコンのおにいちゃんには我慢出来ないこと、シテあげるぅ♪」 メイは息を大きく吸うと、亀頭を半分だけ加えながら口元でクチュクチュと音を立て始めた。 「んふ、もう……こんなに……レロ……チュプ、クチュッ……」 「ああぁ、そ、それはあああぁぁ!?」 吸い付いた唇がペニスの形にそって優しくバイブレーションをかけてくる。 特に感じやすい裏筋付近は柔らかく、そしてしつこく何度も舌先を絡めて刺激してくる。 「うくっ、うううぅ、、ああぁっ!」 「おちんちんが唾液まみれで気持ちいいねー?」 我慢しようとしても、簡単にそれ以上の刺激が俺の理性を狂わせる。 ペニスへの快感だけでなく、耳から入り込むメイの声も魅力的だ。 こんなに可愛い妹がいて、そして積極的に責められたら……! 「ミウお姉ちゃんにキスされながら、あたしにおちんちんをいじめられたら防御できないでしょ」 「くっ……はな……せ……えあああぁっ!?」 抵抗する俺のペニスの先端を、細い指先がクニュクニュといたぶってきた。 「先っちょのお口、パクパク開いてきちゃったよ~…………チュルッ♪」 さらにメイは亀頭をそっとついばむように咥えながら、尿道を吸引してきた。 はじめは軽い刺激だったが、数秒後には体の芯が燃えるような感覚に包み込まれた。 「あああぁ、熱いいいいぃっ!メイ!いったい何を……!?」 俺が悲鳴を上げるとメイは顔を上げて口元を拭った。 「う~ん?せーえきが登ってくるところをフタしてあげたんだよ」 「なんだと……」 「メイのトロトロの唾液を流し込んで、中で固めちゃったの。簡単には射精できないよ。クスクスッ♪」 両足の間で無邪気に笑いながら、メイが舌先を伸ばしてきた。 「んん~~~、チュッ♪」 レロンッ……! 「うあああぁぁ!」 「きゃははっ、ビクビクしちゃって可愛い~~!じゃあ、たっぷり虐めてあげる」 「この敏感おちんちんを、サキュバス専用に調教してあげるの。おにいちゃん、うれしい?」 「誰がっ……うあわああぁぁっ!」 身体を捻って逃げようとしたが、一瞬でメイに元通りにされてしまう。 「もう逃げられないと思うよ?だって、ほら……」 メイがチラリと斜め上を見た。その視線の先に、三人の中で一番手強いであろう上級サキュバスが、そっと俺の左脇にしゃがみ込む姿があった。 「さて、私はどうしましょうか」 ゆっくりと顔を寄せてくるエマを見て、他の二人には悪いが見とれてしまった。 ツヤツヤの髪も、全身から立ち上る香気も、見るものを魅了する造形も……まさしく完成された美しさというか、全てが高次元でバランスがとれている。 そのエマの白く美しい手のひらが俺の身体を撫で回す。俺の身体は雷に打たれたように大きく跳ね上がった。 「んっ、うううあああぁぁ!触られてるだけなのに、なんでこんなに!?」 「他の二人のお陰でユウマ様の防御力はゼロ。責め放題ですわ?」 優雅に言葉を紡ぎながら、エマは小刻みに指先で乳首をいたぶる。 「……う……ぁ!」その繊細な動きに、思わず喘ぎ声を漏らしてしまった。 「指先でも感じてしまう部分を舌先で舐められたらどうなってしまうのでしょうね?」 更に長い舌先を伸ばし、乳首ギリギリで泳がせてみせた。 「まさか…………あ!ひいいっ!!」 トロリとした唾液とともに、彼女の舌が俺の乳首を転がし始めた。 舌先から垂れる粘液越しに行われる愛撫とともに、彼女の手のひらも俺の身体を責め続けている。 「フフッ、そのまさかですわ……ピチュ、私の……唾液は……チュプ……高純度の媚薬ですわ」 「それに、あなたが持つ『勇者の血』で私自身が強化されましたから、以前よりも効くでしょう?」 乳首に広がる熱が、そのままペニスへの刺激に変換される。甘い刺激を通り越して、身を焼かれるほどの快感が俺を包み始めていた。 「お、おかしく……なる……!」 「サキュバス三人に責められて、正気を保とうなんて考えるほうが不自然ですわ」 「もっとご自分に素直になってみてはいかがですか?」 「素直に…………?」 「ほら、私の目を見て……」 その言葉に導かれるように、俺は正面から彼女の目を見つめてしまった。 (し、しまった!これ……は……) 「クスッ、もはや簡単に魔法にかかっちゃいますね」 俺は虚ろな目でエマに見とれていた。さっきよりも、いや……一秒ごとに彼女が愛しくなる。メイだけでなく、エマにも魔法を……重ねられてしまった。 「ねえ、このまま堕ちちゃお?ユウマ」 「ミウ……」 「それも悪くない選択かもしれませんね?今の私達なら、ほらこの通り……」 エマが目配せをすると、ミウとメイも手のひらで俺の身体を優しく撫でてきた。三本の腕が俺の身体を不規則に這いまわる。 誰かの手が乳首をつまみ、脇腹を撫でてくすぐってくる。身体中がペニスになったように、俺は敏感に快楽を貪り、彼女たちの手に堕ちてゆく……。 「ユウマ様も天国でしょう?私達のテクニックでこんなに身体が感じやすくなって」 「ユーマの可愛い顔、あたしけっこう好きかも」 「メ、メイ……!」 「あ、いけない!おにいちゃん♪ふふふ、もっと気持ちよくなろー?……メイのあそこで包んであげてもいいんだよ?」 メイが焦らすように唇で亀頭を挟み込むと、まるで膣内に納められたような錯覚に陥った。正直に言えば……メイに挿入したくてしょうがない! 「あっ、メイずるい!私だってユウマが欲しいんだからね……?」 「ミウ……!」 「ここにも、もう一人いることをお忘れではなくって?ユウマ様」 「エマまで……くっ、本気なのか……」 「サキュバスは快楽については嘘は申しませんわ」 「そうだよ、ユーマ……ううん、おにいちゃん、メイたちと一緒にずっとずっと気持ちよくなっちゃおうよ!」 「ユウマさえ本気で嫌じゃなければ、私達三人がずっと愛し続けてあげるよ……」 ミウの言葉を受けて、メイとエマも小さく頷いた。 エマの静かに燃えるような情熱、メイの無邪気な誘惑、そしてミウの優しさ……本音を言えば、全部自分のものにしたい。 このまま彼女たちサキュバスに導かれるまま、快楽のみに包まれてしまいたい気持ちがある。 ほんの数分間の攻防で、俺の心はすっかり丸裸にされてしまった。 一方的に三人の愛撫を受け、快楽漬けにされた心はもはや陥落寸前だ。 しかし俺の心の片隅には、まだ何か気になることがある。忘れてはいけない何かが、彼女たちに身を委ねることを拒んでいる……。 (俺は一体どうすればいいんだっけ……) ――このままサキュバスの快楽に身を委ねる。 頭の中を横切った甘い誘惑が、急激に俺の頭の中だけでなく全身に広がってゆく。 メイに抑えこまれた下半身は、あの小さな唇で傷めつけられて身動きができない。 もどかしくて抵抗しがたい快感が全身にまわり、上半身もミウとエマに絡みつかれて力が出せないでいる。 「ううぅ……くそっ……」 抵抗したい気持ちはあるのに、身体が全くついてこない。知らないうちに心が溶かされかけているようだ……。 「あ~あ、堕ちちゃった……」 微妙な表情の変化を感じ取ったのか、メイが呟いた。 「ち、違ッ!俺は――!」 まだ我慢できるぞ、と言おうとしているのに口が動かない。無意識にメイの言葉に抵抗することを拒んでいるのだろうか……。 「思ったより心は強くなかったのですね、ユウマ様」 俺の胸を愛撫していたエマも何かを感じ取ったようだ。 「くっ……」 実際に、今の俺にはサキュバスの愛撫を振り払うことが出来そうにない。 この甘美な誘惑に耐え切ることは出来ないという気持ちが徐々に強くなってゆく。 「…………」 しかしミウだけは、じっと俺の目を見つめて黙り込んでいた。 「ミウにとっては残念な結果ですか?」 「ううん、もういい……」 エマに尋ねられて、ようやくミウが俺から視線を外した。その声には、俺に対する失望の色が見え隠れした。 「ミウ…………?」 その微妙な違和感に、一瞬だけ俺の心に冷静さが戻る。しかし次の瞬間―― 「じゃあ、お姉ちゃん達より先にあたしが責めてい~い?」 メイが急に体を起こして俺に迫ってきた 「なっ……!」 「私達も楽しめるよう、できるだけ手加減してくださいね?メイ」 涼しげな声でエマが注意を促すが、メイは軽く首を横に振る。 「それはちょっと難しいかなぁ……ほら、こっちおいでユーマ♪」 「こ、こら!抱きつくな……あああぁぁ……!」 メイの細い体に押し切られるように、俺は彼女と一対一で密着させられてしまった。 「うううぅ……俺をどうするつもりだ」 「もちろんいい気持ちにしてあげるよ。でも、ここからは順番でおにいちゃんのことをいじめてあげる」 「!!」 メイの唇がゆっくりと近づいてくる……。 「こないだとは全然違うよ……キスで確かめてみて?」 「メ……」 俺の言葉を遮るように、メイの唇がそっと重なった。 桜の花びらみたいな唇が俺の呼吸を乱す。そして何度も口の中で舌先を暴れさせてから、メイは俺を解放した。 「んううぅ……ぷはぁっ!ハァ、ハァ……」 「んちゅ……チュ……チュプ、ふふっ、どう?甘いでしょ」 メイが言うとおり、以前よりもキスの威力が上がっている。そんなに特殊なことをされたわけでもないのに、ドキドキが全然収まりそうもない。 その疑問に答えるように、メイが恥ずかしそうに呟いた。 「だっておにいちゃんのこと好きなんだもん」 「!!」 その言葉には、いつもとは違う真実味があった。気持ちのこもったメイの一言に、俺の思考が完全に停止した。 「あの時よりも、メイはおにいちゃんのことが可愛くてしょうがないんだよ……ほら、もっと舌を伸ばしてみて?」 「う、うん……」 言われるがままに自分から舌を伸ばすと、メイは口を小さく開けて俺を向かい入れてくれた。 「んうううぅっ!?」 ニュルリとした感触に俺の舌が包まれた瞬間、今度は下半身にも甘い痺れが走った。 「ふふっ、上のお口と一緒に責められると……天国だよね?」 キスをされたまま視線を落とすと、メイの可愛らしい尻尾が俺の股間にまとわりついていた。 「おちんちんがあたしの尻尾にクニュクニュされて凄く嬉しそうだよぉ……ほら、チュッチュしてあげると、震えてきちゃうでしょー?」 「あああぁぁ、尻尾の先が……!」 「おにいちゃんのおいしいジュース、もっと奪ってあげる……ほら、もっとキスしよう?」 メイはそう言いながら何度も俺にキスを重ねた。股間をなぶる尻尾は、角度を変えて不規則にツンツンと裏筋やカリをめくり上げた。 特に尻尾が広くなった部分で優しく撫でられると、自然に体が震えてしまう。それにだんだん頭がボンヤリとしてきた。 「うわぁ、もうおちんちん限界じゃない?おにいちゃん」 「気持ち……いいよ、メイ……」 一生懸命キスしてくる「妹」が可愛くてたまらない。 「クスッ、このままメイと一緒にドピュッてしちゃお?優しく導いてあげる」 メイは一度だけ自分の唇を濡らすように舌を這わせてから、再び俺の唇に素早くキスをしてきた。 「んちゅうっ、んっ、んっ、ん~~♪」 「んっ……うううぅっ、うあ!あああぁぁあぁ!!」 途中からたまらなくなって、自分から唇を離してしまった。キスされてる間、メイの尻尾の先が鈴口をクリクリと弄んできたからだ。 「上のお口は激しいのに、下の子には優しくしてあげてるの……わかる?」 しかし彼女はいたずらっぽく微笑むだけだ。 「男の子はね、こうされるとすごく幸せになっちゃうの。だからおにいちゃんも我慢出来ないよね?」 しっかりと俺の上半身を抑えながら、再び始まる魔の愛撫……。いつの間にか彼女にのしかかられた下半身は身動きもできず、ただ快感を流され続けている。 「あっ、ああぁ!こんなの……我慢出来ないよ、メイ……!」 「ふふっ、そうだよ……もう終わりなの。だからメイに包まれたまま最高の気分になっちゃお?」 射精するのが当たり前かのごとくメイは言った。どうやらもう俺は、快感を我慢することすら許されないらしい。 「メイが合図したら思い切り出してね」 「待って……」 「3……2……」 無慈悲なカウントダウンが始まる。しかし情けないことに、俺の身体がその声に感応してブルブルと震えだした。 メイの言葉が俺の心をくすぐって、射精に導こうとしている……! 「あああああぁぁぁ、そんなっ!」 「うふふふふ……1……ゼロ……ほらぁ、イっちゃえ~~~~!!」 ガクガク震える俺をしっかりと見つめる少女に促され、俺はとうとう敗北の証をぶちまけてしまった。 年下の美少女に抱きしめられたまま、俺は身体をビクビク震わせながら感じ続けた。 「きゃはは、身体がフニャフニャになっちゃいそうでしょ?でもね、まだまだだよぉ……」 俺が落ち着くまでゆっくりと、メイは尻尾を使って精液を搾り出した。そしてひと通り満足した頃、ゆらりと立ち上がった。 「エマお姉ちゃん、次はよろしくね?」 メイの視線の先には、今までの成り行きを楽しそうに眺めていたエマの姿があった。 「メイには手ひどく抜き取られてしまったようですね、ユウマ様」 「エマ……君は……」 しゃべろうとする俺の口元を、彼女の人差し指がそっと遮った。 「ここからは私が丁寧に……苦痛など一切感じぬよう、 いたわりながら吸いだして差し上げますわ」 「うっ……あ、はあああぁぁぁぁ!!」 エマは俺が気づかぬよう、そっと股間に手をしのばせていた。 「触らないで……くれ……!」 「……ふむ、すでにもう硬さが戻ってますわね。メイの淫毒がたっぷり染み込んでいるご様子」 そして軽いタッチで何度かペニスの硬さを確かめてから、そのまま俺の身体をくるりと反転させた。 絶妙な指技に酔わされ、俺は彼女のなすがままに背中を取られてしまった。 「あ……!」 気づけばエマに背中から抱きしめられていた。 「この唇で……ユウマ様には更なる快楽の深淵へと堕ちて頂きますわ」 そして体を捻りこむように、エマは俺に口付けをしてきた。 「んっ……ほらぁ、もっと……私に心を預けて下さいませ……チュウウウゥッ♪」 (う……うまい!このキス、メイとは全然違って……) 「んっ……フフ、いやらしい……メイの味がしますわ。んちゅ……ピチュ……でも……」 「すぐに私が味付けし直してあげます。上級サキュバスのテクニック、たっぷりと召し上がれ」 さっきまでのメイのキスが児戯に感じるほど、エマの口づけは柔らかくて甘い味がした。 無意識に差し出した俺の舌を、あっさりと包み込んだままクイクイと引っ張ってみたり、呼吸に紛れて色っぽい声を漏らしたりする。 「堕ち……る……エマのキスが……あ……」 その呟きすら、次の瞬間には彼女の唇で奪われてしまう。 「弱くなりかけた心が、二度と元に戻らぬよう……念入りにサキュバスの技を体に染み込ませてあげますわ」 エマは俺を押さえ込んだまま、ゆっくりと翼で俺の身体を包み込んできた。 「あああぁぁっ!なんだこれ……逃げられ……ない!?」 「この翼に包まれて逃げられると思っているのですか?」 クスクス笑いながら、彼女は俺の様子を眺めている。 「すっかり力が入らなくなった男性一人くらい、力づくで抑えこむことは〈容易〉《たやす》いのですが……ここは快楽で縛り付けてあげましょう」 「うぐっ……こんな体制……で……!」 身体を折り曲げて逃れようとしても、すぐに元に戻されてしまう。もがいてみても押し戻されてしまうのだ。 それほどまでにサキュバスの翼は力強いのか、それとも俺の身体が弱っているからなのか…… 「ほら、見てご覧なさい……あなたの大事なペニスが、サキュバスの翼に負けてしまうところを」 「くそっ……全然緩まない……」 「ヌルヌルした翼の表面でこすられ、カリ首をめくられながら尿道から淫毒を流されてしまうのですよ……フフフ」 「!!」 エマの口から出た言葉、毒というフレーズに思わず反応してしまう。 「この毒は、男性を感じやすくして良質の精を吐き出しやすくすると同時に、男性の射精時間を遅らせる効果があります」 「射精を遅くする……?」 「身体中を敏感にされながらも、簡単には射精できないという矛盾が快感を生むのです」 俺の疑問に答えるように、エマが妖しげに微笑む。その笑顔に呼応するかのように、ペニスの根本が急にじわりと熱くなった。 「なん……だ、これ……!?」 「そして〈一度〉《ひとたび》、サキュバスの翼に犯された男性は、もはや人間同士のセックスでは感じられなくなってしまうのです」 体が熱い……しかも不自然に、ペニスの周りだけが熱い! エマの翼によって愛撫された部分がジンジン疼いてくる。 「こんなっ……簡単に……いいいぃ、イくうう!」 「ほら、もうすぐ終わりですね……このままイきなさい」 「いいい、イくっ!もう我慢が、あ、あああぁぁっ~~~~!!」 今度はカウントダウンもなく、自分で我慢することもできないままエマの翼に思い切り精液をぶちまけてしまった。 メイのように激しい愛撫ではなかったが、その分まったく堪えることが出来ない恐ろしいテクニック。 しかも射精したあとも、残らず精を吸いだすかのように睾丸をコロコロと転がしている。 「いかがでしたか。私に包まれながらの熱いキスと亀頭愛撫の味は……」 「すごい……気持ちよくて……エマァ……」 思わず彼女の名前を呼んでしまったが、むしろエマは嬉しそうに微笑んでくれた。 「気に入ってもらえたみたいですね。ではまた後ほど可愛がって差し上げますわ」 そして何の未練も無さそうにスッと立ち上がると、俺に背を向けてミウがいる場所と入れ替わった 「ミウ……」 「ユウマ……随分あの二人にいじめられちゃったみたいだね」 「でもしょうがないよ。ユウマは弱い男の子だもん」 エマと場所を入れ替えたミウが目の前で呆れたように言った。 「そんな……!あれは二人が」 しかし言葉を遮るように、ミウは胸元を開放してから俺の両足の間に座り込んだ。 「だから私もいじめてあげる。ユウマの好きな、この胸で……!」 (駄目だ……どうしても見つめてしまう!) ふんわりとしたミウのバストが、俺の目の前で誇らしげに揺れた。 あの胸の谷間に挟まれた記憶が瞬時に蘇る。一目見ただけで、忘れかけていた極上の柔らかさを思い出してしまった。 「どうしたの、ユウマ。なんだかもうイきそうだよ?」 「そんなこと……ない!」 「ううん、強がってもダメ。おちんちんの先がヨダレを流して、僕をいじめてください……って言ってる」 (あ……) ミウがチラリと亀頭を見つめると、まるで視線を避けるようにペニスがビクンと震えた。 「挟んだだけでもう降参?情けないね……『勇者の血』が流れてるのに」 さらにミウは指先でペニスの先をツンツンしながら、熱い息を吹きかけてきた。 「ミ、ミウ~~~!」 暖かい吐息がまとわりついて、ペニスを優しく包み込む。 「だらしない男の子になっちゃったキミは、私が徹底的に駄目にしてあげる」 「え…………」 「この胸に挟まれただけでイっちゃうような早漏くんにして、腰が立たなくなるほど吸い取ってアゲル……」 「あ、ああっ、腰があぁぁ~~~~~!!」 ミウの身体が更に深く俺を抱え込む。同時に腰周りがズキズキとしびれ出す。 深い谷間に無理やりペニスが擦り付けられ、大量の我慢汁が彼女の肌を濡らした。 「オッパイでたっぷり犯してあげる。でもその前に……うふふ♪えいっ!」 「ぐはああああああぁぁあ!?」 全く警戒していなかった痛みに、俺は全身を硬直させた。 「んふふ~♪ユウマのお尻の穴、無防備すぎない?」 「まさか……尻尾を……!」 「もっと力を抜きなさい。気持ちいいお注射してあげるから……」 ミウは冷たく言い放つと、細い指先を俺の脇腹に這わせてきた。くすぐったさの不意打ちに力が抜ける。 その瞬間を見計らって、俺の中に忍び込んだミウの尻尾がうねり出す。 「ほらほらぁ、身体が熱くなっちゃいましゅよ~~♪」 「ぐうううぅぅ、あ、ああぁぁ……!」 普段は触れることすらない部分を蹂躙され、俺は悶えた。何度突き刺されても一向に慣れることのない苦痛。 だがこの異物感が、サキュバスのテクニックによって徐々に快感へとすり替えられていく……。 「あ、あつい……いいいぃぃ……!」 「クスッ、すごい声をだすのね……。そしてこんな無防備な状態でサキュバスの毒を直接体内に流されたら、もうおしまいだよ?」 にっこりと微笑むミウの表情を見ながら、俺は体の中が焼かれていくのを感じていた。 快感という逃げ場のない炎が、俺の理性を焦がし、削りとってゆく……。 「胸に挟んだ何度も搾ってあげる。イったあとすぐに元気になるように、お薬をどんどん入れてあげるからね」 ビクビク震え続けるペニスに対して、ミウがじんわりと圧力をかけてきた。 「ああああぁぁぁっ、そ、それええぇぇ!?」 ミウは軽く脇を締めただけにしか見えない。しかしその絶妙な快感が、一気に俺の我慢を決壊させた。 「ほらぁ、おちんちんパクパクしてきたよ。もう我慢出来ないでしょ?」 「そ、そんな……これじゃあ全然……!」 エマやメイよりも穏やかな責めなのに、全然耐えられる気がしない。 ミウの愛撫は俺の急所だけを狙って必要最低限の動きでペニスを射精まで導こうとしている。 「このまま出して……ユウマ」 そして彼女の手のひらが豊かなバストを強めに押し付けた。 「あああぁぁ…………で、出る……出ちゃ……ああぁぁ!」 ミウの微笑みを見つめながら俺はあっさりと精液を吐き出した。静かに、そして残酷な彼女のテクニックの前に、一分程度も我慢出来ないままフィニッシュさせられてしまった。 「ミウの胸……すごいよぉ……」 「まだこんなに出せるんだね。本気で私専用の奴隷にしてあげよっか?」 少し冷ややかなミウの声を聴きながら、俺はそのまま気を失ってしまった。 「おねえちゃんばかりズルイよぉー!今度はメイの番だよ」 「ごめんね、メイ。ユウマが全然我慢出来ない子になっちゃったから、ついついいじめ過ぎちゃって」 時間にすると数秒程度だったのかもしれないが、俺の意識が途切れている間に、サキュバス達は再び3人がかりで俺を責めようとしていた。 しかも今度は身体が……全く動かせない! 「ほら、早漏くんがお目覚めよ?」 小刻みに震える俺に気づいて、ミウが優しく微笑む。しかし相変わらず身体は動かせそうにない。 「くそっ……一体何をした……!」 「もう暴れ出さないよう、呪縛をかけておきました。でも本当に……敏感で素敵な体になってきましたね」 エマの指先がツツツー……っと俺の身体をなぞる。 (ぐ、ううぅ……あっ……くはぁぁぁ!) それだけのことなのに我慢出来ない。さっきよりも身体が敏感になっているのを感じる。 「ふふっ、こんなにクネクネしてるぅ♪うりうりうり~~」 「やめ……メイ……!」 「サキュバス三人の手で愛撫されているんだから、当然といえば当然だけどね」 言葉も途切れ途切れになりつつ、妖しく蠢く6本の腕から逃れようとする。 「絶対逃さないよ、ユーマ……」 さらに手による愛撫だけでなく、メイがゆっくりと口を開けてみせた。 たっぷりと唾液を湛えた少女の口元から、ペニスの先端に向かって透明なローションが垂らされていく。 「くふうぅっ……!」 「ユーマのおちんちん、あたしがもう一度味付けしてあげる」 小悪魔のように微笑むメイに見とれているだけで、ペニスがさらに膨らんでいくのを感じる。 「こんなにして、いけない子だね?はむっ♪」 「ふあああああぁぁぁぁっ!!!」 少女の口に包み込まれた瞬間、呪縛にかかっているはずの俺の身体がガクガク震え出す。 しかしお構いなしにメイはペニスをすすり、精を吐き出させるために口の中で亀頭をしゃぶり尽くしてきた。 「プチュッ、レロ……クチュ、ジュル……ピチュ……んっ、なんか……チュプ……」 「どうしたのです?メイ」 恍惚とした表情を浮かべるメイに、エマが不思議そうな目を向けた。 「なんかさっきよりも味が良くなっているような気がするの……チュピ……ユーマァ……これ、おいひい……はううぅぅ……」 「ふ……ああぁ……気持ちいい、すご……い……!」 熱心にペニスをしゃぶるメイの姿が色っぽくて、全然我慢ができない。 「あらあら、射精しすぎて身体の中までほぐされちゃったのかな?ユウマ」 「クスッ、もう〈夢見心地〉《ゆめみごこち》みたいですわね」 情けないほど顔を緩ませている俺を見つめ、エマが乳首をそっと口に含んできた。 「んああっ、エ、エマ!?」 「では私も……プチュ……可愛い乳首……たっぷり感じてくださいね」 キチュ……チュル、ペチュ……レロ……レル…… ペニスよりも圧倒的に感じにくいはずなのに、エマの舌先がなぞった部分がどんどん甘く痺れだしていく。 「ふふっ、感じるでしょう?快感の逃げ場が全て塞がれているのですから」 「なんで……こんな……ああぁぁ!」 彼女が言うように、簡単に燃え尽きそうにない快感が俺の中でくすぶっている。 身体に眠っていた神経を掘り出され、直接サキュバスの舌で愛撫されているように……逃げ場のない刺激が俺の中で反射し続けている。 「エマの乳首責めで悶えない男の子なんていないよね……」 エマが責めていない方の乳首を、ミウがそっと軽く撫でた。 「うううぁぁっ!」 「おねえちゃん達のおかげで、ジュル……またおちんちんから蜜が溢れてきたよ!」 「じゃあ私も本気のキスしちゃおうかな?」 そして今度はミウの顔が――! 「ほら、私の目を見て……ユウマの心、壊してあげる」 「や……やめ……」 妖しく揺れるミウの瞳は、まるで俺の心を全て飲み込んでしまいそうだった。 (やばい……このままキスされたら俺はもう戻れなくなる……) 「ふふっ、凄く震えてるね……でも逃さないよ……んちゅ♪」 ピンク色をしたミウの舌先が軽く俺の唇を舐める。背筋にゾクゾクした快感が走り、俺をあっさりと麻痺させる。 「ほらぁ、舌を出して……口の中に、頭の中も全部舐めてあげる」 「ひ…………ぅ」 「自分からそんなに一生懸命舌を差し出すなんて……いい子ね。完全に脱力させてあげる」 柔らかな唇が俺の舌先をチュルンと飲み込んだ。そして甘い唾液を絡ませながら、何度も味わうようにミウは俺の顔を抑えこむ。 (ああぁ……ミウに飲み込まれる……) さっきまでは突っ張っていた手足にも、今は力が入らない。とびきり優しいミウの表情に酔わされながら、俺は彼女に全てを預けた。 「あはっ、なんかまたビクビクしてきたよぉ!」 「そろそろ仕上げにかかるとしましょうか」 「ユウマ、ごめんね……イキっぱなしにしてあげる!」 ミウはエマに目配せをすると、ゆっくりと顔を寄せてきた。 左右の耳元にミウとエマは一度だけ口付けると、俺には聞き取れない何かをささやき出した。 「……無限の快楽……代償として……我らに……」 「永遠の闇に……再び快楽の……封印する!」 ミウの言葉が途切れると、俺の視界が一瞬だけピンク色に染まった。 「い、今のは……?」 「何も気にすることなどございませんわ」 「そう、今のはただのおまじない♪ほら……イかせてあげる」 そしてミウの唇が再び重ねられた。さっきと同じ……いや、さっきよりも甘くとろけるようなキスで、ミウが俺を狂わせる。 「私も可愛らしい乳首を存分に味わうことにしますね」 ピチュ……チュ……プ……! 「っ!!」 快感にぼやけた身体を、容赦なくエマの舌技が切り裂いてゆく。乳首を転がされ、手のひらで体中を撫でられると、体の芯から射精欲が滲み出してくる。 (い、イキ……たい……!) 「はい、じゃあこれでトドメだよ~~!」 思わずこぼれた心の声にメイが反応した。そして小さな口がジュポジュポと激しく上下にピストン運動し始めると、ついに俺の身体も限界が訪れた。 「ユーマ……ほら、イっちゃええええええ~~~!」 「これでおしまい♪」 「んっ、ふうう、うぅぅぅ~~~!うっ!!」 嬌声をかき消すようにミウが深く口づけしてきた瞬間、俺はもう何度目かわからない射精をさせられてしまった。 体中がだるい……でも俺はまだ物足りない……。 「んっ……あ、あれ……?」 射精直後だというのに体がすんなりと動く。疲労感もすっかり消えている。 「ねーねー、もっとおちんちんをチュルチュルさせて?ユーマ♪」 「そうだよ、もっと楽しもう?今度は私の〈膣内〉《なか》で抱きしめてあげたいな……」 「いいえ、その前に私の足コキで一度……快楽の種を植えつけてあげますわ」 サキュバスたちの笑顔が妙に優しく感じる。そして俺はフラフラと彼女たちに近づいて、さらなる快楽を求め続ける……。 私達の目の前でユウマは幸せそうな顔で横たわっている。 「これで終りましたわね」 「んー、案外あっさりだったね?ユーマ」 エマとメイは少し残念そうに呟いた。 私達が彼にかけた魔法は、快楽循環の秘法。対象となる男性の意識を夢のなかに封印し、思いのままに快楽の夢を見させて精を搾り取るサキュバスの性技。 「……」 これでユウマの持つ「勇者の血」が暴走することはなくなった。 彼の頭の中にはエマとメイと、それに私しか存在しなくなった 「メイ、淫界に戻りましょう。女王様に報告しに行きますよ。ミウ、ここは任せます」 「うん、わかった」 「ミウおねえちゃん、また後でね!!」 メイは努めて明るく振舞いながら、転送の魔法陣の中へ消えていった。 エマが気を利かせて私を一人にしてくれたことぐらいわかる。 だから私はそっと……ユウマに顔を寄せ、額と額を合わせる。 彼の見ている夢が伝わってくる。ちょうど私と唇を重ねる直前だった。 「ユウマ…………ちゅっ♪」 そして夢のなかの私が、彼にキスをする瞬間に合わせて本当に唇を合わせてあげた。 「んうっ!!」 すると、ユウマの身体がうれしそうにビクンと波を打った。どうやら射精してしまったみたい。 「あはっ、気持ちよさそう…………でも、ちょっとだけ残念ね……」 幸せそうに打ち震える彼を見つめながら、私は呟いた。 「でも……きっとこれでいいの。私はサキュバスだから」 「約束通り、ユウマのことはずっと愛し続けてあげる」 「時間の流れが止まったこの部屋で、キミの魂が全て溶け堕ちてしまうまで……ずっと……」 そしてもう一度だけ……彼にキスをしてから、転送の魔法陣へと足を踏み入れる。 彼と一緒に過ごした時間は、毎日が充実して楽しかった。 こんな日がずっと続いてくれたらいいと思っていた。 しかし、やはりそれは叶わぬ夢だった。 「さよなら……」 ほんの少しだけ私を本気にさせてくれたユウマに感謝しながら、私はメイとエマの後を追った。 この中で誰かを選ぶとしたら――。 俺の中で、すでに答えが出ていた。 「ん?なんですの、ユウマ様」 ミウでもメイでもなく、俺は彼女を見つめた。 「珍しく顔が赤いぞ、エマ」 「まあ……この私でも、ユウマ様に見つめられると照れてしまうのですね」 一緒にいた時間はミウよりも短いし、メイほどのインパクトもない。 しかしエマは、一見すると完璧そうに見えるけど、どこか守ってあげたくなる女の子だと感じる。 淫界の見張り役として、俺のそばに居てくれるのなら彼女がいい。 「俺はエマを選ぶ」 「え……!」 「ええええええええ~~~~~!!」 「そっ、そんなに意外か!?」 「ううん、なんか……悔しいだけっ!」 (悔しい?な、なにがだ……?エマに対してなのか俺に対してなのかすらわからん……) 「あんまり無理しなくてもいいんだよ~?ユーマ」 「どういう意味だ、それ」 「だってだって!エマさん綺麗すぎるから、ユーマと恋人なんて絶対釣り合いが取れないよーだ!!」 「ほっとけ!別に恋人を選んだ訳じゃねえし!!」 俺が少し強い口調で切り返すと、メイの瞳がじわりと潤んだ。 「うわああぁぁぁん!ユーマってロリコンだから絶対あたしを選ぶと思ってたのにいいぃぃぃ!!」 「俺はロリコンじゃねえ!それにどこから来るんだその自信……」 泣くような素振りを見せても、メイの中身は小悪魔のままだった。 悔しそうにジタバタしているメイの脇で、ミウは手際よく小さな魔法陣を用意した。 「とにかくユウマはエマのこと、大事にしなさいよね。いこう?メイ」 「案外あっさり認めるんだな」 「相手がエマだからね。それにいい女は引き際も鮮やかなのよ」 「そ、そうか……」 あまりにもさっぱりしすぎてて、ちょっと寂しい。 口には出さないけど、もう少し別れを惜しんで欲しいな……とは思う。 そんなことを考えてるうちに、魔法陣がぼんやりと輝きだした。 「ブー……呪ってやる、可愛くなって後悔させてやる!ユーマのバ~~カ!!」 「……」 うん、ちょっと生意気だけどこれくらいのほうがいい。俺はそっと手を伸ばし、メイの頭を撫でてやった。 その次の瞬間、魔法陣の光がミウとメイを包み込んだ。 「騒がしいのが二人、帰ったみたいだ」 俺がつぶやくと女王が答える。 「うむ。こちらに着いたようだ。それにしても、そなたがエマを選ぶとは少し意外だった……お嬢様系が好みなのか?」 「そういうつもりはないけど、なんとなくね……」 「ふむ……理由はなんであれ、選んでくれたことを嬉しく思うぞ」 「ん?どういう意味だ?」 「エマは今までずっと、サキュバスとして英才教育を施してきた。そして最年少で淫界参謀として名を馳せるまでになった」 「その反面、外の世界を知らなすぎる。だからこそ、そなたと共に過ごす時間は、エマにとってかけがえの無いものになるであろう」 「そうやって聞かされると、なんだか俺も責任重大みたいだな……」 「その通り。我等の仲魔を預けるのだ。少なからずエマはそなたの影響を受けよう」 「なるほどな……」 「勇者よ、エマをよろしく頼む。二人の時間をできるだけ大事に、そして仲睦まじく歳月を重ねて欲しい」 まるでエマの母親のように振る舞う女王の言葉に、俺は小さく頷いた。 「エマも勇者と過ごす時間、何一つ見逃さぬようにな」 「はい、女王様。この身に代えて、淫界の平和を守ることを約束します」 「勇者と心を通わせることが出来れば、自ずと淫界の平和は約束されよう」 「それよりも人間界で多くのことを学んでくるがいい。そなたが豊かな心をもって、淫界に戻ってくることを期待している」 女王の言葉が途切れた。もはやこれ以上の会話は必要なしと判断したのだろう。 ミウとメイが淫界に戻り、俺とエマだけになった。騒がしい二人が消えたことで、この部屋になんとも言えぬ寂しさが漂っている気がする。 「ふたりきりになっちまったな……エマ」 さっきから所在なさげにモジモジしているエマの方を向いて声をかける。 「そそ、そうですわね!」 「どうした?なんか顔色が……さっきよりも赤いぞ?」 「なっ、なんでもありませんわ!ユウマ様」 やっぱり変だよな……?でも本人は否定してるし……。 「まあ、それならいいんだけど……ああ、そうだ!俺を監視するということは、ずっと一緒にいるってことだよな」 「ええ、そういうことになりますわ」 「そうか……わかった」 明日からずっとエマと一緒か。とりあえず山田には自慢できるな。 藤村には……知らせないでおこう、うん。 「あ、あの……ユウマ様……」 「エマ。俺の名前呼ぶとき……『様』はいらない。つけなくていいから」 「……はい、ユウマ様」 軽く頷く彼女を見て、この堅苦しい言葉遣いが直るまでにはもう少し時間がかかるだろうと判断した。 私の隣で、ユウマ様が静かに寝息を立てている。 「横顔はこんなに可愛いのに……こちらはたくましいのですよね」 今はおとなしくなっている彼の股間をそっと撫で上げると、心地よさそうに体を捻って、私の手から逃れようとする。 こうして眺めていると本当に普通の、ニンゲンの雄。 でも彼の体には忌まわしき「勇者の血」が流れている。 「……」 女王様から仰せつかった私の役目は、彼がサキュバスに対して害をなす存在ではないことを証明し続けること。 それについては、何か異変があったらすぐに知らせる手はずは整っている。 「サキュバスとして、私はユウマ様に負けてしまった」 それだけが気がかりだった。先日の敗北は、私にとっては初めての経験。 再びベッドの上で戦いを挑まれたら、きっと私は彼に勝てない気がする。 それ以前にサキュバスとして彼を組み伏せる力が……今の私にはない。 私を倒した敵である彼のことが、ずっと頭から離れてくれない。 今も彼の寝顔を見ていると、恨みや怒りではなく、もっと穏やかで暖かい感情が溢れてくる。 それは決して不愉快な感情ではなかった。 「ミウ。あなたなら何もためらわずに……今、この瞬間を楽しむのでしょうね」 サキュバスとしては認めたくない感情。恋慕の情。 しかも相手は「勇者の血」を持つ危険人物。 それでも私は……彼のことが……。 「私もミウのようになりたかった……」 彼と交わるのが怖い。肌に触れているだけで、自分の何かが崩れてしまいそうで怖い。 この思いが見透かされてしまいそうで、私の全てを見られてしまいそうで……。 本当は寄り添って眠りに就きたい気持ちを抑え、私はユウマ様と少しだけ距離を取った。 ――それから三日後。 「いってきます!」 彼が元気よく部屋から出ていくのを私は笑顔で見送った。 一緒について行かない時点で見張り役としては間違いなく失格。 本当は彼と一緒に腕を組んで歩きたい。 でも、その気持ちを一度でも表に出したら……抑えられない気がする。 そんな葛藤もあり、昨日と一昨日はこの部屋で時間を潰していた。 「しかしこのままではさすがに職務怠慢と言われてしまいますね……」 女王様への誓いを思い出し、なんとか自らを奮い立たせる。とにかく自分から動かないと状況は変わらない。 私は監視役としての責務を果たすため、久しぶりにユウマが通う学園に向かうことにした。 そしてユウマの通う建物に入ると、すぐにニンゲンの雄たちの視線が私に集まってきた。 「おっ、あれは……!」 「今日も可愛いな、あの子……ユウマの彼女だっけ?」 こういう視線や賞賛の言葉を浴びるのは、そんなに嫌な気分ではないけれど、今はそんな状況ではない。 一刻も早くユウマ様を見つけて監視体制に入らねば…… 「待ちなさいよ。挨拶もしないでなんなの!?」 「なっ……!」 いきなり私の前に現れたのは、あのフジムラとかいう小娘だった。 出会うなり挑発的な言葉を投げかけてくる辺り、非常に野蛮なニンゲンの雌だと思う。 「ふん、この世の終わりみたいな顔して歩いちゃってさ」 「くっ……!!」 こんな小娘に心の中まで見透かされるとは……私の不徳のいたす限り。 「しかも歩きながら男子の視線まで独り占めとか、何様よ?」 それは私の知るところではないと反論しても良い所だけど、今の私にはフジムラと渡り合うだけの気力が無い。 「……申し訳ありません」 気がつくと私はフジムラに頭を下げていた。戦わずして相手に屈するなど、普段の私ではありえない。 「はぁ?なに謝ってんのよ!!」 しかしフジムラはますます激昂してきた。この娘、私に一体何をせよと言うのか……。 「私はもっと胸を張りなさいって言ってるの!ここまで言われないとわからないの?」 「あっ、あの……!?」 全く意味がわからない。なぜこんなに私が怒られねばならぬのか……。 「まあまあ、藤村さん……お手柔らかにね!そしてエマ様、お久しぶりでございます」 困惑する私の様子を見かねたのか、忠実なる下僕・山田カイトが横槍を入れてきた。タイミングとしては悪くない。 「山田くんは黙ってなさい!」 「い、いえっさー!」 颯爽と現れたところまでは良かったけど、フジムラの覇気のこもった一言で沈黙を余儀なくされてしまった。 山田カイト、全く頼りにならない奴……。 「いくら目の前に美人がいるからってデレデレしないで!」 「ああ、藤村さんの言葉の暴力がいつになく冴え渡ってるよ……」 だが彼を叱りつけたことでフジムラの語気が若干和らいだ。 「ユウマはね……最近好きな子が出来たみたいなの。彼女のことを話すとき、あいつ驚くほど浮かれてるわ」 「誰なのですか、それは」 「アンタのことに決まってるでしょうがっ!!」 「その上、私に女の子の喜ばせ方とか、笑わせ方とか色々聞いてくるのよ?わかる?この気持ち……」 「その……ごめんなさい」 「惨めになるからそういうのやめて!」 ううぅ、なんという威圧感!この小娘に連続で怒られてしまった。 「とにかく……ユウマはエマさんを選んだ。それは事実だから、悔しいけど認めてあげる」 「私はどうすればいいのでしょう?」 「だからもっと堂々としてなさいよ!……恋の勝者はね、敗者に羨ましがられなきゃいけないのよ」 「おー、珍しく本気だね!キミのそういうところ、ちょっと惹かれちゃうなぁ」 「そんなの褒められても全然嬉しくない!ちょっと山田くん……あとで食堂に付き合いなさいよ」 幾分すっきりしたような表情で、フジムラは私の横をすり抜けていった。 「はいはーい、ヤケ食いのお供ですね!喜んで!!」 続いて私の脇を通り抜けようとした山田カイトが、ピタリと足を止めた。 「ああ、そうそう!エマ様、ユウマのこと宜しく頼みますね!」 「!?」 「あいつも初めてだと思うからさ。彼女なんて一生できないって諦めてたはずだし」 そういえば「勇者の血」の影響で、ユウマ様は特定の女性と手を繋いだこともなかったという情報がありましたね。ニンゲンの雌は全くもって見る目がないというか……。 「でも昨日までは浮かれてたんだけど、エマさんが元気ないのだけが不安だって言ってた」 「まあ、そんなことを……?」 「月並みだけど、エマ様にはきっと笑顔が似合うと思うよ?」 返す言葉もなかった。たしかにこの三日間、私はユウマ様の前で笑顔を見せた記憶が無い。 心から笑えるような心境ではなかった。 それにしてもこの山田カイト、女性の心を巧みに読み取る術を持ち合わせているようで、たまに本気で感心させられる。 「あと、出来れば僕にメイちゃんを紹介……」 しかもロリコンの気があるようだ。 「早く行くわよ!山田くん!!」 「ひえええええ~~~!じゃあまた!!」 小娘の命令口調に逆らうことなく、山田カイトは目の前から消え去っていった。 それからしばらく学園内を歩いてユウマ様を探しまわってみたものの、見つけることができなかった。 仕方なく一人で私は部屋に戻った。 「やっほー♪元気してたー?エマ」 「ミ、ミウ!!」 「えへへ、おねえちゃんだけじゃないよー!」 部屋に入ると私を待ち構えていたように、彼女たちが出迎えてくれた。 「メイまで……一体どうしたのですか?」 「それはこっちのセリフよ、エマ」 「えっ……」 「何の連絡もないから、エマさんらしくないって女王様もお怒りだよぉ~~~」 「それであなたたちが……ごめんなさい」 「うわああぁっ、エ、エマが謝ってる!?ありえないんだけどっ!?」 「ありゃりゃ……これはかなり重症だよぉ!!」 私の様子を見て驚く二人を見ていたら、肩の力がすっと抜けていくのを感じた。 「どうすれば良いのかわからないのです……」 ポロリと口から溢れた言葉に、メイとミウは小さく頷いた。 「ねえ、エマ。私で良ければ相談にのるけど?」 「ミウには……できません……」 「あたしにはー?」 その言葉に小さく首を横に振る。相談などできるわけもない。私は彼女から、いいえ……彼女たちからユウマ様を奪ったのだから。 しばらく沈黙していた私に向かって、ミウが口を開く。 「ねえ、エマ?聴いて欲しいんだけど」 「なんですの……?」 「私ね、三日前にあっさり身を引いたでしょ。あの意味はわかってくれてる?」 「いいえ……わかりません」 「ユウマのこと、私……大好きだよ。今でも好き」 はっきりとした口調で、ミウは自分の気持ちを語りはじめた。 「私が一番長く彼のそばにいたんだから、絶対に私が選ばれると思ってたけど……そうじゃなかった」 ミウは一度視線を落としてから、私を見据えて言葉を続けた。 「ユウマはきっと、そういう私の心を見抜いていたんだよ」 「それであの時、一瞬で理解したの。やっぱりエマはすごいんだなーって」 「私がですか?なぜ……」 「うん。エマは私にないものを持ってるの。だからユウマは迷わずあなたを見つめたの」 「ミウ……なぜ私を励ますようなことを?」 「当たり前だよ。エマはね、私が好きになったユウマが選んだ女の子だよ。だからもっと自信持って欲しいな?」 「エマさんって罪作りなオンナだよねぇ~~~」 「メイ、そういう事言わないの!」 「いいじゃん!あたしだってお姉ちゃんと同じ気持ちなんだからね!?」 「ふふっ、そうだね。メイだって悔しかったよね」 ミウは頬をふくらませるメイの頭を優しく撫でた。 「じゃあ帰ろうか?メイ」 「うん……エマさん、頑張ってね!」 「そ、それだけですか?私を元気づけるためにわざわざ……」 私が尋ねると、ミウは不思議そうにこちらを見つめ返してきた。 「そうよ。なにか問題でもあるの?」 「エマさんを元気づけるミッション、コンプリート!」 「いいえ。ありがとう……ミウ、そしてメイ」 私が礼を述べると同時に、彼女たちは魔法陣の中へと消え去っていった。 ミウとメイが残してくれた言葉を噛み締める。 そして、今の私が為すべきことは何なのか……やっとわかった気がした。 学園からの帰りに寄り道をしていたら、いつもより遅くなってしまった。エマのやつ、今日も一日中部屋にいたのだろうか? 「ただいまー」 「おかえりなさい」 やはりドアに鍵はかかっていなかった。 そして目の前には笑顔のエマが――。 「あれ?どうしたんだ、エマ。なんだかとても嬉しそうだぞ」 「ふふっ、わかりますか?」 「なんとなく……な?」 明らかに今までと違う。憑き物が落ちたというか、迷いが吹っ切れたというか――。 今日のエマはすごくいい表情をしている。 「理由を聞きたい?」 「うん、できれば……」 俺の言葉を受けて、エマは静かに目を閉じた。 「ユウマ様は多くの方に愛されているのですね。この三日間でそれがよくわかりました」 「へ……?」 いきなり何を言い出すんだ、エマのやつ。 「そんなあなたを独り占めできる幸せ……もっと素直に体で表現すべきでした」 エマが俺の方に一歩踏み出して、距離を詰めてきた。 「お、おいっ!なんで急に迫ってくるのかな……なんて思ったりして……」 ひんやりとした彼女の手がそっと肩に置かれた。 さらに身を寄せてきた彼女の甘い髪の香りに包まれる。 徐々に俺の体から力が抜けていくのを感じる。 「お忘れですか?私がサキュバスだっていうこと♪」 「も、もちろん……忘れてなんかないさ」 エマの瞳が妖しく光る。真っ直ぐな視線をそらすことができない。 (こうやって見ると、エマって抜群に綺麗だな……) 純粋に俺は彼女に見とれていた。 キラキラしている髪も、真っ白な素肌も、整った顔立ちも、全てが俺を魅了してくる。 「私にしかできない方法で、ユウマ様を幸せにしてあげますわ」 「うっ、あぁっ!……ちょ……!!」 にっこりと微笑みながら、エマは俺を床の上に転がした。 器用に俺の衣服をはぎ取ると、彼女がベッドに腰を掛けた状態で俺を見下してきた。 「いい眺めですわ」 「なぜこんなことを……くそっ、体が……!」 肘と膝から先の感覚が全くない。おそらくこれはエマの魔法。 すっかり四肢が麻痺させられているので、これでは体を動かすのは難しい。 「実は昨夜、ユウマ様の深層心理を読ませていただきました」 「なにっ!!」 こいつ、寝ている間に俺の頭の中を覗いていたのか。 「私の足で、こんな風にされたいという明確な意志を感じましたわ?」 「くっ……馬鹿な……」 たしかに俺は、エマの足に見とれていたことはある。しかしそこまでよこしまな気持ちを抱いたことはない……はずだ。 「幻滅ですわ。本当にエッチなんですね、ユウマ様」 「ぐぅぅ!!」 「インキュバスだってこんなエッチな責められ方を自分から望んだりしませんわ?」 エマは容赦なく俺を言葉でいたぶりながら、そ~~っと足の裏をペニスに乗せてみせた。 「うっ、あああぁぁ……」 しっとりと蒸れた感触が心地よい。思わずペニスもヌルヌルの粘液を吐き出してしまった。 これではもう言い訳すらできない……。 「そんなに気持ちいいのですか?クスクスッ♪」 もちろんエマも、俺が股間を濡らしていることに気づいたようだ。 グチュ……クリュ…… 「ほら、貴女の好きな私の足ですよ?もっと褒めてくださいな」 気をよくしたエマは、足の指先でペニスを本格的にいたぶり始める。 ヌルヌルした我慢汁を親指で丹念に擦り込ませてみたり、亀頭をリズミカルにピンピンと弾いてみたり……。 「あ、あああぁぁ!エマぁぁぁぁ!!」 「なんです?ふふふふふ……」 いかに相手がサキュバスとはいえ、足の先で刺激されるだけでここまで気持ちよくなれるとは思っていなかった。 「もっと激しいのがお好みですか?それとも……逆がいいかしら?」 彼女が優しく尋ねてきた。 「気が狂うほど焦らされて、指先で先端をクリクリされたい?できる限りのリクエストにお応えしますわ」 それはあまりにも甘美な尋問だった。 エマに自分の希望を言えば、おそらく彼女は応えてくれる。 しかしそれと引き換えに、俺自身の弱点……性感帯がモロバレしてしまう。 「ほら……早く答えないからおちんちんが泣き出しちゃいましたわ?」 「ち、違う……!」 「だ・か・ら、もっと素直になってください。ユウマ様……」 横を向いて視線を逸らした俺を戒めるように、エマの細くて長い足がゆるゆると動き始める。 「うああぁっ!」 棹を踏み潰しながらクネクネと指を動かしたり、粘液を塗り広げるように足の裏で先端を撫でられると、背筋に快感がほとばしる。 残酷なほどゆっくりと、しかし確実にエマの指先が性感帯を割り出してゆく。 「そろそろ弱点がむき出しになっちゃいますわ。感じるのはここかしら?」 クニュッ、クチュッ、クニュッ♪ 「ひっ、ひあああぁぁぁっ!」 だが急に彼女の足がピタリと止まる。 「ここから先は……ちゃんとおねだりしていただかないと」 「あ……が……ぁぁあああ!!」 まさかの寸止めに、俺は体を震わせて抵抗する。 しかし、エマの妙技によって快感を手足の先まで染みこまされたおかげで、射精したい衝動を抑えることができない。 「あ、脚……!」 「聞こえませんわ?」 ぐちゅぐちゅぐちゅっ♪ 「ぐあああぁぁっ、脚で……イ、イカせて……」 「う~ん?どんな風にですの?」 クニュクニュクニュ……グチュッ! 「ひあっ、あっ、ああァァッ!焦らさないで!!」 エマは全部わかっているはずなのに、わざと快感のツボを外して愛撫を重ねてくる。早く楽にして欲しいのに、こんな時だけ……意地悪だ……! 「これがいいんだ……クスッ♪その恥ずかしい声、可愛いですわね」 「くぅ……ふ、あ……早く……!」 「もっと聴かせてくれたらイかせてあげてもいいですけど、恥ずかしすぎてお顔が大変なことになっちゃいますね?」 「み、見るなああぁぁぁぁ!」 容赦無い言葉責めに反応したペニスが、再びビクビク震えながらと嬉し涙を流した。 「そろそろ限界かしら……楽にしてあげましょう」 エマは楽しそうに爪先でペニスを弾いてから、親指を人差し指の間で亀頭をクリクリとこね回してきた。 「うっ……んん、う……!」 「ふふっ、いい子♪ではお望みどおり私の足で……シコシコシコシコ……ふふふ……」 長く美しい脚が目の前で規則的に揺れる度、快感が膨れ上がってゆく。 「あっという間に達してしまいそうですね?このままピュッピュしたいでしょう。ほら、ほらほらぁ!」 「あっ、あああぁ、エ、エマ!?もう出る……出るよおおぉぉぉぉ!!」 俺が悲鳴を上げると、エマはわずかに唇の端を上げた。 それはサキュバス特有の嗜虐的な微笑。 「はい、これでもうおしまい。思い切りイきなさい!」 すでにヌルヌルになっているエマの足指が、トドメと言わんばかりに少し強めに裏筋を引っ掻いた。 「うっ、うわあああああぁぁぁぁ~~!!」 ドピュドピュドピュウウウゥゥッ!! たっぷり焦らされて限界の先まで快感を擦り込まれたペニスが勢い良く降参の証を撒き散らす。 全ての力をエマの美脚に吸い取られたみたいに、体中が弛緩する。手足が脱力しきってしまう……。 「いっぱい出ましたね。ご褒美を差し上げますわ」 「な、何をするつもりだ……!?」 「何って、このまま挿入してしまいたいですが……もっと足で搾られたいですか?」 「い、いや……もう足は……!」 「ふふっ、では問題ありませんわね。頂きます♪」 「そういう意味じゃない!ちょっと待って……くはあぁぁぁ!?」 グチュウウウゥゥゥッ!! エマは問答無用で俺の上に覆いかぶさってきた。 そしてあっという間に挿入……硬さを失うことのない肉棒を、彼女は楽しそうに何度も膣に突き刺す。 「あんっ……硬い……ユウマ様、もう少し手加減してくださいな」 「俺は何もしてない!エマのほうこそもっと手加減して……」 「無理ですわ。私は手加減できません。全力でお相手させて頂きます」 エマは凄絶な表情を浮かべながら、ゆるやかにグラインドを始めた。 この体勢はヤバイ……イきっぱなしにされてしまう! 「ぐああああああぁぁっ、ねじれて、擦れて……ああぁっ、ああぁぁ~~!!」 腰の動きとは裏腹に、エマの膣内は激しくざわめいてペニスを舐めすすってくる。 「すごい声ですね。ふふっ、嬉しくなってしまいますわ……」 「エマ、ストップだ!少し動きを止めてくれえええぇぇ!!」」 カリ首の周りに集中してまとわりついてきたかと思えば、根本と真ん中をグリグリと締め付けてきたり……。 「こんなに悶えて、叫びまくってくれるなんて、サキュバス冥利に尽きます」 ドチュッ、グチュッ、ズチュッ!! 「動くな!動くなああああぁぁぁ!?」 快感でもがく俺を見て、ますますエマは腰の動きを加速させる。 「私の膣内、いかがですか?お気に召してもらえるかしら」 俺は言葉も出さずにブンブンと首を縦に振った。彼女の腰振りが一秒でも早く停止することを祈って。 しかし一向にエマの責めが止む様子はなかった。 「包み込んだユウマ様自身を、クニュクニュクニュクニュ……と優しくいじめてあげますわ」 「もういい……おかしくなるっ!許してくれ、エマアアアァァ!!」 「悶えてもどうにもならないのがサキュバスの膣責めです。存分に味わってください」」 俺が叫ぶたびに彼女の膣内がクチュクチュうごめいて、ますます貪欲にペニスを虐めてくる。 だからといって無抵抗のままでも……きっとエマが責めをやめることはないだろう。 腰回りがとろけてしまいそうだ……。 「あら大変ですわ……ユウマ様の大事なタマタマがヒクついてきました」 「この私に濃厚であま~いミルクを捧げてくださるのですね。ふふっ……そんなに吸い尽くされたい?」 「うううぅぅっ!」 本音を言えば出したい。出して楽になりたい……。 「サキュバスに翻弄されて、何度もイかされて喜んじゃうM男クンだったのですか?」 「そんなはず……ないだろ……!」 「ユウマ様がお望みなら、何度でも気持よくして差し上げますわ。お尻からもっと気持ちよくなれるお薬を注いであげる事もできますし」 「そ、それだけはダメだ!!」 「クスッ、興奮させてしまいましたね。ではこのまま搾り取って差し上げましょう」 エマは少しだけ腰を上げ、前後左右に腰を振り始めた。 我慢汁でドロドロになったペニスを膣内で執拗にしゃぶりながら、カリ首を締めあげて射精を促してくる。 「ああぁぁ……こんな……!!」 「もう我慢できませんか?また体中がヒクついてきました……その可愛らしいお顔を私に見せて?」 激しく腰をくねらせながら、エマは手のひらで俺の頬を撫で上げた。 ひんやりとしていて、すべすべの彼女の手の感触が心地良い。 ヌルついた膣内でペニスをなぶられ、つややかな手のひらで体を撫でられる。 そして微笑んだ彼女に優しく見つめられ、俺はもう我慢が利かなくなっていた。 「エマ……!エマ、エマアアアア!!」 「体の中から犯してあげますわ。このまま私の中で、果てなさい!」 もはや俺は命令口調のエマに逆らうことはできなかった。 足の先に力がこもり、背筋が弓なりに反っていく。 「イく……イク!イ……んああああぁぁぁっ!!」 ゴプッ……ドピュ、ドプゥ…… 最上級の心地良さの中、俺は彼女に精を捧げてしまった。 連続しての射精だというのに、むしろさっきよりも発射した量が多く感じる。 天国のような心地良い脱力感とともに、俺は彼女の顔を見つめる。 膣内だけにとどまらず、あふれた精液が俺たちの間にこぼれる。 エマは嬉しそうな表情で、それらを舐めとるように腰をネットリと動かし続けた。 「ハァ、ハァ……すごい……」 エマの膣内から引きぬいてしばらく経つのに、呼吸も興奮もぜんぜん落ち着かない。 圧倒的なテクニックで、エマは俺を快楽漬けにしつつ、自らの体も満足させたようだ。 「いかがでしたか?私の本気責めは」 「こんなのされたら絶対に我慢出来ないぞ、エマ……」 「クスッ、お気に召したようで何よりですわ♪」 「なぜそういう解釈になるんだ」 困惑する俺の顔を見て、彼女がクスっと笑う。 その表情は今まで俺に見せたことのない可愛らしさに満ちあふれていた。 「ユウマ様、この先何があっても私はあなたと添い遂げます。私はあなたを……」 「ハァ、ハァ……待て、エマ!その先は言うな!!」 「きゃっ……!」 俺は快感に痺れている体にムチを打って、無理やり上半身を起こした。 そして彼女を抱きしめ、耳元で一言だけ……ずっと暖めていた言葉をささやく。 「えっ、急にそんな……本気ですの?」 「俺はエマには嘘はつかない」 俺が答えると、エマは嬉しそうに俺に抱きついてきた。 「あの、ユウマ様?いくつか条件……いいえ、お願いがございます」 「うん?言ってごらん」 エマは俺に見つめられて、少し恥ずかしそうにモジモジし始めた。 「そ、その……いつも私を見ててくれないと、困ります。生涯の伴侶として優しく接してくれないと嫌ですわ……」 「うん。それから……?」 「いっぱい楽しいところに連れて行ってください」 「ああ、約束する」 少し遠慮がちに俺に色々と要求してくるエマの仕草が、なぜか凄く女の子らしく思えて可愛い。 いつも自分の気持を抑えていた彼女だけど、これからはこういう表情をする場面が増えるのかもしれない。 「ユウマ様のお友達もたくさん仲良くなりたいです」 「じゃあ藤村と喧嘩するなよ?」 「あの小娘はちょっと苦手ですけど……努力しますわ」 話題が藤村のことに及ぶと、エマはプイッと横を向いて口を尖らせた。 他の女の子の話題を出すのは、彼女に対してちょっと配慮が足りなかったかと反省する。 (ははは、こりゃ浮気とかしたら大変なことになりそうだな……) 「浮気など許されるはずがないでしょう?あなたのそばに居ていいのは私だけですわ」 「おい!勝手に心を覗くなよ!!」 「ご理解いただけましたか?サキュバスの前でエッチな気持ちを隠すのは不可能だということを」 「それにユウマ様は、上級サキュバスである私を選んだのですよ?……そんな気持ちを起こさぬよう、毎晩たっぷり搾り取ってあげますわ」 エマは細い腕を俺の背中に回して、強く抱きしめてきた。 思ったよりも彼女はヤキモチ焼きというか……すごく純粋な女の子なのかもしれない。 「うふふっ、私のこと……どれくらいお好きですか?」 「……ノーコメント」 甘えるような声で尋ねてくる彼女の質問を、やっとの思いではぐらかす。 「ミウやメイよりも好きって言ってくれないとイヤですわ」 「ノーコメントだっ!」 そんな恥ずかしいことを俺が言えるわけがない。 しかし彼女は食い下がってくる。 「それでも、もう一度だけ言って欲しいですわ……?」 「……こんなこと、何回も言えないからな!」 「しかし……んっ、んちゅっ、うううぅぅ♪んふふっ……」 これ以上言い合いをしても仕方がないので、俺はエマを抱き寄せ優しく唇を奪った。 この気持ちを伝えるなら言葉よりも口づけのほうが早い。 俺はきっと、エマに夢中になる。今日よりも明日、明日よりも未来……ずっと。 数秒後、ゆっくりと唇を離すと……そこには満面の笑みを浮かべたエマの顔があった。 「伝わったか?」 俺が尋ねると彼女は大きく頷いた。 そして―― 「ありがとう、ユウマ」 飛び切りの笑顔と共に、心を開いてくれたエマを、俺はもう一度強く抱きしめた。 (急に選べと言われても……!) 正直なところ、この中の誰か一人に絞ることは難しい。 仮に俺がミウを選べば、他の二人を切り捨てることになる。それがなんとも後味悪い。 「すまない。すぐには答えが出せそうにない……」 「ほう……悩んでいるようだな、勇者よ」 苦しげに答える俺に向かって、わずかに同情するような口調で女王が言う。 しかし目の前の3人は、俺の煮え切らない様子が気に入らないらしい。 「えー、なにそれユーマ!優柔不断すぎ!!」 「私達に魅力がないってことなのかな…………」 「まさかの全員チェンジですわね」 「い、いや!そういう意味じゃないんだ!!」 「じゃあ、どーゆー意味なのよ?」 「それは……」 「ユウマ様、決断力のない男子は一生モテないままですわよ」 「ぐうぅぅ……耳がいてぇ……痛すぎる!」 「じゃあさ、めんどくさいから全員選んじゃえばいいじゃん!」 「そういうわけには……」 メイの無邪気な一言にハッとさせられる。そうか、その手があった。 いや、しかし本当に許されるのか? 確かに女王は3人でもいいとは言っていたけど……。 「な、なあ女王?……相談があるんだけど……」 「みなまで言うな、勇者よ。そなたの思考は我に筒抜けだ」 「……」 話す手間が省けて良いのだが、すべてを見透かされているのは少し悔しい。 「淫界を統べる女王として、全員を選んでもらうことに異論はない。むしろ大歓迎だ」 「……本当に?」 「うむ。そなたと交わることで、『勇者の血』の力をもつ、強力な仲魔が生まれてくるかもしれないからな。フフフ……」 なるほど、そういう思惑もあるのか。 「それは別として、ひとつだけ問題がある」 「彼女たち3人が人間界にとどまっていることを、淫界にいる仲魔たちは快く思っていない」 「!!」 「そなたの前にいるミウ・メイ・エマの3人は、こちらの世界では誰もがその名を知る有名人なのだぞ」 「有名人……?」 目の前の三人を順番に見比べる。 「あれ、言わなかったっけ……?」 「あたし、けっこうファンレターとかもらうよー。お姉ちゃんはもっと凄いけど!」 「自らの人気を語るなど、淑女の行いではありません。そんなことをして喜ぶのは、余程の恥知らずだけですわ」 どんな意味で3人が有名なのかは尋ねはしないが、俺の希望が通ると色々面倒なのだろうということは感じる。 (やはり誰か一人にしないと駄目か) 「まあ、勇者と人間界に対する監視の目を増やすということで、仲魔たちには言い訳もできよう」 「……」 いちいち思考を読まれるのは癪にさわるが、余計な説明が不要なのは楽である。 女王が一息ついてから、改めて俺に問いかけてきた。 「一番大切なのは勇者よ、そなたの気の持ちようだ。ミウ達3人をその身で受け止める覚悟があるのかないのか……」 「その気持ちさえしっかりしているのなら、我も力を貸そう」 「……」 単純に考えれば、俺の監視役を選ぶだけの話だ。別に恋人や婚約者を選ぶわけではない。 しかしその監視される期間が、俺の寿命とイコールになる可能性が高い。 そして俺自身にとっては何のプラスにもならないという……いや、淫界から刺客がやってこなくなるというメリットはあるか。 いずれにせよ、この3人以外のサキュバスがやってくるのは気に入らない。 俺は自分の気持ちを固めた。 「さっきの言葉は訂正する。俺はここにいる全員選ぶ!」 「うむ……その言葉を待っていた。ミウ・エマ・メイ、聞いてのとおりだ」 「本気なのですね?ユウマ様」 「ああ、よろしくな……」 「あたし達全員を相手にしようなんて、エッチだね!ハーレム志向だね!見なおしたよユーマ!!」 「言いたい放題だな、おい」 「クスッ、そんなにさっきの続きがしたいんだ?私は歓迎よ」 「お、俺はそういう不埒な気持ちでお前らを選んだわけでは……う、うわっ!何すんだ、メイ!!」 俺がミウと話している途中で、メイがいきなり抱きついてきた。 「うるさいなー、ここからはもう言葉なんていらないじゃん!」 「そうですわね。面倒だから魔法で縛りましょうか」 エマが小さな声で何かをささやき始めた。 「ま、待て!エマッ、俺に全部話させ……ぐっ……なんだ……これ……!」 しかし問答無用でエマの魔法が俺を拘束する。 体の動きが急激に鈍くなる。 「ぎ……ぐ……」 くそっ、全身が針金で締め付けられてるみたいに動かないぞ……。 「でた~!エマの得意技!!」 「な……に!?」 「体の表面の感覚はそのままに、筋肉の動作に関する伝達を鈍くさせてもらいました」 そんなことができるのか!? 「指先を動かすのも一苦労でしょう?いつもの十倍は時間がかかるはずですから」 エマの言うとおり、身体が思うように動かない。わずかに動かすことはできるのだが、とにかく時間が掛かる。極端に時の流れが遅く感じる。 「せっかくですから、先ほどとは少し違う責めにしましょう」 「うんうん、そうだよね!エマさん」 「ユウマが自分から進んで、私達に精を注いでくれるなんて夢みたい……」 「そん……なこと……!言ってねええええ!!」 「きゃはっ、ユーマの動きがノロノロしてて可愛い~!このまま押し倒しちゃうね」 ズンッ! 「ぐっ!く……そぉ……!」 ろくに受け身も取れないまま、俺は彼女たちに押し倒されてしまった。 しかも倒れてすぐ、俺の顔にミウのお尻が降ってきた! 「んぶうううううぅぅぅ!?」 視界が真っ暗になる!それに呼吸が……ああぁぁ!? 「あっ、ごめんね……近すぎて見えなくなっちゃうよね」 俺がもがこうとするのを察したミウは、慌てて少しだけ腰を上げた。 「ミウ……お前なあ……」 「えへへっ♪こんなチャンスめったにないから、ユウマのお顔に擦りつけてあげるね」 ヌチュ…… 突然押し当てられたのは、すでに潤い始めていたミウの花弁だった。 「んっ、んん!やめ……」 「サキュバスのジュースがお顔にいっぱいだね、ユウマ♪」 有無をいわさず、ミウの秘所から漂う香りを胸いっぱいに吸い込まされてしまう。 その甘い香りが、あっという間に俺の身体に染みこんでいく…… 「う……く……ぁ……」 「恥ずかしい?悔しい?ふふっ、もっと気持ちよくしてあげる……」 恍惚となる俺の表情を見つめながら、ミウ自身も気持ちよさそうに腰を振り、俺の顔に愛液を擦り込んでゆく。 「ミウに先を越されちゃいましたね……では私はこちらを頂きますわ」 「うううぅっ!?」 エマの声が聞こえたと思ったら、急に下半身がゾクゾクと痺れだした。 すでに硬くなりかけのペニスが、生暖かい何かにあてがわれて擦られる。 この感覚は……! 「あっ、あああ!待って!!ふああぁぁ~~~~!」 ジュプウウウゥゥゥゥ!! 「クスッ、突然過ぎましたか?ユウマ様のおちんちん、すごく喜んでますけど?」 俺の位置から見えないが、おそらくエマの膣内にペニスが無理やりねじ込まれた。 「この入れ方だと、普段とは違った刺激が生まれて……素敵でしょう?」 「あっ、あああぁぁ……すごい……何これぇ……」 反り返ったペニスが、エマの内部でグニグニと形を変えられていく。 特に先端が普段は擦ることのない部位に当てられ、あまりの気持ちよさに歓喜の涙を流し続けている。 「膣内のコリコリした部分で、ユウマ様の弱い裏筋を削るように擦ってあげますわ」 ジュルッ……グチュッ……ジュルルルゥゥ…… 「あっ、あああぁぁ!動くな、エマアアアァァァ!!」 緩やかに上下するエマの体を止めることもできず、俺は悶絶した。 「ずっる~い!おねえちゃんたち、少しは可愛い妹に思いやりを分けてよ~~!!」 「メ、メイまで……!?」 「アンタは黙ってなさいよ!……ん~、どうしよっかな……」 「あっ、ここが〈空〉《あ》いてるよ……んふふふ、チュルッ♪」 メイは大きく開かれた俺の両足の間に座り込み、そ~~っと顔を寄せてきた。彼女のやわらかい髪が俺の太ももに触れる。 「つながってるところを丁寧にナメナメしてあげるね?エマさんとユウマ、どっちが先にイっちゃうかな~~」 「メ、メイ!いつの間にそんな所へ……でも私が先に達することなどありませんわ」 ペニスの結合部をメイにじっくりと視姦されていることに気づいたエマが不満気に呟いた。 「そういうこと言っちゃうエマさんには、特別にクリちゃんも舐めてあげる……チュピ、クチュ……んふふふ♪」 「あっ、あああぁぁ~~~!メイ!おやめな……さい……い、ひゃあぁぁっ!?」 メイの巧みなクンニに、エマが嬌声を上げる。サキュバス同士の場合、愛撫された相手はもろにその性感を刺激されてしまうようだ。 「エマさんを感じさせるとね、自動的にユーマも……んふふ~♪」 「えっ……あ、あああぁぁ!!」 メイの言葉が終わらないうちに、急にエマの膣内が激しく俺を締め付けはじめた。 「クリちゃんをコロコロされて感じない女の子なんていないからね?それにユーマとつながってるところも舐めちゃうもん」 そして再びメイは顔を沈めた。 「ピチャ……チュプ、チュ……ピチュッ♪気持ちいーい?」 「ああぁ、おやめなさい!メイ……その舌使いは卑怯ですわ!!あ、ああぁぁ~~!!」 「なんてことだ……あっ、あああぁ、キツい!」 微妙に感じるメイのざらついた舌先と、ペニスをキュウキュウに締め付けるエマのオマンコの両面攻撃で、射精したい欲求が急激に膨らんできた。 「気を抜いてると一気に持っていかれちゃうよ?ユウマ」 俺の顔の上で腰を回しながらミウが言った。 「くっ……ん、うぅ、そうですわよ。淫界きっての3人と交わっていることをお忘れなく」 「ん~、チュッ♪チュプッ、チュル……やっぱりエマさんより先に、ユーマがイっちゃいそうだねぇ」 舌先だけでなく、指で玉袋をコロコロと転がしながらメイがいう。彼女の言う通り、限界が近い……。 「この無抵抗オチンチン、そろそろトドメ刺してあげるよぉ……はむっ♪」 突然、ジワリと股間に熱が広がる。 「んじゅるっ、ぷちゅ……レロ、レロレロ……んふふ~~♪」 「んあっ、ああああぁぁ~~~!?」 間違いない、これは……片方のタマを集中的にメイが攻撃しているのだ。 「えへへ、今まで舐めなかったから刺激的で我慢出来ないよね?」 「やめ……なんだこ……これ……!?」 慣れない刺激に体が震え出す。今までこんなところを熱心に舐められたことなんてない!! 「メイが頑張ってるなら、私だって……えいっ♪」 さらにミウが腰を浮かせながら、俺の口と鼻先を交互に舐め回すように腰を振り出した。 「ん、ああぁ……なんだ……すごくフワフワして……」 ミウの甘いジュースを飲まされ、股間はメイとエマに責められ、体は自由に動かせない。 「う……で……出る……もう無理いいぃぃ!!」 体中にサキュバスのエキスを染みこまされながら、俺はとうとう体を硬くした。 「あんっ、ああぁぁん!私も気持ちいいよ、ユウマ~~!!」 本気で感じているミウの艶やかな声を耳にした瞬間、俺の我慢が一気に崩れ去る。 ドピュウッ、ドピュピュピュウウウウウ~~~~!! 「あん……熱いですわ♪さらにゆっくり腰を振ってあげましょう」 クイックイックイッ♪ 射精直後のペニスを軽くしごくように、エマが上下に腰を揺さぶる。 「ああぁぁ……漏れるぅ……!」 「ふふっ、美味しいのがまた出てきたよぉ~~」 エマに搾られ、膣から溢れた精液はメイの唇ですすられてしまう。 「ミウが本気で感じている時の愛情ジュースを顔に浴びてしまっては、もうおしまいですわ」 「ぐ……うううぅぅ……」 「おねえちゃんの本気汁、久しぶりだよね~?ユウマ、ちゃんと聞こえてるぅ?」 「う……ああぁ……ミウ……」 実際に搾り取られたのはメイとエマなのに、最後にとどめを刺されたのはミウの色っぽい喘ぎ声だった。 震える指先でミウの太ももをそっと撫でる。 「あんっ…………ユウマ♪」 射精したせいで呪縛が解けたのか、手足は自由に動くようだ。 「ぶー……なんか、結局おねえちゃんにイイトコ全部持ってかれたよぉ!」 「仕方ありませんわ。ではこのまま吸い取らせて頂きますね、ユウマ様」 「え……」 エマは深く息を吸い込んでから、腰をもう一度沈めてきた。 「イった後の敏感なペニスに刺激を加えると、男性は本当に簡単に屈服してしまうのですよ?」 「エ、エマ……ちょっと待ってく……」 「待ちませんわ」 エマは冷たく言い放つと、膣内をうごめかしながらクネクネと腰を降り始めた。 「今度は早いですわよ」 その言葉通り、あっという間にペニスが元の硬さに戻ってゆく。 「んうっ、こ、こんなことが……!」 「まだまだ……フフフ♪」 そしてさっきよりもリズミカルに腰を動かしながら、妖艶な表情で俺を見つめた。 節操のないペニスは、再びエマの中で絶頂を迎えようとしている。 「気持良すぎる……うう、ああぁっ!」 「ほら、もう我慢出来ないでしょう?」 エマの言葉に逆らうように歯を食いしばって耐えようとしたが、数秒と我慢できなかった。 「ああああぁぁ、また……イ……っ!!」 「ふふっ、そのままイキなさい!」 ドピュウウウウウウゥゥゥッ! エマに導かれるように、再び俺は果ててしまった。 「ああ、すごい……こんなに濃い精を浴びたら、私も気をやってしまいそう……」 「きゃふっ……溢れた分だけでも美味しいよ、ユーマァ……もっとぺろぺろするぅ……」 メイが熱心に睾丸を舐め続けていたせいで、一度目と変わらぬ勢いで再び射精してしまった。 「ユウ……マ……気持ちいい?私、もう……感じすぎちゃって……」 そしてずっと俺の顔にまたがっていたミウが興奮混じりに俺を見つめている。 「ミウ、しっかりなさい。ここからが本番でしょう?」 「エマ……うん、そうだよね。私、ユウマにキスしたいよ……」 「じゃあ、あたしは本気フェラしたい!」 メイの本気フェラという言葉に思わず体が反応してしまう。 それだけじゃない、ミウが俺とキスを…………! 「じゃあペニスはメイに任せて、私は乳首を責めさせて頂きますわ」 ミウとエマが俺を挟みこむように体を動かしてきた。 「ああぁ、この体勢は……!」 「思い出しちゃうよね?ユウマ……さっきのキス、もっとしてあげる」 そう言いながら、ミウは軽く自分の唇を舐め回した。トロリとした唾液が彼女の艶やかな唇を一層色っぽく仕上げる。 「ユウマ様の乳首がふやけて溶けるほど、念入りになぶって差し上げますわ」 「うっ…………あ、ああああぁぁっ!?」 「あむっ……ジュルル、ピチュッ、レロ……んふ、さっきよりもほぐれて美味しくなってるぅ♪」 ミウとエマに気を取られているところに、メイからの不意打ちを食らってしまった。 「ユーマの悶える声、あたし好きだよ♪」 「メ、メイ!こんな……あああぁぁ、すごい……吸い付いてるぅ……」 「いっぱい焦らしまくって、ピクピクにしてあげる。それからエナジードレインしちゃうからね」 メイの小さな顔が激しく上下する。ペニスを咥え込んだ口の中で、舌先がクチュクチュ蠢いて、さらなる快感を俺に与えようとしている。 「さっきのエマさんみたいに、ユーマが気絶する寸前まで吸い取ってあげる」 「あああぁ、メイ……メイ!!」 悶え続ける俺を見て、彼女がクスッと笑う。 「メイちゃんの手加減フェラで、頭の中をピンク色にしてあげるからネ」 (腰が……溶かされちゃうよ……ぉぉぉ!) 「ユウマ、許せないなぁ……メイばっかり見てちゃ駄目だよー!」 「えっ……お、おれは!見てない……ぞ……」 「うん?そんな言い訳、私に通じると思ってるの」 「いや……って、お、おい!?」 ミウの唇が静かに近づいてくる……。 「忘れさせてあげる……私だけ見て……」 メイに対するヤキモチなのか、ミウは奪うように激しく俺の顔を押さえつけた。 「んうぅぅっ!!」 「チュッ……プチュ、チュクッ……んふ……いいお顔……♪」 そして柔らかい舌を一気に滑りこませ、呼吸ごと奪い去るように何度も口づけをしてきた。 (すご……い……このキス、甘すぎる……) ミウの情熱的な口づけのせいで、俺は一気に骨抜きにされてしまった。 力が抜け落ちた俺を感じながら、ミウがニッコリ微笑む。 「とろけきったユウマのお顔、全部独り占めしたい……」 「ふふっ、ミウ?私が隣にいるのを忘れていないですか」 「!!」 エマの声が聞こえた瞬間、左半身がゾワゾワと疼き始めた。 「な、なにを……!」 「体中を撫でまわして、ユウマ様の性感を極限まで高めてあげますわ」 ミウからいったん目を離し、エマの方を見る。彼女の手のひらが俺の上半身を撫で回し、性感帯を探っているようにみえたが……。 「あ、うわああぁぁっ!!」 違う……性感帯を探しているんじゃなくて、エマに触れられたところが性感帯になっていくんだ! そして彼女の指が乳首を軽く捻り上げると、思わず俺は体をこわばらせてしまった。 「クスッ、乳首責めがそんなにお好きですか?では……レロ……レル、チュルッ♪」 「あああぁぁ~~~~!!」 舌先を硬くしたまま、エマは俺の左乳首を何度も責めなぶる。軽く歯を立てて、甘噛みしながらキリキリとしごかれた時、俺は思わずイキかけた。 「女の子よりも感じやすいのではなくって?情けない声をいっぱい漏らしちゃって……はしたないですわ、ユウマ様」 「く、くそっ……!」 「サキュバス3人を同時に相手するなんて、並の人間ならとっくに廃人になってますけど」 「ユウマ様の場合は、『勇者の血』が流れているおかげで狂うことも出来ませんわね」 エマは不敵な笑みを浮かべつつ、今度はいたわるように丁寧に乳首を転がしてきた。 「あ……そ、それすごく……ふああぁぁっ!」 「エマにいじめられて、そろそろイきたくなっちゃった?……んふ……チュッ♪ジュル、くすっ……もう意識もトロトロでしょ……」 甘く責められたところに追い打ちをかけるミウの口づけ。 「そうだよね~。おつゆが段々甘くなってきたもん。チュピッ……チュ……んふ、おいひい(美味しい)よ……」 (この舌使いが……たまらないいいぃぃ!) ビクビク跳ねて逃げようとするペニスを、メイはしっかりと小さな口で包み込んでくる。 「少し強めにかぶりついて、トドメ刺しちゃおうかにゃ……?」 (にゃーはやめろ!可愛すぎる……!!) 「では3人同時に舌先を突き刺すことにしましょうか」 「えっ……ちょ……!!」 エマはたっぷりと俺の乳首を唾液付けにしてから、舌先を固く尖らせて蛇のようにチロチロと動かしてみせた。 (エロい!あの舌先に……舐められたい……) 「ユウマ、もっとアーンして?お口の中、メチャメチャにしてあげるぅ」 「ミ、ミウ……んううぅぅぅ~~~!!」 「んちゅ……れろ……ほらぁ、もっといっぱいしよ?舌先をくすぐってあげるぅ……」 「あはっ!今の言葉が効いてるみたいだよ。おちんちんからドロって何か出てきたー!」 「言葉責め、大好きですものね?乳首だけでなく脇腹や太ももまで念入りに撫でてあげますわ」 激しいキス責めを受けながら、エマとメイに体中をなぶられる。 極上のフェラでカリ首をめくられ、すっかり感じやすくされた乳首をしつこく責められる。 そして快感で乱された呼吸すら、ミウに全て吸い取られてゆく……。 「ほら、体中がもうフニャフニャですわ……力がどんどん抜けていきますね?」 「ユウマ……もう我慢しなくていいんだよ?私達にすべてを預けて……ね?」 エマの言葉に暗示をかけられ、脱力したところにミウの誘惑が染みこんできた。 「あああぁぁ、イく……出すよ、メイ……エマ……ミウ!」 そして震えが止められなくなった体を、三人が押さえ込んだ瞬間に俺は――! ドッピュウウウウウウウウウウウウゥゥゥ!!!ビュルッ、ビュクッ!! 「ああぁんっ!出しすぎだよ、ユーマ!!」 「メイ、全部吸い取らなきゃ駄目でしょ?クスクスッ」 「う、うんっ!絶対全部飲むからね……ジュルルルッ、ジュウウウゥゥ~~!!」 「あっ、うわああああああああああああ~~~!吸わ……れええぇぇぇ……!!」 ひときわ深くメイの顔が沈み込むと、発射したのと同じくらいの勢いで再び俺は精液を吐き出してしまう。 「すごい悲鳴ですわ……私も熱くなってしまいます……」 「メイはフェラだけで、どんな男の子でも参ったさせちゃうからね」 ミウの言うとおり、このテクニックにかかったらどんな男だって我慢出来ないだろう。 喉をコクコク鳴らしながら、懸命にフェラを続けるメイの姿を見ているとまたペニスが硬くなって……。 「もう離してくれええぇぇぇ!?」 「やだ……本気になっちゃう……美味しすぎだよ、ユーマの精液♪」 「今度は私の番だよね?」 「まだ駄目~!あたしが吸い尽くすの!!」 今さらりと恐ろしいことをメイが口にしたような気がする。 「手加減しないとユウマ様が枯れてしまいますわ。メイ、そろそろ離れなさい」 「イヤァ…………甘くて美味しいんだもん、ユーマのミルク……あむっ、ちゅうううう~~~♪」 「す、吸うな!もう吸う、あっ、あああぁぁ~~~!!」 弱々しく抵抗する俺を、メイはさらにフェラで痛めつける。 「ちょ、ちょっと!メイ、そろそろホントにどきなさいってば!!」 容赦無いフェラテクニックで、根こそぎスタミナを搾り取られた俺の体の上で繰り広げられるポジション争い。 サキュバス3人を自分のそばに置くなんて浅はかな考えだった。 このままでは遅かれ早かれ俺は干からびてしまう。 「お、おい女王!さっきの選択、キャンセル効かないかな……」 「それは不可能だ」 「なんでだよ!」 「勇者よ、人生にリセットボタンやセーブなど無いのだよ」 「妙に説得力のあること言うんじゃねえよっ!?」 「ではそこにいる三人に相談してみるが良い。彼女たちが納得すれば、〈自〉《おの》ずと願いも叶うであろう?」 「あ、あのですね……君達に相談があります」 「なんですの?」 「アンタの発言は許可してないんだけどー?」 「くそっ、俺を何だと思ってるんだ……もっと丁重に扱えよ!」 「いいよいいよ、一応言ってごらんよ。ユウマ♪」 「えっと、あのさ……俺の見張り役は三人じゃなくて、 やっぱり誰か一人にしたいんだけど、駄目かな……?」 恐る恐るお伺いを立てると、サキュバスたちの表情が変わった。 エマは深いため息をつきながら目を閉じて、メイは呆れたような顔で俺をにらみ、ミウはわかりやすいキレ顔に……だめだ、こいつら全然納得してくれそうにない。 「いかなる理由があれど、私達についての返品は不可能ですわ」 「ふえぇ、ユーマのくせに男らしくないなぁ~。そんなわがまま、許されるわけ無いでしょ!」 「ううぅっ、ひでぇ……あっ!ミウは俺の味方だよな!?」 「うふふ~、私だって却下だよ。だって仲魔がいっぱいいると楽しいんだもん」 やっぱり駄目か。 「ユーマ、人生あきらめが肝心だぞー!」 メイはふんぞり返って偉そうに胸を張っている。胸を張るとますますバストが引き伸ばされて小さく見えるわけだが、そのうち大きくなるのかな……。 「むー!ユーマの視線からムカつくオーラを検出しました!」 「なかなか敏感なセンサーをお持ちですね」 「キイイイイィィィィ!やっぱ、一度しっかり吸い尽くしといたほうがいいみたいだよ、おねえちゃん!!」 「駄目だよ!優しくしないとユウマが壊れちゃうでしょ!?」 壊す気まんまんだろ、お前ら……。 「ユウマ様、私がそばにいる限り、二人に無茶はさせませんからご心配なく」 「澄ました顔してるエマが一番危ない気がするんだけど……」 「……なにかおっしゃいましたか?」 「いいえ。何も」 「そんなわけで、これからもずっと一緒だよ~~!」 「どんなわけだよ、おい!!」 「きゃはは~!なんか言ってる~~!!」 「私も精一杯サービスさせて頂きますわ、ユウマ様」 「はぁ~~~」 見張り役を減らすという俺の願いは、サキュバスたちの笑い声の中に儚く消えていった。 でも、こういうハーレム生活も悪くないのかもしれない。毎日賑やかで退屈しなさそうだ。 山田にこの事を知らせたら、泣いて悔しがるだろうか。たまには奴の力を借りて、サキュバス達をどこかに連れて行ってもらおうと思う。 藤村はどうだろう……って、こっちはあんまり考えたくない。展開が読めるというか、怖すぎる。 淫魔女王との約束を護るためにも、藤村の説得は早急に成し遂げ無くてはならない。 これから先のことを考えると、ちょっと頭が痛くなるけど、人間界の平和のために俺はこいつらと一緒に暮らしていく決意を固めたのだった。 急に誰かを選べと言われて真っ先に思い浮かんだのは……メイだった。 自由気ままで我儘で、胸も小さくて生意気なサキュバスだけど、なぜか目が離せない。 それに毎日一緒にいるとしたら、一番飽きの来ない相手かもしれない。 チラリとメイのほうに目を向けると、すぐに目が合った。 「なっ、なによ!こっち見ないでよぉ……!」 「……」 いきなり見つめられてメイも驚いたようだ。 「ほう……勇者よ、メイを選んだか」 「ええぇぇ!?うそ!あ、あた、あたしなの~~!?」 「……そんなに嫌か?メイ」 「あうぅっ、そんなこと……ないけどさ……でも……急に言われたら……あたしだって……」 俺が尋ねると、メイはゴニョゴニョと口ごもりながら、下を向いて黙ってしまった。 「見ての通りだ。俺はメイを選ぶ。そちらとして何か不都合はあるか?」 「いや、なにも問題はない」 「ただ、その……そなた、ロリコンの〈気〉《け》があったのか?」 「ぐっ……それはちがうっ!断じて違う!!」 俺が慌てて弁解すると、他の二人のサキュバスがひそひそ話を始めた。 「いいえ、あれは絶対ロリコンの目ですわ。そうでなければこの私を差し置いて……」 「う~ん、私のおっぱいにもあんまり興味示してなかったもんね?ユウマ……」 「まぁ、やはり特殊な性癖の持ち主だったんですね」 「うんうん、ユウマこそ人間界のキング・オブ・ロリコンだよ」 「こ、こら!なんてことを……違うと言ったら違うんだ。俺の話を聞けええええぇぇ!!」 「それにあたしはロリじゃなーーーい!スーパースレンダー美少女って呼んでよ、おねえちゃん!!」 (それはそれで屈辱的な呼ばれ方だと思うけどな……) メイも話に加わって、にわかに部屋の中が騒がしくなる。 それでもエマとミウの話が止む様子はない。どんどん俺のロリコン疑惑が……。 「クククッ……騒ぐのはそのあたりにしておくのだ、ミウにエマ」 「ここは勇者の顔を立てることにしておこうではないか」 「女王様がそう仰るのでしたら……チラッ?」 ミウの視線が俺に突き刺さって痛い。 「私も異論はございませんわ。チラッ?」 「ううぅ、お前ら覚えてろよ!俺は絶対ロリコンじゃないんだからな!くそ……!!」 なんとも不愉快な……サキュバス達の手のひらので転がされている気持ちだ。 思わぬ羞恥プレイに歯ぎしりする俺に向かって、女王が口を開く。 「だが、メイをそなたのそばに置くにあたって、ひとつだけしておかねばならぬことがある」 「なんだそれは?」 「うむ……因果解きだ」 女王の口にした言葉は、今まで俺が聞いたこともないものだった。それなのに、ものすごく不吉な予感がする。 「わかりやすく説明してもらえるか?」 「ふむ……そなたも話に聞いてはいるとは思うが、メイの父親は人間だ」 「人間でありサキュバス、サキュバスであり人間……そんな矛盾を抱えた存在が、今のメイの姿だ。そこまでは理解できるであろう?」 「……」 女王の言葉に俺は静かに頷く。 「そなたがもし、見張り役としてエマやミウを選んでいたなら、特に何もする必要はなかったのだが……」 「メイはそんなにも特別だということか」 「あはっ、あたしってすごいの?」 「……ちょっと黙ってろ」 「ぶー!いじわるー!!」 俺が突き放すと、メイはプイッと横を向いてしまった。 今はこのほうが静かでいい。 「多少子供っぽくみえても、メイはサキュバスとしての潜在能力は高い」 「そしてその力は人間との混血であることが特に大きな意味を持っている」 女王が言うには、純粋なサキュバスよりも異種族と交配したもののほうが強くなるケースがあるという。 「メイは未来の女王候補の一人なのだ。しかし未来よりも大事なのは今。それゆえに因果解きが必要となる」 「それで……因果解きをすると、メイはどうなる?」 「一度この世界から存在が消えることになる」 「なにっ……」 メイが消える? 絶句する俺に向かって女王が続ける。 「消えちゃうの?あたし……」 当然だが、メイも不安そうな表情をしている。俺は無意識に彼女の頭にポンと手を置いた。 「ユーマ……」 「大丈夫だ、メイ。話をちゃんと聞こう」 「うん…………」 「それで、消えるというのは死ぬことと同じ意味なのか?」 「いや……わかりやすく言えば、メイには人間として生まれ変わってもらうことになる」 「ただし、サキュバスとしての使命を背負ったままでな」 「なぜそんな面倒なことを……」 「それはね、長期間この世界にいると、サキュバスは肉体が維持できなくなってしまうからなの」 俺がつぶやくと、沈黙を守っていたミウが口を開いた。 「サキュバスが人間の世界で活動するには人間の精が必要なの。だから私たちは人間とエッチをして精を分けてもらうんだよ」 「私やミウは純粋なサキュバスゆえ、人間の肉を持っておりません」 「ですので人間の精をエネルギー変換する際にロスがないのですが……メイの場合は大きく異なります」 「どんなふうに?」 「サキュバスとしてだけでなく、人間としてのエネルギーも必要となりますので、これが長い期間となると、とてつもない負担になるのです」 「なるほどな……」 メイが俺を監視するためにそばにいるには、サキュバスの身体よりも純粋な人間のほうが都合が良い。 女王の判断は、きっとそういうことなのだろう。 「因果解きかぁ……やったこと無いけど、痛いのかなぁ?」 「その問には我が答えよう。因果解きに痛みはない。しかし何かしら副作用が働く」 「ふくさよーって……なんだっけ?」 (こいつ本当に馬鹿だな…………) 俺だけじゃなく、ミウもエマもそう感じているに違いない。 「なんだかみんなの視線があたしへの悲しみで満ちてるように思えるんだけど……!」 「それは正しい状況判断ですわ、メイ」 「うわあああぁぁぁん、おねえちゃあああぁぁん!!」 「よしよし……」 「コホン……続けてもいいか?」 「副作用には、見た目や思考の変化、逆に特殊な能力を得る場合もありうるが……ほとんどは良くないことばかりだ」 「ううぅぅ……スーパースレンダー美少女が大ピンチだよぉ!」 そう言いながら自分の胸のあたりを撫でさするメイ。これ以上スレンダーになってしまうことを危惧しているみたいだが、怖がるのはそこじゃないと思う。 「最悪の場合は魂の消失……まあ、これは今まで一度も起こったことはないが」 「待ってくれ、でも……その危険性はあるのだろう?」 「まあ、多少はあるな……」 「!!」 俺の我儘で、万に一つでもメイを失うようなことがあってはならない。それなら他の二人に切り替えたほうがずっといい。 「だったらメイは取りやめだ。ミウかエマのどちらかに――」 「待って。とにかくやってみるよ、ユーマ!」 「お、おいっ……!」 俺の心が、メイを少しでも傷つけることを拒んでいるというのに、逆に彼女が俺を制してきた。 「えへへ……ユーマ、ありがとう」 メイは少し顔を赤く染めながら、小さな声でそう言った。 「えっ?」 「なに驚いてるの?あたしのこと、本気で選んでくれたじゃん!」 「あ、ああ……しかし……」 「それに今、真剣に心配してくれてた!その気持ちがすごく伝わってきたよ」 「でもな、メイ…………」 気丈に振る舞う彼女の姿が、とてもいじらしくて俺は言葉をつまらせてしまった。 「大丈夫だよ!あたしなら平気。こう見えてもアンタなんかより全然優秀なんだから」 「因果解きだってきっと大丈夫だよ。心配しないで待ってて。チャッチャと片付けてくるから」 メイは俺の前で普段以上に元気に振舞った。 これが彼女の意思だというなら、俺のするべきことは―― 「……良いのか、勇者」 「本人がそう言うなら、俺は止めない。彼女の意思を尊重する」 俺はメイを信じる。それが最良の選択だと、その時は思った。 「そうか。では〈淫界〉《いんかい》に戻ってくるのだ、メイ」 「はい、女王様」 メイは女王の言葉に従い、魔法陣に足を踏み入れる。そしてこちらを向いて、可愛らしく微笑んだ。 「じゃあね、ユウマ」 別れの言葉を合図に、メイの姿が薄くなっていく。 数秒後、メイの姿は完全に消えてしまった。 「行っちまった……」 途方に暮れる俺の前で、残った二人も魔法陣の中に足を踏み入れる。 「ユウマ、ひとつだけ私からキミに言っておきたいことがあるの」 「うん?なんだ、ミウ」 いつになく神妙な顔で、ミウが俺をジッと見つめてきた。 「メイのこと、信じてあげて。本当は今、あの子も不安で仕方ないはずだよ」 「……」 「だからユウマだけは信じてあげて。あの子が無事に戻ってくることを」 「それと……メイがどんな姿になっても守ってあげて欲しいの」 穏やかな表情でミウは言葉を続ける。 「私やエマを〈袖〉《そで》にしたんだから、それくらいの言うことは聞いてほしいなぁ」 「……っ!!」 「フフッ、ミウの言うとおりですわ。ユウマ様、あの子を頼みます」 「いつも強がってばかりに見えますけど、人一倍さみしがりやです」 「それはなんとなくわかるよ」 「私達の大事な妹です。粗末に扱わないでくださいね」 「エマ…………わかったよ」 二人の短い言葉の端々に、メイに対する愛情を感じる。 「それでは、ちょっと名残惜しいですが……私達もこれで失礼しますわ」 「じゃあね、ユウマ」 ミウが軽く手を振ると、二人もしばらくしてこの部屋から姿を消してしまった。 一人残された俺は、久しぶりに一人きりになった部屋の中でぼんやりと窓の外を眺めていた。 ――それから数日間、俺の生活はサキュバスなしで進行した。 もともと俺一人だったこの部屋だけど、一気に彼女たちの気配がなくなったおかげで少し寂しい。 メイはまだ戻ってこない。 彼女の代わりとして、見慣れない下級淫魔が日替わりで俺を監視しているようだ。 ミウやエマみたいに気配がうまく消せないようで、隠れている意味があんまりないように思える……。 因果解きの結果がどうなったのか、下級淫魔に問いただしてみたのだが、答えることは固く禁じられているという回答しか返って来なかった。 第三者に苛立ちをぶつけるのは俺の好みではないので、今日も悶々としながら学園へと向かう。 そして学園に着いた。 「ところでユウマ、最近カノジョ……いないみたいだけど?」 「カノジョって誰だよ」 「メイちゃんだよ、メイちゃん!マイシスター!!」 「ああ、メイのことか……って、お前の妹じゃねえだろが!!」 「おやおや、随分気が立ってるねぇ……生理か?ユウマ」 「…………山田くん?」 「藤村、俺からきちんと話すから……その、拳を握るな」 藤村が山田に鉄拳制裁を加えぬよう、俺は事の成り行きをうまくぼかして説明した。 サキュバスの事情を話しても仕方ないので、あの三人は現在海外旅行中ということにした。 「まじでか?いつ帰ってくるんだ!?」 「さあな、俺が知りたいぐらいだよ」 「なんてことだ……ユウマ、僕は頭が割れそうだよ。メイちゃんなしの生活なんて、ありえないじゃないか!」 「ミウでもエマでもいいんだろ?本当は」 「ユウマ、僕はメイちゃんについて話しているんだ!他のレディーの話題にすり替えるなんて卑怯じゃないか!!」 「す、すまん…………」 「今日は自主的に休講だ。僕の行き先は風に尋ねてくれたまえ」 フラフラとよろめきながら、山田は背を向けて立ち去っていった。 「ユウマ、寂しそうだね。そんな顔を見せるの、久しぶりじゃない?」 「えっ……そんなに酷い顔してたか、俺……」 「ふふっ、だってすごくわかりやすいんだもん」 藤村の声がいつもより優しい。 こいつには隠し事をしてもしょうがないので、俺は素直に心情を吐き出した。 「……心配なんだ」 「メイちゃんのことでしょ?顔に書いてある」 「ああ……うまく説明できないのが申し訳ないんだが、なんだか二度と会えない気がしてな」 「そうなんだ……」 それっきり藤村はしばらく黙り込んだ。俺も何を言うべきか思い浮かばなかったので、二人の間に数秒間の沈黙が流れた。 「言いたくなかったら言わなくてもいい。私も追求しないよ」 「……助かる」 「でも、私にできることがあったらなんでも言ってね」 藤村は静かにそう告げると、軽く微笑みながら俺に背中を向けた。 その後、俺は講義に出る気にもなれず、そのまま学園をあとにした。 「ついでにパンでも買って帰るか」 帰り道に立ち寄ったのは行きつけのパン屋だった。この街にはいくつか焼きたてパンの店があるけど、その中でもダントツでここが美味しい。 俺のお気に入りの店だった。 「そういえば、何日か前もここのパンを買ったんだよな」 メイのやつ、美味しそうに食べてたっけ。 たしかここの名物のメロンパンが……一個だけ残っているようだ。 店に並んでる最後の一個、メイが喜んで食べていたものと同じパンを手に取ろうとした時、脇からサッと小さな手に奪い取られた。 「あっ、ちょっと!それ……」 見知らぬ少女がメロンパンを素早くさらっていった。俺の声を聞いて、彼女はまっすぐにこちらを見つめ返してきた。 「たかがパンくらいで、なんて顔してるのよ」 「え……?俺に言ってるの」 「あたしの目の前にはアンタしかいないんだから、アンタに決まってるでしょう!」 「お、お前…………!メ……」 「ふんっ!これはあたしが貰うからねッ!すみませーん、これくださーい」 俺から奪い取ったパンをためらうことなくレジに持って行き、少女は会計を済ませた。 (この強引さ、この口調……見た目は違うけどこいつは……!!) 店を出る彼女を追いかけるように、俺はその小さな背中に向かって走った。 慌てて外に出ると、少女は俺を待っていたかのように立ち尽くしていた。 「お前いつから……」 「何も言わないで!あたしにはわかるの」 「!?」 「アンタの名前はユーマ、島崎ユーマ。絶対にそう……」 「ああ、そうさ。メイ……メイなんだろう?」 俺が名前を呼ぶと、メイはコクリと首を縦に振った。しかしその表情にはいつもの元気良さが感じられない気がする。 「名前は覚えてる。でも記憶がないの。凄く長い時間生きてきたはずなのに、ほとんど覚えてない……なんでだと思う?」 「……」 俺はその答えを知っている。だがそれを今の彼女に告げるのは、酷なことだと感じる。 「いくら悩んでも記憶の穴は埋まらない。それがすごく不安でたまらないの」 「メイ、お前……」 「でもね、あたし覚えてる……穴だらけの記憶なのに、アンタのことだけは完璧に覚えてる!」 「!!」 「だからあたしは……ここにいるの」 突然メイが俺に向かって体を預けてきた。 軽くて華奢な体が、俺の胸に飛び込んできた。 「メイ……!」 細かく震える肩を抱いて、そっと髪の毛を撫でてやる。 「あったかい……すごく、あったかいよ……」 「寂しい思いをさせたみたいで……ごめんな、メイ」 俺の声を聴きながら、メイは小さく首を横に振る。 「許せるわけ無いでしょ!?あたし、あたしずっと……暗闇を一人きりでいる……みたいにっ、ううぅ……うわああぁぁぁぁん!!」 泣きじゃくるメイの身体を、俺はできるだけ優しく抱きしめた。 今にも砕けてしまいそうな少女の心を包み込むように。 「グスッ、クスン……ちゃんと責任取ってよ、ユーマ」 ひとしきり泣いた後、メイが上目遣いで俺を見つめてきた。 「あたしは……アンタに会うためにここに来て、これからもずっとそばにいるって決めたんだから!」 「メイ……」 「女の子が決意したんだよ?男の子はきちんと受け止めないといけないんだよ?」 「でもお前、記憶が……」 「えへへ、無くなっちゃったものにこだわってもしょうがないじゃん!そんなの……これからじっくり思い出すもん」 明るく微笑んでみせる姿は、間違いなくメイのものだった。 「アンタのそばにいなきゃいけないってことは記憶に残ってる。やらなきゃならないことだって、心に植え付けられてるのを感じる」 「そ、そうか……」 「でも!でもそんなの関係ない!!あたしはユーマと一緒にいたい。ずっとそばにいさせて……」 俺をじっと見つめる真っ直ぐな瞳から目をそらせない。 メイの気持ちと同じで鋭く俺に突き刺さる愛情がたまらなく心地よい。 「いいのか?俺なんかと一緒で……」 「あたしの身体が……ううん、あたしの心が求めてる」 「ユーマとひとつになりたいって……強く抱きしめて欲しいって望んでるのッ!」 「うれしいよ、メイ。俺もお前と同じ気持ちだ」 「ユーマ……!」 この数日間の孤独を一気に埋めてくれたのは、目の前の美少女の笑顔だった。 ミウもエマも魅力的だったけど、俺に必要なのはメイなんだ。 この無邪気で天真爛漫な彼女と一緒にいたい。そして彼女もそれを望んでいる。 なんとかその気持ちに応えてやりたい。 「えへへ……涙……出ちゃった。やっと会えたね、ユーマ」 その飛び切りの笑顔が再び花開いた時、俺は考えるより先に彼女を強く抱きしめていた。 「ごめん、俺も気持ちが抑えられそうにないよ……メイ、お前が大好きだ!」 後先考えずに全力で細い体を抱きしめる。 メイと重なっている部分がそのまま溶けてしまうんじゃないかと思えるほどに。 「もっと強く抱きしめていいよ……これ、あたしでオッケーって意味なんでしょ?」 「…………当然だ」 「あたしも…………き……」 「よく聞こえないな……今なんていった?」 本当はちゃんと伝わってる。言葉なんか必要ないほどに、気持ちが震えてる。 「ふ、ふんっ!教えないもん。ナイショなんだから!」 素直じゃないメイを抱きしめながら、俺はその美しい貝殻みたいな唇に優しくキスを重ねた。 それからメイを連れて部屋に戻ると、荷物を置いた途端に彼女が抱きついてきた。 無言でジリジリと身を寄せ、甘えてくるメイを壊れない程度に強く抱きしめる。 「はふ……こうやって抱きしめられるの……好きィ……♪」 「そんなに俺が好きか?」 「バ、バカじゃないの!?そんな事言ってないでしょ」 照れくさそうな顔をしながら、メイがお返しとばかりに俺をきつく抱きしめてきた。柔らかい体に引き寄せられ、思わず恍惚感に身を任せてしまう。 「ふふっ、アンタだってすごく気持ちよさそうじゃない……体の力、全部抜けちゃってる」 「なっ……なんでそんなことが……」 「わかるよ。こうしてくっついてたら、全部バレバレだもん」 確かにこれだけ密着していたらごまかしようもない。俺の心臓の音もきっとメイには筒抜けだと思える距離感だ。 「ほら、あたしの手……スベスベでしょ。優しく撫でてあげる」 メイは俺のシャツをめくると、そっと手のひらを忍ばせてきた。 「う……く……うぅっ!」 「エッチな声出しちゃってみっともない……もっとしてほしいの?」 細い指先が乳首をかすめた時、思わず声を上げてしまった。少し遠慮がちなメイの愛撫は俺の心と体をどんどんほぐしてゆく……。 「ユーマは自分よりちっちゃい女の子に責められると、全然我慢できなくなっちゃうロリコンなんだよね?」 「な、何を言って……」 「隠しても無駄だって言ったでしょ?バレバレだよ……アンタってすごくわかりやすいもん」 「くそっ……」 悔しいけど、今は何をされても気持ちよくて我慢できそうにない。 メイと一緒にいるこの時間が、心地よくてたまらない。 「たっぷりいじめてあげる。気持ち良すぎて我慢できなくなるまでじらしてあげる」 しかしこのままやられっぱなしというのも、男として悔しいものがある。まして今のメイはもうサキュバスではなく人間の女の子だ。 (ここからは俺がペースを握ってやる!) 俺は一瞬だけ力をためてから、メイの身体を跳ね除けた。 「きゃああぁっ!ちょ、ちょっとぉぉぉ!!」 そして衣類を全て脱がせると、有無をいわさずメイの膣内にペニスを挿入した。 「ダ、ダメ!なに勝手に入れてるのよ、アンタ!!」 「な、なんだこれ……メ、メイッ!」 もうサキュバスではないと油断したのが間違いだった。すっかり濡れた桃色の秘所にペニスがあっさりと迎撃されてしまった。 ネトネトの粘液が絡み付いて、内部もキュウキュウと締め上げてくる。 あまりの気持ちよさに、挿入前よりもひとまわり太くなってしまった。 「……もっと気分を高めてからじゃなきゃ、もったいないじゃない。これだからニンゲンの男ってダメね」 「メイ……これ、すごいよ……気持良すぎるううぅぅ!!」 「当たり前でしょ?クスクスッ♪」 さらに彼女が軽く腰を振ると、津波のような快感が俺に襲いかかってきた。 「ああああぁぁぁっ、動くなあああぁぁ!」 「くっ……う……あ、あたしもなんだか感じやすくなってるみたい……なんなのよ、これ……」 だが、責めてきたメイのほうも快感で喘いでいる。 「気持ちいいだけじゃなくて、ユーマがすごく…………いい……」 (そうか……人間同士だから身体の感じやすさは互角なんだ!) そのことに気づいた俺は、身体をこわばらせながらも何度かピストン運動を試みた。 「あ、あはああぁぁっ!」 彼女の身体が即座に反応した。思った以上にこちらからの責めも効くようだ。 「痛くなかったか?」 「ううん、もっと……もっと激しくしていいよ……」 「そうか。では……」 彼女のリクエストに応えるように、腰をガッチリ掴んだまま上下に動いてやる。 「ひゃあぁぁぁんっ!ズンズン突き上げられると、背中がビクッてしちゃうよぉ……!」 俺の動きに細かく呼応して、メイの身体が激しく暴れる。膣内もクチュクチュとペニスを責め立ててはくるが、今は彼女を感じさせてやりたい。 「ふあぁぁ、す、すごい!この身体、アンタと相性が良すぎるのかもッ……!!」 「あっ、ふあぁっ!ユ、ユーマも気持ち……いい……?」 「あ、ああ……メイの身体、最高だ……」 「えへへ……じゃあもっとあたしに溺れさせてあげるぅ……♪」 ほっそりとしたメイの脚が俺の腰を絡めとる。 いわゆる大好きホールドの体勢になって、さらに俺たちの密着度が高まる。 「くっ……深く食い込んで……!」 「ユーマの感じちゃうところ、集中責めしてあげよっか?」 「な、なにっ!?」 「ふっふ~ん、ちゃんと覚えてるよ。アンタの身体は弱点だらけだもんね?」 グチュッ、チュクッ、ギチュッ♪ メイは腰から下だけをクネクネと動かし、膣内でペニスをしゃぶり始める。 「あああぁぁぁ、そ、それえぇぇぇ!」 「うりうり♪気持ちいいでしょ~?メイちゃんの愛情たっぷりの腰使い」 耳元で囁かれ、俺は何度も首を縦に振った。ドロドロになった膣内で甘く揺られながらの愛撫は、とてもじゃないが耐えられるものではなかった。 今すぐ射精したいという気持ちが膨らんでくる……この中に早く出したい。 このままでは気持ち良すぎてメイより先に意識がとろけてしまう……。 「じゃあリクエストにお答えして……うりうり……う……あ、ああぁぁっ、なにこれぇぇぇ!?」 「!?」 「なんで、あた……し……こんなに感じさせられちゃうの!?」 責めているはずのメイが、再び体の動きを止めた。サキュバスの時は感じなかった快感のリバウンドに、メイはまだ慣れていないようだ。 「ユーマのおちんちん、あたしの中で悪さしてるッ!赤ちゃんのお部屋をツンツンして、周りの壁もペロペロしてるッ……!!」 クキュウウゥゥゥ!! 「うああぁ、そ、そんなに締め付けるな!で、出る……ううぅっっ!」 俺が悶絶しても、メイは必死に腰をゆるゆると揺さぶってくる。 おかげでじわじわした快感の波が一向に収まらない。 「ずるいよ、ユーマ!こんなの……あたしじゃないみたい……」 「おちんちん気持ちよくて、もっといっぱい味わっていたいよぉ~~!!」 「あああぁ、動かすな!膣内を……波立たせるなあああぁ!!」 」 「ほら、ほらぁ!ユーマだって……くふっ、んっ、あ、あぁ……感じてるくせに!」 「メイだって……!」 「ああああぁぁぁっ、ダ、ダメ!そんなに動かないで~~~~!!!」 負けずに腰を振ると、メイは顔を左右に振って快感を抑えこもうとした。 「生意気だよ、いつもみたいにもっとアンアン言ってみせてよォ!あたしの魅力に参ったするところ見せてよぉ!!」 (そんなの……もうとっくに……ああぁっ!) 俺は何も言わずにメイの身体を抱きしめた。 「も、もっと……ぎゅ~ってして!強く、もっとぉ!!お願いよ……ユーマ」 「メ、メイ……!」 「やだ、あたしからおねだり……しちゃってるじゃん、ぅ……う、あぁぁん!」 「ニンゲンの身体って、なんでこんなに感じやすいの?身体より先に頭がとろけちゃいそうだよぉ……」 (かわいい……こいつ、こんな表情もできるんだ……) 俺の腕の中でメイが感じまくっている。 その嬉しさをもう少し味わいたくて、射精感を押さえ込みながら俺は何度か腰を揺り動かした。 「あ、あんっ!ユーマ、もうあたし……我慢出来ない!!」 「一緒にイこう?もう引き分けでいいよ、あたし……ユーマのおちんちんピュルピュルさせたい!熱いのいっぱい〈膣内〉《なか》に欲しいよぉぉ!!」 「う、うんっ……俺だってもう……!」 すでに限界なんて超えている。そしてメイは俺と一緒に果てることを望んでいる……。 「一緒にイこう、メイ!」 ひときわ強く彼女を抱きしめる。メイも感極まったのか、俺の首に回した腕に力を込めた。 「あ、ああああぁぁぁ~~~!!イく、イくううう~~~~!!!」 汗まみれになりながら、俺とメイは同時に絶頂した。 気持ちと身体が融け合うような、そんな一瞬を共有することができた。 クタクタになって意識を失ったメイの体を優しく横たえ、俺もその隣に寄り添いながら少しの時間だけ眠りについた。 しばらくして落ち着いた俺達は、お互いの体を支えるように身を起こした。 「引き分けだから、また今度やりなおさなきゃいけないな?」 その言葉を聞いて、メイはにっこり微笑んだ。 「ユーマ、覚悟してね……あたし、もう離れないから」 「うん?急にどうしたん……」 俺の肩におでこをコツンとぶつけながら、彼女が言う。 「クスッ、だって……全部思い出したんだもん」 「ユーマの気持ちと、あたしの気持ち……こんなに近くにいたんだね!」 「ふふっ、やっと気づいたか」 一言だけ返して、俺は顔を背けた。 思わずニヤニヤしてしまう。メイの言葉が嬉しくてたまらない。気持ちが通じ合っているというのはこういう状態なのかな……。 「もうっ!こっちむいて、ユーマッ!」 「うおっ、おわああぁ!」 小さなメイの手が無理やり俺の顔をねじ曲げた。危うくニヤけた顔を見られてしまうところだった。 そして俺の目の前には彼女の潤んだ瞳が―― 「今なら言えるよ。大好きだよ、ユーマ」 「あたし……きっと、もっとアンタのことを好きになる」 「お……う、うん……」 恥ずかしそうな少女の告白に、胸が熱くなってうまく言葉が返せない。 「これからもよろしくな、メイ」 それが、今の俺が用意できる精一杯の言葉だった。本当に言葉が足りないと思う。それでもメイは微笑んでくれる。 「ユーマ、ひとつだけお願いがあるの……」 「うん?」 「もう二度とあたしを離さないで。一人にされるのは嫌だよ?」 「ああ、約束するよ」 寂しそうにつぶやくメイを安心させるように、俺は彼女をもう一度強く抱きしめた。 腕の中で彼女の肩の力が抜けていくのを感じた。 因果解きの過程で抜け落ちた記憶のピースは、これから二人で埋めて行こうと思う。 出来れば俺とメイの楽しい思い出を、溢れんばかりの笑顔と共に。 じっとこちらを見つめる3人の中から、どうしても誰かを選ばなければならないとすれば――。 「俺はミウを選ぶ」 やはり彼女しかいない。初めてここにやってきた時から、何かを感じていた。 単純な可愛さだけならメイのほうが上かもしれないし、完成された美しさという点ではエマに軍配が上がると思う。 ミウは顔も可愛いし、スタイルもいいけど、どこか隙があるというか……。 要所要所で見せる天然ボケのお陰で、一番精神的な距離が近い気がする。 知らないうちにドジっ子萌え属性を植え付けられてしまったのかも知れない……。 「ほう……」 「何か問題があるのか?」 「いや、素直に感心しているのだ。ミウがそなたの心に深く入り込んでいることにな」 「そ、それ……どういう意味だ!?」 「最初にミウを人間界に向かわせたのは偶然ではない」 「勇者であるそなたの好みに合わせた結果、適任者として彼女が選ばれたのだから」 「なにっ!?」 その「俺の好み」っていうのは、どういう基準で選んだのだろうか。 まさか俺が山田と一緒に買ったり借りたりしたAVを元にミウを送り込んだというのなら、女王の眼力はさすがとしか言いようが無いのだが。 「女王様の言うとおりよ。でも最後はユウマのほうから私を選んでくれた……」 「お、おう」 まさか最初からお前しか見ていなかった……なんて言えない。実際に他の二人の誘惑を振り払えたのも、心のどこかにミウへの想いがあったからなのかもしれない。 「おおお~、これが愛ってやつだね!エマさん!!」 「ええ。さっさと爆発してしまえば良いのですわ」 見つめ合う俺とミウのことを、他の二人が冷やかした。 「お前らな……」 「あ~あ、でもつまんないなー!ユーマってロリコンだから、絶対あたしに選んでくれるって思ってたのにッ!」 「なんでだよ!俺はロリコンじゃねえええ!!」 「ふっふ~ん♪ロリコンの素質が充分な人ほど、そうやって言い逃れするんだよね」 「勝手に決めるな!俺はノーマルだ」 もしもメイを選んだだけでロリコンと認定されるのなら、世界中の男たちはロリコンということになってしまう。 俺がミウを選んだからといって、メイが決して見劣りするわけではない。 「あら、ノーマルだったらこの私の魅力に振り向かないはずはないでしょう?」 そのメイの隣で、絶世の美女が不満そうに頬を膨らませている。 「べ、別にエマに魅力がないとは言ってないだろ……」 俺の言葉を聞いたエマは、一瞬ニヤリと小さく笑った。 「とにかく、ユウマ様はアブノーマルですわ」 「ちょっとエマ!それじゃあ私もどこかおかしいみたいに聞こえちゃうじゃない!!」 「フッ……ユウマ様の心を勝ち取ったのですから、この程度の罵倒など耐え忍んでいただきたいですわ」 「そうだよ!おねえちゃんうらやましーなー!!」 にわかに目の前の三人が賑やかになる。これがガールズトークってやつか…………いや、きっと違うな。 「エマとメイの無礼については、今回だけ許してやってほしい。その二人も心の底ではそなたを慕っているのだから」 「……そうやって冷静に言われると返す言葉がないな」 女王に言われるまでもなく、エマやメイについて何かを咎めるつもりはない。 いや、なかったのだが……メイが不満気な顔で俺の目の前に一歩踏み出してきた。 「アンタは黙って女王様のお言葉を聴いてればいいのよ!フンッ」 「悔しくないといえば嘘になりますが、これも淫界と人間界の平和のため。私とメイはひとまず退散いたしますわ」 エマは穏やかな表情でメイをたしなめながら、俺に聞こえない声で何かを呟いた。 すると床に魔法陣が現れて、ぼんやりと淡く輝きだした。 「ごきげんよう、ユウマ様。ミウに飽きたら次はぜひ、私を召喚してくださいませ」 「そうだよ!おねえちゃんにフラレたら、今度はあたしが慰めてあげるからね~」 その言葉を残して、ふたりはゆっくりと姿を薄くしていった。 どうやら自分たちの世界に帰っていったらしい。 ――そして、 「ミウ、このあとはそなたに任せる。勇者と交わした約束もあるが……まずは二人が幸せになるのが一番いい」 残された俺とミウの頭の中に女王の声が響いた。 「はい、女王様。ありがとうございます」 「そして勇者よ。私の大事な娘、ミウをよろしく頼む」 「は?」 大事な娘…………だと? 「どうしたの、ユウマ?そんなに驚いた顔しちゃって」 「その様子だとミウに聞かされていなかったようだな……」 「そんなことないよ!ねえ、ユウマ?私、ちゃんと言ったよね」 女王に対してミウは猛烈に抗議してから、同意を求めるように俺の顔を見つめてきた。 だが俺は即座に首を横に振った。 「あ、あれ……言わなかったっけ……?」 「き、聞いてない!全然聞いてないぞー、ミウ!!」 淫魔女王の娘ということは、ミウはサキュバスのお姫様ということに……いやいや、待てよ。 「な、なあミウ?女王が口にした『私の娘』っていうのは、メイやエマも含むんだよな?サキュバス全員が女王の娘って意味だよな?」 「ううん、違うけど」 「ぐ……」 「一応人前だから女王様って呼んでるけど、本当に私のママだよ。ねえ、ママ?」 「その通り」 女王もあっさり認めやがった……。 「それって淫界にとってマズいことなんじゃないのか?仇敵である俺と、お姫様であるミウがくっつくということは……」 「ミウの親として、そのあたりの葛藤がないわけではないが……可愛い娘がそなたを選んだのだ。いたしかたあるまい」 「それでいいのかよっ!?」 「ママはそのあたりのことは柔軟なのよ。だから難しく考えないで、ユウマ♪」 「いや、しかしだな……」 「とにかく娘を頼んだぞ、ムコ殿」 その言葉を最後に、俺の頭の中から女王の気配が途絶えた。 なんてことだ。この若さで俺はサキュバスの婿になっちまった……! 「ねえねえ、ユウマ?やっと二人きりになれたね」 ミウは嬉しそうにモジモジしているが、俺の頭の中は混乱したままだ。 (本当にいいのか?サキュバスのお姫様を選んでしまったけど、うちの親父に知られたらブチのめされるぞ……絶対!) 「ふんふんふ~~ん♪」 (そりゃ確かにミウは可愛いし、俺に懐いてくれてるけどさ……) 「お布団とシーツもきれいにしておかなきゃね~」 (藤村や山田はどんな反応をするだろう?お祝いくれるかな……) 「はい、初夜の準備完成♪ユウマ、おいでっ」 「ん……おっ、おわああぁぁ!」 「……って、なんでお前は横になっているんだあああああ!」 「えへへー……お洋服は邪魔だったから魔法で消しといたヨ?」 「俺はそんなこと聞いてないだろっ!?」 気がつくと、俺は裸にされていた。 そして細くて長い腕が首に回されていて、柔道の寝技のように俺はミウの身体の上に転がされていた。 「ねえ、とりあえず……やろっ?」 「いきなりそっちか!」 なんというマイペース。ミウは俺の苦悩など全く感じていないようだ。 相手はサキュバス。快楽に忠実な人外の魔性。でももう少しムードを大切にして欲しいのだが…… 「あはっ、もっとラブラブな感じにしたほうが良かった?」 「こら、心を読むんじゃない!」 「でもラブラブなのが好きなんでしょ?」 「い、いや……それはそれでちょっとな……照れ臭いというか」 「キミはけっこうロマンチストだもんね?ふふふっ……」 「じゃあ、あとで恋人みたいにイチャイチャしてあげよっか?」 ミウが俺をしっかり見つめながら、甘い声で誘惑してきた。 「えっ」 実は俺、そういうのにすごく憧れてる……。 「あはっ、嬉しそうな顔しちゃって!でも今は、目の前のことに集中して……」 「目の前のことって……おわぁっ、こら!」 ミウが俺を見つめたまま、腰を軽く突き上げてきた。 「みみみ、ミウウウゥゥ!もう先っぽが触れてる!!」 「いいのいいの♪かわいがってあげる」 彼女の腰がクネクネと動くと、サラサラとしたミウの愛液が俺の先端を濡らす。 その焦れったくて優しい刺激に、思わずため息が出た。 「最初はユウマから入れさせてアゲる……」 ミウは腰の動きを止めると、最後に一度ゆっくりと亀頭を中心に腰で円を描いた。 「くうぅっっ、い、いいのか……もう……?」 「私、ずっと濡れっぱなしだよ?ユウマのせいなんだからね……」 「おれ……の……?」 「早く入れて欲しくて、クチュクチュいってるでしょ……だから……ね?」 上目遣いで俺を見つめる彼女が愛しくてたまらない。さっきから鼓動が激しくて、俺はだんだん理性を失いつつあった。 「これ……魅了の魔法とかじゃないよな……」 「ふふっ、魔法なんて必要ないよ。だって、ユウマはもう私に夢中だもの」 ミウの言うとおりなのかもしれない。今までのように「勇者の血」も発動しないし、何よりピンチというわけでもない。 (このままミウにおぼれていいのだろうか……う、ああぁっ!) 「えへへ、よそ見しちゃだめじゃない♪弱いところ責めてあげる」 ミウの両手が俺の顔を挟み込んだ。そしてチクリと小さな電流のようなものが流された。 「目が……逸らせない……!?」 「魔法使っちゃった♪」 それに上半身が動かせなくなった。だからといって何か苦痛があるわけではないが、このままではミウの顔を正面から見つめざるを得ない。 「ずるい……魔法なんてもういらないって言ってたのに!」 「ユウマが私の邪魔するのは反則だもん。だから恥ずかしいお顔を私に見られながら、どんどん気分を高めて……」 突然、ペニスの根本がゾワゾワとした快感に包まれた。 ――ペチュ……クニュ、チュプ……! それはまるで、極上の柔らかさをもつ絵筆で、ほのかに温かいローションを丁寧に肛門や蟻の戸渡りに塗りつけられているような感触だった。 「んあああぁっ、そ、それはああぁぁ!?」 「私も感じてきちゃう……尻尾の先って、サキュバスの性感帯なんだからね?」 「尻尾!?」 このたまらない感触はミウの尻尾か……堪えようとしても、それを包み込むように大きな快感の波が押し寄せてくる! 「あああぁぁ、駄目だ!そこばかり責められたら、お、俺……っ!!」 「ほらぁ、こうやってクリクリクリ……って、んっ……はぁぁ!」 俺を感じさせながら、ミウも徐々に感じ始めている。 ペニスを、俺の体を使ってミウ自身もオナニーしているような状態なのだろうか。 だとしたらこのまま彼女のほうが先に果てるなんてことも…… 「ううん、それはないよ。私より先にユウマのほうがもっと気持ちよくなっちゃうんだから」 「くそ……また心を読んで……!」 「うふふふふ♪もうすこしおちんちんをコリコリにしたら、大好きなところで飲み込んでアゲル」 膣口でペニスの先端をチュクチュクといたぶられ、睾丸と根元付近はミウの尻尾が責め立てる。 そこへさらに魅惑の腰使いが織り交ぜられて……すでに俺の下半身は快感のマグマに浸されたように熱くなっていた。 ――それから数分後。 「ああぁぁ……ミウ、もう俺……!」 魔力で上半身を固定されたまま、先端への愛撫だけで焦らされ続けた俺のペニスはすでに我慢の限界を突破していた。 早く楽になりたい……ミウのしなやかな指先で、軽くしごかれようものなら、あっという間に何度も射精してしまうだろう。 「もうそろそろいいみたいね。ユウマ、腰を前に出して?」 「う、うん……うああああぁぁっ!!」 「ふふふ……やっぱりユウマって、すごく可愛い♪」 言われるがままに腰を前に突き出すと、何の抵抗もなく亀頭が彼女に包み込まれてしまった。 ちゅぽ………… しかし彼女は意地悪にも腰を引いてしまった。 「あああぁ、なんで……!」 「ほらぁ……もう一度、チュッ♪」 俺が残念そうに呟いた途端、もう一度膣内にペニスが閉じ込められた。今度はさっきよりも深く、半分くらいまで。 「ああああぁぁぁっ、も、もっとおおぉぉ!!」 とろけきったミウの膣内は、あっさりと俺の口から降参の言葉を吐き出させた。 わざと締め付けを緩くした彼女の膣内は、ただひたすらに心地よくて、暖かくて……そして残酷なほど俺をじらし続ける。 「んっ……あはっ、気持ちいいよ。ゆっくり……私の中に……あぁぁん、入ってくるぅ……」 「ああああぁぁぁっ!ミウ、ミウウウゥゥ!!」 「う~ん?どうしたのかな?クスクスッ」 悶絶する俺の表情を楽しそうに見つめながら、ミウはペニスをゆっくりと出し入れする。 あとほんの少しで射精できるのに、それを許さないサキュバスの残酷な腰振り。 「私の中も、すごくトロトロになってるでしょ?もっと夢中にしてあげる」 クキュ…… 「あっ……しま……ああぁぁ!」 先端を咥えたまま、膣内の圧力が変化した。カリ首だけを柔らかく潰したまま、ミウは器用に腰を8の字にくねらせた。 「ああああぁぁ、駄目だ!それはもう我慢があああぁぁっ」 「この腰使いやると弱くなっちゃう?クスクスッ……もっと私に弱くしてあげるよ」 「!!!!」 俺は声も出せないまま、身体を固くして快感を堪えきろうとした。 しかしこれはもう……イく……この動きは我慢出来ない……! そしてとうとう身体が弛緩し始めた。 ようやく俺はミウの膣内に出すことができるん………… キュポッ……♪ 「え……まさか……ああぁぁ!」 「はい、ここでいったんお休み♪」 あと3秒で射精というところで、なんとミウはペニスを引きぬいてしまった。 行き場を失った射精欲求が、俺の体中に広がって精神を蝕んでいく。 「ああぁぁ、ミウッ、なんでこんな……意地悪すぎる!」 「えー、だってこれはサキュバスのエッチなジュースを、ユウマのアソコに絡めてあげただけなんだもん」 快感を吐き出せずに、ジタバタする俺を見ながらミウが答える。 「もしかしてユウマ……もっとじっくりオマンコでクニュクニュされたかったんだ?」 「…………!」 「ふふふ、ユウマは素直じゃないね」 彼女のストレートな問いかけに、思わず目をギュッと閉じてしまった。 そしてクスクス笑いながら、ミウは身体を起こした。 「あとでたっぷり犯してあげる。でもその前に……えいっ!」 今度は俺がベッドに転がされてしまった。しかもギンギンにそそりたったペニスはミウの…………! 「ユウマの大好きなおっぱいで揉みくちゃにしてあげるよ……」 「ああぁぁ……!」 フニュフニュとした感触のミウのバストが、ゆっくりと俺を包み込む。 (このおっぱいは……吸い付いてくる!) 膣内でたっぷりとなぶられたペニスが、ヌルヌル感を保ったまま、真っ白でやわらかな肉塊に押し込まれてしまった。 「私のアソコには、このあとゆっくり包み込んであげる♪今はおっぱいに溺れちゃいなさい?」 「うぐぐ……ぅぅっ」 極上の柔らかさで俺の頭が真っ白になる。そしてこのままでは股間もすぐに弾けて……! 「でもそれまでに何度イっちゃうんだろうね?クスクスッ」 ミウの膣内に再び入るまで、俺自身が持つわけがない!それを承知で彼女は俺に尋ねているんだ。 「このまま……耐えて……ううぅぅ!」 「ううん、絶対イっちゃうよ。今のユウマは全然我慢出来ないはずだから」 自信たっぷりにミウは言う。 「口で言うより身体で教えてあげる。ほら、いくよ~」 そして自らの体重をかけて、バスト越しにペニスを押しつぶしてきた。 「お……おおおおぁぁぁ!!」 「ふふふ、もっとうまく逃げないとプニュプニュのおっぱいに捕まっちゃうよ?」 さっきと違って身体の自由は利く。それでも身を捻って逃れようとしても、その方向にバストが追従してくる! 「これじゃあ動けない……!」 下手に動けば自滅する。この胸に擦られ続けてるだけでどんどん免疫がなくなっていくのを感じる。 「ヌルヌルして気持ちよくなってきちゃったね……もう降参しちゃうの、ユウマ?」 ミウは余裕たっぷりにそう言うと、今度は自分の尻尾を俺の目の前で振ってみせた。 「サキュバスのおっぱいに挟まれながら、お尻の穴も綺麗にしちゃおうね~」 チュルッ……! 「あっ、ああああぁぁ~~~~!!!」 尻尾が目の前から消えた。そして代わりにむず痒い感触が下半身全体に広がっていく。 「まさか今度は……後ろの……!」 「せいか~い!もうクニュクニュだよ、ユウマのお・し・り」 俺の目の届かない部分が、自由自在に責められてる。まるでゼリーみたいなミウの尻尾の先端が、妖しい粘液を吐き出しながら俺の無防備な部分を……! 「一方に責められるのって、クセになっちゃいそうでしょ」 「ふあああぁ、ああぁっ!!」 肛門をツンツンされるたびに情けないほど喘いでしまう。その行為自体が、また俺を恥ずかしくさせる。 「いいんだよ……このまま病みつきにしてあげる」 ミウは俺の肛門を責めつつ、さらにバストに体重をかけてきた。 すでに張り詰めている俺自身を。身体の内部から決壊させようとして、容赦なく快感を送り込んでくる。 ぎゅむっ!ぎゅむううううう~~~~!! 「ああああぁぁぁっ、漏れるッ!!」 「うふっ、かわいい……ねえ、私のおっぱい好き?」 「……あああぁぁ、好きだああぁぁ!」 思わず反射的に答えてしまった。しかしミウの質問は終わらない。 「じゃあ私のことは?」 「……!!」 さすがにそんな事言えるか!しかし黙りこむ俺を見て、彼女はとても不満そうだ。 「ん~、なんで言ってくれないのかなぁ……」 「もしかして、私にもっと虐めて欲しいの?」 「え……ちが……!」 「ううん、絶対そうだよね。お望みどおりお仕置きしてあげる」 ミウは人差指と中指で棹の部分を挟むと、ゆっくりと上下にペニスをしごき始めた。 「ゆ、指が絡みついたまま……こんな動きいいぃぃ……!!」 「ほらほらほら、もうビクビクしちゃってる~~~!」 爪の先でくすぐるようにしながら、手首のスナップだけで行われる絶妙な手コキ。 そしてたまらず溢れだす我慢汁は、ミウの指先にすくい取られてペニスに塗布されてしまう。 「なんだ……これ……我慢出来ない……!」 「イく?イきたいよね?フフッ、フフフフフ……」 俺の腰が跳ね上がった瞬間、彼女の手がパッと離れた。 「はい、ストップ♪」 「あ、ああぁ……あああああぁっ~~!!」 数秒後に必ずやってくる快感を伴う欲求不満。それは体中の毛穴に媚薬を刷り込まれたみたいに、逆らえない衝動となって俺の心を蝕む。 「ミウッ!ミウウウウゥゥゥ!!ちゃんと……もっと……おおおああぁぁっ!」 壮絶な痺れが来るとわかっていても我慢できず、また情けない声を出してしまう。 「いっぱい悶えてね、ユウマ……こっそりおちんちんの先に淫魔の毒を塗っておいたから、ジンジン感じてちゃうでしょ?」 「な、なにいいっ……いつの間に毒なんて……」 だがミウの言うとおり、一秒ごとに快感が膨れ上がってゆく。きっと尻尾で愛撫されてる間に、そっとペニスに擦り込まれていたんだ……。 「先っぽの穴から染みこんで、ユウマを可愛くしちゃうお薬……ゆっくり味わってね?」 チュ……クッ! 「あがあああぁぁっ!」 さらに彼女の指先が鈴口を弄ぶと、俺の身体に快感の電流が流された。 「きゃはっ、すごくビキビキになってる……そ~っと撫でてみようかな?」 スリスリスリスリ…… 「んはああぁっ、さわ、触らないでええええぇぇ!!」 「うふふ……効いてる効いてる」 「じゃあもう一度聞くけど、私のこと……好き?」 「す…………」 このままミウに堕ちるのは悔しい。その一念で、彼女の望む一言を必死で飲み込んだ。 「なかなか頑張るねぇ~。さすが勇者様!……ってことは、もっと虐めていいんだよね?」 ミウは少し意地悪な表情を浮かべると、今度はさっきとは逆の手でペニスを撫で始めた。 「今度は指先でシコシコシコ♪ほらほら、イっちゃいそうだよ~~」 「うあああぁぁっ、ああああぁぁ~~~~!!!!」 イくっ!もう出るうううううぅぅぅぅ!! しなやかな指が上下に動く様子を見て、歯を食いしばった瞬間―― 「はい、ストップ♪」 「くっ……ああぁぁ……はぁ、はぁ、はぁ……」 「ちゃんと言わないと、先に進んであげないからね。早く楽になっちゃいなよ」 ミウの寸止めは精妙を極めた。あと一秒、この手を離すのが遅れていれば俺は射精していた。 完全に見切られてる……。 肩で息をする俺に顔を寄せて、急に優しい声でミウがささやいてきた。 「そろそろ素直になって?私、ユウマのためならなんだってしてあげるつもりなんだから……」 これは快楽拷問の一種、厳しい責めから一転しての懐柔だとわかっているのに……もう無理だ。 必死で抵抗していた俺の心が、ミウの微笑みの前に、脆くも崩れ去った。 その瞬間、頑なに拒んでいた言葉が俺の口から飛び出してしまった。 「ミウ……好きだ……」 「うふっ、よく言えました♪嬉しいよ、ユウマ……いっぱい愛してあげる」 ミウの身体がゆるやかに前後する。 バストに体重をかけたままのグラインドが、押しつぶされたペニスに回避不可能な快感を叩きこむ。 「あっ、あっ、あっ!!」 自然に身体が弓なりにそっていく。そしてその動きに合わせて、ミウの責めも優しく変化してゆく。 「ミウッ、今度こそ……ちゃんとイ……イかせ……!」 言葉も途切れ途切れに、彼女におねだりする。ミウは身体を揺らしながらニッコリ微笑んだ。 「サキュバスに愛を告白しちゃうダメダメな勇者くんだけど、私にとっては初めての人だから……」 「思いっきり優しくイかせてあげる。私のおっぱいに溺れたまま、イっちゃえ~~~!」 彼女の手がバストを脇から寄せ、ペニスに左右からの圧力が加わる。 さらに今まで続けられていた前後の動きも加わって、ペニスは逃げ場を失った。 「あああぁぁぁ、出……るッ……うああああぁぁ、う、うっ!!」 ドピュッ、ドプッ、ドピュウウウウウウ~~~!!!!!! 目の前がチカチカする……あまりにも強烈過ぎる刺激に、俺は声を出すことも忘れて精を吐き出しまくった。 「あん、凄い……男の子のニオイ……こんなに濃いミルク出してくれるなんて、ますます好きになっちゃう……」 おびただしい量の精液を顔に受け、ミウが恍惚とした表情を浮かべた。 「これじゃあ私も……イきたくなっちゃう……」 そしてまだ硬さを失っていない肉棒を掴み、自らの乳首に当ててクルクルと円を描きはじめた。 「あっ、あっ、あああぁ!硬いよぉ!!ユウマのおちんちんが、私の乳首をチュッチュしてるううぅぅう!!」 「ああぁ、ミ……ミウウゥゥ!ああぁぁ!」 射精直後で敏感になっているというのに、ミウは自らの欲求を満たすために容赦なくペニスをこね回す。 おかげでまだ完全に出し切れていなかった分まで、精液が搾り取られ、周囲に飛び散ってゆく。 「イ、イっちゃう!乳首だけで、私も気持ちよくなっ……あああぁぁ、はぁぁぁんっ!」 「ね、ユウマ……もう一度イって?そしたら私も一緒に……くぅ……はぁぁっ!」 「ミ、ミウッ!もっと、ゆっくり……いいいい、ああぁぁっ!!」 コリコリとした乳首に裏筋を責められ、俺も悶絶した。 そしてしつこく何度もカリ首を刺激されると、再び体の奥から熱い塊が飛び出してしまった。 「で、出るよ……また、イかされちゃうううううう!!」 「わ、私も!……ひゃうっ、その……可愛いお顔を見てるだけで、もう……もう無理いいぃぃ!!お願い、ユウマ!私と一緒に、一緒にイってええええぇぇぇ~~!!!」 泣きそうな声で感じまくる彼女と目があった瞬間、再び俺の意識が……跳んだ。 ドプッ……ドピュウウ、どぴゅううううううううううううぅぅぅ!!!! さっきと同じくらいの勢いで再び精を搾られてしまった。いや、今度は魂まで溶かされてしまったように身動きが取れない。 「私、心と体が完全に溶けちゃった…………」 俺とミウは、そのままの体勢でしばらくお互いの呼吸を感じあっていた。 しばらくして身体を起こした俺達は、お互いに見つめ合いながら和やかに話し始めた。 「なあ、さっきは本当に……イったのか……?」 俺が尋ねるとミウは恥ずかしそうに微笑んだ。 「すごいよぉ……乳首だけでイかされちゃったよ……ユウマ」 「こんなの初めて……私、ユウマの虜になっちゃう」 「サキュバスが人間の虜になるなんてありえないだろ!」 「ううん、そんなことないよ。ユウマだったら、そうなってもいいと思ってる。これが私の本当の気持ちだよ」 その言葉通り、真剣な表情でミウが俺に訴えかけてきた。 虜とかそんな物騒な言葉ではあるけれど、これが彼女なりの精一杯の愛情表現なのかもしれない。 もう俺にとってはサキュバスとか人間とか、そんな些細な事は関係なかった。 目の前の女の子の気持ちを、きちんと受け止めてあげなくてはいけないと思った。 「でもひとつだけ……わがままを承知で言うけど、ユウマも私に夢中になってほしい!」 「!?」 「私もユウマのことを本気で好きになるから、ユウマも私を好きになって……」 「ミウ……そんなに俺のことを……」 その切ない表情を見ているだけで胸が苦しくなる。 真剣な表情のまま、ミウは言葉を続けた。 「人間界と淫界のことなんて抜きにして、ユウマと一緒にいたいの」 「こんな私じゃ……駄目ですか……?」 最後の言葉は消えてしまいそうなほど小さかった。 俺に拒まれることを覚悟している彼女の心の声が、痛いほど伝わってくる。 「……」 少し考えてから、俺は口を開いた。 「前にも聞いたけど、ミウは俺の『最初で最後の恋人』になってくれるんだろ?」 「え……うっ、は、はい……」 「だったらもう答えは出てるじゃないか」 「えっ!それって……」 俺は小さく深呼吸をしてから彼女をまっすぐ見つめた。 「たとえ嘘だとしても、俺の恋人になってくれるなんて口にした女の子を粗末にできないよ」 「ユウマ……!」 ミウは花のように微笑むと、軽くウインクしてからこう続けた。 「クスッ……私に向かって言ってくれたの、二度目だよね?」 「さすがにバレたか。でも、それが俺の本当の気持ちだよ……」 自然に声が震えた。俺自身、女の子に向かってこんな言葉を口にしたことはない。 自分でも呆れるくらい不器用だと思ったけど、ミウの表情を見る限りこちらの想いは伝わったみたいだ。 「ユウマ……キスしよう?とびきり甘いやつ♪」 「えっ……」 「人間って、神様の前で誓いのキスをしてケッコンシキをするんでしょ?」 「ななななにぃ!?結婚式って、ちょ、待って……!」 俺が慌てた様子を見せると、ミウが小さく笑った。 「別にケッコンシキじゃなくていいから!神様なんかじゃなくて、私に向かって誓いを立てて?」 「お前さ……結婚式の意味、本当はわかってないだろ?」 「うん、全然わかんない♪ゴメンネ?」 ……俺一人だけが緊張して、なんだか損をした気分だ。 そんなことを考えていたら、ミウの両手が俺の肩を抑えて――。 チュッ♪ それはとても甘いキスだった。今までの快楽責めなど問題にならないくらい、ミウの小さな唇が俺の心を全部包み込んでしまった。 目の前の彼女がとても愛しい……ミウという存在を、これからも大切にしていかなきゃいけない。 そんな気持ちで頭の中がいっぱいになるような、幸せなくちづけだった。 数秒後、静かに離れたミウの唇を見つめながら俺は尋ねる。 「今の……魔法じゃないよな?」 「ううん、魔法だよ。私からユウマにしかかけられない、絶対に解けない魔法♪」 「やっぱりそうか……」 いや違う、これは魔法なんかじゃない。 もっと強力な……とびきりの何かを、ミウは俺にかけたんだ。 「もうユウマは私のことしか見ちゃいけないんだからね?」 抱き合いながら、ミウがおでこをコツンとぶつけてきた。 柔らかそうな彼女の耳をそっと撫でてやると、嬉しそうに目を細めてきた。 一秒ごとに好きになる……ミウの心が俺に重なって、もう引き剥がせない気がする。 「ねえ?フジムラさんとも浮気しちゃ駄目なんだからね!?」 「なんで藤村!?浮気なんてす、するわけ……ないだろ?」 ミウにとっての最大のライバルが藤村だと聞いて、なんとなくニヤけてしまった。 「あ~や~し~い~~~!!!」 「サキュバスってすごく嫉妬深いんだよ?それに、私を怒らせたらどうなるかわかってるよね?」 「さあ?どうなるんだろうな」 「むぅ~~~!心配だから、もう一回かけてあげる!」 チュッ…………♪ 頬をふくらませたまま、ミウが唇を押し当ててきた。 さっきと同じ……いや、さっきより甘い唇に軽くめまいがした。 「今度は私がユウマに魔法にかけられちゃったよ……」 「な、今なんて言った……?」 俺が聞き直すと、ミウはトロンとした目で俺を見つめ返してきた。 「私、ユウマのことが好き……大好き!これからもきっと、どんどん好きになって行くと思う」 「ミウ……!」 「今日も〈明日〉《あした》も〈明後日〉《あさって》も、ずっとずっとヤキモチ焼いてあげる」 「だからユウマにも、いっぱいいっぱいヤキモチ焼かせてあげる♪」 恥ずかしそうに俯くミウを、俺は思い切り抱きしめた。 「浮気するなよ、絶対」 「しないよ?フフッ、その代わりいっぱい甘えさせて」 彼女を抱きしめながら、俺はこの先のことを考えていた。 山田や藤村に話すのはいいとして、うちの親にはどう説明しよう 親父には殴られるかもしれないけど、おふくろは味方してくれそうな気がする。 まあいいや、とりあえず殴られてこよう。 「悪いんだけど、ミウ……もう一回魔法かけてくれ」 「もうっ、ユウマのエッチ!」 少し呆れた表情をしながらも、ミウは静かにまぶたを閉じて顔を寄せてきた。 「大好きだよ……これからもよろしくね……」 この先に待ち受ける苦難を乗り切るため、俺はもう一度だけ彼女と唇を重ねるのだった。 目の前のサキュバス三人組の猛攻に、もはや俺の理性は風前の灯とも言える状態だった。 俺を抱きしめるミウと視線が交差する。真っ直ぐな瞳に吸い込まれそうになりつつも、彼女を見つめ返す。 柔らかくて長い髪が手にひらに触れてくすぐったい。 「ミウ……」 「なぁに?ユウマ」 微笑みながら言葉を返すミウから少しだけ視線をそらすと、今度はメイと視線があった。 「メイ……」 「えへへ、おにいちゃん大好きだよ~♪」 「おにいちゃん」という言葉に、再びドキッとさせられてしまう。 ちっちゃな目がいつも以上に可愛らしくニコッと笑う様子に、思わず見とれてしまう。 さらに視線を動かすと、エマと目が合った。 「エマ……」 「うふっ、なんですの?ユウマ様」 上品に笑みを浮かべながら、彼女の手が俺の肌に触れる。その指先の奇跡から何かがジワリと溢れだしそうなほど心地よい。 三人のサキュバスがそれぞれ熱い目で俺を見つめてくれてる。 しかし同時に、その視線の奥に、快楽で俺を堕落させようという強い意志を感じる。 (この違和感……いつものこいつらじゃ……ない……!) うまく説明はできない。しかし直感がそう告げる。 快楽という頑丈な鎖で全身を絡めとられ、今にも堕ちてしまいそうな心だが、このまま堕ちてしまうわけにはいかない。 そう考えた瞬間、俺の体の芯が急に熱くなった。 射精とは違う欲求……それが何なのかわからないうちに、突然身体が軽くなる。 「違う……違うんだ。こんなの間違ってる!」 正直な所、甘い誘惑に心が真っ二つに折れそうだったが、ここで彼女たちに身を委ねてはいけないという思いがどんどん強くなってくる。 体の奥から得体のしれない力が沸き上がってくる感覚は、最近何度か体験している。 これは俺が性的な危機に陥った時に発動する「勇者の血」が覚醒しようとする前兆に間違いない。 「うおおおおおおぉぉぉぉ!!」 目を瞑り、頭の中で今の状況を全力で否定する。全てを振り払うように俺は叫んだ。 このまま快楽の虜になるなんて惨め過ぎる。ミウたちの誘惑を振りきって、もう一度話し合いたい。 その思いを胸に、再び目を開けると、組み敷かれていたはずの俺の身体が解放されていた。 「これは驚きました」 エマは目をパチパチしながら俺の顔を見つめている。 「ユウマの持ってる力は完全に封じたはずなのに!」 ミウとメイも驚きを隠せない表情で俺を見つめている。 「おねえちゃん!こんなの抑えられないよォ!」 よく見ると、彼女たちの衣服が乱れていないし、汗一つかいていない。 どうやらさっき見ていたのは彼女たちによる幻術だったようだ。 「ハァ、ハァ……急にどういうつもりだ!」 「いわゆるテストですわ」 俺の問いかけにエマがさらりと答える。 「んー……実際、このままユウマが堕ちちゃうのもありかなーって思ってた」 「ユーマって案外、意志が強いんだねぇ」 「お前ら……もっときちんと説明してもらうぞ!」 「うん、あのね……」 彼女たちに問いただしてみたところ、俺への討伐令は本当に出ているらしいので、淫界に対して何かしらのアクションが必要だった。 悩んだ三人は、全員の力を合わせて俺を堕落させようとしてきた。 その結果についてはこだわっていないようなので、遊び半分、真面目半分といったところか。 (でも最後の最後で誘惑を跳ね返すことができたぞ。これもご先祖様のおかげなのかな) 脈々と受け継がれている「勇者の血」に、またしても助けられた気がする。 直接サキュバスたちに攻撃する力は備わっていないようだが、淫らな魔力から俺を解放する力はあるようだ。 「その通り。サキュバス3人の力を瞬時に無効化するなど、普通の人間には不可能」 「それゆえにそなたの力、我らにとっては脅威でしかない」 何気なく心に浮かべた言葉に対して、頭に中に直接返事が飛び込んできた。その落ち着いた女性の声は、目の前の三人ではない。 「だ、誰だ!?」 今度はさっきよりも明確に声が聞き取れた。 「はっ!このお声は……」 「メイ、頭を下げて!」 「えっ、おねえちゃん……うわわっ!」 ミウはメイの後頭部を手のひらで軽く押した。急に目の前の三人がうやうやしく頭を下げた。 この声は彼女たちにも聞こえているようだ。 「ということは、まさか……」 ミウたちが慌てて頭を下げる相手、それは――! 「我はサキュバスを統べる者。勇者よ、お初にお目にかかる」 「やはりそうか。今度の相手はお前なのか」 「ふむ、それも選択肢の一つとしてありえるが……その前に勇者よ、そなたと取引がしたい」 「取引……!?」 まさかと思うが、部下になれば世界の半分をやるとか……そんな話ではないだろうな? そんなものを貰ってもいい迷惑なので、断固拒否する構えを見せた俺だったが、女王の口から出た提案はひどく現実的なものだった。 「およそ千年に一度『勇者の血』を恐れ、穏やかではない日々を過ごすことは、我らにとってこの上なき苦痛……」 「そなたが思うほど、サキュバスは好戦的な種族ではない」 「時たま人間界に現れ、快楽と引換に精を少し分けてもらう程度のことはするかもしれぬが……」 「俺だって好き好んで戦いなんてしたくない!」 「そなたの口からそう言ってもらえると話が早い。我も同じ事を考えていた」 「……詳しく話を聞かせて欲しい」 サキュバスの女王は、俺に和平交渉を持ちかけてきた。 正直なところ、そのほうが断然助かる。 ミウ達やその他のサキュバスと争って、神経をすり減らす毎日を過ごすのは、俺だって御免被りたい。 お互いの利害は一致している。交渉は障害なくまとまるかのように思えた。 「ただし、ひとつだけ条件を飲んでもらいたい」 「!?」 「そなたの命が続く間、我々とは戦わぬという契約を見守る者を、常にそばにおいて欲しい」 「俺のそばに?一体誰を……」 「うむ、そこにいる三人の中から一人を選んでほしい」 「ええええええっ!?」 「もしも選べないようなら、全員でも構わぬが……」 「……」 全く予想外の展開に、頭が追いつかない。女王の言葉をそのまま受け取れば、この中の誰かと俺は一生同棲することになるわけだ。 「そ、そんな大事なことを急に決めろと言われても……!」 「うむ……ある意味、そなたと運命を共にするものと考えてもらってもいい。ゆえに、たまには精を分け与えてやってほしい」 「!!」 精を分けるということは、セックスするということだよな……それ以外考えつかない。 しかし異種族であることを除けば、目の前の三人はどれも魅力的な女の子だ。 ミウの穏やかな魅力も、メイの天真爛漫な魅力も、エマの気品ある振る舞いも……ずっとそばにいたら、ますます好きになってしまいそうな気はする。 しかも全員が全員、人間ではありえないほど美形ときてるし……俺に選ぶことはできるのだろうか? 勝手に俺の跡をつけてきたサキュバス達は親友である山田に預けて、俺は藤村の後を追った。 なぜそんな気持ちになったのか、自分でもよくわからない。 しかしここで彼女を放置しておくことは危険だと、俺は本能的に感じていた。 「ちょっと待ってくれよ藤村!」 やっと捉えた藤村の後ろ姿に、俺は声をかけた。 「何よ……モテモテ王子」 「王子じゃねえし!?勝手にヘンな称号つけるな」 予想通り、こちらの姫はご機嫌ななめだ。 そりゃ、あいつらが騒がしくて鬱陶しいっていうことは俺だって感じるけど……そこまで露骨に嫌わなくてもいいんじゃないかと思うのだが。 「ふん……もう私のことなんて、どうでもいいんでしょ!」 「何いってんだお前……」 藤村はツンとすました顔で目を閉じてしまった。まるで別れ際のカップルみたいな言い草だな……それにしても好き放題言われっぱなしで、我ながら情けない。 「あの子たちと仲良くやってればいいじゃない。なんで私を追いかけてきたのよ」 「それは……お前が大事だからだ」 「えっ……」 「あっ……か、勘違いするなよ!べべ別に深い意味は無いんだからなっ!!」 ちょっと言葉を省略しすぎたが、藤村にへそ曲げられると色々と困ってしまうのは事実。 テスト勉強の結果やそれ以外のことも、けっこう彼女を頼っているからだ。 「なにキョドってんの?それよりご飯……一緒に食べない?」 俺があれこれ考えてるうちに、藤村は俺の隣に立って腕を組んできた。 (あ、あれ……なんだか少し機嫌が良くなってるような) 「お昼ごはんごちそうしてよね?」 「お、おう……」 まあ、結果オーライだな。とにかく機嫌が直ってくれればそれでいい。 俺は彼女に引きずられるようにファミレスへと向かった。 「お待たせしました。爆弾ステーキ400グラムです」 「はい、私でーす!」 見事に焼きあがった分厚いステーキ肉が俺の目の前を通過していく。 「……あのー、藤村さん?」 「なによ。あげないわよ、これ」 「そうじゃなくて!なんでわざわざ学食じゃなくて、俺の財布に優しくないファミレスに来たのですか」 「だって何でもご馳走してくれるって言ったじゃん。ユウマのおごりっていったじゃん!」 「言ってねえ!ひとことも言ってねえよ!?おごりだなんて言った覚えが……」 「ユウマさっきなんて言った?私が大事なんでしょ?」 「うっ……卑怯だぞ、テメー!」 「そのへんどうなのよ……う~ん?」 落ち着け……ここで逆らったらまた藤村の機嫌が悪くなって、俺の学生生活に支障をきたしかねない。 グッと堪えることも、時には必要だ。 「おごります。ご馳走させて頂きます」 「じゃあ遠慮なく追加注文させてもらうわ」 「おい待て!やめろおおおおおおおおおお!!」 俺の制止も虚しく、藤村は店員さんを呼びつけて、容赦なくデザートと飲み物を追加してしまった。 藤村から経済制裁を受けつつ、俺は何気なくミウたちのことを話し始めた。 この先、藤村に隠し事をしていると精神衛生上良くないと判断したからだ。 俺が話したのは、ミウ達3人が人間ではなくサキュバスであること。 俺の体に流れる「勇者の血」がすべての災いのもとであること。 この2点を出来るだけわかりやすく説明したつもりだ。 おそらく一笑に付されると覚悟していたのだが、以外にも藤村は冷静に俺の話を最後まで聞いてくれた。 「……私にその話を全部信じろっていうの?」 「ああ、ちょっと現実離れしてるけどな。こんなことで嘘ついても仕方ないだろ?」 「ふーん、そっかぁ……」 藤村はグラスの氷をストローでクルクルとかき回しながら、小さく頷いてみせた。 「思ったより驚かないんだな……?」 「うん、やっぱり変だと思っていたのよ」 「えっ?」 「あの子たちの服、どう考えても普通じゃないし」 「服って……サキュバスの衣装のことか?」 「だってそうでしょう?あんなスク水ニーソみたいな服装で頭にツノつけたり、羽根や尻尾までつけてるのに学園では誰も文句言わないんだもん」 「おま……あいつらのこと、見えてたのか!?」 「うん。だからビックリしたんだよ。はじめてミウさんを見た時とか、ホントにね……」 「いや、俺のほうがビックリだよ……」 これは勘が鋭いとかそういうレベルじゃない。 藤村にはサキュバスの姿をしたミウ達の全てが見えていたらしい。 (藤村……おまえ、本当は「勇者の血」の一族なんじゃ?) 驚いたまま次の言葉を探せない俺に、藤村がポツリとつぶやいた。 「でもさ……これ、学園で他の子に話したら大変なことになるよね~」 「!?」 「ユウマに彼女が出来たと思ったら、サキュバスだったとか」 「いっ!?そっちかよ!!」 「やっぱり人間じゃ無理だったのかー……とか、色々言われちゃったりして。ますます居心地悪くなっちゃうかもね?島崎くん」 こいつが俺を苗字で呼ぶ時は、決まってろくでもないことを考えてる時だ。 「くそっ……俺にどうしろっていうんだ!」 俺が投げやりに答えると、藤村はニヤリと妖しい笑みを浮かべた。 「ふふっ、話が早くていいわ」 「一つだけ私の言うことを聞いてもらおうかしら。最近、誰かさんのおかげでストレスたまってるの」 「うわぁ……嫌な予感しかしねぇ……」 「とりあえずここのお会計、よろしくね♪」 その後、席を立った藤村のあとについて俺はファミレスを出た。 気になるお会計は……なんてことだ、財布の中の千円札が全滅しちまった。 ――そして約15分後。 淡いライティングの部屋の真ん中で、俺と藤村は仲良く並んでベッドに腰掛けていた。 「あのー、藤村さん?」 「今度はなによ」 「なんで俺達はいわゆるラブホの、しかも一番お高い部屋にいるのでしょうか」 しかもここ、前金制だから万札が一枚吹っ飛んだんですけど!! 「いちいちうるさいわね。ユウマが『どこへでも連れて行け』って言ったじゃん。私のストレス解消するっていったじゃん!」 「おま、お前な……モノには限度ってものがあるだろ!それにストレス解消するなんてひとことも言った覚えが……」 「ほー。明日から不名誉な意味で学園の人気者になりたいみたいね、ユウマ……」 藤村の眼の色が冷たく変化した。 「うっ……」 「そのへんどうなのよ……う~ん?」 こいつは……やるといったら必ず実行する女だ。それがたとえ俺の人生に関わることでも、何のためらいもなく行動に移す女だ。 ここで機嫌を損ねたら、明日から俺は 「人間嫌いの人外好き」という変態野郎のレッテルを貼られてしまうだろう。 少なくともあの学園を卒業するまでは……。 「くそっ……弱みに付け込みやがって!もうどうにでもしやがれ!」 「あっそ。じゃあ遠慮なく〈弄〉《もてあそ》んであげる。覚悟してね」 まるでテーブルクロスを交換するように、藤村はテキパキと俺の服を脱がせにかかった。 「童貞クンのくせに、なかなかいい体つきしてるじゃない。ふふふっ」 「み、見るなよ!卑怯だぞ!!」 「じゃあ私も脱いであげるよ」 パサッ…… 「ゴクッ……」 「ジロジロ見つめてるのはそっちじゃない……エッチ」 これについては何を言われてもしょうがなかった。思わず彼女のボディラインに見とれてしまったからだ。 女として意識していなかった藤村の体は、きっちりとしたクビレを強調するスレンダーな美しさを持っていた。 それこそミウたちと比べても遜色ないほどに。 「それと、勝手にイくの禁止だからね」 「なっ……!サキュバスみたいなこと言い出すんじゃねえよ!」 「辛い時こそ我慢するのが男の子でしょっ!」 藤村は、ほっそりした脚を俺の膝に引っ掛け、ベッドの上に体を押し倒してきた。 「これがユウマの……おちんちん……」 「藤村、お前……」 「なによ!ちょっと驚いただけでしょ……ユウマの、すごくおっきいんだね……」 藤村は俺の股間にそっと手を伸ばしてきた。そしてしっかりとペニスを掴んで、自らの秘所へと導いてゆく。 クチュ……ヌチュ…… 「ああぁぁ……お、お前……何をしてるんだ?」 「入り口で……んっ、擦ってるだけなのに……感じてきちゃうよ……」 藤村の手が動くたび、卑猥な水音が二人の下半身から生まれ、次第に音が大きくなってゆく。 柔らかくて暖かい彼女の指先にしごかれながら、亀頭はヌルついた蜜壷に何度もキスされている。 トロリとした銀色の糸が二人の間で紡がれてゆく。俺の我慢汁なのか、藤村の愛液なのか……見分けることはできない。 「クスッ、ユウマのお口からもヨダレがでてきたね?」 「えっ……えっ?」 「違うよ、こっちのお口だよ♪プニュプニュしてて、熱くって真っ赤になってるよ」 慌てて口を拭ったが、そうではなかった。藤村が言っているのは俺の股間のことだった。 想像以上に美しい体の幼馴染に翻弄され、ペニスが不覚にも嬉し涙を流している。 「恥ずかしくないのか、藤村……」 「ユウマは恥ずかしいの嫌い?私は嫌いじゃないよ……」 そして今度は藤村の大きな目が俺を覗きこんできた。 「み、見るな……頼む……見ないでくれ」 「ユウマがそんな顔するなんて。私、ちょっとSになっちゃいそう……」 うっとりした表情を浮かべると、藤村はペニスを握り直した。 「うくっ……お、おいっ!!」 「いいよね?もう入れちゃう……んっ、あはぁっ、あああぁぁ~~~~~!!!」 「うあああああぁぁっ、熱いいいいぃぃ!!!」 何のためらいもなく、一気に藤村が腰を落としてきた。 「こ、こらっ!少しは遠慮しなさいよ……こんなにカチカチにしちゃって、お腹の中で暴れまわってるじゃない……!!」 「そんなこと言われたって……!」 「なに口答えしようとしてるのよっ!!」 グニュッ、グチュッ!ズリュッ、ジュルッ!! 藤村は俺を戒めるように激しく腰を振り立てる。 「え、エロい……藤村、その動き……ああぁぁっ!」 「ふふ、だいぶ馴染んできたね……ムチとか蝋燭使わない代わりに、いっぱい焦らして虐めてあげる」 結合部が抜け落ちる直前まで腰を上げ、そこから一気に俺を全部飲み込むテクニックを使われると、あっという間に我慢の限界が訪れた。 「うああぁっ、これヤバいぞ……漏れる……うあ、うぅぅ!」 悶絶する俺の体を、藤村が軽く押さえつける。 「ユウマって随分感じやすいんだ……ふふふっ、サキュバスじゃない女の子は初めて体験?」 「くそっ……そんなこと……」 「言わなくても判ってるよ。ユウマが安心して触れるのは私しか居ないんだから!」 「……っ!!」 手のひら同士を合わせ、指を絡ませながら藤村は瞳をうるませて囁いてきた。 「いっぱい抱きしめてあげる……私好みのおちんちんに育ててあげるからね」 いつもの彼女からはなかなか見ることのできない、女の子らしい優しさに満ちた表情に、俺の心が溶かされてゆく……。 「私のオマンコで……きゅうっ♪」 「あっ、ふじむ……あああぁぁっ!?」 「あはっ、締め付けられてお漏らししちゃいそうなの?かわいいっ♪」 異性として意識してなかった分だけ、藤村の豹変ぶりは俺の体と心の両方を激しく揺さぶった。 こんなに可愛かったのか、こいつ……。 (それにこのアソコ、気持ち良すぎる……お、俺、動けないほど感じまくってる!) じっとしていたらこのまま膣内に出してしまう。 何もしてないのにイかされるわけには……男としてそれだけは避けたい。 「幼馴染の柔らかオマンコの中で、もがいて苦しんでるんだね」 「くううぅぅぅぅ……っ!!」 「気持良すぎて抜けられないって顔に書いてあるよ、ユウマ」 「いうなあああぁぁぁっ!」 軽く上下に腰を揺らしながら、藤村は冷静に俺の状況を分析していた。 藤村の体が気持ち良すぎる……。 藤村の顔も、今日は可愛すぎる……。 「私から離れられなくしてあげる……えいっ!」 クチュウウウウウゥゥゥ♪ 突然、すっぽり納められたペニス全体が甘く痺れだした。 「あがああああぁぁぁっ!なんだ、これ……ぎっ、ううぅぅ!」 「あんっ、ああぁんっ!ど、どう……凄く締まってるでしょ……ふふふふ♪」 藤村がお腹に力を入れたせいなのか、断続的に膣内がプルプルと震えている。 その微妙な振動が快感を呼び起こし、ペニスの心まで響いてくる。 「出ちゃう……離れて、藤村!……えええぇぇ!?」 俺が悲鳴を上げると、藤村は逆に更に深く腰を落とし込んだ。 「ユウマはもう逃げられないよ。幼馴染の私と、ずっとこのまま……♪」 「こんなっ、気持ち良すぎてじっとしてられない……おかしくなりそうだ!」 体中がゾワゾワとくすぐられているように感じた俺は、思わず腰を跳ねあげてしまう。 「えっ、ちょっと!あ、ああっ!?勝手に突き上げちゃダメ~~~!!」 藤村の中にある何かがペニスにぶつかった。 その感触が心地よくて、俺はもう一度腰を突き上げてみた。 クチュッ…… 「すごいっ、ユウマの太いおちんちんがああぁ~~!お腹の中を食い荒らしてるの!!」 藤村が首を振って悶える。 コリコリした何かがペニスの先端にかすると、彼女は激しく感じてくれるようだ。 「なにしてるのよぉ……じっとしてなさいよ、ユウマ!」 「お前だって……こんなに動くから……!」 「お、男の子のくせに生意気だよ。私より先にイかなきゃダメなんだからね!?」 グジュッ、プシュッ、ジュプジュプジュプッ! 藤村は歯を食いしばって、思い切り腰を前後に激しく振り立てた。 「うあああああぁぁぁ、いっ、一気にそんなああぁぁっ!!」 「恥ずかしいお顔で私に参ったさせられちゃうユウマが見たいのに……気持良すぎるよ、これ!!」 ヌルついてはいるものの、しっかりとした締め付けを感じさせつつペニスに快感を送り込む藤村の膣内。 俺はもう体を固くしてジッと耐えるしかできなくされていた。 「はぁ、はぁ、はぁ……予定変更だよ、ユウマ。一緒に……一緒にイって?」 「えっ……お前、そんな自分勝手な……」 「あんっ、私も気持ちいいの……だから言うこと聞いて、お願いよ……」 「……」 「私のことだけを考えながら、一緒にイってええぇぇぇ!!」 「ふじ……」 うっすらと涙を浮かべた藤村の表情が可愛いすぎて、俺はとうとう我慢することを放棄してしまった。 体の奥から精液がほとばしってゆく……もう止まらない! 「ぐっ、もう……限界……いいぃ、イくっ!!!!」 ドピュウウッ!ドプッ、ゴボッ……ビュルルルル~~~!! 「あああぁぁ、中で!中で出してくれたああぁぁぁ~~~!」 「ユウマ、好きっ!好きだよっ!!絶対渡さないんだからあああぁぁ~~~!!」 その後、藤村は何度か体を激しく痙攣させてから、俺に抱きついたままグッタリと脱力してしまった。 彼女の体を抱きしめたまま、俺も静かにベッドに倒れこんでしまった……。 しばらくして俺と藤村は同時に目を覚ました。 ぼんやりと天井を眺めている俺の横で、藤村がむくりと体を起こした。 「あのさ、ユウマ……」 「う……なんだ?まだ俺の体をいじりたいのか……」 俺の体力ゲージはとっくにゼロなんだけど、こいつが望むなら付き合ってやるしかないか……。 だが俺の言葉に藤村は小さく首を横に振った。 「ミウさんやメイちゃんなんかと比べたら、私……可愛くないかもしれないけどさ」 (エマには勝てるつもりなのだろうか……!) もちろんそんな危険な言葉は口にできないわけだが。 「ずっと昔からユウマのこと、見てるんだよ。ユウマだけを見てるんだよ!」 「だからこれからもずっとそばに居てあげる」 「それってもしかして……告白のつもりな、うぶぉぉぉぉっ!」 不意に藤村の小さな拳が俺の腹にめり込んで、俺の言葉だけじゃなく呼吸までも遮断した。 「これ以上私に言わせる気?空気読みなさいよ。ホントに怒るよ……」 少し頬を赤くして藤村は恥ずかしそうな表情を浮かべた。 直前の鉄拳制裁がなければ、もしかしたらこいつに惚れ直していたかもしれない。 「ゴホッ……お前の愛は……痛みを伴うんだな……」 「ユウマがあの子達を好きでも構わない。最後は私のところに来て?」 「わ、わかった……その時は宜しく」 みぞおち付近に鈍く残る痛みを感じつつ、俺は藤村を見つめた。 不安そうな目で俺を見つめる幼馴染……彼女が俺に他して特別な感情を持ち続けてくれていたことを嬉しく思う。 「ありがとな……藤村」 「大切な人が誰なんだか……やっと気づいてくれた?きゃはっ♪」 サキュバスたちへの言い訳を考えながら、俺はもう一度だけ藤村を抱きしめるのだった。